転生してみませんか?   作:RyuRyu(元sonicover)

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こんにちは。

好きな筋肉は腹直筋、どうもRyuRyuです。

……いや、面白いじゃないですか。
朱美ちゃんの隣で一緒に筋トレしたい人生でしたよ。はい。

という事で本編どうぞ。


25話 肩にちっちゃい重機乗ってんのかい!

 GWが明けると、校内は文化祭でにわかに盛り上がる。

 羽丘の文化祭は梅雨明けの時期に三日間に渡って盛大に行われる。主に力を入れるのは高等部だけれど、その熱気は中等部まで届き、教室内でも固定されたグループの中でそれぞれがその話が持ちきりだ。

 来月にテストがあるのに何を今頃と思ったら、どうやら今日のLHRに出し物決めをするそうで、お化け屋敷だとか喫茶店だとかいろいろな声が上がる。

 そんな中俺は安定の静観ポジションに就いて外をぼーっと眺めている。

 小学校低学年の時に周りのパッシブなハイテンションノリについていけなくなった俺が編み出して以来、時にトップカーストの連中と騒いだり時に大人しく静観を決め込んだりしてスクールカーストで一定の地位を保ち続けた俺の必殺タクティクスである。尚中学で通用するのかは未だ不明。

 中学に上がってから、変わった事があったかと言われればこれといって変化は感じられない。やっぱりというかなんと言うか、進学するにあたってつぐみと蘭が「一緒に登校できない」とごねたくらい。

 ……前言撤回。実は結構大きな変化だったりする。

 つぐみに会いたい。

 斜め後ろの席に座る幼馴染はどうだろうかと視線を向けると、目が合った。

 だからといって視線を外す事は無く、まるで俺を射抜く様にじっと見てくる。

 

「……なに」

 

「なんでもない」

 

 視線に耐えかねて俺が訊ねると夕弦はそう答え、尚も俺を見る。

 

「なんでもないから、斗真は気にしなくていいよ」

 

「そう言われても」

 

 何なんコイツ。新手の五月病? 

 

「……斗真のつむじは左巻き」

 

「ねぇ俺の何を観察してんの?」

 

「斗真の生態」

 

「それにつむじの巻く方向とか関係あるの? っていうか生態って何。急にどうした怖いんだけど」

 

「テンパると早口になる」

 

「いやそうかもしんないけども。そうじゃなくて」

 

「虫が苦手。ゴキブリを見るとまるで女の子みたいな悲鳴をあげる」

 

「公衆の面前で堂々と人の弱み晒さないでくれないかなぁ」

 

 仕方ないじゃん。嫌いな物は嫌いなんだから。つか夕弦も人の事言えないくせに。

 

「重度のシスコン」

 

「それはお前もだろ」

 

「ヘタレ。優柔不断。無自覚たらし」

 

「ただの悪口じゃねーか」

 

 殴るぞ。

 

「でも優しい。いつもみんなの事を気にかけててどんな時でも手を差し伸べてくれる」

 

「……おう。ありがとな」

 

 ……なんだよ。なんか殴る気失せたな。やっぱりどんな人間にもいい所は一つでもあるものだな──。

 

「チョロい」

 

「おい」

 

 やっぱ殴る。俺は真なる意味で男女平等を尊ぶ男だからなァ……! 

 脳内でどこかの異世界冒険者(カズマさん)を思い出しながら立ち上がろうとすると、呆れ二割怒り八割の声が飛んできた。

 

「お前ら夫婦(めおと)漫才もいい加減にしろ」

 

 ──授業中だったので先生に怒られました。

 

 そんな事があっての放課後。出し物決めは喧々諤々の会議の末、休憩所に決まった。いや休憩所て。

 喧々諤々どこ行った。

 そして同時に決めた実行委員は、最初の集まりがあるという事でHRが終わり次第視聴覚室に集合なのだとか。毎度の事ながらご苦労さまと敬礼を送りたくなる。

 高等部との合同で行われる委員会は、毎年高等部の文化祭に対する熱気が凄すぎて新入りも新入りの新入生は初回から萎縮してしまうのが女子校時代からの名残りだとかを風の噂で聞いた。

 率直に言って貧乏くじすぎる。

 ──そんな中俺は、重い足を引きずって視聴覚室へ向かっている。

 あの時は驚いた。俺が寝ている間に誰かが実行委員の欄に俺の名前を書きやがった。という事でご苦労さまと俺に敬礼。

 

「ったく、なんで俺が……」

 

 その呟きに、しばらくの相方となるもう一人の実行委員が答えた。

 

「友達が言うには、『リア充は相応の勤労責任を負うべき』だそうよ」

 

「なんじゃそりゃ」

 

「あと、『夫婦は夫婦らしく共働きでもしてこい』って」

 

「なんじゃそりゃそりゃ」

 

 俺と同じくクラスメイトの策略にハマった夕弦と視聴覚室に入ると、既に席の半分は埋まっていて、正面中央のテーブルでは生徒会と思われる生徒が慌ただしく書類の整理をしている。上級生の醸し出すピリピリした空気を若干肌に感じながら、特に席の指定も無さそうなので、適当に目に付いた所に夕弦と並んで座る。

 会議が始まるまでの間夕弦と他愛無い会話をしていると、チラホラと女子の囁き話が聞こえてきた。その内の幾つかが俺を見ている事にも気がついた。

 思えば昔からこういった類の視線を感じる事はあるにはあったけれど、中学に上がってからそれが顕著になってきた気がする。

 この視線が意味するもの。それは──。

 

「……なぁ夕弦。俺の顔に歯みがき粉でも付いてるか?」

 

「っはぁ……これだから」

 

「え、何」

 

「なんでもない。この天然クソたらしが」

 

「唐突なキャラ変についていけない」

 

 どこでスイッチが入ったらそんな辛辣キャラになるわけ。俺か? 俺のせいなのか? 

 脳内で『?』が横行していると、後ろから誰かに肩を叩かれた。

 振り返れば、ウェーブのかかった黒髪の女子がにこやかな表情を浮かべて立っていた。

 ていうか牛込だった。

 

「……なんでいんの?」

 

「私も実行委員だからだよ。よろしくね、羽沢君」

 

 それだけ言い残し、牛込は席へと戻っていった。

 去り際、隣に座る夕弦を見て、牛込が薄ら微笑んだ、ように見えた。

 

「……」

 

「夕弦?」

 

「……」

 

「ちょっ、無言で脇腹刺してくるのやめてくれない?お前下手したら俺より力強いんだから……って痛い痛い!」

 

 最近俺の周りの女子の挙動が少しおかしい気がする。

 とりわけ夕弦は最近は特にどうかしている。ことある毎に俺の事をじっと見つめては溜息を吐き、見つめては溜息を吐きの繰り返し。

 一体いつからだったろうかと思い返してみれば、あれだ。GW中に秋葉原に行った次の日だ。

 呼び出されたと思ったらその日の事を根掘り葉掘り聞かされた。

 なんでも俺と牛込が喫茶店にいたのを見た様で、気になったかららしい。その時もさっきみたいに「ナチュラルボーン鈍感クソたらし」と罵られたけれど、俺にとってはなんのこっちゃだし、何ならその類については敏感すぎるまである。

 伊達に人生二週目やってない。演技力だってそれなりに付く。

 

 

 

 会議は滞り無く終わり、新たに決まった実行委員長の号令で実行委員の面々はそれぞれの帰路に就く。

 文化祭の実行委員なのに会議のノリが明らかに体育会系のそれだったのを除けばこの先もトラブル無く本番まで辿り着けるだろう、そう思った。

 そもそも実行委員長がバスケ部部長って時点でどうかしていると思うのは俺だけでしょうか。違う? そうですか。

 とにかく、そんな組織の末端の俺は無理に関わる事無く平穏に本番を迎えるべく、黙って会議に参加するだけ。

 俺達新入生に課せられたタスクと言えば、クラスのまとめ役と文化祭当日の見回りくらい。

 最初くらいは何も考えず文化祭を楽しんでくれという上級生からの有難迷惑な気遣いだと勝手に思い込み、俺もそろそろ帰るかと立ち上がってカバンに手を掛けた。

 

「ねぇ、羽沢君。ちょっといい?」

 

 牛込に声をかけられたのはその時で、俺はカバンを肩にかけると牛込の方を向いた。

 

「んあ、どうした」

 

 背後から夕弦の視線をひしひしと感じながら言うと、牛込は急に口篭り、頬を少しだけ紅く染め、伏せ気味の顔から上目遣いに俺を見る。

 

「えっと、その……」

 

 何なんでしょうか、この空気。

 都合がいいのか悪いのか視聴覚室内にまだ高等部の生徒会や実行委員長を初めまだ多くの人が残っていて、その誰もが俺と牛込のやり取りを見逃すまいと固唾を飲んで見ている。いやアンタら仕事しろよ。こっち見んな。

 

 ──ふと思い出される先日の出来事。

 

 ……あれ、これってデジャヴ? 

 

「──」

 

 そう思って機先を制しようとしたけれど、コンマ何秒か早く誰かが先に口を開いた。その声は俺の背後から聞こえてきた。

 

「ねえ斗真、外につぐみ達待たせてるんじゃなかったっけ」

 

「え……え、ああそうだったな」

 

 明らかに不自然なタイミングでの夕弦の言葉に、開きかけた口で俺はそう答えた。

 しかし、学校の外でつぐみ達を待ち合わせしているのは本当の事。委員会で遅れた分、蘭辺りは「遅い」とむくれているかもしれない。

 

「そういう訳で、ごめん牛込。話なら明日聞くよ」

 

「あ……う、うん」

 

 言って、俺は視聴覚室を出て昇降口へ。

 靴を履き替えて校門を出ると門の脇にランドセルの集団が。

 

「悪い。待たせた」

 

「もう。遅い」

 

 案の定蘭が頬を膨らませてあからさまにむくれてみせたので「ハハ、悪い悪い」とポンポンと頭を撫でると、「……うん」と許してくれた。ハハッ、チョロい。

 俺と夕弦が中学に上がってからというもの、週に二、三日の頻度でつぐみ達小学生組がここまで少し遠回りしてやって来る。

 終業時間が小学校より遅かったりするから、無理に来なくてもいいと言ってもつぐみは「でもお兄ちゃんと一緒に帰りたい」と言うので即座に前言の撤回をしてしまった。

 最近は何を思ってかちょっかいかけてくるイキった中坊もいるんだぞと蘭に警告しても、「でもどうせ斗真が守ってくれるんでしょ」といい笑顔で言われたのでなんとしてでもこいつらをロリコン中坊の毒牙から守らなくてはいけないと心に誓ってしまったのは最近の事だ。

 ……あれ、俺ってやっぱりチョロいの? 蘭並にチョロかったりするん? 

 そんなこんなで帰る賑やかな帰り道。前よりも減った、みんなでいる時間。

 少しだけ寂しいけれど、流れゆく時には逆らえない。

 だからこそ、みんなでいるこの時間の一秒一秒を大切にしていきたい。

 前を歩く妹達を見て、そう思った。

 

 

 △▼△▼△

 

 

 夕暮れ。放課後。屋上。女の子と二人きり。

 さて、問題です。

 このシチュエーションで連想される青春(アオハル)クサいイベントと言えば何でしょう。

 

「あ、あの……羽沢君」

 

 ヒントとして女の子の頬は朱が差し、とても次の句が告げそうに無く手許を忙しなく動かせています。

 

「わ……私、と」

 

 正解したら欲しいものを何でも差し上げましょう。

 弦巻家の財力に誓って。

 

「私と……バンドを組んで下さい!」

 

 はーい、答えが『告白』だと思った人ー。ざんねーん。

 正解は『とても紛らわしいバンドの勧誘』でした。という事で皆さんのひとしくん人形は弦巻家の小切手と共にボッシュートでーす。

 またのご参加をお待ちしておりまーす。

 

 ……ふぅ。

 現実逃避はこのくらいでいいかな。

 

「⋯⋯で、なんで俺?」

 

 文化祭の実行委員があった次の日。普通に授業を終わらせた俺の元に牛込がツカツカと床を鳴らしてやって来たと思えば、昨日とは打って変わった毅然とした態度で、「上原さん、羽沢君借りてくね」と告げ、あれよあれよという間に屋上まで連れて来られてしまった。

 休み時間の度にオドオドとこちらの様子を見ていたのには気がついていたから、牛込が来た時はてっきり昨日の焼き増しになるのかを肝を冷やした分、その態度の変り様には驚いた。

 あ、それとさっき教室で「修羅場だぁ!」と叫び回った佐藤。後で覚えてろよ。

 とまあ、いろいろとツッコミ所がありながらもなすがままに屋上についてきたと思ったらまたこの状況である。どこもかしこもツッコミ所で現実逃避したくなるのくらいは許して欲しい。

 取り敢えず、理由を訊ねると牛込は相変わらずモジモジしながら答えた。

 

「それは⋯⋯羽沢君がギターを弾いてるのを知って、羽沢君以外に音楽やってる人なんて知らないし⋯⋯」

 

「ふーん」

 

「それに、いつかバンドを組んでライブがしたいっていつも思ってて」

 

「なるほどねぇ⋯⋯」

 

 牛込の気持ちを聞いて少し考える。

 瞑目し、意識のリソースの幾らかを思考に割く。

 恐らく、いや、十中八九牛込の言う事は紛れもない本心だろう。俺以外にギターをやっている人がいない事も、彼女の夢も。

 それに加えて牛込はこっちに越してからまだ数か月しか経ってないという事を鑑みると、四月の邂逅以来俺に絡む回数が多いのもわからなくもない。

 ならば──。

 そう思い、牛込を見ると、彼女は俯いてスカートの裾をギュッと強く握りしめていた。

 それを見て、俺は会議前からの彼女の一連の行動にも納得がいった。

 特に理由も無く俺に話しかけた時も、理由が無い様に思ったのはこちら側だけで本人は元からこの話を切り出したかったのかもしれない。

 ただ、ちょうど夕弦の挙動がおかしかったせいで言い出せずに、あんな風になってしまった。察するに、そんな所だろう。

 加えてこれまで誰かに「バンドやりませんか」と声をかけて回った訳でもないから、そのセリフを言うのにもそれなりの勇気が要るのも頷ける。

 やっと言えた、というよりかは遂に言ってしまった。そんな風な気まずい辺りに漂わせている牛込に俺は回答を告げる。

 

「……わかった。いいよ」

 

「……! ほ、本当に……?」

 

「ああ、いいよ。バンド組もうか」

 

「あ、ありがとう!」

 

 まるで何かの重圧から解放されたかの様に表情をパァっと輝かせる牛込に思わずこちらも顔を綻ばせる。

 こうして、俺と牛込はバンドを組んだわけのだが、実際俺も心のどこかでこうなる事を願ったり。

 かく言う俺もこれまでセッションはすれどバンドは組んだことは無いから、俺自身も今から結構楽しみだったりする。

 お互いバンド初心者で、似通った音楽価値観に、ギター×ギター。

 どんな化学反応が起こるのか、なんだかワクワクしてきた。

 屋上を吹き抜ける爽やかな風は、俺達の新たなる船出をささやかながらに祝福してくれている様で。

 目の前で笑う彼女とどんな音が奏でられるのか、どんな可能性が見い出せるのか。

 そんな期待を俺は黄昏の空に馳せて、静かに願った。

 

 

 

 △▼△▼△

 

 

「……ん?」

 

「どうしたの?」

 

 昇降口にて、上履きに手をかけた時である。

 違和感を感じて声をあげると牛込がそう聞いてきた。

 

「……なぁ、さっきはそのままスルーしたけどさ」

 

「うん」

 

「編成はどうするんだ? ギター二人じゃアンバランスすぎないか?」

 

「あー……えーっと……」

 

 どこか気まずそうに視線を泳がせる牛込。

 

「それに、作詞なり作曲なり、アレンジとかできる? ちなみに俺はできない」

 

「あー……うん。前向きに検討、という事で……?」

 

 前言撤回。暗中模索どころかお先真っ暗でした。

 いや、これからどうすんだよマジで。




25話でした。

先日、大まかなプロットを確認した所、25話辺りで香澄がランダムスターを見つける事になっていて、話作るの下手くそかと大変忸怩たる思いになりました。
という事で、これから少し巻きで話を進めて行こうかなと思います。
だって早くメインストーリーに乗せたいんだもん。

なので、読書様には読んだ時に少し違和感を感じたりする事もあると思います。どうか御容赦下さい。
こいつこの前も同じ事言ってねぇかとか思っても、それは勘違いです。
……勘違いです!

高評価、お気に入り登録、感想ありがとうございます。
もし、文章や内容に齟齬があった場合は感想にてお知らせ頂くと幸いです。
その他の感想もお待ちしております。

ではまた26話で。
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