転生してみませんか?   作:RyuRyu(元sonicover)

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お久しぶりです。

ファミレスのドリンクバーは基本的に紅茶かコーヒーか烏龍茶。どうも当たり障りのないRyuRyuです。

一応言っておきますが、これでも全てのドリンクをブレンドさせた過去は持ってます。何も知らずアイスコーヒーも混ぜてあまりの不味さに吐いたのでトラウマになっただけです。

では、本編です。


21話 非日常というものは日常の内に潜んでいる

 改めて言うが、俺こと羽沢斗真は転生者だ。

 閻魔帳のフリガナのふり忘れと言う理不尽極まりない理由で間違えて殺されてしまったのを、閻魔大王の計らいでBanG Dream!の世界に羽沢つぐみの兄として生まれ変わった。

 だが、俺という存在はそもそもいないもの、いてはいけない存在。そこら辺一体どうなのか、前世の俺が命を失うハメになった張本人である死神こと死神さんに聞いてみた所、「本家とは違う世界線だから何しても大丈夫」という果たして安心していいのかどうか分からない返答を貰った。

 それからかれこれ十数年。中学一年生になり最愛の妹のつぐみ、幼馴染の上原夕弦ら愉快な仲間たちと共に笑いあり涙ありの平和な日常を過ごしている。

 ──のだが。

 ここまで生きてきて一つ、杞憂だといいのだけれど一つ、気になる事がある。

 

 秋葉原を舞台にしたとある世界線跳躍系アニメーションによれば、世界線変動率(ダイバージェンス)が1%を刻む毎に異なる世界線収束範囲(アトラクタフィールド)に行き着くという。

 そして、その異なる世界線には死んだはずの人が生きていたりとか、第三次世界大戦が勃発していたりとか正規の世界線とは全く異なる事実が存在する。

 そうなのだとしたら、俺の存在自体がガルパの原作と異なる世界線だという事を証明する事になる。

 

 ──果たしてそれだけなのだろうか。

 ここに、俺が転生してから気になっていた事の全てが集約される。

 つまり、BanG Dream!のストーリー上、重大な変異点が果たして俺という存在だけなのかという事である。

 

 俺が転生して十年と数年、そうと思われるものを捜してはみた。死神さんにも訊いてみたが、バタフライエフェクトに身を任せろだとか全く使い物にならない回答を(のたま)いやがった。

 確かに、原作の世界線とは異なる事象も起きたには起きた。

 一つに、羽丘の共学化。隣合う街に女子高二つも要らないだろと両校の校長と教頭と理事長の神聖なるジャンケン三番勝負の結果、ストレートで負けた羽丘が共学化する流れになった。なんだよ神聖なジャンケンって。

 二つに、小三時点でのつぐみの楽器の未経験。高一時点で延べ十年の楽器経験があったのが原作世界線なのだけれど、こちらではつぐみが楽器を始めたのが小学三年生。しかもピアノをすっ飛ばしていきなりキーボードからだ。

 だが、この二つについてはストーリー上に於いて果たして重要な変異点になるかと言われれば、そうだと断言できない事象であり、仮に『女子高だから羽丘に来た』という裏事情を持つガルパキャラがいない限り、さほど重要視するものではない。

 次に考えられる変異点と言えば、俺がいる事が影響して原作ストーリーとの差異が生じたケース。死神さんの言葉を借りるなら、『予想できるバタフライエフェクト』と言った所か。

 思いつくのを挙げていけば、原作世界ではAftergrowの中で蘭と一番仲のいいメンバーはモカという事になっているが、この世界ではモカがつぐみに置き変わっている。理由は単純で、俺に蘭が懐いているからだ。兄に懐くのならその妹とも付き合いが深くなるのも当然の事だろう。この前なんか蘭が生けた花を俺が手放しで褒めたらもの凄く喜んでめちゃくちゃ可愛かった。まさにここが天国かと思ったね。食べちゃゲフンゲフン。

 ……話を戻そう。

 他にも、香澄とはぐみは今でも時たま遊んで交流を重ねている。挙げればキリが無い──俺がいろいろやりすぎたせいだが。

 中でも一番大きいのは上原夕弦との関係性と俺のサポートの為に現世に来た死神さんと弦巻家だろう。

 夕弦については原作でも名前は明かされていないものの、ひまりには姉が一人いるという記述がある為特に問題ない。だが、そこに俺が関われば、話は別になる。俺という変異点のお陰で彼女はこちらの世界のストーリー上に無理矢理引っ張りあげられた状態なのだから。

 そして、俺以外の男性キャラなのだが、そもそも原作で男性キャラが極端に少ないお陰でこちらの世界で男性キャラが登場すればする度に原作との変異点となってしまっている。

 死神さんも俺と同じく原作と比べてイレギュラーな存在ではあるけれど、ストーリー上の重大さで言ったら今は何とも言えないのが正直な所である。これが、もし死神さんが俺がこれまで生きて未接触のキャラ、例えばパスパレや氷川姉妹などと関わりを持ってしまえば話は全く変わってくるのだけれど。

 そして弦巻家だ。現代に於いて財閥が存続している事自体ツッコミどころでしかないが、それはみんな大好き“ご都合主義”なのだろう。

 それはいいとして、俺は弦巻家との関わりを密に持ちすぎた。

 確かに、転生時のオプションで『金持ち』を選択したが、まさかアラブの石油王にタメを張る程の巨大財閥がバックに付くとは思わなんだ。

 それに忘れてはいけないのが俺、夕弦に続いて三人目のこころの友達、大崎健太郎の存在だ。彼こそ一番の変異点ではないだろうか。

 なんせこころに後ろ指差す大人の子供としてモブにも満たない役どころの彼だったが、俺が仲良くしてくれと言わんばかりに、こころに振り回されるもしっかりこころを肯定してくれる良き理解者ポジに落ち着いてしまったのだ。なんならハロハピssで一本書けるくらいには。

 そんな訳で、俺の目下の心配事は今後この関係性がどう転ぶのか、だけなのだ。基本的に事なかれ主義の俺だ。その時その時で臨機応変に選択してみせる所存でございます。

 とまあ、ここまでだらだらと考察を述べてみたものの、言ってしまえば、『さして重大ではない』、『今後のある程度の予想ができる』事象に於ける考察だ。

 

 本題はここからだ。待たせたな。

 ここまで二つの原作との変異点及び今後の可能性を紹介した。

 纏めると、『俺の埒外の重要度の低い変異点』、『埒内の変異点』。

 最後にもう一つの可能性。ぶっちゃけ言って一番厄介であり、事なかれ主義の俺でも対応が難しいのではないかという原作ストーリーにおける根本レベルの可能性である。

 ずばり、『埒外かつ重大な変異点』。ロベカルのフリーキックのように、伊藤智仁の全盛期のスライダーのように内角のボールゾーンから外角低めいっぱいのストライクゾーンに、自分の認識外からやって来ては特大の爆弾を投下していくソイツは、今俺達の街から離れようとしている。

 

 ──羽田空港国際線ビル。

 

 三月下旬。桜の花がもうすぐで満開になろうかという時、俺はこれから未知の土地へ旅立つ友人に別れを告げる為ここに訪れている。

 その友人は俺の他にも空港に来たクラスメイトと抱き合って別れの挨拶をしている。

 ひとしきり済んだ後、彼女はどデカいスーツケースを引いて俺の前に立った。

 

「……よう」

 

「よう、って……それがこれから旅立つ人へのセリフかしら」

 

「うっせ」

 

「ふふ……ありがとう」

 

「何がだよ」

 

「皆に声かけてくれたの羽沢君でしょ。別にお見送りなんて要らないって思ってたけど、来てくれて嬉しかったわ。だからそのありがとうよ」

 

「……さいで」

 

「ふふ……」

 

 何が可笑しいのか彼女は目尻に涙を溜めたまま終始にこやかだ。

 アナウンスが鳴り響く。そろそろ保安所を通らないとマズい時間だ。

 

「それじゃあ、私そろそろ行くね」

 

 彼女がクラスメイトに声をかけると、皆一様に笑顔で思い思いに声をあげる。

 

「それじゃ、羽沢君。またね」

 

「その、なんだ。またな──七菜」

 

 去りゆく後ろ姿に声をかける。

 立ち止まったと思ったら、振り返ってツカツカと俺の方へ歩いてくる。

 徐々に距離が縮まり────ゼロになった。

 頬に感じる柔らかい感触。それが何かを悟った頃には、もうその感触は頬から離れていた。周りの叫び声なんて聞こえない。聞こえないったら聞こえない。

 

「やっと名前で呼んでくれた。──好きよ、羽沢君」

 

 言い残し、彼女──鰐部七菜は今度こそ金属探知機のゲートの向こうへと消えていった。

 頬から離れない感触と、とてつもない時限爆弾を残して。

 

 

 

 

 △▼△▼△

 

 

 

 

 四月。咲いていく桜よりかは散っていく花びらの方が多いくらいの頃。

 それは、そんな桜の満開を少し過ぎた日の事だった。

 俺は、入学前にも関わらず羽丘の校内にいた。

 前日の夜に学校から電話があり、電話口から校長直々に頼み事をされた。

 曰く、入学式に新入生代表の言葉としてスピーチしてくれないか。

 なんでも、羽丘の共学化を改めて世間に知らしめす為、男の俺に是非ともやって欲しいらしい。なんで俺がと思って聞いてみたら、単純に入試の成績トップが俺だったからと。

 特に断る理由も無いので承認すると、早速今日来てスピーチ内容の擦り合わせがしたいと言うので、羽丘に赴き、今に至る。

 既に学校の方で文章はあらかた用意していたみたいで、俺と校長と教務主任の三人で推敲するだけだったので擦り合わせ自体はそんなに時間がかからずに終わった。その後は好きに学校を見ていいと言われたので、今は学校内を見て回っている。

 昇降口から始まり、教室、音楽室、図書室、化学室、中庭、グラウンド、体育館……やはり私立校と言った所か公立校と違った綺麗さがある。どれもが洗練されたデザインで、窓ガラスの一つひとつが大きい為か日光をよく取り込んで照明無しでも十分に明るい。

 春休みという事で校内にいる生徒の数は疎らだけれど、やはりというか何というか、女子生徒しか見受けられない。羽丘の共学化は確か去年からだったけれど、まだ女子高のイメージが強いからか男子生徒が絶対的に少ない。比率で言ったら八:二、もしかしたら九:一くらい。

 まあそんな訳で、校内を歩くだけで物珍しい目で見られる。俺としては平穏無事な学校生活が送れればそれだけでいいのだけれど、もしかしなくても選んだ学校を間違えたのではないかと早くも少し後悔した。

 

 学校内を見終え、そろそろ帰ろうかとグラウンドから踵を返して校門の方へ歩いていると、建物と建物の隙間、大きな排気設備に隠れるようにして校舎裏に抜けていく通路が目に入った。気になって行ってみると、通路というよりかは畦道(あぜみち)に近く、カラッとした春の陽気に関わらずジメッとしてひんやりした空気が漂っている。畦道を抜けきると、少し開けた場所になっていて陽当たりの良い、控えめに言って最高なスペースになっていた。

 今度から晴れた日の昼ごはんはここで食べようと決め、基地といい俺はこういう所を見つけるのが得意なのかもと新たな特技も発見して上機嫌で畦道を戻っていた時だった。

 

「きゃっ」

 

「おわっ」

 

 そもそもが見通しの悪い所で、かつ誰も来ることは無いと思い込んでいた俺は畦道を抜けきった所で誰かと出会い頭に衝突した。俺はどうにか転ばずに済んだものの、ぶつかった方は体勢を崩してへたりこんでしまった。

 倒れた人に手を差し出して、初めて俺はその人が女性であった事に気がついた。申し訳無い事をしたなぁ。そう思いながら倒れてしまった女性が手を取るのを待った。

 

「すみません。大丈夫です……か……」

 

 次の瞬間、俺の中に稲妻に打たれたような衝撃を感じた。

 

「あ、はい。大丈夫です。こちらこそごめんなさい、よそ見しちゃって」

 

 ──ああ。そうか。

 

 ウェーブのかかった艶やかな黒のロングヘアー。

 物腰の柔らかそうなその表情。

 

 ──こういう事も、あるのか。

 

 心の中ではははっ、と乾いた笑い声が鳴り響く。

 確かにこれは対処不可能だわ。うん。完全に俺の認識外からやって来てる。

 

 ──何故お前がここにいるんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────牛込ゆり。

 

 




21話でした。

この話は作者的に中学に進学するに際して少し整理しておきたいと思って書いた話です。
それと今後波乱を及ぼすであろう彼女達の登場シーンを書かせて頂きました。
さて、この後中学生になった羽沢斗真君はどう動くのか、乞うご期待……とは言えませんが、過度な期待をせず気長に待って頂けると嬉しいです。

それと、ここに記しておきたい事柄が二つ程。
某世界線跳躍系アニメに関しては、完全に作者の解釈で書かせて頂きました。もしかしたら他の読者様と解釈が違うかもしれませんが、そこは何卒生暖かい目で見て下さい。
そして、文中に登場したロベカル──元ブラジル代表のロベルト・カルロスと元東京ヤクルトスワローズの伊藤智仁についてはそれぞれの活躍がYouTubeなどにありますので是非見てみてください。どちらもえげつない程曲がるフリーキックとスライダーです。今回の構成上、喩えるならこの二人を挙げたら伝わりやすそうかなと思い書かせて頂きました。
他にも、ダルビッシュのスローカーブとか、中村俊輔のフリーキックとか、将棋の鬼殺しとか色々候補はありましたが、そこは単純に作者の好みです。だってロベカルのフリーキックとか普通蹴れないって……っと、話すと長くなるのでこの辺りで。

お気に入り登録、高評価、感想ありがとうございます。
感想は時々返せない時がありますが、遅くなってもできる限り返信していきたいと思っています。

ではまた22話で。
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