転生してみませんか?   作:RyuRyu(元sonicover)

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こんにちは。

お久しぶりのどうもRyuRyuです。

今回の話の着地点が思いつかなかったので、若干の尻切れトンボ感が否めませんが、どうか温かい目で見てください。

では、本編です。どうぞ。


8話 HLSY!!

 ……やばっ。

 

 そう直感で思った。

 

 

 夕弦を肩車して木の上にいる子猫を助けたまでは良いものの、夕弦の腕の中で子猫が暴れだし、それにつられて俺の上で夕弦が動き、ぬかるむ地面に足を取られてバランスを崩してしまった。

 

 

 どうにかしようとしても、どうすることもできず、せいぜい頭を引き抜くぐらいしか出来なかった。

 

 

 倒れ込んだ先は、あの大きな水たまり。

 

 

 盛大な水しぶきをあげて背中から落ちる。

 

 そしてその上から夕弦が落ちてきた。

 

 

「ぐふぉ」

 

「あ、ごめん。大丈夫?」

 割と至近距離に夕弦の顔があった。

 

 結局一緒に水を被ったせいで、濡れてしまった髪の毛。

 焦ったのか、寒いのか、妙に上気した頬。

 

 

 

 

 

 ……あれ、コイツってこんなに色っぽかったっけ?

 

 

 

「……ああ、大丈夫。そっちこそ平気か?」

 

「うん。大丈夫」

 

「…そ、そうか」

 

 それにしても近い。小三ってこんなに大人っぽくなるもんなのか?俺オッサンだからわかんない。

 

「……結局お前も濡れたな」

 

「うん。もう最悪。びっしょびしょ」

 そう言って俺の顔の横に手を付いて体を起こす。もう片方の腕でしっかり子猫を抱き抱えている。

 夕弦と猫の無事を確認した所で一息ついて冷静に考えてみる。

 

 雨の降る公園で地面に横たわる俺に覆い被さる夕弦。

 

 

 ……うん。有り体に言って俺押し倒されてますね。

 

 逆じゃない?普通、この状況立場逆じゃない?

 

 

「あなたたち、大丈夫かしら?」

 

「あ、ああ。大丈夫よ。猫も、ほら」

 

  こころが心配そうに覗き込んできた。

 夕弦が腕の中で大人しくしている猫を見せると同時に立ち上がったので、ようやく俺も解放された。

 

「くしゅっ」

 

「風邪ひくなよ」

 

「もうひいてそうで怖いんだけど」

 

「俺もだよ。寒すぎる」

 早く家に帰って風呂に入りたい。

 

「それならあなたたち、あたしの家に来ないかしら?大きいお風呂もあるわよ!」

 

 子猫とじゃれ合っていたこころが晴れやかな笑顔でそんな事を言ってきた。

 

 

 

 

 

 ▲▽▲▽

 

 

 

 

 

 

 人は印象一つでどうとにもなるのだろうか。

 

 よくあるのは眼鏡を外したらイケメンだったり美人だったり。はたまたその逆もしかり。たかが眼鏡一つで一気にクラスの人気者になったり、ならなかったり。

 

 街中で偶然見かけた同級生の私服姿とか。きっちり制服を着た学級委員がパンクスタイルだったり。たかがそういうギャップ一つで好感度が上がったり、下がったり。

 

 印象というものは、常に上書きされていくもので、印象に対応してその人に対する評価も変わっていく。

 

 

 つまり、だ。

 

 何が言いたいのかというと。

 

 

 

 あの時の夕弦が頭から離れない。

 

 

 

 今までは手のかかる妹みたいな印象だった幼馴染みが、それまで何回も間近で見ていた夕弦(幼馴染み)の顔は、あどけない、年相応の女の子だった。

 

 

 それなのに、あの時の夕弦はどこか違った。

 

 雨水を被って少しだけ濃くなった桃色の髪の毛。ふっくらとした唇から漏れでる吐息。ぱっちりとした透き通るような目に吸い込まれるかの如く惹き付けられた。

 

 

 そこにいたのは、十年近く一緒にいた幼馴染みではなく、一人の、上原夕弦というれっきとした異性(女の子)だった。

 

 

 と、まるで俺が惚れたような口ぶりだけれど、見た目は子供中身はアラサーの俺。小三の夕弦に恋愛感情などというものを抱くような俗に言うロリコンではない。

 

 夕弦の事を異性と認識はしたけれど、それは妹が化粧に目覚めるとか、よくわかんない女子力(笑)が高めな雑誌とか読み始めたり、そういう類の認識の仕方である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 閑話休題(つまり、そういう事さ)

 

 

 

 

 

「あー…」

 

 

 あれよあれよとこころに誘われるがまま現在弦巻家の男風呂。ということはもちろん女風呂もあって夕弦とこころが仲良く入浴中。

 意識せずに漏れ出た声が反響する。

 

 三人揃ってびしょ濡れなまま弦巻家にお邪魔すると、その気になれば国まで獲れると俺の中で噂の黒服さん達があっという間に風呂の支度を整え、新しい服を用意してくれた。

 

 くだらない事に頭を使ったせいで逆上せそうだ。風呂は考え事するのに良いとたまに聞くけれど、物によるな。

 

 それにしても。

 

「…お前は水平気なんだな」

 

「にゃー」

 

 木から助けたこの子猫、なかなかどうして水を苦手としていない。

 今日の事で耐性が付いたとか。ありそうかな?無いな。

 そして誰に抱かれても嫌がる素振りすら見せない。人懐っこいのかそもそもの危機感が無いのか。後者だとしたら誰かに似ている。あれだ、見境なく突っ走る金髪のお嬢様に似ている。

 

 そういう訳で、俺と風呂に入ってもなんでも無いように俺に洗われてなんでも無いように浴槽で寛いでいる。珍しい猫だ。

 

 風呂から出て服に着替える。丈も裾もぴったりな所は流石黒服さん。

 

 風呂を出てから来るように言われた客間に行くと、そこにいたのは想像もしない人だった。

 

 

「やあ、こんにちは。斗真君」

 

「……」

 

「あれ?斗真君?聞こえてるー?」

 

「え!?…あ、はい」

 

「あーよかったよかった。無視られてたらどうしようかと思ったもん」

 

「や、なんで死神さんがいるんすか」

 

「やだなぁ。僕は田中っていうちゃんとした名前があるの知ってるはずだよね」

 やれやれと肩を竦める死神さん。様になってるからムカつく。

 

「…死神さんはここで何してんすか」

 

「田中ね。 僕は弦巻家の執事をしているよ」

 そう言うと、死神さんは恭しく一礼した。様になりすぎててムカつく。

 

「ほら、昨日か一昨日に『金持ち』についてそのうちわかるって言ったでしょ?」

 

 話によると、死神さんもとい田中さんは、俺が保育園の時くらいまで近所の大学生だったけれど、卒業してからはバイトで生活費を稼ぐ日々だったそう。

 でもそれじゃダメだと閻魔大王様に言われて、ダメもとで弦巻家の採用試験を受けたらなんとびっくり内定が決まって今に至ると。さては閻魔大王様、この人引き戻す気無いな。

 

「とまあ、これからは斗真君は僕から弦巻家を通して資金的な援助はするつもりだけど、ぶっちゃけこれだけじゃ足りないんだよねぇ」

 

 ……は?

 

「え、なんでですか。早く金くださいよ。ほら」

 

「あれ?なんか態度急変しすぎじゃない?え、ちょっと待って目が変だよ?」

 

「うるさいですよ。とっとと金よこしなさいよ。ほら、ほら」

 

「え?ちょっと近くない?言っておくけど僕はお金持ってないからね」

 

「死神さんなんだからお金くらいポンと出せるでしょう」

 

「ね、ねえ。斗真君死神の使い方間違えてない?死を司る神だよ?それと僕は田中だよ」

 

 どうしても死神さんからお金は引き出せないと思い至った俺は渋々ながら詰め寄るのを辞める。

 

「……チッ」

 

「あ、今舌打ちした?したよね?僕怒るよ?死神の力発揮しちゃうよ?」

 

 実はこの死神。前世の俺が死ぬよう仕向けた死神である。

 酒井(さかい)酒井(しすい)を間違えて無駄に俺の身体に散弾ぶちまけさせた本当の張本人である。

 

 ……なんでも新人だったらしい。死神の業界でも年功序列方式なのかな?

 

 

「……閻魔大王様に言うよ」

 

「すいませんでした」

 

 大王様には迷惑をかけたくない。なんだかんだ言っても俺に第二の人生をくれた人だ。

 

 つか、死神さんも人の事言えないと思うんですけれども。閻魔大王様でミスがあったからほとんどお咎めなしで済んだようなものを。もしただの死神さん側だけのミスだったら多分大王様に消されてますよ?

 

「……で、俺はこころに何をすればいいんですか」

 

「ん、何をするでもないよ。ただこころ様と仲良くしてやって欲しいだけだよ」

 

「…ああ、なんとなくわかりました」

 

 ありがちなやつだ。自分の中に一本太い芯を持ってて、それを押し通す人。周りに合わせて何かするのが苦手な人。

 オブラートに包んで言えば個性的。悪く言えば自己中。

 そういう人は得てしてコミュニティから爪弾きにされるものである。

 

 要するに、こころには友達がいないのだ。

 思った事をすぐに言動に移す彼女には、表面的な付き合いの知り合いはいても、世間一般的にいう友達はいない。頼み事とかちょっとした遊び相手とか。そういうのは全て黒服さん達で事足りたからだろうけれど。

 

「いいですよ。元から俺もそのつもりだったですし」

 

「そう言ってくれると助かるよ」

 

「でも、俺こころにずっとはついていけないんで。体力的に。だから、程々でいいですか」

 

「もちろん。ぶっちゃけ僕もこころ様にギリギリついていけるくらいだから」

 

「……マジっすか」

 いやヘラヘラ笑ってるけど死神さん。あなたのスペックチート並でしょうに。腐っても死神なんだから。

 

 ……こころ、恐るべきバイタリティ。

 

 

「あら、ここにいたのね二人とも。探したわ」

 

 噂をすればなんとやら、扉を開けて入ってきたのはさっぱりした様子のこころと夕弦。

 

「あれ、田中さん。なんでこんな所に」

 

「お待ちしておりました、こころ様。では改めて。私、弦巻家の執事をしております、田中と申します。羽沢斗真様、上原夕弦様、以後お見知り置きを」

 わざとらしく畏まる死神さん。似合わなさ過ぎてムカつく。

 

「は、はい。こちらこそよろしくお願いします…?」

 

「なんで疑問形なんだよ」

 

「いや、ホントに田中さん?確かにこの前就職したとは聞いたけど……」

 

「そうだよ。その就職先がここ。よろしくね、夕弦ちゃん」

 一転、フランクになる死神さん。こんなギャップ要らない。

 

「あ、ホントに田中さんだ。はい、よろしくお願いします」

 

 互いに挨拶を済ませると、死神さんは別の仕事があるからと部屋を出ていった。

 

「それでよ。こいつどうするよ」

 

 俺の頭の上で器用に子猫が丸まって寝ているのを指さす。つか、お前ら気づいてたろ。

 

「どうするって言われてもね」

 

「こいつの親猫はどうしたんだろ」

 

「んー、その場にいなかったから…どうだろ。今も探してたり?」

 

「それもあるけれど、捨て猫の可能性もあるし、飼い猫の子供かも」

 

「もちろん決まってるわ!」

 割って入ったこころを見る俺達。なんだろ、だいたい予想がつく。

 

「この子はうちでかうのよ!」

 

 ですよね。知ってた。

 

「こころ様、こちらに」

 

「うわっ、いつの間に」

 

 まるでこころの宣言を見通していたかのように黒服さんが猫砂やらを部屋中に配置する。

 

 すると、目ざとく気づいたのか子猫が目を覚ましてもそもそと起き上がった。俺の頭の上で。

 飛び降りると、トテトテと猫用のベッドへと向かうとそこに丸まってまた眠りだした。何この可愛い生物。

 

「さて、こころ。何して遊ぶか」

 

 唐突に切り出した俺の顔を見る二人。こころはこてんと首を傾げ、夕弦は急に何言ってんだこいつみたいな表情をしている。

 

「いいのかしら?」

 

「まあ、まだ雨も降ってるし。俺も今日は暇だから。それだから屋内でな」

 

「そうね…じゃあ、かくれんぼをやりましょう!」

 

 

「……え」

 

「あ、いいねそれじゃ斗真が鬼ね」

 

 

「え」

 

 反論する暇もなくもう二人は部屋から出ていった。

 

 …なんだろう、この感じ。デジャヴなんかじゃない。

 

 

 

 

 つぐみに会いたい。

 

 

 

 

 ▽▲▽▲▽

 

 

 

 

 日も暮れかかり、雨もすっかりあがった。

 

 結局俺はほとんどの時間こころ邸をウロウロ探し回っていた。二人とも隠れるの上手すぎる。

 

 濡れた洋服も乾き、帰り支度を済ませた玄関前。こころと死神さんが見送りに来た。

 

「それじゃあ、俺達はこれで。猫も、よろしくお願いします」

 

「うん、わかったよ。探すだけ探してみるよ」

 

 死神さんとも話してもし子猫の飼い主がいたら、という事で張り紙を作って貰った。

 

「またな、こころ。また遊びに来るから」

 

「…また来てくれるのかしら?」

 

 俺達が帰る頃になってから若干暗い顔のこころにそう言うと、どこか縋るような目でこちらを見上げる。やっぱり幼いながらもどこかでは気づいていたのかもしれない。

 

「当たり前だろ。友達なんだから」

 

「とも…だち」

 

 いつもつぐみにするように頭をわしゃわしゃと撫でると、その言葉を反芻したこころの目にまた眩しいくらいの煌めきが蘇ってきた。

 

「そう。俺達は友達だ。な?夕弦」

 

「…そうね。この子の面倒も見ないといけないし、こころちゃんと遊ぶのも楽しかったしね」

 

 夕弦はしゃがみこんで、こころが抱き抱える子猫の顎下を撫でる。

 

「こころちゃん、また遊びに来てもいいかな?」

 

 夕弦がこころの目を見て優しく訊ねる。その質問にこころは満面の笑みを浮かべて言った。

 

「ええ、もちろんよ!いつでもあそびに来て!だってあたし達は友達だもの!」

 

 

 

▽▲▽▲▽

 

 

 

 

 人は印象一つでどうとでもなるものである。

 

 白い服を着こなしていたら、清潔な印象を与えられるし、笑顔が似合う人は、明るい性格の印象を与えられる。

 

 こころも、笑顔でいるからこそ周りにも笑顔や元気を与える事ができる。笑顔でいるからこそ周りを、そして自分を輝かせる。そんな人は今日日滅多にいない。

 

 だからこそ、こころには笑っていて欲しい。

 こころならいつか、本当に世界を笑顔にするかもしれない。そう思った。

 

 

 こころの金色の髪の毛が、差し込む西陽に反射して辺りが輝いて見えたのは、きっと気のせいじゃない。

 




8話でした。

過去最大の文字数に気づいたらなってました。


さて、遅ればせながら、前話に引き続きこの作品に高評価をくださった読者様方に謝辞を。

☆10:革命家族 様
☆10:長瀬楓 様
☆10:神崎 様
☆10:龍歌 様
☆9:Zoooooiii 様
☆8:かねてす 様
☆8:ローニエ 様


評価してくださった読者様の方々、ありがとうございます。


ではまた9話で。
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