Fang of No Face〜Sword Art・Online alternative〜   作:Mr.bot-8M6N

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ぶっちゃけ、この戦闘って二話で済ませる予定だったのに、どんどん引き伸ばされていく……。あと一話か二話で済ませたい所……。




EP-elf④ IRREGULAR!?

 

 あ……しまった、と思うがもう遅い。

 

『で、デカ……ッ?!人族ッ!貴様、初対面のくせに失礼だぞ!』

 

 デカ乳改めーーフォレストエルフの女騎士は、ダークエルフの騎士への警戒を忘れてこちらを睨みつけてくる。当然だが。

 こういう時はいつも通りに適当に話を変えるか。

 

「そんな事よりもーー」

 

 ヒュオッ!と風を切る音がナナシの耳元を掠める。

 

『そんな事より?貴様、私を愚弄しておいてーー』

 

 顔を怒り(と若干の羞恥)で赤くさせた顔で手に持った剣がナナシの首元に添えられている。

 

「悪かった!アレは俺が悪かった!!だから剣を向ける相手を間違えるなッ!!」

 

 さっきまでの態度とは打って変わって、両手を上げての全力謝罪。だが、ナナシは人間関係に関して学ぶ事は無い。故に同じ間違いを繰り返す。

 

「それよりもーー」

 

『それより?』

 

 首筋に剣先が食い込む。

 

「いや、本当に大切なことーー……」

 

 そのタイミングで、ナナシはダークエルフの不審な動きに気付く。ダークエルフの騎士は、此方を警戒しつつも、何故かチラチラと明後日の方向を盗み見ている。これはーー。

 

「……ーーを聞きたかったんだが、もういいや。大体分かった」

 

 ーー予想はしてたが、やはり面倒な方だったか……。

 

『貴様、いい加減に……』

 

 更に剣筋が首の皮に食い込むが、ナナシは慌てていない。

 

「良いのか?あのダークエルフ逃げようとしてるかもよ」

 

 俺がこの中で一番弱いとしても、二人のエルフ騎士の実力が拮抗していた以上、人数差は致命的であろう。ここでダークエルフが逃走を選択肢に入れるのは当然の判断だろう。そして、このタイミングでこの選択肢を考えるということは、ある事実(・・・・)を指す可能性が高い。

 

 ーーやはり、あの白髪ロン毛が《秘鍵》を持っていそうだな。

 

『……………………』

 

 そこで、やっと自分が今まで戦っていた相手の存在を思い出し、ダークエルフの騎士に向き直るフォレストエルフの女騎士。しかし、先程までの一件を忘れる気は無いようだ。

 

『……良いか、先程の愚弄は忘れた訳でも許した訳でもない。ただ優先順位の問題で後回しするだけだ。それを忘れるなよ』

 

 ……………忘れちゃえば良いのに。それはそうと、これで仕切り直しが終わった。当初の予定通り人数差を全力で利用し、有利を取る!

 フハハハハハ!戦いは数だよ兄貴(兄貴が誰かは知らんけど)!どんな手を使おうが…………最終的に…勝てば良かろうなのだァァァァッ!!

 

 デジャブである。もうすっごいデジャブである。ならばきっとーー

 

『いやぁ、もしかしてかなり良いタイミングでの助っ人じゃあないですかね、ストルズ殿?』

 

 ーーきっと、ナナシの甘い見通しなぞ、直ぐに覆えることだろう。

 

 ナナシの視界に、乱入者の女の名前が写る。その名前は《ダークエルブン・ウルフハンドラー》と記されている。どうやら、敵に援軍が来たようである。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 今まで一度たりとも聞いたことのない女の声が明後日の方向から聞こえた。ナナシ、ダークエルフ、フォレストエルフの3人全員がその声をした方向を見る。

 そこに居たのは、ダークエルフの女。三日月のような笑みを貼り付けて木の上から此方を見下ろしている。

 

 ーーなんだコイツは?!

 

 それに顔を青くするナナシ。乱入者であるニヤニヤ女も他のエルフ2人同様カーソルがダーククリムゾンのエリートモンスターだ。だが、そんな事は問題じゃない。問題なのは、《鼠》特製の攻略本にこの女の存在が載っていない事だ。完全なイレギュラーだ。このイレギュラーがどこまで事態を想定外の方向へ持っていくか分からない。

 

『貴様、《狼使い》!卑しい獣使いの分際で何をしに来た!!』

 

 白髪ロン毛が味方であるはずのニヤニヤ女に敵意を向けている。どういう事だ?味方じゃない……いや、一枚岩じゃないのか?それともただ個人がいがみ合ってるだけか?クソ、情報が少なすぎる。

 

『いやはや、ストルズ殿はいつも怖い顔をしておりますなぁ。今回は偶然ですよ。任務でたまたま近くを通りかかったものでしてね。そうしたら、ストルズ殿がどうも劣勢のようでしたのでここは手助けせねばとね』

『不要だ。貴様の手を借りるくらいならーー』

 

 そこで、ニヤニヤ女の笑みが消える。

 

『そういう訳にもいかないんですよ。貴方同様、この私がこんな下層に出張ってくる必要がある位には事態は逼迫しています。貴方個人の感情なんていちいち気にしてられないんですよ』

 

 話を聞くに、ダークエルフ陣営で何かしらの問題が起こってあのニヤニヤ女が駆り出された、と見るべきか。しかし、わざわざココで出くわすか?はっきり言って勘弁して欲しい。

 

『よいしょっと』

 

 ニヤニヤ女が木から飛び降りる。

 

『ほら、お前達。仕事ですよ。出てきなさーい』

 

「ちょっ?!……マジかよ?!」

 

 どうやら、敵の援軍はあのニヤニヤ女だけではなく、女が率いる部隊まるまる1つ分らしい。流石に、部下の連中はそれ程強くなさそうだが、数が数だ。これは本格的に駄目かもしれん。

 ナナシは隣のフォレストエルフに話しかける。

 

「おい、デカ乳」

 

『貴様、また……ッ』

 

「ンな事ぁ、どうでも良い。それよりもお前、ここで撤退する気あるか?はっきり言って現状絶望的だぞ」

 

『言われなくとも分かっている。だが、自分の命よりも任務が優先される事もある。そして、それが今だ。……貴様こそ逃げないのか?本来、この戦いに人族は関係無い筈だぞ』

 

「………………………」

 

 まぁ、そうと言やそうなのだが………俺、この森の中で迷子なんだよなぁ……。ここを出るのには道案内が必須なのだ。

 そして何より敵は逃してくれそうにないだろう。人数による差は歴然。少なくとも同じ状況で俺が有利な側なら絶対に逃がさない。

 

『あの騎士の男と後から来た女。片方だけならどうにかなるが……同時となると厳しいか』

 

 え?そうなの?一人相手でも厳しそうなのに……。そう言えば、モンスターの危険度を示すカラーは第7層エリートモンスターである彼女らエルフ騎士で最大のダーククリムゾンだったが、当然このアインクラッドの最強モンスターでは無い。つまり、カーソルカラーがダーククリムゾンの連中は計器の最大値がソコだからソコに留まっているだけで、その中でも差は明確に存在しているのだろう。

 

「あの取り巻き連中は?」

 

『あの兵士どもか?……物の数に入らん。居ようが居まいが、問題にならん』

 

 マジすか……。いや、確かにあの取り巻きだけなら俺でもどうにかなりそうだが、それでも厄介な事には変わりがないというのに……さすが、エリートモンスター。

 

「……片方だけなら何とかなるんだな?」

 

『当然だ』

 

 そこには、強がりも過剰な自信も無い。あるのは、確信。ただ、そうなると何の気負いもなく淡々と答えるエルフ騎士の姿がある。

 

 …………………あー、クソ!ならやるか!!

 

「なら、俺があのダークエルフの騎士をやる。アンタがそれ以外だ。いいな」

 

『構わんが、任せて大丈夫なのか?』

 

「問題無いとは言わないが、やりようはある。寧ろ、あの未知数のニヤニヤ女を押し付けられるよりかは幾分マシだ」

 

『………心得た』

 

 退かない以上、今ある手札でこれが最善であることが分かっているのだろう。フォレストエルフの女騎士は、ややあってから同意の意を伝える。

 

「その変わりと言っちゃ何だが、俺が退くと判断したら一緒に退いてくれ」

 

『……貴様、私が言った事をーー』

 

「聞いてたよ。アンタが自分の命より優先する任務ってのは連中を始末する事じゃないんだろ」

 

 適当に《秘鍵》ぶんどって逃げよう。

 

『………成る程、確かにそうだ』

 

「じゃ、そう言うことで」

 

 言って、意識を完全にあのダークエルフ騎士にむけようとする。しかし、そこでエルフ女騎士に呼び止められる。

 

『待て』

 

「……ンだよ」

 

『そういえば、貴様に私の名前を伝えていなかったな。これから背中を預ける相手に『デカ乳女』などと呼ばれたくはないのでな。……私は《カレス・オーの騎士》ティアル 。一応……フォレストエルフと呼ばれている』

 

 あー、そう言えばまだだったわ……。というかこの女、根に持ち過ぎだ。あと、「一応」って……。

 

「なんか、引っかかる自己紹介だな。……俺はナナシ。見ての通りただの人族のガキだ。よろしくな乳女」

 

『貴様、また……ッ』

 

「それは『また後で』だろ?」

 

『…………フン。後で覚悟していろ』

 

 この戦い。ハッキリ言って勝ち目が薄い。これが脱出不能のデスゲームじゃなく普通のMMORPGだったら即クソゲー扱いだな。いや、そもそも命懸けのデスゲームな時点でクソゲーだったわ……。せめてこっちにも援軍を寄越せってんだ。

 ……文句を言っても何も始まらない。やると決めたのだから、キッチリとやりきる。

 

 仕切り直しによって、何故か更に混沌とした事態に陥ったがそれも終わり。俺にとっては二回戦目。デカ乳女にとっては三回戦目の火蓋が切って落とされた。




今回の登場人物
・ナナシ……現在、この中で最弱の男。性格は悪いが、猫をかぶっている(あまり上手く被りきれてない)。ついでに、割とアッサリ猫被りをやめてしまう。趣味は、鍛錬、モンスター狩り、標的の情報収集。

・ティアル ……デカ乳女。フォレストエルフ(一応)。騎士道精神を持った厳格な性格。だが、周囲の環境がアレな為、同族には基本的に冷たい態度で接する(というか、職務以外では無視する)。趣味は、鍛錬と髪いじり(最近始めた)。*実は、EXスキル持ちNPC。

・ストルズ……白髪ロン毛。ダークエルフ。プライドが高く、結構敵を作りやすい性格。でも、他人を認めたり、自身の過失に真摯に受け止めたりできる(たとえ、それが敵であっても)良い人。騎士として高い自信と誇りを持ち職務に従事している。趣味は、訓練、鍛錬、研鑽(全部同じ?)

・ダークエルブン・ウルフハンドラー(名前・未登場)……ニヤニヤ女。ダークエルフ。よく気持ちの悪い笑みを浮かべており、きみ悪がられている。しかし、仕事に忠実で社交的だったりする。少なくとも何かしら悪事を考えたりとかしていない。顔で……というよりその笑みで色々損してる人。趣味は、お菓子作りと狼の世話。



☆因みに、
ダークエルブン・ウルフハンドラーは、フォレストエルブン・ファルコナーと共に漫画版SAOPで登場(因みに、漫画版ではイケメンでしたw)。ファルコナーさんはお休み。
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