転生してみませんか? 作:RyuRyu(元sonicover)
3話です。相変わらず短いです。
何故かと言われれば、気分としか言えないです。
「きりーつ。きよつけー。れー」
さよーなら。
瞬間的に騒がしくなる教室内。そこかしこでこの後どこで遊ぶー!とか誰々んちしゅーごーね!とかジャン負けで荷物全持ちね!とか、とにかくうるさい。
つか、最後。それだけはやめとけ。最悪いじめに発展するしそういうのは大体言い出しっぺが痛い目見るのが相場なの知らないのか?ほら、負けてやんの。
ランドセルを背負って教室を出ようとすると女子に後ろから声をかけられた。どうやら週末一緒に出かけないかのとの事。もちろん断った。週末はゲームする予定だから。今どきの小学生ってこんなにませてんの?あらやだ怖い。
▲▽▲▽
転生してから早五年。現在幸せな転生生活を送っている。
転生した直後は多少、いや、かなり混乱した。
それなりの覚悟はしていたけど、いざ二歳児に転生となるとまともに言語でのコミュニケーションが取れずに苦労した。
それでも、近所の人に扮した死神さん達がいろいろと助けてくれた。死神さん下界に降りて大丈夫なんですかね。
でもまあ、特に何も起こらずここまで平和に暮らせてきたのは死神さん達、ひいては閻魔大王様のおかげなので彼らには感謝してもしきれない。
今度死神さん達にパンでも買ってあげよ。
曲がり角を幾つか曲がると、いつも通る商店街が見えてきた。
というより、商店街に家があるんだけど。
顔見知りとなった死神さんや商店街の人達から声をかけられる度に俺も挨拶する。さすがに見た目は子供でも中身は成人してるから元気よくはできないけど落ち着きのある子っつー事で勘弁して欲しい。どこぞの名探偵みたいに器用に使い分けなんかできない。
そういえば。
その彼。見た。テレビで。相変わらず土曜日の夕方におっちゃん眠らしてはサッカーボールで犯人を気絶させていた。
どうしようもなくシンパシーを感じた。
商店街でも一際賑やかな交差点に辿り着くと、左右からパンとコロッケの匂いが同時に漂う。
空腹時にこの交差点を通ると、財布の中身がいつの間にか減るという怪奇現象が起こると俺の中で専ら噂の交差点を通り抜けるともうそこは我が家である。
一階で喫茶店を営む我が家の扉を開けるとベルの音と共に香ばしいコーヒーの香りが俺を包む様に漂ってくる。
裏に玄関はあるけれど、この瞬間がたまらなく好きだからいつも学校の帰りは店の入口から帰るようにしている。
「あら、お帰り。斗真ちゃん」
「こんにちは。上原さん。宇田川さん。いつもありがとうございます」
この時間帯の常連客の上原さんと宇田川さんに挨拶をして、厨房にいる父さんの元へと駆け寄る。
「ただいま、父さん」
「おお。斗真か。お帰り。上でみんな待ってるぞ」
コーヒーを挽く父さんに返事して俺は二階の自宅へ向かう。
「ただいまー」
「お帰り!おにーちゃん!」
リビングのドアを開けた瞬間に腰元に誰かが抱きついてきた。多少驚きはするが毎度の事だからと今はもう可愛いものである。
出迎えてくれた可愛い可愛い妹の為にその可愛い可愛い栗色の髪を梳くように撫でる。
「ただいま。つぐみ」
「うん!」
満面の笑みをこちらに向ける
なんだか心がキレイになったよ。さすがつぐみ。可愛すぎる。
──俺の名前は羽沢斗真。
転生装置がランダムに決めた転生先は、ガルパの世界。
そして羽沢つぐみの兄として転生した。
……マジでヤバい(語彙力)。
3話でした。
取り敢えずこの話で序章というかなんというか、次回からは羽沢斗真としてほのぼのライフをお送りします。
ちなみに、死神さんは羽沢珈琲店の常連の大学生に扮しています。転生の時に都合よく書き換えられて、商店街でもある程度顔が利く存在になってます。