ロミーVer.1:第1部-藤原Sisters   作:松村順

3 / 8
第3話

 翌年,ボクはヒカルと同じ高校に入学できた。

 入学してすぐ化学部を覗いてみたら,中学とは違って部員が何十人もいる大所帯だった。それで,部活はどこにも入らないことにした。初夏から夏休みにかけての日の長い季節には,日が傾くまで図書館で本を読んで時間を過ごした。

 この頃から,ヒカルが予言したように,ボクは「美形」として注目されるようになった。学校の女子生徒と,一部の男子生徒から。そして,見知らぬ人たちからも。二人で街を歩いていて,すれ違う人が振り向いた時「ロミーを見てるのよ」,「ヒカルを見てるんだよ」と楽しい言い合いになることもある。そんな時,ヒカルはボクの髪を,優しく指でくしけずるのではなく,クシャクシャかき混ぜた。そして,

「あら,髪型が乱れるとかえってかわいくなるんだね,ロミーは」

と笑いながら話しかけた。

 

 幼い頃から,ヒカルと並ぶとボクの方が背が低かった。だから,ボクはヒカルのお下がりを着ていた。親はボクのために服を買おうとするのだけど,ボクは「ヒカルが着た服をボクも着るんだ」と頑固に言い張り,いつの間にか親も諦めた。

 やがて高校入学の頃に背丈が並んだけど,追い越しはしなかった。その頃からずっと,ヒカルとボクは身長も肩幅もウエストもほとんど同じ。だから,同じ服を着回すことができる。ヒカルが買ってきた服をボクも着る。ヒカルは私服ではめったにスカートをはかず,パンツスタイルだったから。

 ボクは自分で服を買った記憶がない。ヒカルが服を買うのについて行くだけ。ヒカルがいろいろ見て,いくつか試着して,気に入ったものを買う。それをあとでボクも着る。ヒカルが買った服はボクにも似合った。でも,今から思うと,ヒカルは試着しながら自分だけでなくボクにも似合うことを確かめていたのかもしれない。

 ヒカルがキュロットパンツと半袖ジャケットのスーツを買ったことがある。深いマリンブルーの色合いとボーイッシュなデザインはヒカルにとてもよく似合った。だけど,ボクは腕や脚の肌を露出させることができないのに・・・・と不満そうな顔をしていると,

「日が落ちてから着ればいいのよ」

と言われた。

「あっ,そうか」

 高校生になって,たまには夜の8時か9時くらいまで外を出歩くことも大目に見られるようになっていた。夏でも7時半頃には日が落ちる。まだ明るさの残る夕方の街を,生まれて初めて短パン・半袖といういでたちで歩いた。腕や脚の肌に触れる外気が新鮮な経験だった。

 夏,祇園山笠祭り。街はすたれていくのに,お祭りは昔と同じように賑やかだった。この年,初めてヒカルと二人だけで夜祭りに出かけることを許可された。ボクはキュロット・半袖ジャケットのスーツ,ヒカルはタンクトップの上に薄手のジャケットを羽織って並んで歩いていると,何度か男から声をかけられた。

「たぶん,おんな二人連れと思われてるんだね」

「『たぶん』じゃなくて,『確実に』よ」

 

 秋,父と母の離婚が正式に決まった。3年前から別れて暮らしていたけど,法的にも母と父の関係は切れることになり,まだうちに残されていた母の品物は処分されることになった。その中で目を引いたのはダンス衣装。女物のドレスだけでなく,男物のパンツスーツも。母は結婚するまではダンスを趣味にしていたらしい。それもリード役が好きだったとのこと。

「もらってもいい?」

とヒカルが父に尋ねる。

「まあ,構わないが・・・・ダンスを習う気か?」

「だめ?」

「だめとは言わないが,ほどほどにな」

「うん。分かっているよ」

二人だけになって,ヒカルはボクに言った。

「ロミー,一緒にダンスしよう」

「ボクも?」

「もちろんよ・・・・わたしがリードしてあげるよ。ロミーはドレスを着て踊るの。きっと似合うよ。もちろん,二人ともドレスを着て踊ってもいい」

 近所にもダンス教室はあったけど,ヒカルはちょっと離れた所にあるダンス教室に通うことにした。

「『あっ,藤原先生のお嬢さんとお坊ちゃんね』なんて言われたくないでしょう。ロミーがドレス着て踊ってるなんて,おもしろおかしく噂の種にされるのも,いやだし」

と言ってヒカルが見つけたのは,かつては賑わっていたらしいけど街の衰退とともに今は寂れたダンス教室。古風な木造の建物で,玄関には木の引き戸。ボクが「ダンス教室」という言葉からイメージしていたのとはかけ離れた建物だった。

「ヒカル,ここ,ほんとうにダンス教室?」

「だって,看板が出てるじゃない」

ヒカルは構わず引き戸を開き,

「ごめんください」

と声をかけた。やや間があって奥から

「はい,ただ今」

と返事があり,高齢と言っては失礼だけどもう若くはない女の人が出てきた。

「ダンスを習いたいんです」

ヒカルはあいさつもそこそこに自分の希望を述べた。

「わたしたち二人ともドレスを着て踊れるダンスと,わたしが男物のパンツスーツ,この子がドレス姿で踊れるダンスを習いたいんです。プロになりたいとかコンクールに出たいという野心はありませんから,きれいな踊りを楽しく習いたいんです」

ヒカルはこんな時にももの怖じしない。先生はそんなヒカルのわがままとも思える願いをにこやかに聞いていた。

「よろしいですよ。なるべくご希望に添うようにしましょう。お二人ともきれいだから,はたで見てても美しい舞姿になるでしょう」

 秋から冬にかけて,日暮れは早く,ボクが学校から戻って夕食までの間,1時間くらいダンス教室に通う時間があった。先生はまず二人ともドレスを着て踊るペアダンスを教えてくれた。「サルサ風」とか「サンバ風」と先生は説明した。それからジルバ。ヒカルにリードされてクルクル回るのは楽しかった。時おり,パートを入れ替えて,ボクがリードしてヒカルがくるくる回る。それも楽しかった。先生は,そんなボクたちを楽しそうに見ている。

「美しいわ。『うまい』とは言わないけど,とても美しい。お姉さんもだけど,妹さんはひときわ美しい。『花の容(かんばせ)』という言葉そのもの」

ヒカルはボクの方を向いてそっと笑った。

 ボクはいつもドレスを着たけど,ヒカルはドレスを着る日とパンツスーツを着る日と半々だった。ヒカルのパンツスーツ姿も先生は褒めてくれた。

「宝塚の男優さんみたい。凜々しいわ」

ボクも,ヒカルにリードされて踊るのは好きだった。

 教室への行き帰りの道すがら,こんなことを語り合ったこともある。

「お母さんは,スーツ姿の時,どんな女の人をリードして踊ってたんだろうね?」

「そうね・・・・『花のかんばせ』の持ち主かな」

ヒカルはちょっと笑った。そして,言葉を続けた。

「でも,お母さんも相手も二人ともスーツ姿で踊っていたのかもしれないよ。その時の気分でリード役を交替しながら」

 

 その年の冬休み,二人で1泊の旅行をした。と言っても,行き先はすぐそばの山口。冬至を過ぎたばかり,一年中で一番日射の弱い頃。そして「南国」九州も,その北岸は日本海。冬,季節風が吹き寄せると空は曇り,冷たい雨が降る。時には雪も降る。この日も冷たい雨が降っていた。でもそれは,ボクが外出するにはありがたい天気。ヒカルは黒の,ボクは濃緑のコートを着て,二人で傘を差して駅まで歩いた。新幹線を使うこともできるけど,のんびり在来線に乗った。車内の暖気で曇った窓ガラスを拭いて,外を眺める。雨は途中で上がったけど,曇り空の下に冬枯れた景色があり,時おり鈍色の海が見える。昼間外を出歩くとしたら曇りか雨の日を選ぶのが習慣になっているボクにとっては見慣れた景色。

 山口駅に着き,駅のそばの旅館に荷物を預けた。切符の手配も宿の予約もヒカルに任せていたけど,ホテルじゃなくて旅館なのに驚いているボクに

「ロミーは畳の部屋に布団を敷いて寝たこと,ないでしょう? いい機会じゃないの。何事も体験よ」

「ヒカルは,布団に寝たことあるの?」

「わたしもないけど」

 こんなことを語り合いながら,外に出た。もう雨は止んでいたけど,ボクだけ傘を差した。曇り空からも漏れてくる紫外線を避けるため。そして,また雨が降り出した時の用心に。

 ボクたちは大内氏ゆかりの「西の京」の街並をのんびり歩き,瑠璃光寺五重塔や亀山公園などいくつかの名所も見て回った。毛利氏にちなんだ記念碑や像はわりと目に付くけど,大内氏にゆかりのものは少ない気がした。

「意外と大内氏の影が薄いね。山口は,ボクにとっては毛利氏の城下町じゃなくて大内氏の城下町だなあ。山口を『西の京』にしたのは大内氏じゃない」

「ロミーはご不満かしら?」

「不満っていうほどじゃないけど・・・・」

 こんなことを話しているうちに,雨がぱらついてきたので,二人肩を寄せ合って一つの傘に入った。しばらくそうやって歩いていると,喫茶店が見つかったので,入った。

4人掛けのテーブル。向かい合わせに座ろうとしたけど,やっぱり隣り合って座ることにした。いつも食事の時にはそうやって座っているし,それ以外でも並んで隣り合って座ることが多いから,ヒカルと向かい合わせで座るのは,なんとなく落ち着かない。

ヒカルはもうコーヒーを飲み慣れている。ボクは紅茶。

「ヒカル,コーヒーって,おいしい?」

「うん」

「大人だなあ」

ヒカルは笑った。

「ロミーだって,紅茶をストレートで飲んでんだから,立派な大人よ」

「紅茶はコーヒーみたいに苦くないから・・・・」

「ほんとうのお子ちゃまは,紅茶にもたっぷり砂糖を入れて飲むのよ」

「まさか,それじゃあ紅茶の味がしないじゃない」

「でも,そうなの」

「信じられない」

「まあ,そんな世間知らずなところはお子様だけどね」

ヒカルはまた笑う。それからメニューを眺めて,

「プチフールがあるよ。いくつか食べる?」

とボクに問い,ボクが答える間もなく,ウェイトレスさんに声を掛けた。すぐに,小さなケーキを盛り合わせたワゴンがやってきた。

「ロミーはイチゴのショートケーキ?」

「うん」

「ほかには?」

「じゃあ,このレアチーズケーキも」

ヒカルは自分用にチョコレートケーキとベークドチーズケーキを取った。ボクはいつものように手でつまんで食べる。食べ終えて,指に着いた生クリームを舌で舐める。それを見ているヒカルが

「ロミーはふだんエレガントなのに,変なところ不作法ね。リンゴは丸かじりするし,ケーキは手でつまんで食べるし」

「その方がおいしくない?」

「まあね。それに,そうやって指を舐めるしぐさも,ロミーなら可愛いから許すよ」

 

 夜,一緒の部屋に泊まる。

「久しぶりだね。同じ部屋で寝るの」

「そうね」

 ヒカルと同じ部屋なのと,生まれて初めての畳の部屋の布団にちょっとはしゃいだけど,外を歩き回った疲れと,ヒカルと一緒の安心感で,ボクは安らかに眠りに落ちた。

 翌日は,あいにく晴れわたった。いくら冬至の頃といっても,昼の日差しの中を歩くのは怖い。だから,チェックアウトの時間まで部屋にいた。部屋を出る時,思いついてコートを取替えた。ヒカルが濃緑のコート,ボクが黒のコート。帳場には前日と同じ人がいる。びっくりしてボクたちを見た。チェックアウトを済ませて,旅館を出て,二人して笑った。それからすぐ近くの喫茶店でモーニングセットを食べながら,外の景色を眺めていた。ありふれた地方の小都会,通りを過ぎる人や車や・・・・。喫茶店を出ると,雨傘を日傘代わりに差して,日陰を選んですぐそばの駅まで歩いた。

 帰りは,宇部線,小野田線を通り,瀬戸内海を眺めることにした。逆光線の中で色を失って広がる海。時おり船が通り過ぎる。そうやって帰り着いた頃には冬の短い日はすっかり傾いていた。ボクたちは駅から,家の前を通り過ぎて,いつもの散歩コースをたどり,海岸まで歩き,夕焼け空を眺めた。

 

 高校2年生の時,化学の授業の後に教師に何か質問して,それに教師が答え,それにまたボクが質問し・・・・というふうに問答が続いて,教師とボクは教室を出て廊下を歩きながら話し続け,理科教官室に着いてしまった。その辺でだいたい問答は決着していたけど,教師はボクを自分の机のそばに呼び寄せ,引き出しから1冊の本を開いて見せた。そこには微分記号や積分記号に飾られた数式がずらりと並んでいた。

「化学もつきつめれば結局,数学になるんです」

と教師は語りかけた。ボクが化学が好きなのを見込んで,大学レベルの化学を紹介したのだろう。でも,ボクはむしろ落胆を感じた。色とりどりの親しみやすい化学の世界の果てにある究極が,数式が並ぶだけの味気ない世界だとしたら,残念というか味気ないというか・・・・。

 数学は,苦手じゃないけど,天文学や化学や解剖学,ラテン語やフランス語,文学や歴史ほどには興味がなかった。そして高校に入って間もない頃,教師への反発からつまずきかけたこともあった。その教師は数学以外の知の領域を見下して,文科系の領域は言うに及ばず,理科系でも生物学や化学などは二流,三流扱い。数学ができない者は知性のない人間の屑のように扱う。どの世界にも愚劣な人間はいるものだけど,そんな人間に教えられる数学も嫌いになりかけた。それでも,数学教師の下劣さに引きずられて数学を嫌いにならずに済んだのは,2年生で微分を習っているヒカルがボクに微分の基本発想を教えてくれたから。

 瞬間速度や1点における傾き,そんな不可能を,論理的に突き詰めて可能にするプロセスがおもしろかった。速度とはある時間内に移動した距離のこと,1秒でも1ミリ秒でも1マイクロ秒でもいいけど,ともかくどれほど短くても時間の経過が前提になるはず。瞬間=ゼロ秒の移動距離なんて無意味なはず。傾きというのは2点を結ぶ直線の勾配のこと。1点における傾きなんて,そもそも存在しないはず。でも,そんな無意味なもの,存在しないものの値を理詰めで求めてみせる鮮やかな手口がおもしろかった。

 

 この頃から,成績についてもヒカルの予言が的中し始めた。幼い頃から本を読みふけって蓄積した知識が試験の成績に反映するようになった。ボクが蓄積した知識が活用できるような問題が試験に出されるようになり始めた。そして,ヒカルが重要な情報を教えてくれた。

「大学入試では,外国語として英語だけじゃなくてフランス語も選択できるらしいよ」

「えっ?・・・・」

それがほんとうなら(もちろん,ほんとうだった),ボクも医学部に入学できるかもしれない。

 

 ヒカルもボクも,大学進学を機会に実家を離れ,ふるさとの街を去ることに決めていた。窮屈だったから。周りの人たちみなに「藤原先生のお子さん」として顔が知られていただけじゃなくて,小さな街の小さな常識の枠が窮屈だった。ヒカルは一応常識を尊重して生きていたから,枠の小ささを切実に感じていた。ボクだって,常識の枠にぶつからずに済むなら,それに越したことはない。

 でも,実家から通えない大学(東京近辺を考えていた)に進学するなら,「ヒカルとずっと一緒に」という願いがどうしても叶えられない時がやってくる。ヒカルが遠くの大学に進学すれば,ヒカルの方が1年先に出ていき,ボクが残されることになる。

 ヒカルは千葉大医学部に入学することになった。できることなら,ボクも千葉に引っ越したかった。高校は千葉の高校に編入すればいい。ランクをちょっと下げれば可能なはず・・・・でも,父は許してくれなかった。

 4月初めにヒカルの引っ越し。別れは悲しかった。

「夏休み,冬休みには,わたしのところに遊びにおいで。それから,ロミーを送ってわたしも何日かこっちに戻ってもいい。1週間ずつとして,2週間くらい一緒にいられるよ」

ボクは,悲しい顔でうなずいた。

「過ぎてしまえば,1年なんてあっという間よ」

と慰めてくれる。でも,過ぎてしまうまでが長いんだよ。

「ヒカル,お部屋に二段ベッドを買っておいてね。来年はボクも一緒に住むんだから」

ヒカルはうなずいてくれた。

 こんな悲しみとは別に,あっけないほど現実的な問題にも直面した。ボクの服をどうするか。ボクはいつもヒカルの服を着ていたから,自分の服をほとんど持っていなかった。ヒカルが服を持って行ってしまったら,ボクの着るものがなくなる。それで,夏物,春秋物,冬物それぞれ2~3着ずつ残すことになった。ボクに選ばせてくれた。ボクは自分の気に入ったものを選んだ。コートは迷ったあげくに濃緑のコートにした。ボクの選んだものを見て,ヒカルはマリンブルーのキュロットパンツと半袖ジャケットのスーツを加えた。

「これも着なさい。ロミーに似合うと思って買ったんだから」

ボクは,うれしかった。

「これから暖かくなったら,なるべく毎日このスーツを着て夜出歩くようにする」

「人通りの多いところを歩くのよ。人通りの少ないところを夜ふらふら一人で歩くのは危ないからね」

ボクがそんなヒカルの説教を聞いて笑ったら,ヒカルはまじめな顔で叱った。

「わたしはまじめに注意してるのよ。ロミーを女と間違えなくても,男と知った上で襲う男もいるんだから」

言われた瞬間,びっくりしているボクを見て

「まったく,こんな世間知らずな弟を一人残していくなんて,お姉さん,心配で仕方ないわ」

と説教を続けるヒカルの言葉は冗談ぽいけど,表情はまじめなままだった。

 

 ヒカルと離れてふるさとの街で過ごす1年は長かった。ヒカルがいないことだけでなく,父を含め周りの人たちの視線,期待がうるさかった。高校3年のボクの成績は医学部を狙えるレベルになっていた。2~3年前までヒカルだけに期待を寄せていた人たちが,急にボクにも期待するようになった。その視線がうるさかった。ボクも医学部に行きたいと思っていた。でもそれは,ヒカルと同じ学校で勉強したいからなんだ。

 夏休みになると,ボクは逃げるように千葉のヒカルのところに出かけた。そして,グチをこぼした。ヒカルは黙って,優しい表情で聞いてくれた。

「ヒカルは子供の頃から,こんなふうに言われ続けてたんだね。よく我慢できたね」

「まあ,子供の頃からそうだったから,慣れているのかも」

ヒカルは笑って答えた。

 ヒカルの部屋には二段ベッドが置いてあった。約束をちゃんと覚えていてくれて,うれしかった。そんなこんなで居心地が良くて,1週間の予定だったけど,2週間近くヒカルの部屋に居座ってしまった。そして,ボクが帰るのと一緒にヒカルも付いてきてくれた。ヒカルは実家で2週間くらい過ごしたから,結局,この夏休みは1ヶ月近く一緒にいることができた。

 冬休みはまずボクが千葉に行って1週間ほど過ごし,年が明けて元日に二人一緒に帰って,ヒカルはまた1週間くらい実家にいてくれた。

 そして3月,医学部受験と同時に引っ越した。予備校の模試でほぼ確実に受かると判定されていたし,仮に不合格でも後期日程は薬学部に出願するから,そちらは受かるはず。どちらにしても,これからはずっとヒカルの部屋に住むんだ。

 合格発表は二人で見に行った。ほかの合格者の名前と一緒に掲示されているボクの名前を見てヒカルは,

「ロミーは,結局,好きなことだけやって医学部に受かってしまったのね」

とつぶやいた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。