騎士王、異世界での目覚め   作:ドードー

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遅くなりました
最近仕事が忙しくなりまして一カ月に一回投稿できるかどうかといった感じです。
これからも投稿ペースは速く出来ないと思うので気長に待っていただければ幸いです。


侵入

ーバハルス帝国帝城ー

 

 そこは豪華な一室、煌びやかな品々が飾られ床には厚い絨毯が敷かれている。

 その部屋の例に漏れず細やかな彫刻が彫り込まれた上質な長椅子に腰掛ける部屋の主、バハルス帝国皇帝ジルクニフ。

 

 自分が処理しなければならない案件の書類に目を通し、次の書類に手を伸ばしたところで手が止まる。

 ふと自分の胸元を見ると彼の胸にある首飾りが僅かに発光し、持ち主を呼んでいる。

 マジックアイテムの反応を確認すると、近くに控えていたバジウッドに指示を出す。

 

「レイナースからの連絡だ。この部屋に誰も入れるな、誰もだ。例外はない」

 

「分かりました」

 

 レイナースからの連絡ということで僅かに反応したもののバジウッドは部屋の扉の外に出て扉の前を陣取る。キャメロットが関わることは今の帝国にとって最高機密であり、情報が漏れるのは避けなくてはならない。

 

 ジルクニフはそう指示を出すと、マジックアイテムに手を添えて相手からの声を受信する。このアイテムはアルトリアから貰ったものでありレイナースとの連絡を取る為のものである。

 

『聞こえるか?私だ』

 

 そこから聞こえてきたのは予想していた声ではなかった。

 

「…っ、まさか君からだとはね。……何か私に用だろうか?」

 

 アルトリアの声に僅かに驚きはしたものの、すぐに冷静さを取り戻し質問を返す。

 

『なに、少々確認したい事があってな。同盟者が何か企んでいるのなら別にいいのだが、そうでないなら、と思ってな』

 

「わざわざ私に確認を?」

 

『ああ、ナザリックについてなんだが。ワーカーにナザリックの調査依頼が回ってきていてな、何か意図があるのか?』

 

(なに?……どういう事だ?そんなものを指示した覚えはない)

 

「それは本当か?残念なことに、私に心当たりはない。第一に、これ以上奴に余計な手札を与えるつもりはない。依頼の元は把握しているのか?」

 

『ワーカーの情報では、フェメール伯爵という人物からの依頼だそうだ。まさか、すでに帝国を侵食されているのではなかろうな?』

 

(アインズの手がすでにここまで…。いや、流石に私に気づかれずにここまで広げるのは無理だろう、そこまで無理をして帝国を動かしても、やっていることは調査の派遣だ。ならば違う、おそらく目的は、手頃な人間が欲しかったと言ったところだろう、糸を引いているのは、じいか?まったく厄介な)

 

 僅かに思考を巡らせる答えを出す。

 

「その心配はない、奴もそこまで大胆な行動は起こさないだろう、今のところはな。だが情報は助かる、礼を言う。……それはそうと、レイナースからの情報提供は満足して貰えたかな?それとも、レイナースはすでに君の手中か?」

 

『なんだ、やはり分かっていたのか、分かっていながら、なぜこちらに残した?』

 

 予想通りの返答ではある、しかし、分かってはいても貴重な戦力が無くなるのは痛い。

 

「私としても手放したいわけではない。あそこで手放さなければ、敵になる可能性のある味方を抱えることになる。なら味方のまま手放したほうがマシと考えただけ、というのもあるが、大きな理由はそれがレイナースとの契約した条件というだけだ。そこまで大した理由はない」

 

『ならば有り難く貰っておこう。なかなか優秀でな、気に入っている』

 

「これから君には大きな借りを作る、私としては少しでも先に返しておきたい」

 

『だが数少ない手駒が減るのは困るだろう?こちらとしても、まだレイナースに頼みたいことはない。同盟者に預けておいてもいいが?』

 

 ジルクニフとしても、使える手駒が減るのは困る。それが四騎士となれば、代わりはなかなか見つかるものではない。だがここで大事なのはアルトリアの対応だ。

 

(少しつついてみるか)

 

「私の監視役が欲しいと?」

 

 僅かに緊張を覚えながらその言葉を吐く、あくまで冗談の範囲で取り消せる言葉だ。

 

『分かってて言っているだろう、くだらん事を言うな。同盟者が何を企もうと、私の知ったことではないし、お互いの利になるならば、その企みの上で踊ってやるのも吝かでない』

 

 言葉からはこちらを勘ぐる感情は読み取れない、聞かれたから答えるという単純な返しだ。

 その返答は予想内であるものの、内心の安心感と確信をさらに強めるのに役に立った。

 

(やはり、基本合理的なのだろうが、約束や同盟さえ結んでしまえば、それを前提として動いてくれる騎士としての姿勢は有難い。この分ならレイナースを手の内で使っても大丈夫だろう。……まあ、どちらにせよどこかで妥協せんと何もできんか)

 

『私としては別にどちらでもいい、確認したかったことも確認できた。あとは直接レイナースと話して決めればいい。レイナースは、受けた恩は返したいと言っていたが』

 

「所詮は取引だがな」

 

『取引でも望む結果がともなえば、それを恩と感じるものだ、と思うが?』

 

「確かに、そういうものかもしれないな」

 

『私の用は済んだ。レイナースに代わる、しばらく待て』

 

「ああ、分かった」

 

 そしてアルトリアとの会話は途切れる。

 

(アインズめ、わざわざワーカーを引っ張り出してまで、いったい何をするつもりなのか。ただ人間が欲しいだけなら、ここまで回りくどいことをする必要は無いはず。それにしても、分かってはいたがじいはかなり厄介だな、出来るだけ権限は取り上げておきたいところだ)

 

 会話が切れても思考は頭の中で続く、そうして考えを巡らして5分ほど経ったところで聞き慣れた部下の声が聞こえる。

 

『陛下、私です。アルトリア様から、陛下から私に話があると聞きましたが?』

 

 レイナースの声である。久しぶりに聞いた気がするが、声からは特に変わったところは感じられない。

 

「レイナースか、久しいな。顔の呪いは解けたのか?」

 

『はい、アルトリア様に頼んで解いていただきました。今はアルトリア様に仕えさせていただいています』

 

「私の手を離れると?」

 

『ご不満ですか?』

 

「まさか、元々そういう約束だろう。お前を失うのはなかなか痛いがな」

 

『ありがとうございます。ですが、陛下のおかげでここまで来れたのも事実です、その恩は返します。アルトリア様から今まで通り陛下のもとで動いていいと、承諾していただいてます。どうされますか?』

 

「…………」

 

『陛下の考えていることはなんとなく分かります。アルトリア様側の人間になった私を、自分のそばに置くことに、抵抗があるのではありませんか?』

 

「分かるか?」

 

『これでも陛下の騎士でしたので。私が言っても意味はないかもしれませんが、そこまでアルトリア様を警戒する必要はないと思います。アルトリア様はバハルス帝国に興味を持っています、陛下が帝国の為にアルトリア様を利用しても、怒ることはないかと、もちろん限度はありますが、それを計れない陛下ではないでしょう』

 

 今まで騎士として仕えていたレイナースより不思議と今の方がレイナースという人間が分かる気がした。

 

「アルトリアが人間臭いところを持っているのは気づいている。だからといって、それをあてにし過ぎるわけにはいかない、が、お前がそこまで言うのであれば、あてにしてみよう」

 

『では?』

 

「ああ、一度こちらに戻ってくれ」

 

『はい、分かりました』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーキャメロット城内ー

 

 マジックアイテムの会話を切ると目の前のアルトリアに向き直る。

 

「本人を目の前に、意外と神経が太いのではないか?」

 

「なにか間違ったことを言ったでしょうか?」

 

 レイナースは澄まし顔、というのは少し違うがそんな表情だ。

 

「いや、間違ったことは言ってない。私が帝国に興味を持っているのも、その為に利用されてもいいと思っていることも、どちらもな」

 

「ある程度腹を割って話さなければ駄目でしょう。陛下はそういう人間ですので」

 

「だからこそ、歴代最高の皇帝と言われているのかもしれないからな。まあ嫌いではない」

 

「では明日にでも帝国首都に向かいます」

 

「ああ、同盟者の護衛は任せる。いざとなれば同盟者を連れてここに転移すればいい」

 

「了解です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーバハルス帝国首都ー

 

(低レベルの武器でも売ればかなりの金になるな)

 

 ドールは先程武器を売った金額を考え満足げに歩いていた。

 ドールの体でも使える程度の《クリエイト・アイテム/道具創造》で作った簡易なアイテムでも武器屋で売ればいい感じに金になる。

 

(これなら無理に冒険者で金を稼ぐ必要はないな)

 

 そう考えながら、ふと見えた奴隷の市場に足をのばす、奴隷商と言っても様々で、その商品の用途によって売り方も異なる。

 

(チラホラとエルフらしきのもいるな、どれも耳を切り落とされているが何か理由があるのか?)

 

 そんなことを考え眺めていると一つの商会の前に一台の馬車が止まる、そして目の前で馬車の扉が開き、中から奴隷と思われる子供が連れられて出てくる。

 

(物心ついた頃には奴隷か、憐れだな。これを間近で見ると、つくづく自分は恵まれていたと実感する。)

 

そんな事を考えながら眺めていると一瞬目が止まる。

 

「……?」

 

 ふと馬車の窓から見える中の子供の中に何処かで見たような顔が映る。

 

(何処かで見た気がする顔だな、とくに目元が)

 

 双子であろうその子達が馬車から降りるときに思い出し、つい口に出す。

 

「アルシェか」

 

「「え?」」

 

 その小さな呟きにも近いそれを双子は聞き取りこちらを見る。

 

「えっと、お姉さまの知り合い?」

 

 僅かな沈黙の後に双子に問い掛ける

 

「……お前達はアルシェの妹か?」

 

「「う、うん」」

 

 子供からすれば、このような怪しい格好は恐怖感を煽るのだろう、改めての問いに躊躇しながら答える。

 どういう状況なのかと考えようとすると奴隷商の人間が割り込んでくる。

 

「おい、なにやってんだ、さっさと来い」

 

 そう言って双子の手を引いて連れて行こうとするがそれを遮る。

 

「まあ待て、少し話が聞きたい」

 

 そう言って手持ちの銀貨を握らせる。

 

「おい邪魔すっ…ん?…チッ、しょうがねえ少しだぞ、なにが聞きたいんだ?」

 

 少なくない金を握りしめ渋々といった感じでこちらを睨む。そんな奴隷商を双子から離し、声を抑えて質問する。

 

「その双子についてだ」

 

「ん?あいつらか?馬鹿な父親に売られた憐れな双子だ。あいつらの父親は自分がとっくに没落した事に気づいていない、未だ過去の栄光にすがってるのさ。そうして借金していって貴族としての見栄を張る、俺には分からないねーそういう考えは。すぐに取り返せる、だから今子供を手放しても、すぐに連れ戻せるそう考えてるわけだ。確かもう一人娘がいて借金返す為にワーカーやってるはずだが、まあ俺が知ってんのはこんくらいだ」

 

「そうか」

 

(随分と面白い巡り合わせだな)

 

「ああ、じゃあな」

 

離れようとする奴隷商の肩に手を置き引き止める。

 

「待て」

 

 奴隷商は再び呼び止められイライラしながら文句を言う

 

「おい、知ってることは話したぜ、あんまり無駄な時間を使うと俺も上に怒られる」

 

 手のひらに金貨を数枚見せながら答える

 

「客だ、私が買おう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーナザリック大地下墳墓ー

 

 現在ナザリックの調査依頼を受けたワーカー達は各チームに別れ探索をしている。

 一度情報交換した際にこの遺跡には多くの宝が転がっているのが分かり、各チーム共にモチベーションを高く保ち探索をしているが、相変わらずここがどういったところなのか、謎が深まるだけである。

 

「たくっ、よく今までこんなに宝があるのに放置されていたな」

 

「同意ですね、もしかしたら過去の時代の遺跡なのかもしれませんね」

 

 ヘッケランとロバーデイクが会話しながら先に進む。

 

「今のところ、モンスターは大したことない。どうにでもなるレベル」

 

「アルシェの言う通りね。この遺跡は色々とチグハグで不気味だけど」

 

 その後ろをアルシェとイミーナが追う。

 

「おっと、そう言ったら早速お出ましだ」

 

 そう言うヘッケランの視線の先にはグールが数体こちらに向かってきているのが見える。

 

「さて俺が前に出る、援護頼む、…っ」

 

 二本のショートソードを構え、そう指示出したところで4人の足元に魔法陣が広がる、気づけばそこはさっきの場所ではなく、状況の飲み込めないフォーサイトは、しばらく硬直し周りを観察する。

 そこは通路であり通路の先は巨大な広場に繋がっている、まるで帝国の闘技場のような作りをしている。

 

「ここは?」

 

「俺らはどうしたんだ?」

 

「おそらく転移。それも複数となるとかなり上位の」

 

 各々状況を確認し理解していくが、理解すればするほど状況が悪いということが嫌でも分かる。

 

「とりあえず敵は近くにはいねえみたいだが、どうする?」

 

「ここに転移したということは、きっとそういうことなのでしょうが」

 

 そう言いつつ、ロバーデイクは闘技場の広場があるであろう方向を見る。ここの主はフォーサイトと何かを闘わせたいのだろう。

 

「ここで転移で離脱するか?」

 

「それが最も安全」

 

「ここにいる以上覗いてからのほうがいいんじゃない?どうせむこうには把握されてるんでしょ」

 

ここに転移された以上相手はすでにこちらの情報を掴んでいる事になる、情報という面でもこちらは圧倒的に不利だ、もし対話出来るのであれば、逃げた後の事も考え、相手を知っておきたい。

 

「そうだな、絶対転移出来るようにお膳立てもして貰ったしな。まったく、アイツの言ってる事が、ようやく分かった気がするぜ。アルシェ、俺が合図したら、転移出来るようにしておいてくれ」

 

「了解」

 

 

 

 

 

 




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