転生してみませんか?   作:RyuRyu(元sonicover)

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こんにちは。

好きな野球用語はライトゴロ。どうもRyuRyuです。

かっこいいですよね、ライトゴロ。相手打者の緩慢な走塁の隙を突いてかつ、ライトとファーストの意思疎通が完璧でないとできないプレーなんですから。パワプロでも殆どできませんよ。

まあそんな事はさておいて。

本編どうぞ。


23話 お前(そなた)が打たなきゃ誰が打つ

 ──目前を覆うは漆黒の闇。何も光を通さず、視覚から得られる情報が一切受け取る事ができない。

 

 ──身体が何か硬いものに押し付けられる感じがする。かと思ったら身体の別の所からの衝撃を受ける感じもする。ただ感じがするというだけで、視覚が遮られている今、それ以上の情報は得られない。

 

 ──どこからか唸り声が聞こえる。どこから発せられているのかはわからない。自分では無いどこかの誰かのかもしれないし、もしかしたら自分自身からなのかもしれない。まるで洞窟の奥で猛獣が何人も立ち入る事を許さないかのように低く、通る唸り声が聞こえる。

 

 ──先程から頭の中がミキサーでかき混ぜられたかのように混濁している。様々な事が浮かんでは消え、浮かんでは消えを繰り返しては、撹拌されて、また意識の海の中に溶けていく。

 

 ──ただ、一つだけ、自分の中でしっかりとした、この場合《意思》と呼べるようなものが何物にも混ざらず、消されずに意識の奔流の中で確立していた。

 それは、元来人間が持つ純粋な欲求であり、且つタブーとされている欲求でもある。

 人間は、得てして表裏一体、裏腹な生き物である。

 本音と建前、陰と陽、生と死。

 この世の生きとし生けるもの全てに於いて、「死」は「生」の対極にあるという意味で常に身近につきまとうものである。

 死は、決して忌避する事ではない。誰しもが森羅万象の理に法って等しく死ぬのだから。

 例えば、「死」が一つの終着点と考えるとしたら。

 そのゴールに早く辿り着きたいと願うのは絶対悪とは言い切れないのではないのだろうか。

 その願望を口に出すのも、決して悪とは言い切れないのではないのだろうか。

 

 よって俺は、今自分の中で確立されている《意思》を口に出すのは至って普通の事なのである。

 

「うぉおおおおぉぉおおぉぉぉ……………………しにたぃ」

 

 なんて事は無い。ただ目を瞑って気持ち悪い呻き声を上げながら床をのたうち回っていただけの事。

 記憶の奥底に閉じ込めていた忌まわしき記憶(黒歴史)が引き出された後、そのままのノリで撮影をしたまではよかった。自分でも気分がのってたノッてたからこれ以上無いってくらい良い演奏ができたと思っている。

 問題はその後。撮影を終えて我に返った俺は内から湧き出る羞恥心に耐えきれなくなった。今俺はスタジオの床をゴロゴロ転がるモップと化している。

 

「……あ、あの……斗真……君……?」

 

「……しにたぃ。今すぐしにたぃ。豆腐の角に頭ぶつけてしにたぃ。白滝で首吊ってしにたぃ。あ、ちくわで殴られてしにたぃ……あは、あはははは……」

 

「斗真君!?」

 

 虚ろに笑う俺を見て死神さんが心配気に声を上げる。その横で夕弦がニクスを抱えたままスマホを構えてドン引いているのが目に入った……え、ちょっ、撮らないで?

 

「あははは……んっ、んん」

 

 夕弦のお陰でようやくまともな思考が出来るまでに落ち着いて、軽く咳払いする。落ち着いたから夕弦さん、もう撮るのやめて?

 

「……ちっ」

 

「えっ、舌打ち……あとその顔やめて。俺もう大丈夫だから」

 

 そんな蔑んだ目で見られても俺はそういう趣味じゃないから全く嬉しくともなんともないし、なんならちょっと傷つくから。

 

「それで、どうして急に動画なんか撮り始めたの」

 

 スマホをポケットに仕舞いながら夕弦がそう問うてきた。

 ……さて、どう答えたものか。

 

「んー……好きが高じたから?」

 

「は?」

 

 お前何言ってんの?と言外に語ってるのをひしひしと感じているが、そこにめげず俺は話を続ける。

 

「お前さ、バスケ好きだろ?」

 

「……まあ、うん」

 

「じゃあさ、なんでバスケが好きなんだ?」

 

「そりゃあ……試合に勝った時の爽快感とか」

 

「うん」

 

「仲間と連携が上手くいった時の達成感とか」

 

「それだよ」

 

「え?」

 

 ビシッと指を立てる。

 話を遮られて呆け顔の夕弦に説明する。

 

「ギターやってる時も同じなんだよ。一曲ノーミスで弾けた時の爽快感とか、難しいフレーズを弾けた時の達成感とか。それがあるからギターが楽しくなって、好きになるんだよ」

 

「……でも、それがどう動画を撮るのと関係が」

 

「それはまあ……承認欲求だ。他人に自分のテクニックを見て欲しいとか、人間誰しもが持ってる欲望に従ったまでさ」

 

「……ふーん。まあいいや」

 

 何とか誤魔化せたか……?

 

「本当は何か別のワケがあるっぽいけど、聞かないでおくよ」

 

 全然そんな事は無く、普通にバレてた。

 

「……寛大な御処置、有り難き幸せ」

 

「うむ。よきにはからえー」

 

 そんなやり取りをした後、死神さんと動画のチェック、編集をして遂に俺のギター演奏の動画が動画投稿サイトにアップされた。

 動画チェックの際にまた部屋のモップと化したのは別の話。

 

 

 △▼△▼△

 

 

 動画がアップされて数日後、世間では年に一度のGWに差し掛かっている。

 連日ワイドショーでは高速道路の渋滞情報やこの連休をどう過ごすか、とかの特集が組まれ、日本中がこの大型連休に浮き足立っている。

 俺としては箱根とか京都とかにふらっと一人旅してもいいのだけれど、生憎と現在中学生、免許も持ってなければマイラブリーシスターつぐみを置いて一人旅なんて行けるはずもない。

 というわけで俺は電車を乗り継いで日本が世界に誇る街、オタクの聖地秋葉原へ。ちなみにつぐみはAfterglow組でお出かけだとか。あくまで保護者として付いていこうとしたら、「また今度ね」とやんわり断られてしまった。兄離れかな?お兄ちゃん悲しいけれど嬉しいかなと思ったけどやっぱり悲しいぞ☆

 そんな午前中の出来事を思い出しながら、電車は秋葉原駅のホームに滑り込む。改札を抜けると、そこは雪国⋯⋯ではなく、降り注ぐ日光の照り返しをもろに受ける現代のコンクリートジャングル。行き交う人々の多様性を見て別世界に迷い込んだのかと一瞬そう錯覚してしまう。

 

 ──ここはあらゆる文化が入り交じる国際都市、アキハバラ。異世界都市『ハネオカ』からやって来た勇者トウマはひょんなことから未だ発見されていないという伝説のギターを探す旅に出ることになる。そこに待ち受けるのは幾多の試練。果たして勇者トウマはこの世を統べる魔王を倒して世界に平和という名の旋律を奏でる事ができるのか!?勇者トウマの冒険が今、始まる──。

 

 設定ガバガバなRPGを脳内に描きながら俺は電気街を歩く。メイド喫茶の勧誘をやんわり断りながら歩く。特に目的も無くても楽しめるからいいアキバっていい場所だよな。メイト、ゲマ、ソフマップ、ヨドバシ……。一本裏路地に入れば表通りの電気街には売ってない様な「こんなの何に使うんだ」ってつっこみたくなるレトロでマイナーな部品を売ってる店だったりをぶらぶらと見て回るだけで充分楽しい。

 お腹が空いたのなら裏通りに知る人ぞ知る絶品定食屋やラーメン屋が点在する。

 一つの街にメジャーとマイナーの顔があって、一日いても飽きない、控えめに言っても最高な所だ。

 同様の魅力を持つ街が腐女子の聖地池袋、少し遠出すればサブカルの聖地中野、カオス度で言ったらトップクラスの川崎、リア充から目を背ければ横浜だったりするのだけれど、アキバに於いては十分くらい歩けば古本屋街の神田や楽器屋が建ち並ぶ御茶ノ水がある分、他に比べて俺的にポイントが高い。

 ……え、渋谷?原宿?東急沿線?ナニソレオイシイノ。

 

 

 閑話休題(話すと長くなるので)

 

 

 昼頃にアキバに着いた俺は早速昼食へ。以前見つけたラーメン屋で腹ごしらえを済ませて、ショップ巡りを開始する。ラノベの新刊チェックと共に店舗毎の特典の確認も怠らない。移動中の電車で取り入れた情報を元に効率良く買い漏らしが無いようにそれぞれのショップを廻る。

 同時に、新発売のグッズなども確認。めぼしい物があれば迷わずにカゴの中へ。

 お目当ての物も買え、ホクホク顔でアキバの街を闊歩する。やはり連休中だけあって行き交う人の量がハンパない。サブカルに魅せられた外国人観光客は勿論の事、家族連れにオタク連れ、何を間違えてやって来たのかリア充、エトセトラ……実際の所外国人観光客とオタクで全体の半分以上を占めているのではないかと俺は思っている。

 その人混みから外れて俺は当初の予定通り御茶ノ水へ向かう。総武線の高架下を通り、外苑通りをのんびりと歩く。暫くして明大通りとの交差点を曲がれば、そこは楽器を嗜む者にとっては避けては通れない楽器屋街。大小様々な楽器屋が建ち並び、初心者からプロのミュージシャンまで幅広い層に向けて門戸を開いている。

 俺はその内の一つの店の前で足を止めた。俺が御茶ノ水に来た時は必ずと言っていい程通っている店だ。

 ガラス戸を押し開けるとカランカランと来客を告げる鐘が鳴り、奥から壮年の店主がやって来た。

 

「おう、斗真か。いらっしゃい。今日は何しに来た」

 

 若干黒が入った白髪をオールバックにした店主は俺を見るなりそう尋ねてきた。

 

「どもっす。えっと、弦のストックがそろそろ切れそうなので補充しに来ました」

 

 取り留めない挨拶を交わして店主に用件を伝える。

 

「どっちの方だ」

 

「ギブソンの方です」

 

「あいよ。ちょっと待ってな」

 

 言い残し、店主は再度店の奥に引っ込んだ。

 口調こそぶっきらぼうな店主だけれど楽器、特にギターやベースに関しては専門家並の知識を持っていて、質問すれば面倒くさがりながらも丁寧に教えてくれる。思えば、死神さんにギターを買って貰った時が初めてだったっけ。俺があの三百万のギターを見せた時の驚き様といったら、ダンディな様相に目が少年みたいに輝いていて死神さんと笑いが堪えられなかった。

 店内のギターやベースを見ていると、入口の鐘がカランカランと鳴った。誰か来店したみたいだけれど、生憎と店主は店の奥で作業中。

 

「……あれ、誰もいないのかな」

 

 俺としてもこのまま客の放置は接客を普段からしている身にとっては心苦しいものがあるけれど、店主に無許可で接客は流石にできないからどうする事もできない。ただ無関係を装って壁にかかるギターを見る事しかできない。

 決してその声がどこかで聞いた事のある声だったから努めて無関係を装ってるとかそういうのではない。

 ……ああ、ストラトもいいけれどレスポールもかっこいいよなぁ。

 

「すみませーん……あ」

 

 聞き覚えのある声が近づいてきて、何かに気がついたみたいだけれどそれはきっとお目当ての品が見つかったからであって決して馴染みの無い店に顔見知りを見つけたからではないと信じたい。

 

「あれ……羽沢君?」

 

 ……おい、呼んでるぞ羽沢君。俺?俺は通りすがりのギター左衛門ですが何か。

 

「あ……やっぱり羽沢君だ。羽沢君?おーい……」

 

 今度動画に上げる曲は何にしようかな。やっぱりアニソンから攻めていくか……いや、ここはいっそ俺の好きな九十年代ロックでいくか……。

 

「羽沢君!」

 

()っ……牛込か」

 

 肩を結構な強さで叩かれたので観念して振り向けば、そこにはブルーチェックのロングカーディガンをオシャレに着こなした牛込ゆりが頬を膨らまして立っていた。

 

「どうして無視したの?」

 

「いや、俺じゃないと思ったから」

 

「そんな訳ないでしょ。この店に羽沢君一人しかいないんだから」

 

 ⋯⋯そういえばそうでした。

 

「⋯⋯牛込は何しに来たんだよ」

 

 あからさまに話を逸らして牛込に聞く。ため息をついた牛込は少し躊躇いがちに答えた。

 

「私は、その⋯⋯新しいギターを買いに」

 

「へぇ、意外だな」

 

「⋯⋯何がよ」

 

「いや、牛込も楽器弾くんだなと思って」

 

「まあ、こっちに越す前からベースは弾いてたんだけどね」

 

「そうなのか」

 

 まあ、知ってたけどね!

 

「はいよ斗真。お前のいつも使ってる弦だ⋯⋯っと、お客さんか。いらっしゃい、悪かったね。すぐに出てこれなくて」

 

 その後も牛込が主体となって二、三言交わしていると、店の奥から店主が漸く出てきて、いない間にやって来た牛込に謝罪する。

 

「ああ、いえ、気にしないで下さい」

 

「そうかい。まあ、ゆっくりしていくといい」

 

 顔の前で手を振る牛込を見て店主はレジ横の椅子──彼がいつも座っている所に座り込み、読みかけの小説を静かに読み始めた。

 俺はそんな店主の邪魔をしない様に代金をレジカウンターに置いて、「ありがとうございます」と一声かけて踵を返した。

 

「待って」

 

「ぐぇ」

 

 店の外に出ようとする所で牛込にパーカーのフードを掴まれた。首が締まって痛いです。

 

「何だよ」

 

 不機嫌さを顕にして尋ねると、牛込はバツが悪そうにしながらも躊躇いがちに口を開いた。

 

「……ちょっと付き合ってよ」

 

「は?」

 




23話でした。

街ブラって楽しいですよね。アキバに行きたいです。

もう少し続きます。次回までお待ちください。

お知らせです。
この度、新しく作品を投稿しました。
BanG Dream!原作のヒロインは沙綾です。
是非読んで下さい。

ではまた24話で。
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