転生してみませんか?   作:RyuRyu(元sonicover)

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こんにちは。

カレーはチーズと福神漬けがなければ始まらない、どうもRyuRyuです。

断面集二つ目、今回も斗真君達の何気ない日常をお楽しみください。


18.5話 短編と断面って似てるから入れ替えてもバレない説。

『秘密基地ってかっこいいよね!』

 

 それは小学三年の冬の日だった。

 

 寒い中でも体を動かした方がいいという夕弦の謎理論で、近所のスポセンにバスケをしに行こうとしていた。けれど、スポセンの場所を知らない癖に一人でどこかにつったか走っていってしまったこころを夕弦とつぐみと探していた時の事。

 

「ねえお兄ちゃん!」

 

「ん? どうしたつぐみ。こころ見つけたか?」

 

「そうかもしれない! よくわかんないけど、あっちの方になんかピカッてなったの!」

 

「もうちょい日本語しっかりしような」

 まあ、小一だし可愛いから許すけれど。

 

 つぐみの指さす先には緑、緑、時々茶色の常緑樹の鬱蒼と茂った雑木林が見えるだけ。

 流石にぶっとんだこころでもここまでは来ないだろうとは思ったけれど、念には念をと来てみた学校の裏山。スポセンとは真反対の方角である。

 

 仮につぐみが見たのがホントにこころなら俺は今一度弦巻こころという人間について本気で考えなくてはいけない。

 そんな事を考えていると、夕弦が横でとんでもない事を口にした。

「でも、こっちの方って……この先って確か崖じゃなかったっけ?」

 

 …………。

 

「え……」

 つぐみの表情が固まり、

「は……?」

 俺は一瞬夕弦の言葉が理解できずに、

「あ……」

 言った夕弦本人まで血の気が引いたような顔色になる。

 

「……お前らはそのままここにいて。俺が様子見てくる」

 

「わかった」

 

「即答」

 

「や、だって三人で行ったら絶対はぐれるよここ」

 

「それもそうでした」

 

「きをつけてね、お兄ちゃん!」

 

「待ってろつぐみ。必ず生きて帰ってくるからな。アイルビーバック」

 つぐみがいれば、もう何も怖くない……! 

 

 俺は盛大なフラグを建て、こころを探しに雑木林に一歩を踏み出した……! 

 

 

 …………

 

 

 ……

 

 

 

「うおあああぁぁぁ一ーー!!」

 

 はい。フラグ見事に回収。

 

 何せ足場が悪くて薄暗い。崖が思ったより低くて助かった。

 

 幸いな事にこころはいなかった。その代わり不法投棄の粗大ゴミの中に姿見があった。

 多分つぐみは鏡に差し込んだ太陽の光をこころの金髪と勘違いしたんだろう。

 

 若干肩透かしを喰らった気分で戻ろうとした時に木の根に足を取られてそのまま滑り落ちてしまった。ホントにこころがここにいなくてよかった。

 

「……っ()……」

 

 割と派手に打ち付けた腰に手をやりながら辺りを見回す。どこか登れるような所があればいいんだけれど。

 

「……ん?」

 

 すると、木々の隙間から少し開けた所があるのが確認できた。

 

 試しに行ってみる。なんかしらあってほしい。いや、別になくてもいいけれど。

 

「……なんだこれ」

 

 何だか不自然に開けた荒れ地には、蔦に覆われ、誰にも使われていないようなコンクリート製の小屋が、ボロボロのフェンスで囲まれていた。

 

 フェンスに近づいても、人の気配が全くしない。

 

 ……やっべ。興奮してきた。オラわくわくすっぞ。

 

 フェンスの隙間に身を捩らせて中に入る。体が小さい奴の特権。

 

 建物は、ドア一つと他の三辺に磨りガラスの窓が一つずつ。幸運なのかどうかは知らないけれど、ドアにはカギが無かった。多分、フェンスがかつては割と厳重そうな印象のフェンスだったから小屋の方はカギが必要なかったんだろう。まあ、そこら辺はいいとして。

 

 蝶番の軋む音と共にドアを開くと、まるで冷蔵庫みたいな冷気が足元を流れてきて、十分に厚着してるのにも関わらず体が震える。

 小屋の中は閑散とし、何より生活感が微塵も感じられなかった。もしかしたら、と考えていたけれど、杞憂のようだ。

 そうなるともう、男としては垂涎ものの夢にまで見た秘密基地にしか、俺には見えなかった。

 

 早速小屋を出て、夕弦とつぐみの下へ。その時にはもう、(したた)か打ちつけた腰も、崖を登る時に擦りむいた掌の痛みも、男のロマンに負けてしまっていた。

 

 

 

 という事で後日。

 ちなみにこころはなぜか俺ん家で見つかりました。父さんからコーヒーをご馳走になっていた所を黒服さんが見つけたらしいです。やはり俺は弦巻こころについて今一度考えなくてはならない。

 

 そして、呼びたしましたるはこの人。

 

「いやはや、これは凄いな。よく見つけたね」

 そう、ひょっとしたら俺より目を輝かせている田中さん(死神さん)

 

 こころん家から持ってきた縄ばしごを崖下まで下ろし、ゆっくりと降りていく。改めて荒れ地を詳しく見渡すと、東側と北側は崖。西、南側は背の高い針葉樹で囲まれており、荒れ地自体、空からでしか確認できないようになっている。控えめに言って最高かよ。

 

「ここを秘密基地にしたくて、とりあえずここまでの道の整備と荒れ地の開拓をしたいです」

 

「やっぱりそうだよね〜。男たるもの、秘密基地には憧れるよねぇ」

 しみじみと、いつかを思いだし噛み締めるように言う死神さん。ていうか、アンタ死神だろ。

 

「当たり前じゃないですか。という事で、道を通すのを手伝って欲しいんですけど……」

 そこまで言うと、死神さんは人差し指を立ててチッチッチッと顔の前で横移動。なんだかイラッてきた。

 

「労働に対する報酬がなきゃね」

 

「……やまぶきベーカリー冬のパン祭り人気のパン十点セット」

 

「よし乗った。それじゃあ早速始めようか」

 

 言うや否や、どこからか持ってきたナタで遮る細木は切り倒し、伸びた雑草を踏み固め、一時間もしないうちに荒れ地へ続く山道を入口のカモフラージュ付きで作ってしまった。ぶっちゃけ言えばやまぶきベーカリー冬のパン祭り人気のパン十点セットよりも遥かに高い労働力を提供してくれて驚いています。

 

 そこからは早かった。

 秘密基地という言葉にまず巴とあこが釣れ、そこから芋づる式にイツメン全員が一つの秘密を共有する事になった。それぞれで手分けをし、荒れ地を開拓し、小屋の中に必要物資を持ち込み、俺達の“基地”が完成するまで二週間はかからなかった。

 

 

 

 

 

 

『お兄さん! ついに俺の出番がきたっス!』

 

 こんにちはっす。俺の名前は大崎健太郎、小学三年生っす。お母さんや友達からはケンだったりケンちゃんって呼ばれてます。

 

 好きな食べ物はカレー、嫌いな食べ物はピーマン……ってそういうのは置いといてっすね、俺は今、ある人の所へ向かっているんです。

 

 そのある人というのは、俺の一番尊敬する人っす。その人は俺の二つ上の小学五年生なんすけど、とっても大人っぽくて、実際に大人の人相手にも全くものおじ? しない人なんすよ。

 

 この前も友達の陰口を言う大人の人を「黙れ」の一言で黙らせたり、とにかくカッコイイんすよ! 

 それに、その友達ともその人のお陰で仲良くなれたりして、カッコよくて優しくて、本当に尊敬する人っす! 

 

 あ、そんな事考えているうちにその人の所に着きましたっす。その人のお父さんが喫茶店をやっていて、その人はここで店のお手伝いをしているんすけど、今も多分お手伝い中だと思うっす。

 

 だから俺は店のドアノブに手をかけると、元気よく扉を開きました……! 

 

「斗真お兄さん! ついに俺の出番がきたっス!」

 

「おうケンちゃん。唐突なタイトル回収ありがとな」

 俺の尊敬する人、羽沢斗真さんはなんだか良くわからない事を言って俺を迎えてくれました。時々そういう時が斗真お兄さんにはあるんすけど、そういう事を恥ずかしげも無く言う辺り、ホントに尊敬するっす。

 え、俺も割と変な事言ってる? ははは、そんな事無いじゃないですかー。

 

「……んで、何しに来たんだ。ほれ、ブラック」

 

「そうっす。俺お兄さんに用事があるんすよ。……それでお兄さん、ガムシロありますか?」

 

「そうか。あと三十分もすれば休憩に入るからそれまで待ってろ」

 

「わかりましたっす。それとお兄さん、ガムシロとミルクくれますか?」

 

「あ、はーい。……呼ばれたからまた後でな」

 

「お兄さん? え、スルーっすか? ガムシロは? ミルクは?」

 俺まだブラックなんて飲めないっすよ。もしかしてあれっすか? お兄さんがこの前言ってた好きの裏返しってヤツっすか? やだなぁお兄さんったら。

 

「おい、何ニヤニヤしてんだ気持ち悪ぃぞ。……後で持ってくるから」

 そう言うと、斗真お兄さんは他のテーブルに注文を取りに行きました。少しして、お兄さんがガムシロとミルクと一緒にサービスだと言ってチーズケーキを出してくれました。そういうツンデレな所、俺嫌いじゃないっすよ! 

 

 

「……で、なんの用だ?」

 三十分後、休憩に入り、エプロンを脱いだお兄さんがブラックコーヒー片手に俺の前に座って聞いてきました。

 

「実はっすね……その……」

 うぅ……。いざ相談となると少し緊張しますね……。

 ぶっちゃけホントはお兄さんに相談しない方がいいとは思うっすけど……。

 

「何モジモジしてんだよ。顔赤らめんな気持ち悪ぃ」

 お兄さんが急かすように聞いてくるっすけど、俺ってそんなに気持ち悪いっすかね……。

 でも、こんな事を話せるのも俺が尊敬するお兄さんだからこそっす。覚悟を決めて話します。

 

「……弦巻さんを今度の日曜日に水族館に誘いたいんす。どうやって誘えばいいんすかね……」

 俺の言葉にそれまで気だるげにコーヒーを飲んでいたお兄さんがいきなりむせたっす。何やってんすかこっちにコーヒー飛ばさないで欲しいっす。あー、シミになった……。

 

「……え、お前今なんつった」

 

「いや、だから弦巻さんを週末に水族館に誘いたいんすよ」

 

「……えーと、つまりお前はこころとデートがしたいと」

 

「で、デートなんてそんな! ただこの前弦巻さんがサメを見たいって言ってたんで見せてあげたいと思っただけっすよ!」

 

「ほーん。で、お前はこころの事好きなのか?」

 

「すっ、すすす好きだなんて、そ、そんな事無いわけ無いわけ無いじゃないっすか!」

 

「結局どっちなんだよ……」

 こめかみに手を当ててやれやれという風にお兄さんは首を振ります。でもホントにその辺りはわからないっす。俺が弦巻さんの事が好きだとか、まだあまりそれがどういう事なのか、俺にはわからないっす。

 

「とにかく、どうやって誘えばいいっスかね……」

 ぶっちゃけて言うと、こうは言っているけど弦巻さんは俺なんかには構っていられないと思っています。一緒に鬼ごっこをしてもすぐ捕まってしまうし、弦巻さんの遊び相手にもなっていない気がするっす。

 そんな事を考えていると、お兄さんはスマホを取り出すと誰かに電話をかけたみたいっす。

 

「……あ、田中さん? 今どこにいますか?」

 田中さんの名前は俺も聞いた事があるっす。確か弦巻さんのお家の執事さんだった気がします。お兄さんは一言二言やり取りした後、俺に携帯を差し出してきたっす。

 

「……もしもし」

 よく分からずに受け取ってスマホを耳に当てると、底抜けに明るい声が響いてきました。

 

「あら、ケンタローじゃない。どうしたのかしら?」

 

「つ、弦巻さん!?」

 

「ええ、そうだけど。何かあったの?」

 

「え、えーと……」

 突然の事にしどろもどろしていると、目の前でコーヒーを飲むお兄さんがいたずらっぽく笑っています。この人、楽しんでやがります。

 電話口で弦巻さんが不思議そうな声を出しています。

 

「あ、あの、この前弦巻さんサメが見たいって言ってたよね……?」

 

「そういえばそうだったわね」

 

「だったらさ、俺と一緒に──」

 いよいよ弦巻さんにお誘いをかけられる……! そう思った瞬間、俺に被せるように弦巻さんが衝撃発言をするのでした。

 

「それなら、この前パパが買ってくれたわ。すごく大きいのよ! ……あ、そうだわ! ケンタローもウチに見に来ればいいのよ!」

 

「え、あの、……え?」

 

「……? どうかしたかしら?」

 

「あ、いや、なんでもないよ」

 

「なら決まりね! 今から迎えに行くわね。それじゃあ」

 弦巻さんはそう言い残すと一方的に電話を切ってしまいました。弦巻さんがもたらす衝撃的な展開には慣れたとはいえ、さすがに今回は一方的すぎて呆然としていると向かいでお兄さんが必死になって笑いを堪えてます。

 それにしても、まるでおもちゃのようにサメを買い与える弦巻家。なんでもアリすぎてもう何が何だか分からなくなってきたっす。

 

 

 

 数分後、ドアが開け放たれたかと思えば弦巻さんが黒服さん達を連れてホントに迎えに来た。

 

「ケンタロー! 来たわよ!」

 

「よ、こころ。店の中では静かにな」

 

「あら、斗真じゃない。そうだわ! 斗真もあたしのウチにいらっしゃい!」

 

「聞いちゃいねぇ……悪いけど、俺ここの手伝いで手が離せないからまた今度にするよ」

 

「そうなのね、わかったわ。それじゃ、行くわよケンタロー!」

 少しだけ残念そうな表情から一転、太陽のような明るさで弦巻さんは俺の腕を掴んで引き上げてきました。

 

「えっ、ちょ。待っ……」

 同い年の男子を軽々持ち上げた弦巻さんの怪力についてつっこむ余裕も無く、弦巻さんにまさに小脇に抱えられて俺は羽沢珈琲店を後にした。去り際、嵐のような一幕に呆気に取られた他の客とお腹を抱えて爆笑する斗真お兄さんが見えました。……お兄さん、ドナドナってどういう意味っすか?

 

 

 

 ホオジロザメと言えば、言わずと知れた人喰いザメの代表格なんすけど、実際は僅かな血の匂いを辿って獲物を捕まえるだけであって、決して所構わず無差別的に喰い散らかすわけじゃないらしいっす。斗真お兄さんがこの前教えてくれたっす。

 そんなホオジロザメが、今俺の目の前を悠然と泳いでいるっす。どこにいるのかと問われれば、弦巻さんの家の地下。弦巻さんがサメが見たいと言っただけでわざわざこの地下室を作ったそう。一体どうやって捕まえたのか全くわからないっすけど、なんだかそのつぶらな瞳が可愛らしく感じてきたっす。

 

 

 弦巻こころさんは俺と同じクラスなんすけど、その破天荒な性格と斗真お兄さんの言う財閥? とやらの一人娘という事で周り、というより子供の親から敬遠されてクラスでも浮いた存在になっていました。確かに、俺のお母さんも弦巻さんにあまり関わらせないように俺にしていたのかなと今になって思うっす。小一の時に斗真お兄さんにあの公園で出会わなければ、と思うと、やっぱり俺はお兄さんの事を尊敬せざるを得ないっす。

 

「どうかしら? ホオジロザメって言うらしいわよ」

 俺の隣で一緒に水槽を見る弦巻さんが自慢気に言ってきます。

 もちろん最初の方はとても大変でした。予想もしない所から予想もしない言動をする弦巻さんに、ホントに仲良くなれるのかと不安にもなりました。でも、大人に対しても決して負けない、むしろ勝っちゃうようなお兄さんを見て、俺もああなりたい、あんなかっこいい人になりたいと思うと、自然とその不安も無くなって次第に弦巻さんの考える事が少しだけっすけどわかってくるようになったっす。

 

「ケンタロー? どうしたの?」

 

「あ、ああ。いや。なんでもないよ」

 これは弦巻さんと話すようになってわかった事なんすけど、弦巻さんは他人の心の動きに気付くのがとても上手いっす。もっと言えば、弦巻さんには嘘が通じないっす。俺が嘘をつくのが苦手なのかもしれないっていうのもあるかもしれないっすけど、斗真お兄さんも同じような事を言っていたっす。

 

「ただ、サメがキレイだなって思っただけで」

 

「そう。それはよかったわ!」

 そう言って笑う弦巻さんは、ホントに太陽みたいに輝いていて、自然に俺まで笑ってしまいます。そして、その笑顔をもっと見ていたいって思う俺もいる事は確かっす。

 これが斗真お兄さんの言う“好き”って事なのかはよくわからないっすけど、今日、家に帰ったら考えてみようと思うっす。

 

 最初は水族館のつもりだったっすけど、これもこれで悪くないなって思ったっす。

 

 

 

 

 

 

『誰この子』

 

 僕が羽沢斗真君のサポートとして現世に送られてきて早数年が経過した。

 その間も斗真君はすくすくと成長し、つい先日保育園を無事卒園した。当初予期していた精神年齢と実年齢とのギャップに対する戸惑いも割と早くに克服して、読書好きの大人しい子という印象を抱かせた。

 

 そんなある日。コンビニの夜勤アルバイトを終え、消費期限切れが近いコンビニ弁当と缶ビールの入ったビニール袋を片手に一人ブラブラと家路についていた。

 商店街の人達には、僕は近所の大学生という事になっている。今現在は春休みの為、バイトの頻度を増やしていた。

 

 桜舞う三月。ふと思った僕は、少し寄り道して近くの公園に足を運んでみた。

 

「おぉ……これはすごいな」

 

 公園に入り目についたのは、園内を取り囲むように咲き誇る満開の桜、桜、桜。午前中の澄んだ空気の中、陽光に照らされた薄桃色の花びらがゆらゆらと春の暖かい風に揺れている。

 朝の少し早い時間帯なのか園内には人影が見当たらず、花見にはもってこいの環境。手頃なベンチに腰掛けて、ビニール袋から廃棄間近の弁当と缶ビールを取り出す。カシュッと子気味良い音を立ててプルタブを開けると、飲み口から安物の発泡酒の匂いがした。

 一口呷ると独特の苦味と共に炭酸が喉の奥で弾ける感覚がする。

 

「く──っ!」

 思わず声に出してた。やっぱり仕事終わりのビールは最高。何物にも変え難い至福である。

 暫く無心で弁当を胃の中に流し込んでから、ビールをもう一口。今度は深いため息が出てきた。

 

 時々、一人でいると、ふと考える事がある。

 

 ──何やってんだ僕。

 

 閻魔城には帰れる事は無いんじゃないかと職場復帰への道は諦めかけているし、開き直って現世で生活していればそれなりに充実したものになっている。

 

 でも、僕は死神なんだ。

 

 思い出すのは、以前仕事に失敗して閻魔大王様に存在ごと消された同僚の事。僕も同じように抹消されたのかと思う事もあるけど、時々同僚や上司から連絡がある辺り、まだ大丈夫だというよくわからない安堵感が押し寄せる。

 

 僕は、死神だ──

 

 死神。

 

 

 

 僕は──

 

 

 

「……何やってんだろ。僕」

 その呟きに返す仲間も人間もいない。

 

 

 ──そうだと思っていたけど。

 

「ご飯たべてるじゃない」

 

「……」

 

「なによ。あ、この唐揚げおいしい」

 

「……」

 いつの間にか、隣に猫を抱えた銀髪の幼女が座って僕の弁当から唐揚げを強奪していた。

 

 

 To be continued……?




断面、いや短編集でした。

という事で出てきました新キャラケンちゃん。本編でもちょくちょく出していこうかなと思いますよ。

ではまた19話で。

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