転生してみませんか?   作:RyuRyu(元sonicover)

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こんにちは。

なんだかんだ言ってリアルで演奏するってなると一番難しいのアフグロ説を推したい。どうもRyuRyuです。

モカと巴上手すぎねぇかと思うのは作者だけでしょうか。

では、本編です。


35話 タイトル難産のけふ此の頃

「──君、……沢君! 羽沢君!」

 

「──ん? ああ悪い。何?」

 

「何って……聞いてなかったの?」

 

「悪い。ちょっと考え事してた」

 

「もう。ちゃんと聞いてよね」

 

「だから悪かったって。……で? 何、なんか用?」

 

「え、えっと……その、……改めて言うのも恥ずかしいわね……だから、私も、羽沢君と一緒に動画を撮りたいの」

 

「……えっ、は?」

 

 さっき言われた留学云々の事で頭がいっぱいになっていた中での牛込の提案に正直脳内がオーバーヒートしそうなどうも羽沢斗真です。

 

「……え、待ってちょっと待って少し待って」

 

「そんなに慌てる事かしら……」

 

 誰が何と言おうとこの状況で慌てずにはいられない。なんだかそこはかとなく牛込が落ち込んでいる様な気がしないでもないけれど、そんな事は今はどうでもいい。

 取り敢えず、今までの状況をしっかりと頭の中で整理して……。

 えっと、弦巻家のスタジオで明日のリハして、死神さんと血〇戦線ごっこしてたら牛込に動画投稿がバレて、ファンだった牛込姉妹にSPACEで詰め寄られて、オーナーに呼び出されて一方的に留学の話を持ちかけられて、頭がまとまらないまま駅前のファミレスで牛込姉妹と合流して、牛込姉に一緒に動画撮りたいと言われる。

 

「…………」

 

 ……今日一日で急展開すぎね? 

 

「あ、あの、羽沢君?」

 

 おかしいだろいろいろありすぎだろ詰め込みすぎだろマジでもうどうなってんの主人公みたいじゃんこんなの。

 

「羽沢君……? おーい」

 

 特にあれだよ。留学の話。急展開すぎて未だに展開についていけてないわ。え、何、留学? ナニソレオイシイノ? 

 

「羽沢くーん、おーい。羽沢ー」

 

 ……あー、なんかイライラしてきた。唐突に一方的に言うだけ言ってどっか行ったオーナーに腹がたってきた。何なんあのババァ。あの紫の毛毟り取ったろか? 

 

「おーい羽沢ー、羽沢。はざ…………斗真君……

 

「……店員さんすみませーん。デラックスジャンボエクストリームファイナリティパフェリターンズください」

 

「ちょ、羽沢君!?」

 

 

 

 

 △▼△▼△

 

 

 

 

 程なくして運ばれた山脈級のパフェを数分で完食し、改めて牛込の話を聞けば、前々から俺の事が怪しいと思っていたみたいだった。考えてみれば、ギターと衣装が奇抜なだけで演奏方とかはまんま俺だったから、バレるのも時間の問題だったのかもしれない。

 それで、やっぱり俺がその本人だとわかった事で牛込の中で、俺──正確に言えば配信者の俺が、画面の向こうの「憧れ」から手を伸ばせば物理的に届く位置にいる「目標」になったのだとか。

 その「目標」にいち早く到達するにはどうしたらいいのか。牛込が考えた先に出したのが、

 

「本人が目の前にいるなら、本人と一緒にやれば自然と上手くなる」

 

 だ、そうだ。全く、逞しいのか強かなのか。

 ここで素直にOKと言えればいいのだけれど、思いとどまってしまうのが俺の悪い所と言うか、前世から受け継いでしまった所であり。

 

「でも、大丈夫なのか? すげぇ嫌な言い方するけど、俺、周りから見れば凄い上手いらしいぞ?」

 

 怒るだろうなぁ。また正座させられてHELLS〇NGごっこするのかなぁ、とか思いながら聞くと、牛込はあっけらかんと答えた。

 

「もちろん知ってるわよそんなの。一緒に弾いたら多分、羽沢君の実力と比べられるのもわかってる。私とライブした時も、羽沢君が手加減してるんだろうなぁとも思ってた」

 

「だったら……」

 

「それが今更何よ。そんな事言われなくなるくらいに私が上手くなればいいだけの話じゃないの」

 

 あっけらかんと、まるでそうするのが当たり前だというふうに、そしてそれを絶対に実現してみせるというふうに、胸を張って言いのける牛込が俺にはとても眩しく見えた。

 と、同時に、申し訳なさでいっぱいになった。

 留学の件について、独断では決めず、牛込含め色んな人に相談してからじっくり考えて決めようと、さっきパフェを食べながら俺は考えた。

 牛込が俺に追いつこうとしている。けどそれを引き離す様な話をする。

 それを聞いて牛込はどう思うだろうか。もしそれである種の絶望を感じてギターを手放そうものなら、俺は一生後悔すると思う。

 だから、とても言いづらくなった。

 とんでもなく恣意的で独善的だとは自分でも思ってる。でもそれは彼女も認める事実であり、だからこそ言い出しにくい。

 

「……わかった。田中さんにも話してみる」

 

 これは逃げだとわかっている。

 わかっている……けど。

 

 夏の刺すような日差しが空になったパフェグラスに反射して、目を逸らす。だがそれも、牛込の事を直視したくなかったが為の言い訳にすぎないのは痛い程わかっていた。

 

 

 

 

 △▼△▼△

 

 

 

 

 

「よぉ」

 

 ファミレスで牛込姉妹と別れた帰り道。

 さっきの事について、死神さんに許可を取ろうとスマホを取り出した時、前方から声をかけられた。

 スマホから視線を外してその方を見ると、いつだかの先輩達だった。いつかは忘れたけど。

 

「あ、こんにちは」

 

 挨拶を返してその場を通り抜けようとすると、肩を掴まれた。

 

「おい、何シカトしようとしてんだよ」

 

「いや、別にシカトなんかして……あっ」

 

 弁明の最中にスマホを奪われ、明後日の方向に投げ捨てられてしまう。……ってああ! 俺のスマホォ! 

 

「テメェ、何様のつもりだ?」

 

「あぁ……スマホ……って、はい?」

 

「俺、あの時調子に乗ると殺すって言ったよな?」

 

「は、はぁ……?」

 

 そんな事言われたか? 言われたっけ? よくわかんないや。

 そもそもあの時っていつ? 

 

「ふざけやがって……余程殺されたいらしいな」

 

 俺の戸惑いは余所にリーダー格の先輩は尚も続ける。

 

「あの時の事をチクってないだけ手加減しようと思ったけど、やっぱいいや。そうでもしないと俺の腹の虫が収まらねぇ」

 

 あぁ……あの時って文化祭後の事か。

 チクってないって言われてもなぁ……、もし俺がチクったら先輩達今頃相模湾の底に沈んでたと思うよ? あの後死神さん宥めるの大変だったんだから。

 というより、今この状況って先輩達かなり危ないからね? 

 こころの親父さんに言われてから、なんだか俺の周りで黒服さんの動きが怪しいんだから。なんなら今絶対にどこかで見てるよ? 

 

「まずは一発、避けんなよ……!」

 

 余程腸が煮えくり返っていたのか、遂に先輩が拳を振りかざした。

 うーん……流石にこのまま殴られて、次の日には存在ごと揉み消されても俺の寝覚めが悪い。実に悪い。

 先輩には悪いけれど、避けさせて貰います。できるか半々だけれど。

 

「……!」

 

 襲いかかる拳を視界で捉えた時、奇妙な感覚に襲われた。

 先輩の拳がまるでスローモーションの様にゆっくり近づいて来るのだ。

 あれっ、これって走馬灯? 俺ってば死んじゃうの? とも思ったが、どうやらそういう訳ではない様だ。

 なんと、避けてからの俺の行動、がら空きの鳩尾や顎にどのように叩き込めば先輩が倒れるか、まるで俺がこういうのに慣れているかの様に、頭の中にその最適解が浮かんできたのだ。

 そこまで理解できて、俺はすっかり忘れていたある一つの事を思い出した。

 あれは今から十年以上も前。前世の俺が死んで、それが閻魔大王のミスだと判明して、この世界に転生するってなった時に特典として三つのオプションを追加した。

 ──一つは転生先の俺に妹がいる。

 ──もう一つは金持ち。

 ──そして、あと一つ。

 その時の俺は、とりあえずこんなのがあればいいだろ。と思って適当に済ませたのだけれど、まさか今になって役立つ時が来るとは。

 

 ──ケンカが強けりゃいいだろ、と思ってた前の俺、超ナイス。

 

「なっ! おま──グフォ!」

 

 昔の俺にサムズアップを送って賞賛しながら、余裕を持って先輩の拳を躱して、がら空きの鳩尾に頭で思い描いた通りのグーパンを叩き込んだ。

 鈍い音がした腹を抱え込み、蹲る先輩は放っておいて、俺は取り巻き達に目を向けた。

 取り巻き達は一瞬たじろいだものの、先輩に歯向かったクソ生意気な後輩と俺を認識し、まとめて殴りかかってきた。

 が、安全安心閻魔印のこのチートオプションは多方から来る拳の軌道を見極め、カウンターを効率良く叩き込むならどこがいいかケンカ初心者の俺にもわかりやすく教えてくれていた。頭の中で。

 

「『ブレングリード流血闘術 111式 十字型殲滅槍(クロイツヴェルニクトランツェ)』!」

 

 ちゃっかり技名を叫んでから殴る。取り巻きの一人が二メートルくらい吹っ飛んだ。どうやらパワーもアップしているみたいで、図らずも俺も人外の領域に片足突っ込んだ様だ。

 

「『32式 |電速刺尖撃《ブリッツウィンディヒカイトドゥシュテェヒェン》』!」

 

 二人目の顔面に串刺しにしない程度に拳をぶち込む。二人目も呆気なくダウンした。って、何言ってんだ俺。

 

「……すげぇな。これ」

 

 思わず呟いてしまう。それ程までに俺が俺じゃない感覚がする。

 俺の(フィスト)は縦横無尽、変幻自在、絶対無敵なのかもしれない。やっべフラグだわコレ。安易にフラグを立てるべきではないとさっき学んだクセに、全く学習してないどうも羽沢斗真です。作品違うし。

 

「て、テメェ……」

 

 そうこうしていると、リーダー格の先輩がよろよろと立ち上がった。

 その弱々しい姿を見て、もしかしたら俺ってばやりすぎちゃった? とも思わないでもなかった。

 

「ぶっ殺す……!」

 

 先輩はその目に怒りを宿して殴りかかって来る。まるでその拳に全てを懸けているかの如く、ありったけの力を込めた一発の様に感じた。……え、主人公なの? この人。

 

「……999式」

 

 先輩のその想いに応える為、俺も身構え、渾身の一撃を繰り出す準備を整える。俺にだってなんでか知らないけど主人公ムーブが来てんだよ! 

 

「うぉぉおおおお!!」

 

 雄叫びをあげて向かってくる先輩に俺は力を溜めた右腕を振りかぶり──。

 

「『久遠棺封縛獄(エーヴィヒカイトゲフェングニス)』!!」

 

 先輩の拳が届く前に顔面に叩き込んだ。

 

 

 

 

 △▼△▼△

 

 

 

 

「やりすぎ」

 

「ですよねー……はい。ごめんなさい」

 

 それは自分でもわかってた。わかってたよ、うん。手始めに世界を救う気でいたけれど途中から楽しくなってきてました。

 

「けどやっぱ使えるモノは使わないとじゃないですか」

 

「いや、そりゃあまあ、そうだけどさ。忘れてたでしょ。今の今まで」

 

「うっ……」

 

 そう言われると言い返せない。現に忘れてたから。

 

「まあ、後処理はこっちでやっておくから。斗真君は早く帰って、親御さんと話した方がいいんじゃない?」

 

「……なんでもかんでも知りすぎると、やっぱり気持ち悪いっすよ」

 

「はははっ、手厳しいね」

 

 精いっぱいの反論も、軽く笑って流される。今は誰に対してもこんな感じだ。生意気なガキの悪足掻きにしかならない。

 

「……死神さんは、どう思いますか」

 

 言ってから、マズいと思った。咄嗟に周りを見回して黒服さんがいないのを確認してホッと息をつく。

 

「僕は、あくまで君の監視役だから、君の歩む道にどうこう言う資格は無いよ。だから、斗真君の決めたい様に決めればいい、としか僕からはいえない。それに、僕は斗真君がどこに行ったって君が何するかは手に取る様にわかるから。なんてったって、僕は死神だからね」

 

 意地悪く笑う死神さんに、本気で悪寒が奔る。

 

「……いや、マジで気持ち悪いっす。いくら人外でもちょっと無理っす」

 

「あれ……? 元気付けようと思って言ったんだけど……ねぇ、なんでそんなに離れるの? 待って、その手のスマホで何するつもりなの? おーい……斗真君? 110って……おい、ちょっと待っ……待てって言ってんだろ羽沢ァ!」




35話でした。

デラックスジャンボエクストリームファイナリティパフェリターンズ(¥5,600)
20以内に完食すれば無料。

三話書いて一日しか経っていないという事実。

モニカと一緒にお花見したかった人は高評価を下さい。
ましろちゃんとお花見(意味深)したかった人は怒らないので名乗り出て下さい。通報します。

ではまた36話で。
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