艦これ世界の艦娘化テイトク達   作:しが

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誰だよこんな作品考えたの


反撃の兆し①

「やっぱりか…」

 

 

横須賀鎮守府の提督はその航空写真を見て苦々しげに言った。

 

 

「やはりと言うと。」

 

 

「この前の空母水鬼の登場からヤな予感はしてた。けれどもまあ見てみろ これを。」

 

不知火に航空写真を見せると同じく不知火も顔をしかめた。

 

 

「これは…深海棲艦の艦隊…?」

 

 

「姫や鬼の存在も見るだけでごろごろいやがる。…これが5ノットで横須賀鎮守府近海まで迫って来てやがる。極力悟られないためゆっくり進んでいたんだろうが…近海まで索敵を放って正解だったな、各鎮守府に連絡してくれ。これから、俺達は 横須賀鎮守府防衛戦に入ると…そして、援軍を至急求むと。」

 

 

「了解しました。他の面々には何と?」

 

 

「講堂に集めてくれ。話したいことがある。」

 

 

「了解しました。ではすぐに不知火は取りかかります。」

 

 

そして彼女があわただしく出ていくと提督は帽子を再びかぶりなおした。そして右手に指輪を嵌めるとそれを強く握りなおした。

 

 

 

「俺に力を貸してくれ…陽炎。」

 

 

 

そしてすぐに横須賀鎮守府所属の艦娘達が講堂へと集められた。彼女たちの視線の先に提督は立つ。ここから始まるのだ。

 

 

「みんな、聞いてくれ。知っての通り陽炎が死んだ。またこの艦隊の大切なメンバーが逝っちまった。けれども俺達は今 この場で止まれない。まだ俺達の闘いは終わってないからな。今までの深海棲艦との戦いは降りかかる火の粉を振り払っていた。だがここからは違う。…これは、今まで散って行った仲間たちの分の敵を取る 弔い合戦だ。…これから3時間後、横須賀鎮守府近海に深海棲艦の巨大艦隊が到着する。文字通り、艦隊総決戦だ。援軍要請こそ出したが時間通りに来るとは思わない。」

 

 

もう一度見回す。ふざけている娘など一人もいない。皆が、皆 覚悟を決めている。

 

 

「けれども俺達は違う。今、この場にいる。そして俺達は誰だ?…最強の矛の横須賀鎮守府だ。あんな奴ら、夕食前には返り討ちにしてやろう。」

 

 

提督が笑う。同じくにやりと何人かの艦娘も笑う。そして叫び、命令を通達する。

 

 

 

「各員、全力出撃!!! さぁ派手な赤い花を海に咲かせるぞ!!!」

 

 

猛々しい叫びが響く。

 

 

「覚悟を決めな!死ぬときは全員同じ! そして生きるときも全員同じだ!!!」

 

 

 

『『応っ!!!』』

 

 

 

 

 

—————————————————

 

 

 

大本営は横須賀鎮守府からの知らせを受けて、援軍である艦隊を派遣するようにと言った。特に近場である国内の鎮守府に対しては全力出撃せよとの命令が下された。それを受けて、国内の三鎮守府からは精鋭中の精鋭が選び抜かれすぐに高速船へと乗った。

 

 

「ええっ!?提督も来るの!?」

 

 

高速船へ同乗している提督へ川内は驚きの声を上げている。この人物は自分自身が戦場へと赴くというのだ。

 

 

「現場指揮はオレの得意分野さ。直接行かなきゃ気が済まない。」

 

 

「で、でも大丈夫なの?被弾とかしても文句は言えないんだよ?」

 

 

「安心しろ、駆逐艦乗りだった時から俺は一度も弾に当たったことはねぇよ。それにだ、俺の直掩はお前がやってくれるだろう?」

 

「そ、そうだけどさぁ…」

 

 

「それに俺だけじゃないみたいだぜ、考えているのは。」

 

 

「…えっ?」

 

 

 

佐世保提督が見せた電報には戦場で落ち合おうというものだった。そして文面の主は呉鎮守府提督と書かれている。

 

 

「あの人も秘書艦連れて戦場へ行くみたいだよ…さて、『鎮守』の提督の采配 凄い興味あるぜ…」

 

 

「…本当、みんなバカばっかだよ。この世界は。」

 

 

そして川内は海を見ながら呟いた。

 

 

「だから、大好きなんだよ。」

 

 

 

 

 

 

「提督、あなたがわざわざ前線へ出る必要はありませんというのに。」

 

 

「何…気にするな、私は死ぬことはないからな。」

 

 

「しかし 提督 戦場において絶対という言葉は…」

 

「いや、ある。何故ならば私の目の前に絶対私を死なせない最強の護衛がいるのだからな。」

 

 

呉の提督はいつもの顰め面は今ばかりはない。そこにあるのはまるで歳を重ねるのを忘れたかのような少年のようなにやにやと笑った顔だった。けれども彼は確信している。

 

 

「…そう言われてしまっては この鳳翔…退くわけにはまいりません。貴方を必ず呉鎮守府へと五体満足、かすり傷一つなくお帰しすると誓いましょう。」

 

 

「そうだ、それでいい。…しかしまあこうして現場に出て指揮をするとなると昔を思い出すな。」

 

 

「…ええ、提督も昔は良く天山へ乗り込み 積極的に前線に出るものだからいつもひやひやとしていて肝が冷えました。」

 

 

「そいつは飛行機乗りとして当然の事さ…さて、俺も少しは若返ってみるか。 暴れるぞ、鳳翔。」

 

 

「…はい、もう一度 あなたと。」

 

 

 

 

 

 

—————————————————

 

 

 

提督は横須賀鎮守府近海へと煙幕を放つことを命じた。それにより辺り一帯は煙に濃く包まれておりその様はまるで濃霧のようだ。

 

 

始まりは艦娘達だった。

 

 

雷巡と駆逐艦の深海棲艦が強い煙幕の中本体との進路を逸れて二機で航行していた。そこをイ級は槍で一突き、チ級は一閃と抵抗する間もなく、その活動を停止した。そしてそれを行ったのは二人の艦娘だった。

 

 

 

「…さぁやるか、龍田。」

 

「えぇ、始めましょうか。天龍ちゃん。」

 

 

 

「提督の命令により 俺達は『蹂躙』を始めるぜ。」

 

 

一方、敵主力艦隊も横須賀鎮守府の戦士たちと接敵していた。

 

 

 

「汝ら、これより先を進むことを禁ずる。」

 

 

静かに全てを凍てつかせる殺気を放ち不知火は敵 旗艦 空母棲姫へと言い放った。

 

 

「これより先は我らの領域である。」

 

 

「ホザケ、貴様等ノ脆弱ナ力デ何ヲ為セルト言ウ。」

 

 

「警告はしました。」

 

 

そして不知火の後ろに精鋭中の精鋭 第一艦隊 第二艦隊が並び立つ。

 

 

「第一艦隊、第二艦隊 各員に通達。 『蹂躙』せよ。」

 

 

 

 

一方、母港のすぐ傍、一人だけ艦隊から離れていた深海棲艦がいた。

 

 

「ヤハリ察知シテイタカ…敵指揮官ヲ沈黙サセレバコレ以上ノ攪乱ハアルマイ…」

 

 

戦艦水鬼。水の中に姿を隠し一人逃れて来た彼女は提督を殺すことで戦場をかき乱そうと画策していた。そして鎮守府内に彼女はまんまと忍び込んだ。

 

 

そこら辺に居た海兵を隠密に殺し、その服を奪うと彼女は手袋をつけて顔を伏せ変装した。間近で見なければ遠目からでは深海棲艦とは察せられない。そしてそのまま彼女はがらりと人の空いた鎮守府内の執務室へ向かっていた。

 

 

(…妙ダ…全力出撃ナラバ艦娘ガ少ナイノハ理解デキル…ダガ、全クイナイ…?)

 

 

そう、全くいない。艦娘も、整備士も、衛士ですら。戦艦水鬼に一抹の考えがよぎる。

 

 

「…罠カ?」

 

 

だがそれがどうしたとすぐに斬り捨てた。たかが人間がいようが彼女は戦艦水鬼。捻り潰すことなど造作であると。

 

 

 

「…ヤハリ誰モイナイ…。」

 

 

そして辿り着いた執務室。そこはもぬけの殻だった。外れを引いたかと戦艦水鬼は撤収しようとした。だが、何者かに肩を掴まれた。

 

 

「よう、お帰りするにはまだ早いぜ。」

 

 

そして振り向こうとしたその瞬間に、彼女はその顔面に思い切り拳を食らい吹き飛ばされた。勢いがそのままスピードへと変わり壁を突き破り、中庭へと彼女は叩き落された。

 

 

「何…ガ…」

 

 

立ち上がった彼女が見たのは二階の窓から飛び降りてくる筋骨隆々の男である。彼は普段海軍帽子をかぶっている、だが今は上はタンクトップだけとなり非常に動きやすい服装をしていた。

 

 

「もうちょっと付き合っていけよ。ダンスの相手くらいにはなるぜ。」

 

 

「キサマ…マサカ コノ艦隊ノ司令官カ…!」

 

 

「そうだよ、お前の標的だ。わざわざ出向いてきたんだ感謝してくれよ。」

 

 

「タカガ人間如キニ何ガデキル!」

 

 

今まで変装していた服を脱ぐとそのまま提督へ向けて砲撃を放つ。しかしそれは横からの妨害に阻まれた。

 

 

「提督、あたしたちにも出番寄越せよ!」

 

 

そして照明がつく。いつの間にか戦艦水鬼は囲まれるかたちで包囲されていた。

 

 

「ま、余裕があったらな。んじゃ、各員に通達。 目標に向かって全砲門開放。 撃て。」

 

 

そして横須賀鎮守府内で特大の爆発音が響いた。

 

 

 

 

 

 

「本隊ガ接敵シタヨウネ…遊撃ニムカオウカシラ…」

 

 

水母棲鬼が自身の艦隊を引き連れて数海里離れた海上を漂っていた。しかし主力艦隊が接敵したことで彼女たちもそちらを叩きに行こうとするが…

 

 

「その必要はないよ。」

 

 

彼女の背後から声がかかる。

 

 

「何故なら、ここで私たちに討たれるから。」

 

 

そこにはかつてないほど獰猛な笑みを浮かべた川内が神通、那珂を引き連れて接近していた。

 

 

「…首、置いて行けよ。」

 

 

 

 

 

 

 

「何故ダ…何故 連絡ガ途絶シタ…?」

 

 

同時刻、別働隊である空母ヲ級が突然連絡が途絶する現象に困惑していた。

 

 

「その理由は単純ですよ。討ち取られただけですから。」

 

 

そして同じく背後に澄み渡る静かな声が響いた。

 

 

「そしてもうすぐあなたもそうなります。」

 

 

そこには柔和な笑みを浮かべた鳳翔が複数の空母を率いていた。

 

 

「…地獄に落ちてください。」

 

 

 

 

 

 

—————————————————

 

 

 

 

「叢雲さん、彼女たちに任せてよかったのですか?」

 

「問題ないわ、練度は疑う必要ないもの。それよりも私たちのやるべきことを進めるわよ。」

 

大本営、電算室。高雄と叢雲はそこへともぐりこんでいた。

 

 

「…しかし、この程度の工作で上手くいくのでしょうか?」

 

 

「行くわよ。何度も何度も改良してきたでしょうに。」

 

「それはそうですが…あれを相手取るとなると相応に不安にもなるというものですよ。」

 

「あら、引き返す?」

 

「ご冗談を。今更引き返すことなど叶わないと分かっているというのに。」

 

 

「そういうことよ…じゃあ始めましょうか。」

 

「はい。私たちの反撃を。」

 

 

 

「計算で何もかもが上手く行くと思ってる馬鹿なカミサマに一発痛いのを食らわせるわよ。」

 

 

 


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