Fang of No Face〜Sword Art・Online alternative〜   作:Mr.bot-8M6N

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ちょっとラストに手を加えました!


EP-nf③ 《無貌(No Face)

 レストラン内の1つのテーブルで注文した食事に舌鼓を打ちながら少し困惑の混じる声が響く。

 

「《無貌(No Face)》?」

 

 単語を口の中で転がしながら記憶を漁ってみる。

 …………………………聞いたことがない。それは初耳の単語だ。

 

「厳密には、その連中の頭目らしき男の通称だそうよ」

 

「へぇ……」

 

 ……聞いたことないな。

 

「その頭目の男は、黒づくめ出で立ちで顔はかぶり物の影で完全に中が覗けないそうよ。……ようは顔無しよ、上位幽霊(アークレイス)みたいなの」

 

「ふむふむ」

 

「その男の仲間たちは、顔を白の仮面で隠した黒づくめでーー」

 

「ふむふ………ん?」

 

「『ん?』って何よ、『ん?』って。やっぱり聞いたことあった?」

 

「いや……うーん……やっぱり………ないですかね?」

 

 最後の情報だけなら心当たりがあったのだが、顔無しのリーダーとなると考えてたヤツでは無いか……。

 

「なんで私に聞くのよ……。少なくとも噂だけなら《攻略組》全員が知ってるわよ」

 

 《攻略組》が全員?

 

「俺は知りませんでしたよ」

 

「…………………貴方以外、ね」

 

 ふむ、この手の情報(・・・・・・)を俺が知らないとは……情報収集を怠りすぎたかな?しかしーー

 

「しかし、よりにもよって、どうして『《攻略組》が』なんですか?寧ろ、その手の情報は下層の人たちの方が重要度が高いと思うのですが……」

 

 先程も言った気がするが、犯罪を犯すプレイヤーは確実性を重んじる。ーーつまり、自分たちより弱い奴を、自分たちより少ない連中を狙うのだ。確かに、今年の1月の《ラフコフ》の台頭に呼応するように現れたらしい《無貌(No Face)》は全プレイヤーにとって無視しえない存在だろうが……

 

「もう……察しが悪いわね……。つまり、その《無貌》の連中は、私たち《攻略組》の脅威になりかねないからよ」

 

「……うん?えっと……つまり、もう被害が出ていると?」

 

 そうだとしたら、確かに不味いな。

 

「いいえ、出てないわ」

 

 ………出てない?

 

「厳密には、『今はまだ』と『《攻略組》には』って但し書が入るのだけど」

 

「……と言いますと?」

 

「なんと言うのかしら……えっと、《攻略組落ち》?って呼ばれてる人たちの中に何人か被害が出ているそうなのよ」

 

 《攻略組落ち》。読んで字のごとく、実力面か精神面かで《攻略組》に着いていけなくなった連中の事を指す。

 なるほど、落ち目とは言え《攻略組》と同程度の実力者が殺されたとなると、そりゃ戦々恐々だ。

 

「調べてみたら、結構昔からあったみたいなの。勿論、全員って訳じゃないわよ。寧ろ、そっちの方が少ない」

 

「偶然の可能性は?」

 

「無いとは言わないけど……腐っても以前まで第一線で戦っていた人たちよ。それが、下層に降りて間もない時期に死ぬ。それもそれなりの数が……確かに《攻略組落ち》の総数から見た死者の数は少しよ。……だけど、おかしなタイミングで死んだ……不審死の件数と考えたら決して無視できない物だわ」

 

 被害がどれだけかは分からないし、数を教えられてもピンとこないだろうが、最前線のギルドをほぼ単独で切り盛りしているやり手の彼女がいうのなら間違いないだろう。

 

「成る程……。早い内に叩いておかないと、調子にのったその《無貌(No Face)》の連中が《攻略組》にまで手を出してくるかもって訳か」

 

「ま、そういうことよ。最近は、《血盟騎士団》や《聖竜連合》の人たちが少なくない人数を登用して調査に当たってるわ。……一応、私たち《memento mori》も最近はそっちがメインになってるわね」

 

「へぇ、メメモリってそこまで人数に余裕があったんですね」

 

「いえ、無いわよ。……でも、ゴドウさんが気になってるそうなのよねぇ……」

 

「…………………へぇ」

 

「昔からゴドウさんってそういうとこあるのよ。普段は何も言わずに私たちに合わせてくれる、協調性の塊みたいな人なんだけど……。放っておいたら、一人で行っちゃいそうだし。あまりそういう事に割く人的余裕は無いんだけど、サブマスとしてはギルマスの補佐もしたーー」

 

「では、今日もその《無貌(No Face)》の調査に向かうところだったんですか?」

 

「ーーえ?いいえ、今日は違うわ。あまり《無貌》の件に気をかけすぎると、《memento mori(ウチ)》の攻略に差し障るからって、私がゴドウさんにお願いして調査の切り上げさせたの。……それも、誰かさんのせいで私だけオジャンなんだけど……」

 

 そう言いながら、シーナさんはこちらを見る。それ、俺のせいですか?絶対違いますよね?冤罪ですよ、それ。

 

「……ま、いいわ。それで、今日は何をするの?貴方の為に一日あけたんだから、付き合うわよ」

 

 …………………。ホント何なのこの人ぉ……。

 

「………そうですねぇ」

 

 マジでどうしよう……。本来の予定は、このまま宿で仮眠とってから、迷宮区のマップデータを情報屋に売ってからまた迷宮区に潜る筈だったのだが……。

 

「あ、じゃあ《無貌(No Face)》の調査っての気になりますね。俺も調査してみましょうかね」

 

 個人的にその連中の事気になるし。

 

「えー……」

 

 まぁ、先日までその調査していたシーナさんは乗り気ではないだろう。

 

「別に着いてこなくてもいいですよ。俺、一人で行くんで。…………それはそうと、ご馳走さまです」

 

「え、もう食べちゃったの!?ちょっ、ちょっと待って、私もすぐ食べ終えるから!……って、私全然食べてない!?」

 

「いえ、ゆっくり食べていていいですよ。シーナさんにとっては、ずっとやってた《無貌(No Face)》調査の繰り返しになるでしょうし」

 

 ですから、ギルドメンバーと迷宮攻略に戻ってもらって結構ですよ。

 

「あ、ちょ!?待ちなさいッ!」

 

「やっぱりシーナさんに借り作るのアレなんでお金だけ渡しときますね!……じゃ、ご馳走様でした!」

 

 それだけ言ってナナシは、

 

『お客様、店内では……』

 

 店員NPCの注意を置き去りにしてレストランから走って消えていった。

 呆気に取られたシーナは、ナナシに逃げられた事に思い至り怒りの声を上げる。

 

「………もうっ!何なのよぉ!!」

 

 彼女の視界には、ナナシからシーナ宛にレストランで消費した料金(コル)が振り込まれた事を示すメッセージのウィンドウが写っていた。




今回の登場人物
・ナナシ
 シーナのことは嫌っている?
・シーナ
 お姉さん肌だがギルドのメンバーは皆年上で、年下のナナシには度々気にかけている。

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