転生してみませんか? 作:RyuRyu(元sonicover)
できることなら、モニカの誰かを絡ませたい。なんならRASも。どうも、よくばりRyuRyuです。
今回は割と急展開。
決してなんか中だるみしそうで嫌だったからとか、面倒くさかったとか、そういうのではありません。
……そういうのじゃないんだからねっ。
拝啓。親愛なる妹、つぐみへ。
元気ですか?
つぐみがこの手紙を読む頃には、お兄ちゃんは死んでいるでしょう。社会的に。
お兄ちゃんは今、同級生の女子の目の前でパンツ一枚で正座しています。
つぐみなら、「なんだそんなこと」と思うのかもしれません。なぜなら、お兄ちゃんが風呂上がりにパンイチでギターを弾いてるのを知っているから。
でも、それは他ではあまり無い事みたいですよ。だから、下手に言いふらしたりはしないでください。何も知らないはずの蘭にゴミを見る様な目で見られたのは今回は許してあげます。お兄ちゃん優しいからね!
物分りの良くて良い子なつぐみなら、もうそんな事はしないとお兄ちゃんは信じています。……本当に言わないでね? 信じてるからね?
ともかく、お兄ちゃんはこれから社会的に死ぬと思います。
でも、悲しまないでください。笑わないでください。……笑わないでください。
つぐみに笑われたらお兄ちゃん泣きます。人目を憚らずに泣く自信がお兄ちゃんにはあります。そしたらまた社会的に死んじゃうね。永遠ループだね。
だから、お兄ちゃんが例え社会的に死んでも、つぐみはこれまで通り、蘭やみんなと仲良くしてください。別にお兄ちゃんがいてもいなくても変わらないとか言わないでください。
お兄ちゃんはつぐみの幸せを心からお祈りしております。
P.S.
動画投稿が牛込にバレました。なんか恥ずかしすぎてお兄ちゃん穴があったら入りたいです。
△▼△▼△
「……お前たち」
『は、はい……』
「……小便はすませたか? 神様にお祈りは? 部屋の隅でガタガタふるえて命乞いする心の準備はOK?」
『……ヒッ』
怖いです。怖いですよ牛込さん。なんであなたがHEL〇SINGを知っているのかは今はウエストサイドに置いといて。
「あ、あの……牛込さん?」
「何かしら。変態君」
「うぐっ……えっと、そろそろ服を着てもよろしいでしょうか……?」
「は? そんな事私が許すとでも?」
「で、ですよねー……はい。すんません」
いや、何が「ですよねー」だよ。どこも「ですよねー」じゃねぇだろ服着させろよ。
そう思うだけ。口にしたら殺される。社会的に。具体的に言えば、牛込の手に持つスマホで写真を撮られて無い事無い事添えられて晒される。
つか、なんで牛込がここにいるんだよ。待ち合わせ時間はまだ先だし、そもそも場所はここじゃないだろ。
「あ、あの……牛込さん?」
「何かしら露出狂君」
「ぐはっ……えっと、どうして牛込さんはここにいらっしゃるんでしょうか……?」
「……何。いちゃ悪いのかしら?」
「い、いえ。そんな……滅相もございません。どうぞ、いくらでも居て頂ければ」
何が「滅相もございません」だよ。滅相もクソもねぇよ。なんでお前がここにいんだよ。
そう思うだけ。口にしたら殺される。物理的に。具体的に言えば、牛込の手に持つギターで脳天かち割られる。良い子のみんなはギターをそんな凶器に使っちゃダメだかんな。斗真お兄ちゃんとの約束だぞ。
「……ドS」
「何か言った?」
「いや、何も言ってません。はい」
怖い。怖いです牛込さん。その笑顔がなんだかとても怖いです。
「……はぁ。で、君達はバンドメンバーの私に隠れてコソコソとこんな事をしていたのね」
牛込がハンガーに下げられたツ〇ッドのスーツを指さす。……なんか抜け殻みたいで虚しいぞツェ〇ド。
それはともかく、今の牛込の発言には一つ間違いがある。
「な、なあ牛込? 順序が違うと思うのだがそれは」
「何か言った?」
「いえ、なんでもないです。はい」
だから怖いんだってその笑顔。ハイライトどこいったの?
「で、どうなの?」
「……はい。そうです。すみませんでした」
否定するのも無理だと悟り、不承不承ながらも頭を下げて謝罪する。ついでに隣に座る死神さんの頭も抑え込む。「うげっ」という呻き声と地面と頭がぶつかる鈍い音が隣から聞こえたけれど、そんなの僕知らない。
「……まあ、いいわ。今日来たのは別の理由だし。……ほら、りみ」
冤罪ってこうやって生まれるのかと戦々恐々としていると、急に機嫌を直した牛込が別の話題を切り出した。
牛込が促すと、彼女の陰からおずおずと少女が顔を出した。
牛込ゆりの妹、りみは未だにパンツ一丁で正座する俺を見て、まるでりんごみたいに顔を赤くしてまた姉の陰に隠れてしまった。
「……羽沢君」
「ん、どうした?」
「いいから早く服着てきなさい!」
「えぇ……さっき着るなって言ったクセに?」
「何か言った?」
「……ヒェッ」
いや、だからさ、その笑顔やめて? おーい、ハイライトさーん、表情筋さーん、仕事してくださーい。
△▼△▼△
「は、初めまして……牛込りみです」
「初めまして、羽沢斗真です。そこのドS……ゲフンゲフン、君の姉の同級生でバンドメンバーだよ。よろしくね」
「は、はい。よろしく……お願いします」
「うん。よろしく」
なんだこの庇護欲をそそられる小動物みたいな可愛い子は……!
どっかの姉とはまるで違うじゃないか! 話が違うぞ。俺は部屋に戻らせてもらう!
「ちょっとハザワ君?」
「……ヒャイ」
殺気を感じた。フラグなんか簡単に立てちゃダメだね。お兄ちゃん一つ学んだよ。
「うちの
「……え、何その言い草。俺がいつ、どこで誰をタラシこんだんだよ」
「はぁ……。これだからナチュラルボーンクソタラシ思わせぶり野郎は」
「またそれ……あれ? なんか増えてない?」
「そう? 気のせいじゃない?」
「そうかぁ、気のせいなのか。……気のせいなのか?」
「気のせいよ。気のせい」
なんだか釈然としないけれど、牛込から圧を感じたため、これ以上の追及を止める事にする。
「それより、そろそろSPACE行くよ。詳しい話はそっちで聞くから」
「え、あ、おう」
この後、SPACEにて牛込の追及はそれはもう凄いものだった。
練習なんかそっちのけで動画投稿に関しての質疑応答に終始してしまい、なぜか俺がオーナーに叱られた。解せぬ。
ついでにと言っては言い方が悪いが、りみちゃんも俺達の動画のファンだった。一緒に持ってきた三百万のギターに目を輝かせていた。可愛かった。
「あ、羽沢君」
バンド練習を終え、牛込と昼飯でも食べに行こうかと話しながらロビーを通り過ぎた時、真次さんに声をかけられた。
「どうしたんですか、真次さん」
「オーナーが羽沢君に話があるって。今裏にいるよ」
「え、オーナーが?」
珍しい。実に珍しい。いつものオーナーなら練習中にフラっと来ては俺の演奏にケチつけてまたフラっとどっかに行くから、この時間にオーナーがここにいる事自体が珍しい。
「分かりました。……悪いけど、先に駅前に行っててもらえるか」
「わかった。場所はいつものファミレスでいい?」
「ああ。ドリンクバー頼んどいて」
「りょーかい。それじゃ、行くよりみ」
「うん。また後でね、羽沢君」
まだ完全に打ち解けてはいなくて、おっかなびっくり手を振るりみちゃんに振り返して姉妹を見送る。
受付裏のバックヤードに入ると、オーナーが何枚かの書類に目を通していた。
いつもは見ないオーナーのその真剣な顔につられて、場にちょっとした緊張が走る。
「何の用ですか、オーナー」
「ああ、来たかい羽沢。お前に話したい事があるんだよ」
オーナーは手に持ってた書類を机に置くと、息を一つ吐き、キッ、と鋭い視線を俺に向けてきた。その圧に押されて思わず俺も背筋を正す。
その眦からは、どこか躊躇いの色が見えた。
「……単刀直入に言う。来年からイギリスにギター留学に行かないか?」
「……え?」
オーナーの突然の提案を上手く飲み込めずに聞き返してしまう。俺が、留学……?
「イギリスに住む知り合いがこの前のライブに来てな、是非お前をロックの本場で鍛えたいんだと。……まったく、年老いて引っ込んだからってやる事がいい加減なんだよあのババァは」
盛大なブーメランなんだが気づいてないのかこのババァは。
「殺されたいのかい?」
「いえ、何も」
怖い。鋭すぎて怖いよこのババァ。
「……でも、あのババァも言う通りだとアタシも思う。羽沢、お前は化ける。正直、アタシの手に負えるのが惜しいくらいだ」
「……」
真次さんに聞いた事がある。SPACEでギターを弾く度に何かと言いに来るオーナーは、何様で何者なのか。
オーナー──都築詩船は、かつて全国ツアーを行う程名の知れたバンドマンだった。確かに、オーナーが俺に口を出す時はいつも重箱の隅をつつく様な指摘で、弾いてる俺が気づかない位小さなミスが多かった。
そういった指摘からでも、伊達に音楽で金を貰ってた訳じゃないんだなとある種の関心と尊敬を寄せていた。絶対表には出さなかったけれど。
そんなオーナーが開いたライブハウス《SPACE》は、オーナーが現役の時から感じていたという、「バンドは怖い」というイメージを払拭する為に開かれたものらしい。
ともかく、滅多に他人を評価しないオーナーが自分には手に負えないと言った。それ程までに俺のギターの腕前は上達してたのか。まだ中一ぞ。
「だから羽沢、私はお前の留学を薦める。もうお前の通う教室には話を通してある。親御さんにも、教室の方から話してもらう。だが、決めるのはお前だ。期限は夏一杯。悔いの無い方を選べ」
そう言うなり、オーナーは手元にあった書類を俺に寄越してきた。ざっと見、留学に関する書類で、留学先の学校や、通う教室などのパンフレットが数冊、全部英語で書かれてあった。
一方的に話して、オーナーはバックヤードを出ていく。それすらも気づかない程に、俺は状況の整理に追われていた。
「俺が、留学……」
無意識に出たその言葉は、誰も聞くことも無く、空調の効いた室内に消えていった。
夏が終わるまで、あと二週間。
34話でした。
だから言ったでしょ。急展開だって。
なので読者様方に何があろうと、当方は一切の責任も負いません。あしからず。
高評価、感想お待ちしております。
ではまた35話で。