ブラッククローバーの二次小説です。
ヤミの昔話が大雑把だったので、なら好きなように脚色しちまえと思って書きました。
もしも間違った解釈があれば指摘お願いします。
クローバー王国のとある海岸。
白いタンクトップに黒いズボン、そして腰には一振りの刀といった風貌の少年が一人、寄せては返す波を見つめ小さく呟いた。
「まいったな……ここどこだ」
困った、そう息を吐く少年の隣には粉々になった船の残骸が転がっており、否応なしに漂着したことを教えてくる。
少年の記憶ではただ父親とともに漁へ出ただけ。何も変わらない日課のハズだったのだが、運悪く難破し気がつけばどこかわからない場所へと漂着していた。
帰ろうにもどこへ行けばいいのかわからないし、何よりも帰るために必要な船もない。まさに状況は絶望的だというわけだ。
あーどうしよ、特に緊張や不安もない声を出しながら少年が海を眺めていると
「キミ、もしかして国の外から来たの?」
「んー?」
不意に背後から声をかけられ少年が振り返ると、そこには黒の長袖に短パン姿の彼と同年代の黒髪の少年が立っていた。
にこり、笑みを向ける長袖少年に遭難少年は不審そうな目を向ける。
「もし困ってるのなら、僕のところに来る?」
「え、いいの?」
「うん」
不審そうな目は何処へ。長袖少年の言葉に難破した少年は一つ返事で承諾。
二人は互いに手を差し出すと握手を交わし
「俺はヤミ。ヤミ・スケヒロだ、世話になるな」
「僕はレイ。レイ・バスカビル、よろしくね」
「ここが僕の家だよ」
「……なんつーか、ぼろっちいな。てか本当に家か、これ?」
レイに連れられてヤミがやってきたのは、海岸からそう遠くない場所に建てられたボロボロの家屋。
一目でレイの手作りだとわかるその家は、まだどこぞの馬小屋のほうがマシだと思わせるほどで。
「これまで僕一人で暮らしてたから、ボロボロなのは気にしてなかったんだけど……やっぱり気になるよね」
「……まぁ屋根があるだけマシか。居候の身だし、ボロっちくても我慢してやるよ。どんなにボロっちくても」
「ヤミってさ、正直だよね。なんかいっその事清々しいよ」
レイの家へ上がり、ようやく一息つけたところでヤミが質問をする。
「幾つか聞きたいことがあんだが、まずここどこだ?」
「ここはクローバー王国っていう国でね、僕達がいるのはその中の『平界』にある町の一つだよ」
「へいかい? なんだそりゃ?」
「あぁ、『平界』っていうのはね……」
レイからの話を聞くに、このクローバー王国には王族・貴族が暮らす『王貴界』と平民が暮らす『平界』、そして下民が暮らす『恵外界』の三つに区分けされている。
上に行けば行くほど町は栄え、下に行くほどに田舎になっていく。ヤミが漂着したのはこのうちの『平界』である。
クローバー王国は階級制度によりこうした身分ごとで住む場所が分けられ、『恵外界』の人々は教育すらまともに受けられない現状にあった。さらに出稼ぎに来てもろくな働き口が見つからず、滞在費だけがいたずらに増えて行くという問題も。
「身分差別ねぇ……だったらお前はどうやって生活してんだ? 歳も俺と同じくらいだろうし、働いてるわけじゃねぇだろ?」
「食べ物だったら釣りで魚が食べられるし、近くの森に行けば獣もいるから、食には特に困ってないね。住む所も……こんなだけど我慢すれば十分住めるし」
「獣って、その見た目で狩りしてんのかよ」
そう言いつつ、ヤミは目を細めてレイを見る。
彼の体はお世辞にもがたいが良いとは言い難く、むしろ線が細く華奢な印象の方が強い。家の中を見渡しても釣り道具以外は特にこれといったものはなく、とても狩りをしているようには思えない。
「僕だって男だからね、狩りの一つや二つくらい余裕だよ」
そうは言うがとてもそう見えない。もしかしたら長袖の下はすごいのかもしれないが、男の体に興味はないヤミはスルーする。
「ところでヤミはどこから来たんだい? 海岸にいるってことは海を越えてきたんだろう?」
「俺は日ノ国っていってな、東にずっと海を渡った所にある島から来た」
「へー日ノ国かぁ。聞いたことないってことは、相当遠くから流されてきたんだね」
あんな木の小舟でよく海を渡って来れたな、レイはヤミに関心する。
「それでこれからどうするの? やっぱり自分の国に帰る?」
「んー……また海渡るの面倒くせえし、無事に帰り着けるかわからねぇし……うん、ここに残るわ」
「なんというか、簡単に決めるんだね」
故郷になんの未練も感じさせないヤミに思わず苦笑するレイ。会って間もないが、ヤミがとてつもなく豪胆な性格をしていることだけはわかった。
そんな感じで数十分話し合っていると
「あー……ずっと座ってるのも疲れたな。気分転換に街でも行ってみるか」
ぐぐっ、と背伸びをし立ち上がるヤミ。どうやら街を見て回るつもりらしい。
「うーん、街に行くのはちょっとやめた方がいいかもよ」
「あ? なんで?」
後頭部を掻きながら言うレイに、ヤミは片眉を上げて理由を尋ねる。
「ヤミが漂着者だってことは、多かれ少なかれ街に流れているはず。行ったらきっと面倒くさいことになると思うよ」
『恵外界』なら兎も角、『平界』や『王貴界』では差別が根強く広まっている。国の外から来たヤミが行けば、おそらく格好の的になってしまう。
そんな未来を予想し止めるレイだったが
「知るか。やりたい奴にはやらせとけばいいんだよ」
ぼりぼりと頭を掻きながらヤミは出口へと足を向ける。
そんな彼の背中を視線で追うレイは「まったく」と、困った笑みを浮かべその後を追うのだった。
「なに、あの目つきの悪い子供」
「なんでも外の国から漂着したらしいわよ」
「それに後ろのあの子、海岸で暮らしている捨て子じゃない?」
「まぁそれはお似合いな組み合わせだこと」
ひそひそ、というわけでもなくヤミやレイの耳にも届くような声量で話す人々。
そんな奇異の目を向けられる中、ヤミは特に気にした様子もなく足を進め
「なんつーか、絵に描いたような反応だな。一周回ってむしろ何にも感じねぇわ」
「ははっ、ヤミってもしかして心臓に毛が生えてるんじゃない?」
「あれ、それって褒めてる? それとも貶してる?」
周りの声など意にも解さないヤミに笑みを浮かべながら話しかけるレイ。普通の人ならなにかしら反応を示すはずだが、やはりヤミは一味違かった。
「にしてもこの街の家って石でてきてんのな」
「ヤミの国は違うの?」
「俺の国は木で作ってる。石の家なんてもん見たのは初めてだ」
そういえば彼の乗ってきた船も木で出来ていたなと思い出すレイ。こちらと違って、日ノ国ではそうした文化が発達しているのだろうか。
ヤミの国との文化の違いについて話しながら歩いていると
「おいおい、家なしのガキと国の外から来たガキが、なに普通に街中歩いてんだ?」
人気の少なくなった路地裏に入るやいなや、二人を取り囲む男の集団が。
そんな男たちにヤミは視線を鋭くさせ睨みつけ、レイはこうなることを予期していたのか、はぁ、とため息を吐く。
「なんだテメーら。通行の邪魔だ、さっさとどけ」
「あ゛あ゛⁉︎ この国の人間じゃねぇガキが、なにほざいてくれてんだ!」
「お前らみてーなガキが歩いていい場所じゃねぇんだよ、ここは!」
どうやら退く気はないらしく、むしろさらに人が集まり道を塞いでいく。この後に起こる展開を余裕で予測できたレイは、気だるそうな半目をヤミへと向ける。
「どうする、ヤミ?」
「どうするもなにも、あっちが通さないっつうんなら──無理やり通るだけだ!」
「はぁ……まっ、そういうと思ってたよ」
ヤミは腰の刀を抜き、レイは拳を構える。臨戦態勢に入った二人を見た男たちも各自戦闘態勢に入る。
「それじゃあ一つ」
「派手にかますか!」
それからの展開は一方的だった。
ヤミの刀による近接に敵うものはおらず、レイも華奢な見た目からは想像できない身体能力で男たちをなぎ倒していく。
「おらおら、喧嘩売っててこの程度か!」
「ぐっ、こいつらばか強ぇ!」
「くそっ……これでもくらえ!」
あまりにも強すぎる二人を前に、男たちの中の一人は腰のホルスターから一冊の本──
「鉄創成魔法『バレットナイフ』!」
突き出された右手から放たれる、魔法で作られた刃物の銃弾。
それなりの速度で放たれたそれはレイの右頬を掠め、ツゥ、と一筋の線から血が流れる。
「お、おい! ガキ相手に幾らなんでもそれは……」
「うるせぇ、このまま黙ってやられてたまるかよ! なに、手加減はしてやるよ」
男が魔法を使ったことで、周りの面々もそれぞれの
しかしそんな男たちにも、この二人は一切怯むことはなかった。
「ったく、せっかく気絶程度で済ましてやろうと思ったのによ……
「これはちょっと、彼らにお灸を据えてあげないといけないね」
怯むどころかむしろ、一層良い笑みを浮かべる二人に対し、男たちは自分たちの選択を激しく後悔する。
そしてそれからは手加減をなくした二人により、よりボコボコにされる男たち。
『『『本当にすいませんでしたぁ!』』』
瞬く間に全滅させられた男たちは
そんな男たちを腕組みし見下ろすヤミは、彼らに向けて一言
「んじゃテメーら、今持ってる金全部出せ」
「いやー儲けたな」
金の入った袋を上に投げながら上機嫌に言うヤミ。
『平界』に住むだけあり、それなりにお金を持っていたようで。全員から金を没収したことによりそこそこの資金を手に入れることができた。
「ほとんど恐喝まがいだったけどね」
「あっちから仕掛けてきたんだ。これくらいが普通だろ」
これぽっちも悪びれることなく言うヤミに苦笑するレイ。
ただお金が手に入ったのは間違いなくプラスだ。これで調味料を買うことができ、今までよりも美味しい食事を食べることができる。
もうただ焼いただけの肉や魚を食べる生活とはおさらばだ。
「それじゃ買い物して帰ろう。お金も入ったし、ヤミの歓迎会をかねてちょっと豪勢にいこうか!」
「お、マジで? なら肉が食いてーな」
「なら焼肉に決定だね」
肩を並べて歩く二人。
これが『海岸の双子悪魔』と呼ばれる、彼らの始まりの日。
そして後の『黒の暴牛』団長と副団長の出会いの日である。
とまぁこんな感じです。
原作始まるまで時間は飛ばし飛ばしで書いていこうと思ってます。