Fang of No Face〜Sword Art・Online alternative〜   作:Mr.bot-8M6N

6 / 10
なんとか切りの良いとこまで行ったな。というか、切りが良いトコにいくまで詰め込んだわ。
あと何話でこのエピソード終わるやろ?


EP-elf⑤ たった一月前の日々は遥か遠い過去の彼方(NEW!!)

 

 仕切り直しから「いざ」という所で、一番初めに動いたのは、白髪ロン毛だった。

 白髪ロン毛は、一瞬名残惜しそうな顔をしたと思ったら、俺とティアルに背中を向けて走り出した。その背中が木々にかくされていく。

 

「…………………………え?」

 

 ーー……………………あの野郎……に、逃げやがったぁぁあああ!?

 

 数的優位を奪われ、相手が主導権を握られた事で"その可能性"があった事が頭から自然に消えていた。

 

 そうだよ!彼奴らの目的は俺たちを殺すことじゃねぇ!《秘鍵》を自陣に持ち帰る事だ!!

 

「おい!デカ乳ッ!!」

『分かっているッ!』

 

 このだだっ広い森で人を探すなどほぼ不可能に近い。つまり、ここで姿を見失ったらクエストは失敗したも同然だ。……つうか、なんでこう想定外ばっか起こるんだよ!!もう鼠の攻略本が何の役にも立ってねぇじゃあねぇか!!

 

 白髪ロン毛を追おうとするナナシ達に立ちふさがるようにニヤニヤ女が鞘から剣を引き抜く。

 

『行かせませんよぉ〜。ハイ、皆さん構えて〜』

 

 そして、そのニヤニヤ女の前に一般ダークエルフ兵士の皆さん。

 

「邪魔だ」

『道を開けろ!』

 

 ステータスの敏捷値が高いティアルが極限まで低くした姿勢で突っ込む。

 ダークエルフ兵士はその突進を二人がかりで止めるつもりのようだが……それを俺が許すつもりは無い。

 

 軽く前方に飛び上がった状態で腰から両手に一本づつ投剣を構える。

 投剣スキル《ツインシュート》。

 両手が交差するようにして放たれた二本の投剣が、ティアル の背中をの上を通り二人のダークエルフ兵士にそれぞれ突き刺さる。

 そして、それに怯んだダークエルフをーー

 

『……シィッ!』

 

 ソードスキルでも何でもないただの一振りが盾を避けるようにして片方のダークエルフ兵士を捉え薙ぎ払う。

 そして、吹き飛ばされたダークエルフ兵士がいた所を通り、もう一人の背後を取る。そして、振り向く事なくティアルの剣がもう片方のダークエルフ兵士を捉える。

 

『ガ、ガフ……』

 

 準備中

 

『ちょおッ?!速!ハッヤ!?一瞬、完全に見えなかったんですけどぉ!?』

 

準備中ーーー

 

「……ラァッ!」

 

 片手剣・突進突きSS《レイジ・スパイク》。

 前方に突き出された剣が不可視の推進力を帯びてナナシを引っ張る。このまま白髪ロン毛を狙っても良いが、カウンターが怖い。だから、白髪ロン毛の進行方向やや前方を狙う。

 

 ナナシのブーツが大地を削る音がする。

 

 ソードスキルの推進力で生まれた慣性をブーツで全力で殺し、なんとか白髪ロン毛の進行方向を遮るようにして立つ。

 

『…………ヌ』

 

 ブレーキの時にまった土煙の中、ナナシは居住まいを正し、自身の剣を白髪ロン毛に向ける。

 

「……悪いな、ここは通行止めだ」

 

 改めて、ナナシはダークエルフを注視する。褐色の肌にしろの長髪。エルフの特徴的な左耳に赤の宝石の付いたピアス。紫の衣服と防具に包まれ、右手には肉厚で片刃の直剣を持っている。そして、腰に小さなポーチ。

 

 ーーおそらく、あそこに……。

 

 小さな間があって、ダークエルフの騎士は倒すべき敵をティアルからナナシに切り替えたようだ。

 

『……正気か人族。あの女の助力無しに私と戦って勝てるとでも?』

 

「まぁ、確かに……。俺とアンタが100回戦えば99回は負けるだろうさ。……だが、戦闘は一回こっきり。その始めで最後の1回目に俺が『勝ち』を引いたら良い話だろ?」

 

『ほう。つまり、貴様は私と100回戦えば、一度でも私に勝てるとでも思っているのか?』

 

「……そいつは、やってみないと何とも言えないな。案外10回は勝てるかもしれんしな」

 

『抜かせ』

 

 ダークエルフの騎士は、ナナシの言葉を鼻で笑って斬りかかった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 金属同士がぶつかり合う派手な音が辺りにこだまする。

 

「チッ、この女。戦えば戦う程強くなっていやがるッ」

 

 《狼使い》と呼ばれたダークエルフの女が舌打ちをうつ。ウルフハンドラーの女から余裕の声はとっくに消えていた。ティアルは、そんな彼女に余裕を見せながら答える。

 

「あぁ、実はこの剣はな。私がこの下層に降りてきた時にここの野営地から勝手に拝借してきた物でな。ようやく慣れてきたのだよ」

 

 実際、一合剣同士が重なり合う度にティアルの剣の重みが強くなり、踏み込みが深くなる。

 

「いつもは、もっと特別な物(・・・・)を使っていてね。こういう普通の剣では使い勝手が違い過ぎて、どうもしっくりこなかったのだ」

 

 ティアルの力強い一撃一撃にどんどん後ろに退いていくウルフハンドラー。

 

「慣れない武器でストルズ殿と互角にやり合ってたって事かい。あー、これは貧乏クジ引い………ッッ!!」

 

 ティアルの剣が黄色燐光を放つ。一瞬の、ほんの小さな隙さえ逃さずソードスキルがウルフハンドラーに炸裂する。

 片手剣・単発垂直斬りSS《バーチカル》。その一撃を何とか剣で受けて凌ぐも大きく吹き飛ばされた。

 

「あー、クソ!お前ら!!この女は私が抑えておく!だから、とっととあの人族仕留めてストルズ殿を連れて来い!どうせ、この女を相手にお前らは何の役にも立たん!」

 

 何とか体勢を立て直したウルフハンドラーの命令に、加勢に入りたくても入れず剣を構えたまま棒立ちになっていたダークエルフの兵士達はストルズというダークエルフの騎士の下に向かおうとする。

 

「ほう……。抑える?この私を?」

 

「なッ!?」

 

 ティアルは大きく後ろに飛んだ。たったそれだけで一番先頭を走っていたダークエルフ兵士の背後にまで追い付く。一人のダークエルフ兵士とティアルが互いを背中越しに捉える。

 

「……え?」

 

 そして、そのままティアル の一閃が兵士の頭部を捉えた。兵士は頭部の口から上を失い、地面に倒れ、身体がポリゴンに変換され空へと溶け消える。

 

「悪いが、人族との約束でね。お前たちは全員、私が相手をすると決めているんだ。死にたくなければ、そのまま何もせず、ここで突っ立ててもらえないだろうか?……でなければ、先に君らを始末する」

 

 残った兵士は何も言えず、ただ立ち尽くすしかなかった。

 

「無粋はこれで入らないだろう。お手並み拝見といこうか、人族の少年……いや、ナナシ」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 ティアルがウルフハンドラーを相手に有利に事態を進める中、ナナシはダークエルフ騎士を相手に劣勢を強いられていた。

 

『シャァァアッ!!』

 

「………ッィイ!?」

 

 青の燐光が灯ったダークエルフの剣閃を紙一重で避ける。この男のソードスキルなんぞ受けたら絶対体力が吹き飛ぶ。否、それがただ何の変哲も無い一閃だとしてもこのダークエルフの筋力値(STR)で繰り出されるなら全て致命傷だ。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 致命傷こそ無いものの身体には擦り傷を負った証として、赤いラインがいくつも負っている。

 息も上がり、HPバーもギリギリ緑色を保っているという状況だ。たとえ擦り傷だとしても、あと一撃くらえばナナシのHPが半分を下回ったという事を示す黄色に変わる。そうなったら、あのティアル とか言うデカ乳女が自爆攻撃で俺を残して全滅。そして、俺は一人この霧が晴れることない森で一生彷徨い続けることとなる。……というか、その自爆攻撃の効果範囲ってどれくらいなんだろ?俺が生き残る以上そこまで広くはないはず……。だとしたら、かのニヤニヤ女とか生き残っちゃうんじゃない?え?それヤバくない?

 

「マジで何とかしないと……」

 

『どうだ?お前の言う、一回の勝利は引けそうか?』

 

 ダークエルフ騎士は余裕の笑みで立っている。剣を構えてさえいない。

 あー、腹立つ。完全に油断してるよ。つーか、この白髪ロン毛、さっきから一発まともに食らったらそれで俺が死ぬ事を分かっているのか、バカみたいにソードスキルを連発してきやがる。

 

「うるせぇ……。まだ、結果が出てないのに勝利もクソもあるか!」

 

『確かにその通りだ。……では、今からその結果を出すとしよう」

 

 ダークエルフの騎士がソードスキルの構えを取る。ソードスキルは、片手剣・突進斬りSS《ソニックリープ》。くしくも、そのソードスキルは最初に俺が殺されかけたスキルだ。

 

 ソードスキルは確かに強力だ。攻撃の威力に補正がかかり、種類によっては、攻撃範囲に補正、三次元的移動なんて物も可能とする。しかし……。しかし、それはーー。

 

 ーーどうしようもなく、「諸刃の剣」なのよね。

 

 もう何処にも居ない彼女(・・)の声が聞こえたような気がした。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 一体どれくらい前だろうか?《SAO》がサービスを開始して間もない頃だったから一月か二月くらい前だろう。

 そんな時に、彼女(・・)はナナシに教えた。

 

「ソードスキルが諸刃の剣?」

 

 ーーえぇ。そうよ、め……ナナシ。確かにソードスキルは強力よ。それに音も光も派手で使ってて気持ちが良いわね。少なくともこの世界でやっていくにはほぼ必須と言って良いくらいには重要な物よ。でも、それは良い事だけじなないの。メリットには当然、デメリットも存在する。ナナシ、貴方はソードスキルのデメリットって何だと思う?

 

 ややあってからナナシは答える。

 

「……んー。やっぱりスキル発動前後に生じる隙でしょうか?あの時は必ず無防備になる」

 

 ーーそう、正解よ。流石、ナナシ。お利口さんね。

 

 そう言って彼女(・・)は、爪先立ちになって手を伸ばし、頭を撫でようとする。それに気付いて、ナナシは自分の腰を落とす。

 

 ーー確かに、それは正解。でもそれは100点満点ではないわ。

 

「他にもあるのか。……教えて下さい、ユーナ先生」

 

 ーーそうやって、素直に疑問を聞ける所は貴方の美点ね。……残りのデメリットはね。ソードスキル発動に必要な条件、つまり「構え」ね。……あと「先生」って呼ばれ方も新鮮で素敵。

 

「『構え』……」

 

 ーーソードスキルを発動するにはそのソードスキルに合わせた独特の構えが必要よね?それをゲームシステムが感知してソードスキルが発動する。つまり、ソードスキル一つ一つの発動前の構えは全部違う。つまり……。

 

 彼女(・・)は、そこで話を止め続きをナナシにさせようと促す。

 

「ーーつまり、その「構え」を知っていたら、どのソードスキルがくるか分かる」

 

 ーーそうよ。もっと噛み砕いて言えば、どの攻撃がどのタイミングでどの角度からどういう方向で振るわれるかが、全部分かっちゃうって訳。……ここまで言えば、ソードスキルの危うさは分かるわね?

 

「そこまで教えてしまったら、もう避けて下さいと言っているような物だな」

 

 ーーそれが、ソードスキルのデメリット。でも、やっぱり普通に武器を振っていては出せないダメージはとても魅力的。つまりーー。

 

「……成る程、分かりました」

 

 ーー分かってもらえて嬉しいわ。ソードスキルを連発するっていうのは某有名狩りゲーで、相手は寝ている訳でも倒れている訳でも罠に嵌っている訳でも怯んでいる訳でも無いのに溜め斬りや属性解放突きばかりで攻撃しているような物よ。だからこそ、重要になってくるのがタイミング。分かった?

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「分かってますよ、姉さん」

 

 ナナシも構える。ただし、ソードスキルの構えではない。ただ、剣に両手を添えただけ。

 

 ーーまだ、まだだ……。

 

 白髪ロン毛は俺の姿勢が避ける物ではなくドッシリと正面からかち合う構えだと理解したのだろう。

 

『さらばだ、人族!』

 

 大きく叫び、ダークエルフのソードスキルが発動した。ダークエルフがナナシに向かって神速の速さで駆ける。

 

「お前がな」

 

 そして、ナナシも前に出た。ダークエルフ程では無いが、ナナシも全速力でダークエルフとの距離を詰める。今日初めての前の踏み込みにダークエルフの騎士も一瞬驚いたようだが、それだけだ。絶死の一撃がナナシに迫る。

 

『……ォォォオオオオッ!!』

 

 ナナシがダークエルフの《ソニックリープ》の射程に入る。瞬間、ダークエルフの剣が振るわれる。

 そして、ナナシはーー

 

「………………」

 

 一歩引いた。ナナシは前方への踏み込みに急激な制動を行い、小さく後ろに跳んだのだ。

 

『………なッ?!』

 

 ダークエルフの一閃は、ナナシの服を裂くに留まった。そして、ダークエルフがソードスキル発動の反動で動きが止まる。

 

 ーーソードスキルで大切なのは、どれだけ確実に当てるか。そして、どれだけ確実に当てられる状況に持ち込むか。ならば、それはーー

 

「………ここだぁぁぁぁぁああああああッッッ!!!!」

 

 ここで初めてソードスキルの構えを取る。

 片手剣・突進突きSS《レイジ・スパイク》。ゲームシステムによる爆発的推進力を生む突き。それが、ほぼ零距離でダークエルフの心臓を穿つ。

 

『ォォォォオオオオオオオオオオッ?!?!?!』

 

「ァァァァァアアアアアアアアアッ!!!!!!」

 

 二人の絶叫が森にこだまする。

 

「…………ラァァァアアアッ!!!!!」

 

 《レイジ・スパイク》の推進力が二人を引っ張り、遠く背後にあった巨木に激突する。

 

『……ア……ガ……ッ』

 

 ナナシの直剣《アニール・ブレード+2》がダークエルフの心臓を貫通し、巨木に食い込む。

 

「食い込みがたらねぇ……ナァッ!!」

 

『ゴボォッ!?』

 

 体術・拳打SS《閃打(センダ)》。その一撃が《アニール・ブレード+2》の柄頭に炸裂し、まるで杭打ちのように深く巨木に食い込んだ。

 

「油断するからこうなる」

 

 ナナシは疲れたと言わんばかりに両膝に手を置き、大きく息を吐く。

 

「100の結果から引かれる最初の一枚は……俺の『勝利』だったな」

 

 ダークエルフの騎士にだけ聞こえる声で、ナナシは勝鬨を上げた。そして、




今回の登場人物
・ナナシ……灰色のインナーに黒のフード付きカーディガンとズボン。黒の剣帯で片手剣を背中に吊っている。普段、フードを目深に被り、顔を隠している。

・ティアル ……他のフォレストエルフ騎士同様、緑と白を基調とした衣服と防具に身を包む。だが、他と違って赤のボレロを纏う。最近、右のもみあげの金髪で小さな三つ編みを結い始めた。

・ストルズ……他のダークエルフ騎士同様、紫と黒を基調とした衣服と防具に身を包む。この人は本文で描写したし、この程度で良いや!

・ブルミス……ダークエルブン・ウルフハンドラーの女性。ナナシ曰く、ニヤニヤ女(名前、いつ登場するか分からなくなってきたからここで出す事にする)。衣装は、ストルズ君と同じダークエルフ騎士の制服(ただし、鎧は重いから付けていないとのこと)。
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