「てーとく~」
佐世保鎮守府、その執務室。日は落ちてすっかりと空は夜模様を呈している。そんな机で作業する男性の周りでくるくるとまとわりついている少女。ガン無視をして男性は書類作業をしている。だがそんなことにもめげずに少女はなおさら纏わりつく。
「ねぇてーとくー 夜戦しようよー」
カチカチカチカチ
「外は絶好の夜戦日和だよー、やろうよ、夜戦ー」
カチカチカチカチカチカチ
「楽しいからやろーよー」
カチカチカチカチ
「てーとくーやせんー」
カチカチカチカチ…ベキッ
「だー!もううるせぇ!」
我慢の限界が来たと言わんばかりの男…提督は自身に絡みつく少女、川内を引っぺがした。そして折れてしまったシャープペンをゴミ箱へ捨てるとそのまま川内を非常に複雑そうな目で見た。
「相次ぐ夜戦のせいで俺は書類と夜戦中なんだよ!作業に集中させてくれんかな!?」
夜戦忍者はそんなことは知ったことではないかのように飄々とまた絡みつく。
「提督、そんなに怒ってると皺が増えちゃうよーほら、夜戦して落ち着こ。」
「やらねえよ!?」
「えー、提督のいけずー。」
「というよりお前そうやって夜戦してまた中破しただろ。言っておくが夜戦だってタダじゃないんだ。少しは回数を控えてくれ。」
「ちぇー…まあいいや、今日は諦めるよー。」
「明日は諦めないってことだな。」
川内は折れて、先日模様替えした執務室備え付けのベッドにダイブした。
「提督 それいつ終わるのー?」
「あと三十分もあれば終わるが。」
「じゃあ待ってるねー。」
そして川内は胸元からいつものスマートフォンを取り出した。
最近提督が…
1.名無し、抜錨します
夜戦に非積極的である
2.名無し、抜錨します
おは川内
3.名無し、抜錨します
おは夜戦バカ
4.名無し、抜錨します
何故バレたし
5.名無し、抜錨します
むしろ何故バレないと思ったし
6.夜戦したい!
いけず提督を説得する方法を教えてください
7.名無し、抜錨します
身体を使いなさい
8.名無し、抜錨します
身体を張った説得ならいけるいける
9.名無し、抜錨します
憲兵さん こいつらです
10.名無し、抜錨します
埒が明かないので次に自分のする行動
↓3
11.名無し、抜錨します
阿波踊り
12.名無し、抜錨します
紅茶を飲む
13.名無し、抜錨します
ベッドの上で誘惑
どさりとベッドに腰を下ろす。そして、挑発的に足を組み、敢えて目の前の提督に下着を見せつけるように川内はなまめかしい口調で言った。
「て、い、と、く 夜戦…しよ?」
「馬鹿なことは言うな。」
だがむなしくスルーされる
15.夜戦したい!
こいつ…本当に男か…!?
次に自分がすること
↓4
16.名無し、抜錨します
八王子音頭
17.名無し、抜錨します
全裸待機
18.名無し、抜錨します
榛名は大丈夫です
19.名無し、抜錨します
絡みついて誘惑しろ
提督は現在椅子に座っている。川内は彼の首もとに腕を巻き、そのまま後ろからもたれかかった。体中の柔らかいところが彼の背中に直撃している。…筈だがなぜか提督は素面である。
「ていとくー、わたしと夜戦しよーよ。」
そして無造作に放たれた裏拳が川内の顔にめり込んだ。
「へぶっ!?」
20.夜戦したい!
流石に頭に来ました。次
↓6
21.名無し、抜錨します
不貞寝
22.名無し、抜錨します
伊勢音頭
23.名無し、抜錨します
筋トレ
24.名無し、抜錨します
えっさほいさ
25.名無し、抜錨します
誘い受け
26.名無し、抜錨します
おっぱおを触らせる
「てーとくー」
川内は提督の腕を持つと、そのまま自分の胸の方に持って行った
「良い加減うっとおしい…」
ぞと言おうとした提督は振りほどくために力を込めるがそれが悪手だったのかそのまま川内のカタチの良い胸を直に触ってしまった。
「ひぅ!?」
だがしかし驚いたのは当の本人、川内である。
「なっ…なっ…」
その羞恥に顔が既に真っ赤である。不味ったなと提督は思ったのか謝罪した。
「悪い、だがお前をどうこう致そうなどという気持ちはない。それは分かってくれ。」
壊れた機械のように頷く川内
30.夜戦したい!
こんなところじゃ終われねぇ!
↓2
31.名無し、抜錨します
建造
32.名無し、抜錨します
全力ダッシュ
「ちょ、ちょっと出てくる!」
川内はそのままうおぉぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉおおぉぉぉぉという絶叫と共に鎮守府の外周を四周してきた。それが原因で駆逐艦寮では謎の雄叫びが夜間に聞こえると一種の怪談になってしまうことを彼女は知らない…
「ただいま!」
バァンと扉を開けはなち、そのまま川内は肩で息をしてる。提督はこいつは一人で何をやっているんだという目で見ていた。
「よし、復活!」
40.夜戦したい!
冷静さを取り戻した俺は最強だ!
↓4
41.名無し、抜錨します
ソーラン節
42.名無し、抜錨します
大淀の眼鏡を叩き割る
43.名無し、抜錨します
霧島の眼鏡を叩き割る
44.名無し、抜錨します
倒れた振り
その場に、川内は崩れ落ちた。あまりにも唐突に倒れたため、今まで執務をしていた提督も心配し血相を変えて彼女を抱き起した
「おい、川内!大丈夫か!」
「ていとく…胸が苦しいよ…」
「どこか痛むのか!?」
「お願い…私をベッドへ」
「分かった。」
提督は彼女を優しく抱き上げるとそのままベッドへ彼女を置いた。
50.夜戦したい
ええぞええぞ!
↓3
51.名無し、抜錨します
フフフ…セッ〇ス!
52.名無し、抜錨します
やめないか!
53.名無し、抜錨します
自分の気持ちに素直になりましょう
「ごめん…ね、提督。」
「何を言ってるんだ、お前が謝ることはないだろう。」
「違うよ。…私は、本当は貴方に構ってほしかっただけ。夜戦は口実でしかないんだ。本当は提督ともっと話したくて、けど…素直に誘うのは気が引けて…それを口実にしてずっと構ってもらいたかった。」
「…川内。」
「本当はあなたが好きなのに、言葉にするのは気が引けて…」
「…少々、執務にかまけすぎてしまったか。」
「…提督?」
「忙しい、忙しいと言って目を背けていたのは俺も同じさ。…それに俺に関わって来た人間は今までろくなことになってこなかった。本気で他人を受け止めるだけの勇気が俺にはないんだろうな。」
55.夜戦したい
流れ変わったな…いや、予想外過ぎるんですけど
56.名無し、抜錨します
いけ!突っ切れ!
「大丈夫、提督。わたしは提督と一緒にいて楽しいよ。私だけじゃない、神通も…那珂も。この鎮守府に居るのは義務とか、義理とかで残った子たちじゃないんだよ。皆、提督が好きだから 提督といて楽しいからみんなここに居るんだ。」
「…川内。」
「なんて…言っても説得力はないか…」
起き上がる川内。それを心配する提督。
「…もう、大丈夫なのか?」
「本当に大したことないから。」
60.夜戦したい!
ええいままよ
↓1
61.名無し、抜錨します
夜戦のお誘い
「…提督、夜戦…しよ?」
「…もう、こうなった以上止められないぞ、いいのか?」
「大丈夫…ボクは…ずっと提督と夜戦がしたかったから…。」
そして提督は部屋の電気を消す。二つの影が一つに重なり、布が擦れる音が執務室に静かに響いた。
「…えっと…あの… 初めてだから…優しくお願いします…」
「…善処する。…まあ俺も初めてだから 我慢できる自信はないが…」
そして夜は更けていく。
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「あぁぁぁぁぁっぁぁぁあぁぁ!?」
ガンガンガンと柱に頭を打ち付ける夜戦忍者…こと川内。その顔は羞恥を越えた羞恥の赤に染まっており、熱すら放っている。
「朝から元気だなお前は…」
そんな彼女の姿を見て、呆れたように言葉を漏らす半裸の提督。
「昨日のアレは夢昨日のアレは夢昨日のアレは夢昨日のアレは夢」
壊れたレイディオのように現実逃避を回避する川内。熱に当てられてしまったことが彼女の痛恨のミスだった。
「夢にされたら俺が泣くぞ。」
その言葉にぶつぶつと漏れ出ていた怨嗟の言葉が止まった。
「なぁ、川内。」
「ど、どうしたの?提督。」
「左手を出してくれ。」
「?」
疑問符を浮かべながら彼に手を差し出す川内。そして提督は脇に脱ぎ捨て立った海軍服のポケットから一つの小さな箱を取り出してその中身を見せた。
「それって…」
「今までずっと持ってたものだ。本当は誰にも渡さず終わるつもりだった。けれども状況は変わったからな…責任はちゃんと取らせてもらう。」
「…提督…。」
「今はまだカッコカリだ。けれどもいつか、お前には…ホンモノを。」
そして左手の薬指にその指輪を嵌めた。
「…約束、しっかりと覚えておくからね。」
「勿論だ。」
そしてこれで彼らの話は大団円でおわ…
「提督、失礼します。今回の演習のことで…」
「…あ」
「…じ、神通…?」
彼女の視線の先にあるのは脱ぎ散らかされた服、おそらく全裸の姉と、半裸の提督
「し…」
「し…?」
「失礼しました————————————————!!!」
蒸気機関車の煙の如く湯気を吐きながら彼女は走り去っていった。
「じ、神通 待って!待って————————————————!」
「おい、服!服!」
ムジヒ