転生してみませんか?   作:RyuRyu(元sonicover)

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こんにちは。

祝、ガルパ二周年。どうもRyuRyuです。

今回、文字数がかさみすぎて一話でまとまりきらなかったので、二話か三話に分けてお送りします。なぜこうなったのか、作者にもわかりません。

では、本編です。


12話 ちょこれいと・でぃすこ

 二月十四日。

 

 バレンタインデー。

 

 その昔、ローマ皇帝の下、恋愛が禁止されていた時代。秘密裏にカップル達を匿ったとされる聖ウァレンティヌスが処刑された日。

 

 そこから、転じて恋人達の愛の誓い日として西ヨーロッパで祝われたのがバレンタインデー、即ち恋人達の日の始まり。

 

 本来は、聖ウァレンティヌスを悼み、恋人達が自らの愛を再確認する日なのだが、日本では十数年前から女性が想い人にチョコレートを送るという独自の進化を遂げて現在に至る。

 

 たかがお菓子会社の経営戦略が日本に於けるバレンタインデー文化を著しく変貌させたのだが、世の若者はこれに便乗して世間が妙に色めき立つ。

 

 色恋盛んなティーンエイジャーの男子はワンチャンを狙っていつもは付けないヘアワックスを付けてオクターブ低い声で「おはよう。荷物、持つよ」と意中の女子に話しかける。その他言動の節々に「俺、今フリーだぜ」的なニュアンスをチラつかせて女子にアピールをする。

 女子からすれば、ワックスで頭ベタベタな男子が高いのか低いのかわからない変声期ボイスで朝からいきなり話しかけられるという薄ら寒い出来事でしかないのだが。

 

 ……別に俺の体験談とかじゃないからな。あの時松村さん本気でドン引いてたなぁ、とか思ってないんだからねっ。

 

 

 

 

 

 

 閑話休題(あれ、目から汗が)

 

 

 

 

 

 

 ともあれ、非リアの怨嗟の声が町中のBGMになるバレンタインデーの今日。俺の通う小学校でもワンチャンを狙う男子と義理本命ごちゃ混ぜにチョコをばら撒く女子が程度の低い心理戦を繰り広げていた。

 

「羽沢君、これ受け取ってくれるかな?」

 

「⋯⋯あ、うん。ありがとう。…これ職員室に持ってけばいいのか?」

 

「違うよ!?これチョコだよ!ノートじゃないよ!?」

 

 

 

────

 

 

──

 

 

 

「斗真君。はい、チョコあげる」

 

「うん。どういたしまして。ホワイトデーにはちゃんと返すよ」

 

「⋯⋯なぁ、どこ向いてんだ斗真。それ、俺の雑巾なんだが」

 

 

 

────

 

 

 

──

 

 

 

 

「羽沢君?どうしたの、何かあった?」

 

「ん?ああ、何でもないよ。⋯ごめん。ちょっと飛び降りてくる」

 

「羽沢君!?」

 

 クラスメイトが窓に向かう俺を必死で止めようとしてくる。やめろぉ!離せぇ!

 

 

 

 

 

 

 

 ▲▽▲▽▲

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 放課後、帰りの会が終わった途端に教室に飛び込んできた巴と蘭に引きずられてやってきたのは俺の部屋。まるでゴミを見るような目で見降ろされております。

 

「さて、話をきこうじゃあないか」

 

「⋯誰だお前」

 

「誰だとは失礼な~。モカちゃんはモカちゃんですぞ~」

 

「話をきくまではかえさないからね!」

 

 ベットの上に巴と蘭、背後にはひまりとモカが正座の俺を取り囲む。見るからにしかめっ面な蘭と巴、むっすりむくれてるひまりにニヤニヤして何を考えているのかわからないモカ。これぞまさに四面楚歌。つかひまり、ここ俺の部屋だから。返す返さない関係なくてここ俺の部屋だから。

 

「とにかく、話して。なんでつぐみがあんなに元気なかったのか」

 

 でしょうね。蘭ってばつぐみ大好きだもんね。いいねぇ、麗しき友情。良きかな良きかな。⋯⋯はい。すみません話します。

 

 昨夜。

 

 風呂上がりに冷凍庫に入っていたアイスを食べながらテレビを見ていた時の事。

 

「あれ?⋯ねぇお母さん、冷凍庫に入ってたアイス知らない?」

 俺の後に風呂に入ってたつぐみが母さんにそんな事を尋ねていた。

 

「え?知らないわよ」

 

 母さんは洗い物の手を止めてつぐみの問いかけに答えた。

 

 ⋯そういえば、冷凍庫開いたときアイスは一個しか入っていなかったような。

 

「うーん⋯お兄ちゃんは知って──」

 

 や っ て し ま っ た。

 

「⋯⋯お兄ちゃん」

既に空になったアイスのカップを見つけて、ゆらり、ゆらりと近づいてきた。

 

「⋯これ、つぐみのだったのか」

 

「またお兄ちゃんがわたしのものかってに食べたー!昨日お母さんに買ってもらったのにぃ!」

カッと目を見開いたかと思うと、大声でまくし立てるようにひと息で言い切った。

 

「悪かったって」

 

「このまえもお兄ちゃんかってにわたしのプリン食べてたじゃん!」

 

「いや、だから悪かったって」

 こうなったつぐみはもう止まらず、落ち着くまでずっと宥め続けるか、放っておくかの二択しかない。ツグりすぎるのも考え物だ。

 

「そうやっていっつもいっつもわたしのものばっかり食べて!バカどろぼう!」

 

「…バカとは聞き捨てならないな。そういうのは思っても言ったらダメなんだぞ。まぁとにかく落ち着けって」

 宥める選択肢をとった俺はつぐみの神経を逆撫でさせないように諭すように言う。つぐみだって先週俺の買ったショートケーキを勝手に食べたクセにとかは思ってても言わない。

 

「うるさい!そうやってお兄ちゃんぶって!どろぼうのくせに……もうしらない!」

 

 いや…俺お前の兄ちゃんなんだけどなぁ。どろぼうではないんだよなぁ。

 

 取り付く島もないつぐみはプンスカふくれたままリビングを出ていった。

 

「お前後でつぐみに謝りに行けよ」

 

「だよなぁ……」

 少し時間を置いてつぐみの頭冷やしてからの方がいいよね。俺も悪いっていうか俺が100%悪いからな。

 一緒にテレビを見ていた父さんに言われてため息混じりに頷いた。

 

 

 しばらく経ってつぐみに謝りに階段を上ってつぐみの部屋へ。

 いつもは寝ているか寝ていないかの時間だけれど、暗い廊下に部屋の灯りがドアの隙間から漏れ出ているのを見て、よかった、まだ起きてたと少しだけ胸を撫で下ろした。

 

 これで円満に収まればいいんだけれど。

 

 

 

 

 

 とまあ、フラグを立てたらしっかり回収してまうのが斗真クオリティ。

 

 

「つぐみーちょっといいか?」

 

「えっ、お兄ちゃん!?ちょっ──」

 

 特にノックもせずにドアを開けて部屋に入ると、小二の割には落ち着いた雰囲気の部屋の主がベッド横のローテーブルで俺を見て固まっていた。

 

「さっきは勝手にアイス食って悪かっ……」

 

 謝罪の言葉を陳述している最中、ローテーブルの方に目を向けると、少し歪なハートの形をしたホワイトチョコレートと、その横のパッケージにはつぐみの可愛らしい字で“お兄ちゃんへ”、“いつもありがとう”と書かれてあった。

 

 ……そういえば、明日はバレンタインデーだった。

 腹の底から迫りくる万感の想い。それが嗚咽に変わる前にどうにか押さえ込んで、言う。

 

「つぐみ、それ……」

 

 俺の言わんとしている事を察したつぐみはバッ、とテーブルをみて、カァァ、とその顔を赤くさせていく。羞恥七割怒り三割といったところか。

 

「わ、わあああぁぁあぁ!!」

 

 耳まで真っ赤のつぐみは我を忘れたかのように大きな声を上げながら手元にあったハサミを投げてきた。

 

 

 

 ……おわああああハサミィィィ!?

 

 

 

「うおぉう!?」

 どうにか間一髪でヘッドショット一直線だったハサミを避けてもう一度つぐみを見やると、どうやら羞恥を怒りに全振りしたみたいで、まるでハサミを投げるのも当たり前かのようにキッ、と俺を睨みつけていた。

 

「出てって!お兄ちゃんのバカ!大っ嫌い!」

 

 …………

 

 ……

 

 …え?

 

 

 大……嫌い……?

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 翌日。というか今日。

 

 

 ぶっちゃけ昨夜から今までの記憶が無い。

 

 つぐみに「大嫌い」と言われてすぐ、俺の体はまるで鉛にでもなったかのように重くなって廊下の壁にもたれ掛かるようにして座り込んだ所まではかろうじて覚えている。でも、その後俺が何したか全く記憶にない。いつの間にか寝てていつの間にか朝起きていた。

 

 

 ショック受けすぎだろ……。

 大概の事は一晩寝たら忘れるんだけれど、今回ばかりは昨日のつぐみの言葉が重りになって引きずっていた。

 …だって、初めてなんだもん。「大嫌い」って言われたの。さすがにおじさん傷ついちゃったよ。

 

 それでも今日はバレンタインデー。

 つぐみも機嫌を直して真心こもったチョコレートを笑顔のつぐみから受け取りたい。そして俺は泣きながら受け取りたい。

 

 淡い一縷の望みを持ってリビングへ降りると、既につぐみが席について朝ごはんを食べていた。よ、よし。まずは朝の挨拶から。爽やかな笑顔で……。

 

「お、おはよう。つぐみ」

 

「……」

 

 ……あ、あれ。つぐみちゃん?

 

「……」

 

 え……む、無視……?

 

「な、なぁ、つぐみ……?」

 

「ごちそうさま。お母さん、今日わたし日直だから先いくね」

 

 まるで俺をいないかのようにつぐみはランドセルをひっかけてリビングを後にした。

 

「ちょ、待てってつぐみ!」

 

 ドタドタと足音荒く玄関に向かうつぐみの肩を掴もうと手を出すも、あえなく空振りに終わって、つぐみは家を出ていってしまった。

 

「……」

 

「何、あんた達まだ仲直りできてなかったの」

 

 母さんにそう言われ、返す言葉も無い俺は行く宛も無く宙に浮いていた右手を頭に持っていき、乱暴にボリボリと掻いた。

 

 ……。

 

 ……やばい。なんかもう、死にたい。




後編へ続く(キートン山田風)。
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