転生してみませんか?   作:RyuRyu(元sonicover)

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こんにちは。

ひとまず、この話でバレンタインデー回は終わりです。

いや、あっても無くてもいいような話なんですけどね。

まあ、いいや。本編どぞ。


14話 きょうだい

 後日談、というか今回のオチ。

 

 次の日、学校で夕弦に昨日の放課後につぐみと何があったのか尋ねてみた。

 

「一昨日の夜につぐみから連絡が来てね。お兄ちゃんとケンカしちゃったって」

 

 曰く、風呂の後のアイスで一悶着あったと。

 

 曰く、バレンタインのチョコで謝ろうと思ったら俺が入ってきてびっくりしてハサミを投げてしまったと。

 

 曰く、俺に見つかって恥ずかしくなってつい強い口調になったと。

 

 

 

 ……改めて聞くとやっぱ俺が100%悪いな。

 

 

 

「それで、私は『明日の朝にちゃんと謝りな』とは言ったんだけど」

 

「…朝まで引きずって照れ隠しで俺に素っ気ない態度をとっちゃった、と」

 

 確かに、昨日の朝は心做しかつぐみの顔が紅かった気がする。俺も昨日の朝はやっぱり引きずっててその時は気がつかなかった。

 

「うん。それで昨日つぐみに相談されて、斗真を呼び出して謝ろうって事になって」

 

「そこだよ。なんでそこで俺を呼びたしたん?別に家でもよかったと思うんだけど」

 

「や、だってここまでの兄妹ケンカは初めてって聞いたし、絶対斗真も立ち直れなくなってて、家だともっと拗れるでしょ」

 

「……おっしゃる通りで」

 

「だから、無理矢理にでも家から引きずり出して他人の目があった方がいいでしょ」

 まるでメンタリストのように俺の思考を丸読みされて、驚きつつも俺もまだ兄としてまだまだだなとも思った。夕弦に論破されるようじゃあ、ね。

 

「……さいで」

 

「でも、今更珍しいよ。ケンカしない兄妹なんて」

 

「そうなのか?」

 

 純粋な疑問だったのに、夕弦には呆れたような目で見られた。え、なんで?

 

「私とひまりなんて週一でケンカしてるよ。ひまりがキープしていたプリンを私が食べたり、私の服をひまりが勝手に着て遊び出て泥だらけになって帰ってきたり」

 

「そんなにケンカして、拗れたらどうしようとか、どうやって仲直りすればいいのかとかないのか?」

 

「んー、兄弟姉妹ってそういうもんじゃない?」

 

「……どういうことだ?」

 

 夕弦のそれは質問に対する答えになっておらず、怪訝になって聞く。

 

 ケンカしたら仲直りするしないに関わらず仲が拗れてそこで関係終了が普通なんじゃないのか。ソースは前世の俺。そうやってどんどん友達が減っていきましたとさ。

 

「ケンカするほど仲がいいっていうけどさ、結局は両親の血を分け合った間柄な訳なんだから、最終的にはそこに落ち着くんだよね。だからごめんねも言い合わずにいつの間にか仲直りしてるし、ケンカしたその日の週末には一緒に駅前のフルーツパーラーに行ったり」

 

 まあ、ほとんどは上の私が妥協しての結果なんだけどね、と夕弦は苦笑いで付け足した。

 

「だからさ、斗真とつぐみはこれを機にもうちょっと向き合ってもいいんじゃない?」

 

「向き合う、か…」

 

「そ。もっとケンカしろとは言わないけどさ、遠慮しなくてもいいと思う」

 

 夕弦の言葉は、どこか腑に落ちる所があった。

 

 “きょうだい”は一番近い他人、とはよく言ったもので、他人なら他人なりに距離感の置き方があって、俺もつぐみに対してはあくまで一番近い他人という認識をシスコンというオブラートに包んで接していた。

 だから、時々イタいとは思われたし自分でも思ったけれど、それはこの世界で過ごす()()の一つとしてある種諦めに似た割り切りでなんとかなっていた。

 

「……そうかもな」

 それでも、昨日の一件で、変われたらいいなと思っている。何をどう変えていけばいいのかは、まだわからないけれど。

 新しい、羽沢斗真()の『いつも通り』が作れたら、いいなと思う。

 

「まあ、やるだけやってみるさ」

 改めて、俺の事幼馴染みはよく見ているな、と思った。

 

「…何年斗真の幼馴染みやってると思ってるのよ」

 

「ちょっと?勝手に俺の思考読まないで。何、エスパーなの?」

 

「それより、昨日の斗真の顔が気持ち悪い位に優しかったんだけど、どんな気持ち悪い事考えてたの?」

 うん。そういうストレートな物言いは嫌いじゃないしもう慣れっこなんだけれど、後でちょっとトイレで落ち込んじゃうから辞めておこうか。

 

「あれはただ…つぐみが可愛かっただけで」

 

「はいダウト」

 

「うぐ」

 

「だから何年アンタの幼馴染みやってると思ってるのよ。嘘なんてすぐわかるわよ…で、どんなおぞましい事考えてたの?」

 くっそこの野郎。わかってて聞いてるクセに。目がニヤついてんだよちくしょう。…なんか恥ずいんだよ、わかれよ。

 

「……つぐみと、お前らと、もっと真っ直ぐ向き合わなきゃって思ったんだよ言わせんな恥ずかしい」

 

「はい。よく言えました」

 

「だから頭撫でるなニヤつくなガキ扱いするな」

 ひとしきり俺の頭を撫で回して満足したのか柔らかい表情になって手を離す。

 

「……それで、俺をハブいて仲直り大作戦を仕組んだ訳だな」

 照れ隠しで少しトゲのあるセリフを吐いた俺だったけれど、それをもお見通しの夕弦はニコニコ、ニコニコと俺をまるで駄々をこねる弟を微笑ましく見る様に見つめる。……調子狂うなぁ。

 

「そういうこと。でも、それでよかったでしょ?つぐみとは仲直りできて斗真は大好きな妹からチョコレート貰って」

 

「チョコレート……」

 言われて思い出す。パッケージの上にあったメッセージカード。そこに書かれたもう一つのメッセージ。

 あの一言があったからこそ、俺は大事な事に気が付くことができた。

 

「…なぁ、つぐみに貰ったカードに書いてあった言葉って」

 聞くと、夕弦は席を立ち上がって、

「さあ、どうだろうね」

 言い残して、教室を出ていった。

 

 まあ、いいか。今度聞けば。

 

 夕弦が出ていった先のドアから目線を切って、窓の外の冬空を仰ぎ見る。妙に寒々しく感じて、少し身震いした。

 

 二月の寒空は少し体に堪える。

 そんな時だからこそのバレンタインデーというイベントで互いに関わりを持って支え合うのかもしれない。

 

 たかがバレンタインデー、されどバレンタインデー。

 

 ……たまには、こういう日があってもいいのかもしれない。

 

 多分いつかは笑い話のネタになるような、そんなお話。

 

 春にはまだ早い、そう感じさせる抜けるような青空を見てそんな事を思った。




という事で、斗真君の自意識過剰バレンタイン回でした。

本当は何気ないバレンタインデーの一日を描こうとしたつもりだったんですけど、なんかいろいろと飛躍してしまいました。

まあ、これはこれで結果オーライって事で。何がオーライなのかはわかりません。

ではまた15話で。

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