転生してみませんか? 作:RyuRyu(元sonicover)
でもどちらかと言えばロリグロと一緒にパン屋さんごっこをしたい人生だった。どうもRyuRyuです。
「そのメロンパンください」とか言われて、「メロンパンだけでいいんですか」とか言うと、「それじゃあ、RyuRyuもください」とか言ってきて……。
グヘ、グへヘへ……。
大変申し訳ございませんでした。
本編です。
夕弦の誕生日を翌日に控えて、俺は店で行われる誕生日パーティーの買い出しに近くのショッピングモールに訪れていた。
出かけ際に母さんから一言、「夕弦ちゃんのプレゼントも忘れないように」。
……いや、ママン。なんで知ってるん。
てな訳で、明日のパーティーの買い出しのついでにアイツの誕生日プレゼントを買いに来ていた。
決して買い忘れていたとかそういうのではなく、ただ単に俺がアイツに何を渡すのかを決めあぐねていただけである。
夕弦は元から物欲がそんなに無いタイプで、小さい頃からあれが欲しいこれが欲しいといったわがままをあまり聞かなかった。
だから贈る方としては困る訳で、ああでもないこうでもないとしているうちに前日になってしまっていた。
冷房の効いたモール内には様々な専門店や用品店が建ち並び、贈り物の選別には困らない。
が、それでもなかなか決められず、夕弦に聞こうにも聞きづらい。
何故かと聞かれれば、やむにやまれぬ深いワケが無きにしも非ずでもなく、ただ単純に、何となくそんなふうになっていたから。
──あれ以来、夕弦とは顔を合わせていない。
そもそも休み中、俺は店の手伝い、夕弦は部活で顔を合わす機会がそれまでと比べて一気に減ったお陰で、アイツの真意を聞くに聞けない状況にある。
俺は俺で考えてはみるものの、やっぱりアイツが何を思ったのか分からないでいる。
……いや、違う。分かりたくないのかもしれない。
アイツの事を分かろうとする事から無意識的に逃げているのかもしれない。
アイツとのそれなりに長い付き合いの中で初めて目にしたあの表情、あの感情にどこかで動揺してしまって、俺の中のアイツがよく分からなくなって。
俺の知らないアイツに、知らず知らずに慄いてしまったのかもしれない。
それで、そんな自分勝手で自己中心的で自己満足な思考を脳内で繰り広げる俺に辟易しているからこそ──。
「……寒っ」
──効きすぎた冷房は俺の思考をクールダウンさせることなく、かつ俺を責めるように俺の身体を震わせる。
まるで、あの時の
△▼△▼△
それにしても寒い。
明日のパーティーに必要なものは全て買い込んで、あとは夕弦へのプレゼントとなってからかれこれ二時間弱。
冷房がガンガンに効いたモール内にそれだけいりゃ身体が冷えるのは自明の理なのは確かだけれど。
この冷えた身体を温めようにも、外に出たなら出たで今度は茹だる様な暑さが襲いかかる。気温の融通が効かないにも程がある。
そんな悪態をつきながらモール内を歩き回っていると、俺がいつもお世話になっている楽器屋の前まで来ていた。
「……あ、そういえば」
替えの弦のストックとポリッシュがそろそろ無くなりそうだった気がする。思い切って弦はメーカーと材質を変えてみようか。流行りのあの曲のTAB譜も今日発売だったっけ。ああ、あとピックも買っておいた方がいいか……お金足りるかな……?
「……はっ、いつの間に」
気がつけば、俺は買い物カゴを片手に店内をいろいろと物色していた。弦、オイル、ポリッシュ、それに数冊の音楽雑誌。カゴの中にそれだけ入れてあるのにも関わらず手には数枚のピックを持ってあれこれと吟味していた。
……俺は悪くない。こんな所にある楽器屋が悪いんだ。
よく分からない言い訳を誰に言うでもなく呟き、ピックをカゴの中へ。
「あっ、そうだスコアスコア……」
どうせ来たなら、カゴの中のものを戻すのも手間だから、買うものだけ買って帰ろう。
音楽雑誌とは別の、教材本や楽譜が売っているエリアに向かうと、お目当てのスコアブックが店員お手製の可愛らしいポップと共に平積みされていた。
「……」
平積み、というかあと一冊しかなかった。
多分もうしばらくしたら店員が補充しに来るだろう。
こういうシチュエーションって、手に取ろうとしたら同じものを狙っていた可愛い女の子と手が触れ合ってラブコメの波動が──?
この先の俺の中学生活はどうなっちゃうの!?
……まあそんな事ある訳が無いので、躊躇わずに俺は手を伸ばした。
「あっ……」
スコアブックに手が触れたその時、俺の手の上に女性の手が添えられた。
「は……?」
一体誰だとその人の腕を伝う様に顔を上げる。
まさか……きたのか? ラブコメの波動ってやつが……!?
ラブストーリーは突然になのか!?
「あっ、羽沢のはーちゃんじゃん! こんにちパーティー♪」
「あ、チェンジで」
「なぁっ!?」
ショッピングモールの二階にスタバがある。
その窓際の奥の席に一組の男女が向かい合う様にして座っていた。
男の方は言わずもがな、俺であり、夕弦の誕生日プレゼントの予算を財布と相談している。
俺の前に座って、えらく幸せそうな顔をしながら夏の新作フラペチーノを飲んでいるのが二十騎ひなこ。小学校の時のクラスメイトである。
あとバカである。
「う〜ん。柑橘系の爽やかな香りと酸味、クリームの甘さ、タピオカの食感が絶妙にマッチしてフロマージュ! あれ、ボンソワール? どっちだったっけ? まぁいいや、とにかくフラペチーノ!」
「ああはいはいフラペチーノフラペチーノ。いい加減黙れ」
フロマージュもボンソワールもどっちも違うし。挨拶してどうすんだよ。
「んもぅ、羽沢のはーちゃんはつれないなぁ。ほら一緒に、フロマージュ!」
「うるせぇ黙れ。チーズをフュージョンみたいに言うな」
見ての通り、バカである。さっきからコメントがあっちこっちに四散してこっちとしても会話のペースが掴めない。そもそもこいつとの会話で掴めるペースが無い。気がついたら二十騎の独壇場になる。
思わず「チェンジで」と言ってしまったが為に「傷心した!」とどこかの総理大臣ばりに喚く二十騎を落ち着かせる為にスタバの新作で手を打ったまでは良いものの、今更になって放っておいた方が良かったんじゃないかと若干後悔しているどうも俺です。
「それ飲んだら帰れよ。俺この後も用事あるから」
「ふんふん、用事とはユヅちゃんの誕生日プレゼントと見た」
「んなっ、なんで知って……はっ」
「ふっふっふ。引っかかったね! そうなのだ! これはひなちゃんの必殺『カマかけてみたら案外ボロ出しそうだからかけてみよう』だったのだぁ! チョロいねぇ、羽沢のはーちゃん!」
「ぐっ……、この野郎……っ!」
凄い悔しい。よりによってこいつにカマかけられたのがすんごい悔しい!
でも何も言い返せないのが辛い!
「ふっはっはー!」
殴りたいこの笑顔!
「まあ私もユヅちゃんには誕プレ送ろうとは思ってたからね。志は同じなのだよ、友よ!」
「そんな志今すぐにでもかなぐり捨てたいけど……、まあ、そんなとこだ。アイツに贈る誕プレで迷ってる」
観念して素直に打ち明ける。距離感が微妙な所は伏せつつ話すと、二十騎は残り半分くらいあったフラペチーノをズゴゴーと一気に飲み干すと、
「それじゃあ私と一緒に探そうよ! ひなちゃんがいたら二十人力だよ? 二十騎だけに!」
実に清々しい表情でそう言った。
けれど、そういう脳天気なヤツ程こういう時には有難くもあって。
「百人から減ってどうする……けどまあ、頼むわ」
二十騎のそういう所にあてられたのか、少しだけ気が楽になった俺は二十騎の申し出を受け入れる事にした。
「あっ、頭痛い! キーンってする! アイスクリーム頭痛フラペチーノバージョンってやつ!」
……やはりバカなのには変わりはないが。
△▼△▼△
それから二十騎とモール内を見て回って、夕弦へのプレゼント探しを再開した。
アイツが無欲だという事を二十騎に話すと、
「それじゃあ羽沢のはーちゃんの体にリボン巻いて『俺がプレゼントだ』って言っちゃえばイイじゃん!」
「アホかお前。想像してみろ」
「……うぇ、気持ち悪い。冗談でも気持ち悪い」
「てめえこの野郎。そういう時だけ真顔になんなよ」
自分で言っておいてなんだそれは。俺も想像して気持ち悪くなったじゃねぇか。
それとマジトーンで言うな。余計傷つくだろ。
「でも……うーん、何がいいんだろうね! ひなちゃんわかんない! パーッとガっーっと決めちゃおう! 世の中大事なのはフィーリングだよ!」
二十騎のその喚きに、「何でもいいだろ」と答えたくなったけれど、それならこんなに迷っていない。やっぱり俺の中でどこかアイツに思う所があるのだろう。あの時の去り際の表情と言葉がどうも引っかかっている。
「うるさい黙れ……そう言えば、二十騎って何か楽器やってんのか?」
少し気になって訊いてみた。
「ふっふっふ……お目が高い。そのとーり! 最近ドラム始めたんだよ! なんかこう、ティン! ときてね」
大方予想どおりの返答が返ってきた。つかなんだよティンと来たって。どっかのアイドル事務所の社長かよ。
「へぇ、そうなのか」
そのうち牛込と組む日とか来るのかな。その時に俺はいるのかな? ……いや、こいつと組むとか疲れるから願い下げだな。
そんな事を考えていると、二十騎が声をあげた。
「あっ、あそこなんてどう? ティンって来た! ティ──ンって!」
二十騎の指さす先には小ぢんまりとしたアクセサリー屋。どう見てもテナントとテナントの隙間に捩じ込んだとしか思えない佇まいはさっき気がつかなかったのも頷ける。
「そうだな……行ってみるか。あとうるせぇ」
二十騎の提案に乗っかり、店内に入ると、ピアスやブレスレットなどのアクセサリーがびっしりと陳列されていた。
「……あ、これ」
そのうちの一つ、向日葵があしらわれたネックレスに興味を惹かれた。
そういえば、アイツがこういうのつけている所をあまり見たことがない。というよりそもそもアイツがこういったアクセサリーの類を持っているのかどうかすら怪しい。
「うーむ……」
アイツがこれをつけている所が想像できない。
できないからこそ、見てみたいという好奇心が首をもたげているのも確かではある。
「……まあ、いいかな」
「おっ、決まった?」
「まあな」
「ふーん、へぇー、なぁるほどねぇ〜」
「んだよ」
二十騎がニヤニヤと俺を見る。なんだってんだ、一体。ムカつくなぁ。
「羽沢とはーちゃんはユヅちゃんに『ネックレス』を贈るんだね! いいと思うよ! せいさい? だもんね!」
「ぐっ……」
痛い所を疲れた。ヤケにネックレスを強調したという事は、これがどういう事なのかは知っているという訳で。
ついでに正妻の意味は知らないという訳で。
「知ってんのかよお前……」
「むっふっふ……まぁね! ひなちゃんにかかれば御茶ノ水さいさいよ!」
「なんで日本語使えないのにこういうのは知ってんのかな……」
正しくはおちゃのこさいさいだし、言葉が合ってたとしても使い方が間違ってる。こいつはアホか。アホガールか。
しかし……ネックレスを贈る意味を考えない様にしてたのだけれど二十騎に指摘された今、否応にも考えてしまう。……って俺はこんな事にも目を背けているのかよ。相変わらず情けないな……。
「……まあ、うん。そうだな」
「おおー! 羽沢のはーちゃんがついに、ついにだよ! これは大ニュースだよフォ──ー!!」
「うっさい。うっさいから黙れ。迷惑だから」
いやホントに。周りの人に迷惑だからお願いだから黙って。
これ以上二十騎に騒がれても癪なのでそそくさとレジに持っていき、ラッピングしてもらう。
「おっ、買ったかい? 買ったのか? 買ったんだね!」
「何その三段活用……あと黙れ」
やっぱりコイツといるとペースを持ってかれてやりづらい。早く帰りたい。
「まあ、サンキュな」
それでも、この店を見つけてくれたのはコイツだからと、申し訳程度で感謝を述べると、二十騎はむふふんと胸を張って、
「いいって事よ! でももっとひなちゃんを褒めて! ひなちゃんってば褒めて伸びる子だからもっと褒めて!」
「クッソこの野郎超殴りてぇ」
今すぐ俺の申し訳程度の感謝の心を返して欲しい。
でもまあこれで買いたいものも買えた。後は明日渡すだけ。
……これを渡してアイツはどんな反応するんだろう。そんな事を考えてその時の顔を想像しようとするけれど、どうしてか、出てくるのは最後に見た何かを噛み締めて堪える様な表情。それ程までに俺の中で強く印象に残っている。
そういえば、アイツは今日バスケの試合だったっけ。これに勝ったら都大会に行けるんだったか。本当は応援に行きたかったけれど、明日の準備を言い訳にして結局こうやって向き合うのを避けてしまっている。
……我ながら本当に情けない。このままだと目の前にいる
「それじゃ、またな。ドラム、頑張れよ」
一刻も早くここから離れたく踵を返すも、素早く伸びた腕に捕まってしまう。
「あああぁ! 待って! 待ってよ羽沢のはーちゃん! ひなちゃんのお願いも聞いて! お願いだよぉ! お願いシンデレラだよぉ!」
「……」
さっきまでのシリアスなテンションを返して欲しい。
なんだか一気に毒気が抜かれた様な気持ちになる。
「……何」
「ひなちゃんのプレゼントも一緒に探してぇ──!!」
「分かった。分かったから引っ付くな離れろ!」
結局、二十騎のプレゼント探しに付き合う事になって、家に帰れたのは陽が沈んだ後だった。
31話でした。
二十騎ムズい。ハイテンションなフォーーーがウィーーーでティーーーンだったのでとてもズドォーーンでした(語彙力以前)。
次回はまた近いうちに出します。頑張りますので、お楽しみに。
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ではまた32話で。