転生してみませんか?   作:RyuRyu(元sonicover)

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こんにちは。

瞳を閉じればあなたが〜♪どうもRyuRyuです。

なんて事はありません。ただ歌ってみただけです、はい。どーでもいい。

まずここに過去最高の文字数になった事を軽くお詫び申し上げます。

では、本編です。


11話 蘭ちゃんなう!

「さてと、蘭。今日はどこ行く?」

 

「え、どこか連れてってくれるの?」

 

「まあ、お前のお父さんに任されたからな」

 

 翌日。バスケの練習がある夕弦とは別れて、蘭とつぐみと今日の計画を立てる。

 

 蘭の両親にも当たり前かのように俺に任せても大丈夫とよくわからない信頼を置かれているから、余程変な所、例えば歓楽街とかそういうの所に行かない限りは特に何も言われない。

 

 小二の娘をそう簡単に預けて良いものか甚だ疑問だが、それだけ信用してもらえているなら俺も全身全霊をもって蘭を楽しませなければならない。

 

 

 

 という事でやって来ました遊園地。

 

 電車で数駅のここは、ぶっちゃけあんまし客の入りは少ない。

 けれど、アトラクションのどれもが趣向を凝らしたもので、羽沢家も時々訪れていた。

 

「んじゃ、何乗る?」

 

「メリーゴーランド!」

 

「そうかそうか。それじゃ、それに乗るか」

 

「やったぁ!」

 

 つぐみが万歳しながらピョンピョン飛び跳ねている。ああ、可愛いくて俺の心もぴょんぴょんするんじゃぁ。

 しかも手を繋いでいるのも忘れて万歳するから俺も一緒に片手を挙げることに。勝者、つぐみー。15R判定勝ちー。

 

「で?蘭はそれでいいか?」

 

「…………」

 

 ん?蘭から反応が無い。…あ、もしかして遊園地がお気に召さなかったり。

 

「……しゅ」

 

 しゅ?種?酒?主?

 

「しゅごい…」

 

 とまあ、そんな事はなく目をキラつかせていた。呂律も回らなくなるみたいには。

 

「…蘭?おーい、らーん?」

 

「っ!な、何?どうしたの?」

 

「や、どうしたの?そんなぼーっとして」

 聞くと、伏し目がちに俺の服の裾をキュッと握りしめて蘭は答える。

 

「あ、えと、その…ゆうえんち、初めて…だから」

 

「そっか。なら、目いっぱい楽しまなきゃな」

 もじもじしながら言う蘭。その頭をぽんぽんと優しく叩きながら言うと、控えめな笑顔で頷いた。

 

「……うん。楽しむ」

 

 

 

 

 

 

 ▲▽▲▽▲

 

 

 

 

 

 

 時は流れてお昼ご飯。売店でそれぞれの昼食を買って、テラス席の一角に陣取る。

 

 

「お兄ちゃんのそれ、美味しそう」

 と、つぐみが俺のハンバーグを指さして言う。

 

「そうか?なら一口あげるぞ。ほら」

 

 箸で切り分けたハンバーグをつぐみへ差し出す。それをつぐみは小さな口を大きく開けてパクついた。

 

「あーん…ん!美味しい!」

 

「つぐみのそのオムライスも一口ちょうだい」

 

「うん。いいよ!……はい。あーん」

 

「ん……うん。美味いな」

 トロトロの卵の甘みといい感じに混ざったチキンライスのケチャップの酸味が程よくマッチしていて、チキンライスのチキンの部分もまた異なる食感でいいアクセントになっている。シンプルイズベストを地でいったような美味しさの中にどこか懐かしさを感じる。

 

「でしょ?えへへー」

 なぜお前が自慢気になる。まあ可愛いから許すけれど。

 

「……」

 そんな中、じっと俺達の一挙手一投足を見る目が二つ。

 

「蘭ちゃん?どうしたの?」

 

 黙ったままこっちを見る蘭につぐみが心配そうに声をかける。

 

「へ?あ、いや…なんでもない」

 それじゃさっきからフォークに巻き付きっぱなしのスパゲティはなんなんでしょうかね。

 蘭 が仲間になりたそうにこっちをみている!

 

「あー、蘭のスパゲティも美味しそうだなー。よかったら一口くれないかなー?」

 棒読みで言うと、蘭はパァッと表情を輝かせる。仲間に入れて欲しかったんだよね。わかるわかる。ごめんねつぐみと仲良くしちゃって。蘭がチョロくて助かったよ。

 

「う、うん!いいよ。一口、あげる」

 

「そう。はいあーん」

 

「え…」

 口を開けて待機する俺。なぜそうなると言わんばかりに取り乱す蘭。それを横でにっこにっこにーなつぐみ。……なんだこの図。

 

「あ、あー…」

 恐る恐るフォークを差し出す蘭。ゆっくりとスパゲティがこっちに向かってきている。スパゲティが近づくにつれて蘭の口も少しずつひらいていく。

 

「んぁーん」

 

「ひゃぁっ!」

 焦れったくなってパクついた俺にびっくりする蘭。頼むからフォークを突き出さないでくださいよ。俺死にますから。

 

「ん。結構美味いな」

 というよりここのご飯はなかなかどうして美味しい。大概の遊園地のご飯と言ったら、ぼったくる割には大して美味くないのが普通なのに。この遊園地のここの売店は金額に見合った料理を出してくれる。ありがたい限りである。

 

 終始幸せそうなつぐみと恥ずかしがりながら満更でもない蘭が食べさせあいっこするのを俺は自分のハンバーグそっちのけでスマホで写真を撮りまくってた。

 

 

 

 

 ▲▽▲▽▲

 

 

 

 

 

 結構ボリューミーだった昼食をみんな仲良く完食し、俺達は午後もアトラクションを楽しんでいた。

 

 

「次のお客様どうぞー!」

 

「さ、行くぞ二人とも。楽しみだなぁ、お化け屋敷」

 

「う、うん」

 

「どうした蘭、怖いのか?」

 

「ち、違う。怖くなんかな、ない」

 それじゃもう少し手握る力緩めてもらえませんか?血が止まって若干痺れてきたので。

 

 俺は怖いのが好きだ。同じようにつぐみも苦手ではない。ホラー映画も二人でキャーキャー言いながら楽しく観れる。

 だから遊園地に来たいつものノリで列に並んだんだけれど、そもそも遊園地自体が初めての蘭、“お化け”に反応してしまったようで、少し怯えている。

 

 でもまあ、ものは試し。百聞は一見にしかず。

 世界線が違うんだから、案外平気だったりするかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 と、思っていた時も俺にはありました。

 

 

「きゃああっ」

 

「うおっ、びっくりした」

 

「蘭ちゃん、すごい声」

 最初の仕掛けで俺の左腕の血が止まり。

 

 

 

「ひぃぃッ」

 

「わぶっ!?」

 

「お兄ちゃん大丈夫!?」

 次の仕掛けでアッパーカットを喰らい。

 

 

 

「ぎぃぃやああああああああぁぁぁ」

 

「ちょっ、どこ行くん」

 

「ああ、行っちゃった」

 その次の仕掛けで脱兎のごとく逃げ出してしまった。

 

 

 ……まさかここまでダメだったとは。

 

「…つぐみ」

 

「何?お兄ちゃん」

 

「後で蘭に一緒に謝ろうな」

 

「……うん。そうだね」

 

 

 ああ…顎痛い。つか小二があんな声出していいのかよ。ぎぃぃやああああぁぁって…。断末魔かよ。

 

 

 蘭を追いかけて少し急ぎ目にお化け屋敷を出ると、すぐの壁に蹲っていた。

 

「……蘭ちゃん?」

 

「うぅ…ぐずっ、うぇぇ……」

 

「…あちゃー」

 ボロ泣きである。

 

「あー、蘭。ごめんな?」

 

「ごめんね。蘭ちゃん」

 

「んぐ…ん、うん。怖かった……」

 

「そうだな。怖かったな」

 優しく頭を撫でてやる。そしてできるだけ優しく、柔らかく言う。今回は俺が悪いからな。ひとしきり泣かせてやろう。

 

 にしても、この世界線の蘭もこういう類のものは苦手なのか。というか寧ろ本家より苦手の度合いが大きいかも。午前中に乗った、小さな子供でも乗れるジェットコースターでもキャッキャと笑うつぐみに対して蘭は安全レバーに必死にしがみついていたし。それを後ろの席で動画に納めながらニヤつく俺。何してんだ俺……。

 恐怖系に加えて絶叫系もダメだとなると最早美竹蘭遊園地天敵説が立証され、数年後面白半分で蘭を引きずり回すモカの図がよりますます確実性を帯びてきた。それを後ろでニヤつく俺。だから何やってんだよ俺……。それ不審者じゃねぇかよ。

 

 しばらくして、蘭が泣き止んだので俺達は次のアトラクションへ。

 と言っても、身長制限で乗れないものも多いから乗れるものも少なくなっていた。あとはゴーカートと観覧車くらいか。

 

「二人とも、次は何乗りたい?」

 

「メリーゴーランド!」

 

「ホントつぐみ好きだねそれ」

 もう五回は乗りましたよ。

 

「蘭は?」

 聞くと、蘭はある一点の方向を指さして言った。

 

「あそこ。お父さんとお母さんにおみやげ、かいたい」

 

 指さす先の土産屋には店先から奥まで所狭しに園内グッズが陳列されていて、まるで観光地にある土産屋のような、遊園地には少し似つかわしくない印象だ。

 

「そうだな……。この後の荷物にならない程度には買ってもいいかもな」

 

「…ほんと?」

 上目遣いでそう言う蘭に俺のライフはそろそろゼロになりつつある。ったく、どこでヒネったらあの反骨の赤メッシュになるのだろうか。まあ、その分デレたら一撃必殺ものだけれど。

 

「ああ。つぐみも、何か好きなもの選んできていいぞ」

 

「ほんと?やった!行こ、蘭ちゃん!」

 我先にとつぐみは蘭を引き連れて店の奥まで走って行く。走って転ぶなよー。既に転びそうになってるのが一人連れ回されてるけどなー。

 

 さて俺も、かまちょ(夕弦)お嬢様(こころ)にお土産でも買っていきますかね。

 夕弦はお菓子でいいとして、こころには何買ったげよう。このお面でいいかな?うん。これにしよう。こころ、お面好きそうだし。

 その他にも何かお土産に良さげなものはないかと店内を物色していると、奥から蘭がとてとてとやってきた。

 

「斗真、見てこれ。かわいいでしょ?」

 そう言って蘭が見せてきたのは、この遊園地のマスコットキャラクターのストラップ。亀とパンダを足して二で割ったようなソイツははっきり言ってかわいいとは俺は思えない。

 それなのにこのキャラクター、蘭達だけに限らず子供に異様に人気がある。着ぐるみに撮影例ができちゃうくらいに。

 つか、ホントにかわいいのかコイツ。亀とパンダっつっても甲羅背負った目つきの悪い緑色のパンダに愛嬌なんぞこれっぽっちも感じないんだが。あれなのか?近頃の子供はこういうのもカワイイの範疇なのか?それとも「やーんこれマヂカワイーイー」とか言っておけばなんとかなる的な女子限定コミュニケーションなのか。それって言外に「お前みたいな奴にはこんくらいのがお似合いよ」って言っているのがほとんどらしいね。

 

 …女子って怖い。

 

 

「ああ、そうだな。かわいいのかどうかは知らないけど、欲しいのか?」

 

「え、あ、いや、別にほしいわけじゃ……」

 

 じゃあなんでそれを俺に見せてきたんですかね。別にそれを口に出す訳じゃないんだけれど。ツンデレ見せつけてくれちゃって、かわいいじゃねーかよ。

 

 陳列棚を見ると、そのキャラクターのストラップが三つセットで売られていた。うわ、三つ揃ったら余計可愛くない。ホントにかわいいのか?つぐみの方が何万倍も可愛いぞ。月とすっぽんどころじゃなくて海王星とおたまじゃくし。比較対象間違ってるなこれ。

 

「……まあ、買ってやるよ」

 

「え、ほんと…?」

 

「ああ、ほんとほんと」

 

「ありがとう、斗真」

 言って、ストラップを掲げて微笑む蘭。……あれ、蘭と一緒にソイツを見てるとだんだんと可愛く見えて…来ないな。うん。全然可愛くねぇコイツ。

 

「お兄ちゃーん!これ欲しいな!」

 つぐみが店の奥から戻ってきた。両手いっぱいにお菓子を抱えて。

 

「え、それ全部?」

 

「うん!お父さんとお母さんと夕弦ちゃんとひまりちゃんと、巴ちゃんとモカちゃんとあこちゃんと沙綾ちゃんとはぐみちゃんの分!」

 

 あっれー。この子俺の話聞いていたのかな?荷物にならない程度って言ったつもりだったんだけれどなー。ま、いっか可愛いし。

 

「よしわかった。全部カゴに詰めてレジ持ってくぞ」

 

「わぁい!お兄ちゃんありがとう!」

 

 ……お金足りるかな。

 

 

 

 

 

 

 ▲▽▲▽▲

 

 

 

 

 

 

「わあぁ……キレイ……」

 

「うん…。ほんとにキレイ」

 

 時間は経って夕暮れ時。俺達は夕陽に照らされてオレンジ色に染まる街並みを観覧車という特等席から眺めている。

 何回もこの遊園地に訪れてこの光景を見る俺とつぐみでさえ何回でも目を奪われる景色。

 

「……」

 

 俺とつぐみでそうなんだから、初見の蘭にとっては言葉を失う程の絶景だということは想像にかたくないし、実際この景色を蘭に見せたいが為に今日遊園地に連れてきた。

 

「……また、来たい」

 外に目を向けながら蘭がそう独り言ちた。観覧車はもうすぐ頂点に達しようとしている。

 

「今度は、みんな…。つぐみと、巴と、モカと、ひまりと、みんなでまた行きたい」

 

 絶対にみんなにこの景色を見せる。

 水平線に沈む前に最後の輝きを放つ太陽に照らされた蘭の瞳は、この光景を忘れないように脳に焼き付けるかのようにじっと窓の外を眺めていた。

 

「……そうだな」

 

 だってお前らは、五人揃ってのAftergrow(夕焼け)だもんな。

 

 

 

 

 

 

 ▲▽▲▽▲

 

 

 

 

 

 

「今日はホントにありがとうございます」

 

「いや、いいんだよ。気にしないで。僕もいい気分転換になったからさ」

 

 帰りの車内。俺は死神さんに感謝の言葉を述べた。

 

 いくら中身がアラサーとはいえ、傍から見れば小四の子供。そんな奴と小二の子供二人が遊園地で遊んでいれば周囲から向けられる視線の類のたかが知れている。

 だから、今日ちょうど休みだった死神さんに付き添いを頼んだ。

 実際、チケット売り場では死神さんが料金を払ったし、昼食を食べたテラス席にも一緒に同じテーブルに座ってチュロスを食べてた。

 

 死神さんがいなけりゃお化け屋敷にも入れなかったし、そもそも遊園地にすら年齢的に入れていないから、付いてきてくれて本当に感謝している。

 

 気さくに言う死神さんの顔を街灯が等間隔に照らす。

 その光の一つを追うように後部座席の方を見れば、蘭とつぐみがお土産の袋を抱えて寄り添うようにして眠っている。

 

 ……はっ!いかんいかん危うく寝顔の可愛さに浄化されて消えてしまう所だった。それって俺が不純物100%ででてきているって事ですね。どんだけ不純なんだよ。

 

「それにしても、二人とも今日はずっとはしゃいでいたね」

 俺の表情筋が仕事していないのを見て死神さんが横合いにそう言ってきた。ちゃんと前見て運転しましょうね。

 

「……まあ、蘭は遊園地が初めてだったし、つぐみもいつもは家族とだったんで友達と来るのは無かったですからね」

 

 俺が初めて遊園地行ったのはいつだったか……。

 

 ああ、思いだした。確か幼稚園の年長の時の遠足で行ったのが最初だったっけ。そん時知らないうちに一人で園外に出ちゃってて警察沙汰一歩手前だったんだよなぁ。それで家で母さんにめっちゃ怒られて、泣きながら抱きつかれたっけ。「無事でよかった」って。…にしてもよく覚えてたなぁ。四半世紀も前の事なのに。

 

 蘭も、人生初のジェットコースターだったり人生初のお化け屋敷だったり。

 

 そうやって、たくさんの初めてを経験して、成長していくのだろう。

 

 誰しもいつかは必ず成長して大人になっていく。

 壁にぶつかる度に迷って、悩んで、選択して、乗り越えたり、回り道したり。

 

 そうやって、皆大人になる。

 

 選んで、妥協して、捨てて、諦めて。

 

 そうやって、“子供”を終わらせる。

 

 この世界、何につけても終わりというものはやってくる。夕陽だって沈むし観覧車だって一周したら終わりだ。

 

 それでも、終わって、また始まる何かだってある。

 

 太陽はまた朝になったら昇るし、観覧車だって一周したらまた次の客を乗せて一周する。

 

 人だって、どこかで誰かが死ねばどこかで誰かが生まれる。

 

 

 ──いつか。

 

 

 いつか。つぐみや、蘭が大人になってこの日々が遥か彼方の思い出になった時に。

 

 ──そこに俺は、俺という本来いるはずのない存在(イレギュラー)はいるのだろうか。

 

 日も沈み、陽光の残滓が夜空の紺色と混ざり合う。

 俺の問いかけはそんな黄昏時の空に吸い込まれるように消えていき、答える人は誰もいなかった。




11話でした。

この後、車内で交わされた会話はおよそ小学生とは思えない中々にディープな内容だったそうです。

さてここで、高評価をくださった読書様の紹介とささやかながらの謝辞をば。

☆10:明太子( ゚∀゚)o彡° 様
☆9:Notanekakiって人 様
☆8:ワッタン 様

その他、お気に入り登録、感想をくださった読書様の皆々様に最大限の感謝を。

ではまた12話で。
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