転生してみませんか?   作:RyuRyu(元sonicover)

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お久しぶりです。

「最近、ライブハウスの新人スタッフの他にプロデューサー業も始めたんだよね」

と、知人に言った所、

「は?何言ってんの?」

と、真顔でマジレスされた。前職はカルデアの見習い魔術師(マスター)、どうもRyuRyuです。

というか、その知人も千聖推しのアーニャPなんですけどね。中の人推しなのね。Да. Zudorasuto Vie Choi。

はい。本編です。


22話 黒歴史の開帳には相応のリスクを伴う。

 入学式が終わって数週間後。死神さんから諸々の準備が整ったという連絡をSPACEでの練習中に受け取った。

 

「うっし。んじゃ今日はこんくらいで終わりな」

 

『今から行く』と返信して同室している人に告げる。

 

「えー、もう終わり? まだやらないの?」

 

「ああ。今日はここまでだ」

 

「なんでよ〜ケチ〜」

 

「まあそうぶーたれるな」

 

 リサが頬を膨らませて抗議の視線を送ってくる。はいはい可愛い可愛い。

 初対面の日からどうやら俺はリサに懐かれたようで、半ば無理矢理に連絡先を交換させられたと思ったら「練習する時は電話ちょうだい」と言われ、以来俺がSPACEで練習する時はリサが俺の演奏をずっと見てるというよく分からない関係性ができあがった。まあ、リサはリサでそれで楽しそうにしているからいいんだけれど。

 

「なあ、今井」

 

「ん〜」

 

 つまらなそうにコーラを飲むリサに声をかける。

 

「お前ってベースやってたって言ってたよな」

 

 あくまで最近知った風に聞く。ここで僕前から知ってましたよ的な雰囲気を出せばそれだけで事案。つぐみがロリコンストーカーの妹と後ろ指さされる事になり、なんとしても避けなければならない。

 ふっ、転生者は辛いぜ……と斗真は斗真はニヒルに嘯いてみたり。

 

「うん、まぁね」

 

 ベースをやってた事は初対面の時に知らせてくれたが、再度問うとその表情に少しだけ影が差した気がした。

 それが何を思ってのものなのか、何故ベースを“やってた”と過去形なのか。まあ事情はお察しの通りなのだけれど、今ここでずけずけと彼女達に踏み込んでいくのも野暮だろう。

 だから、まあ、これからするのは完全に俺の自己満足、お節介。ありがた迷惑、余計なお世話。外野が出しゃばって来るんじゃねぇと言われても夜中に俺が枕を濡らすだけで何も言い返せない。

 

「一回さ、セッションしてみないか」

 

 一先ずは、リサに思い出させてもらう事から。

 

 

 

 △▼△▼△

 

 

 

 リサの家からベースを持ち出して、再びのSPACE。

 死神さんに『やっぱ遅れる』とメールを打ち直してギターを構える。

 言われるがままのような感じで俺と何曲か合わせて弾いてみたが、なかなかどうして腕は落ちてはいないようだった。しっかりと音を奏で、最初はたどたどしかったものの、そのうちに俺とのセッションを楽しんでいるようにも見えた。

 

「案外上手かったな」

 

「あ、そう? えへへ……」

 

 照れくさそうに頬を掻く。けれどその姿に俺はさっきの暗い表情を思い返して言いようのない違和感に囚われた。

 

「……楽しかったか?」

 

「うん! すっごく楽しかっ……た」

 

 リサの言葉が尻すぼみになっていく。喜怒哀楽の表現が激しいリサだからこそわかる、感情の変化。

 

「それでいいんじゃないか?」

 

「……え?」

 

「今井がどうしてベースを避けてるのかは知らないけど、楽しいならそれでいいじゃん。何も考えなくってさ」

 

「でも……」

 

 渋るリサ。まだどこか引っかかっている様。たかが俺の言葉一つでどうにかなるとは思っていないけれど、未だに踏ん切りがつかないか、誰かに対してどこか後ろめたい気持ちがあるか。

 

「まあ、続けるのも辞めるのも決めるのはお前だし、俺はとやかく言うつもりは無い。けど……少なくとも俺はお前とセッションして楽しかったよ」

 

 さ、今度こそ今日はここまでだと俺は後片付けを始める。リサは未だに何か考えているようで、俯いて自分のベースを見つめている。重みを増したギターケースを背負って、スタジオを立ち去ろうとすると後ろでリサが呟いた。

 

「……あたし、どうすればいいのかな……」

 

 蚊の鳴くような声で紡いだその言葉は、リサの現在の心理状況を現す様にか細く、次々に去来する思考の波に必死に抗う様に確かに俺の耳に届いた。

 ……相も変わらず意思の弱い俺を殴りたい。既に自分の自己満足なのに後悔している。

 あの日、俺とリサと友希那が出会った日。ライブスタジオで演奏していたのは友希那の父親のバンドの“元”メンバーだった。家に帰って調べて見たら、そのバンドに関する情報は数年前を境にパタリと途絶えていた。

 ──友希那の父親のバンドは、もう存在していない。

 その時俺はなるほど合点がいったと思った。そうではなかったら友希那の初対面の俺を見る視線に憎しみや悲しみの色なんて含めない。

 その事実を知ってしまったからなのか、気持ちの板挟みに逢うリサを見てしまったからなのか俺でもわからないけれど、自分のエゴで行った行為の結果だからしっかりと自分で落とし前をつけなければならない。

 リサの隣に腰掛けて、俺は俺の考えを話し出す。

 

「これは俺の自論なんだがな。世の中には、“言わなくても分かる”というのは無いと思うんだ。どんなに付き合いが長い人とでも、自分が考えた事を言葉にして、行動して相手に伝えない限り自分の本当に伝えたい事は伝わらない。たとえそれが家族でも、親友でもな」

 

 “親友”というワードにリサが小さくだが反応する。

「言わなくても分かる関係性」というのは所詮欺瞞、まやかしでしかない。

 俺だって親友の夕弦の考えている事の一から十なんて理解できるなんて思っていない。せいぜい表情から察する事くらいで、それは彼女の表面しか見ていないのと同じだ。阿吽の呼吸だの、ツーカーの仲だのそういった関係は対話を重ねて本音で語り合った上での関係性なのだ。やっぱり言ってくれなきゃアイツが何を思って何をしたいのかは解らないし、俺だって言わなくても夕弦は解ってくれるとは微塵も思っていない。

 では、隣にいるリサの場合はどうだろうか。

 彼女は今、父親が音楽に挫折したのを目の仇に音楽を復讐の道具にしようとしている幼馴染みの親友を想う気持ちと、自身の音楽を楽しいと思う気持ちが心の中で綯い交ぜになっている。

 そんな気持ちの板挟みの中、彼女は親友を想い、親友を後ろから見守ろうとしている。

 自分の気持ちに蓋をして音楽から離れようとしている。

 

「改めて言うけど、今井が何を思っているかなんて俺にはわからない。わからなくて当然だ。でもな、俺はお前とセッションして楽しかったし、お前が俺とセッションして楽しかったって言ってくれたのは嬉しかった。お前がそう言ってくれたお陰で俺は嬉しいと思えたんだよ。だからさ、もしお前が、今井リサが、これがしたい、これをやりたいって思う事があったら素直に言ってみなよ。本音で、取り繕わずにさ。もしかしたらそこから見えてくる物もあるのかもしれないな」

 

 立ち上がり、ギターケースを肩にかける。

 

「さ、この話はこれで終わり。なんだか説教っぽくなっちゃったな。会ってそんな経ってない奴に長々しく説教されたら嫌だよな、悪かった」

 

「い、いや、そんな事なかったよ。うん、ありがとう。話してくれて」

 

「そりゃよかった……まあ、何かあったら話くらいは聞いてあげるから連絡しな。そん時にまたセッションしようぜ」

 

 リサが頷くのを見て、俺は扉へ向かう。死神さんに呼び出されたからな。後でメールしておこう。正直言ってこころん家に呼び出されたから嫌な予感しかしないけれど。

 

「あ、そうだ」

 

 ドアノブに手をかけた所でふと思い出してリサの方に振り向く。

 どうしたのかとこちらを見るリサ。手元には真紅に輝くベース。

 

「スタジオの時間はまだあるから、後の時間は自由に使ってくれて構わないから。それと──」

 

 本音で言わないとわからない事がある。

 リサが俺とのセッションを楽しんでくれた。それは彼女のベースの音色から伝わってきたし、弾いてる時の表情が如実に現していた。何より彼女が満面の笑みでそう言ってくれた事が俺にとっては嬉しかった。

 だから、今度は俺からのお返しと言わんばかりにリサに笑いかける。

 

「──ベースを弾いてる時のお前、似合っててかっこよかったよ。そのベース、大事にしな」

 

 素直な俺の褒め言葉にリサは仄かに顔を紅くして小さくコクリと頷いた。

 俺のこの言葉が今後にどう傾くのかはわからない。わかる気がしないし、わかりたくもない。ここがもう原作世界とまるっきり違うという事はここ最近で嫌という程思い知らされたから。だからこそお節介を焼いたのかもしれない。

 今井リサは優しい女の子だ。それでいて強い女の子だ。

 

 ──いつか、彼女が心の底から音楽を楽しめる日が来るように。

 そしてその隣には純粋に音楽を愛し、凛とした歌声を響かせる幼馴染みの親友がいることを祈って。

 俺は静かにスタジオを後にした。

 

 

 △▼△▼△

 

 

「……すげぇな。これは」

 

 思わず声が漏れる。

 目の前にはどう考えても急拵えで建てたものではないと思える程立派な建物。

 というかスタジオ。完全防音のスタジオ。SPACEの練習スタジオの二倍はあるだろう。

 音響機器。アンプからエフェクター、スピーカーに至るまでいずれもトップメーカーのハイブランド物が鎮座している。

 楽器。ドラムとキーボードだけだが、どれも新品と言った感じで光り輝いている。

 ……ヤバい。これはヤバい。

 何がヤバいかってこれだけの設備を敷地内にたかだか数週間で作り上げる弦巻家がヤバい。寧ろヤバい通り越して怖いまである。

 この辺りに住む者なら知らない人はいないと言われる弦巻邸。広大な敷地のその一角におわしますこのスタジオ。レコーディング設備も完備のその建物を前に俺は頭を抱えていた。

 

「おあぁあぁぁ────…………」

 

 いや、言ったさ。死神さんには「楽器を演奏できる場所が欲しい」ってダメ元で言ったさ。けどさ、ここまでって……。

 俺も思ったさ。即答した死神さん見て嫌な予感はしたさ。絶対何かやる気だったもん。

 なんだろう。コレジャナイ感。いや、嬉しいよ。もうこころパパには足向けて寝れないくらい感謝してるよ。

 …………。

 ……まあ、いっか!(思考放棄)

 そろそろ夕弦の俺を見る目が冷たくなってきているからここら辺で悶えるのも止めておこう。つかなんでついてきた。

 

「……よし、行くか」

 

「うん誤魔化せてないからね」

 

 誤魔化す?何のこと?ボクシラナイ。

 ちょうどニクスと遊んでいた夕弦も引き連れいざスタジオの中へ。

 あんだけ冷たい目で俺を見てた夕弦も「ほへぇ〜」と感嘆の声を漏らしている。

 スタジオ内には既に死神さんがいて、自由気ままにドラムを叩いていた。

 

「……いや、何やってんすか」

 

「ああ、やっと来た。遅かったじゃないか」

 

「いや……色々あったんすよ……で、何やってんすか」

 

「何って、ドラムだけど」

 

「いや、そうじゃなくて……」

 

「田中さんドラム上手ですね」

 

 いろいろツッコミどころが多すぎて何からツッこもうか決めあぐねていると、横から夕弦が口を出した。うん、確かに上手いよ。プロ並みに。

 

「ああ、高校の時に少しだけ齧った程度だけどね」

 

 サラっと嘘をつく死神さん。実際は死神特性のチートを使っているだけなのに。というよりそもそも高校通ってないクセに。

 

「……それで、わざわざこんな立派な建物を建てて俺に何を求めるんすか。金?名誉?それとも……はっ」

 

「……なんだか嫌味ったらしく聞こえるけど、何、どうしたのさそんな真剣な顔して」

 

「もしかして……俺が目当て……?」

 

「いや違うから」

 

「お前なんかに俺の純血をやるかこのホモ執事め!」

 

「いやだから違うって。落ち着いて斗真君。僕ホモじゃないしそもそも君に金も名誉もたかる程困ってもないし」

 

「そもそも斗真に誰かに渡せる程の名誉なんか持ってんの?」

 

「うわぁ辛辣」

 

「というかこれまで浮いた話の一切無い斗真の方が私は心配なんだけど」

 

「最近俺の幼馴染みが辛辣すぎる件について」

 

「その幼馴染みにですらホモ疑惑が持ち上がる事をどうにかして欲しいんだけど」

 

「もうやめて!斗真君のライフはもうゼロよ!」

 

 

 閑話休題(斗真 は ちからつきた)

 

 

「あ、そうそう。もう準備はできているからね」

 

 思い出したように言う死神さん。そう言えばそんな用事だったっけ。

 スタジオの中央には三脚に取り付けられたビデオカメラ。そこから伸びるコードは録音ブース横に設置されたコントロールルームへ続いている。

 

「おお。やっぱり本格的ですね」

 

「まあね。やるからには、ってね」

 

「本気の度合いが庶民のそれじゃないんだよなぁ……まあ、言いたい事はわかるんだけどさ」

 

「でもそのお陰で最高の音質を約束するよ」

 

「それはありがたいっす。それじゃ、ぼちぼち始めますか」

 

 背負ったままのギターケースから三百万のギターを取り出す。チューニングはさっきまでSPACEで弾いてたから問題無いとして、あとは何を弾くか……。

 

「ね、ねえ」

 

「んあ。どった夕弦」

 

「何するつもりなの?……まさかとは思うけど、動画とか撮らないわよね」

 

「そのまさかなんだが。悪いか?」

 

「……正気?」

 

「おい」

 

「いや、だってあの斗真がだよ?つぐみの事以外では決して自分から動こうとしないあの斗真だよ?」

 

「お前は失礼という言葉を覚えた方がいいぞ。俺だって能動的に動く時くらいあるさ」

 

 少なくとも今回の件に関しては俺から行動を移さないとだからな。

 

「さ、見るなら見るでいいけど、そん時はそこの部屋に入ってくれな。あとは……まあ、ニクスなら平気か」

 

「大人しくしてるんだぞ」とニクスの顎を撫でてやると心得たと言わんばかりに「ナー」と一鳴きした。この聞き分けの良さを飼い主にも分けて欲しいものだ。

 

「そういう訳でほら、行った行った」

 

 夕弦をコントロールルームに押し込んで、死神さんから衣装の入った紙袋を受け取る。顔出しは流石にNGなのでこれも死神さんに頼んで用意して貰った。某格安の殿堂のタグがつけっぱなしなのはご愛嬌という事で。

 紙袋の中には黒のマントと仮面。服の上からマントを羽織ると、元々黒っぽいコーデだった事も相まってどこかの黒の剣士みたいになった。なんかこう、バサッと羽織ったマントをはためかせたい。

 一緒に入っていた仮面をつけたらタキシード仮面みたいになった。なんだろう、今物凄く高笑いしたい気分。

 

「……田中さん」

 

「斗真君……分かるよ、君の気持ち」

 

「……いいんですか?」

 

「僕は……何も言えない。ただ……君がやりたいと思うなら、僕は止めないよ」

 

「ありがとう……ございます……!」

 

 死神さんの言葉にデジャヴを感じながらも深く頭を下げて感謝の意を示す。正直もう心の内から湧き出るのを止められない。有り体に言えば、身体が疼いて堪らない。ついでに言えば、封印されていた黒歴史と共に邪竜を封印した右眼と悪魔を宿した左腕が疼く……ッ!

 

「フッ……フハハッ……フアーハッハッハ!」

 

 抑えきれなくなった俺の黒歴史が遂に現世に顕現した。

 

「遂に……遂に永年の悠久の刻を経て我の秘められし邪眼の力が解放されし時が来た……!」

 

 両腕(りょうわん)を左右に広げ、秘められし邪眼の力の解放に歓喜する。

 

「終末の黙示録(アポカリプス)による神々の黄昏(ラグナロク)の終焉の代償にこの右眼に天翔る漆黒の暴風竜は封印され、左腕には現世で蛮行の限りを尽くした悪鬼羅刹の王を全能神ゼウス(全てを司る者)に宿されてしまった……」

 

 フレミングの法則を顔に当てて自らの境遇を嘆く。

 

「だが!我の前に現れし天の羽衣による堕天使の加護、この世の全てを見通す仮面、死を司る神(ハーデス)から授かりし二つの神器。さらに三百年の永い眠りから醒めたあらゆる穢れを無に帰す六弦の宝具……フハハッ!今、全て揃った!」

 

 マントを靡かせ、高らかに声を上げる。

 

「今宵!我が奏でる黒き咆哮により荒ぶる魂に鎮魂歌(レクイエム)を。生きとし生けるもの全てに無償の愛(アガペー)を!」

 

 右手を前に突き出し、あらゆるモノを鎮め、愛し、全てを統べる者の如く宣言する。

 

「我が名は邪神王、羽沢斗真也。者共!我の前にひれ伏し、崇め、奉りよ!」

 

 まるでこの世の全てを見下すかのような高笑いがスタジオ内に響きわたった。




22話でした。

中二病患者の描写は難しいですね。セリフが支離滅裂とした所はRyuRyuクオリティという事で何卒ご容赦を。

さて、作者事ですが、別作品を投稿しようかと思っています。
二作品候補があって、どっちを投稿するかは絶賛検討中ですが、近日中には投稿しようかと思っています。
なので、ただでさえ不定期なこの作品の投稿期間が更に不定期になりますが、読者の皆々様には引き続きお付き合い頂けると幸いです。

高評価、お気に入り登録、感想ありがとうございます。
もし、作品内での矛盾などがありましたら感想の方で教えて下さい。
その他、純粋な感想、ご意見もお待ちしております。

ではまた23話で。
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