闇の隣に虚あり   作:ジャンボどら焼き

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ひねりのないサブタイ通り、入団試験です。
今回オリキャラが出てきますので、もし何か違和感あれば教えてください。

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魔法騎士団入団試験

 魔導書(グリモワール)が授与されてから半月の時が経過した。

 場所は『平界』にある城下町キッカ。そこにある試験会場にて、今日この日、魔法騎士団の入団試験が行われるのだ。

 

「おー頑張れよー!」

「応援してるぞー!」

 

 年に一度の一大イベントである入団試験。キッカの街の人々は試験会場前に集まり、これから試験を受ける者たちへ声援を送る。

 そんな声援の中、肩を並べて歩く二つの影が。

 

「あー試験とかまじめんどくさいわー。とっとと終わらせて帰りてーわー」

 

 一つは魔道士にしてはやや筋肉質な少年のヤミ。ボリボリと後頭部を掻きながら心底めんどくさそうに呟く様は、まるでこれから試験を受ける者の態度とはとても思えない。

 

「もう、ちょっとはしゃんとしなよ、ヤミ」

 

 そう言いながらヤミに忠告するのは、ヤミとは対照的にやや華奢な体つきのレイ。苦笑しヤミへ視線を向けるレイは、動きやすいように長めの黒髪をポニーテールにしている。

 

「それにしても、やっぱり人が多いね。ここの全員と競い合うのかぁ」

「何人いようが関係ねぇ、全部蹴散らせばいい話だろ」

「ちょっと乱暴すぎるけど……ま、そうだね」

 

 肉体言語を得意とするヤミの意見に、あはは、と笑いながら賛同するレイ。ヤミと暮らした数年間で若干思考がヤミに似通ってきつつあるようだ。

 なんて会話しながら歩いていると、ドンッ、とレイは他の受験者と肩をぶつけてしまう。

 

「あ、ごめんね。ちょっとよそ見してて」

「カカ、気をつけろや……裂くぞ?」

 

 ぶつかった少年はレイよりもさらに痩せた体をしており、彼の歪な笑みにレイは背筋にやや冷たいものを感じ取る。

 あの言葉は決して冗談で言ったものではない。レイの本能がそう警鐘を鳴らしていた。

 

「んだあいつ? ガリッガリじゃねぇか、ちゃんと飯食ってんのか?」

「でもかなり強いよ、あの子」

「……ま、一人ぐらい強ぇ奴がいる方が楽しめるしいいんじゃね?」

 

 そして二人は受付へと向かい、いざ、試験会場内へと足を踏み入れた。

 

 

 会場内にはすでに受付を済ませた受験者たちが集まっており、ヤミとレイの二人もその集団の中へと進んで行く。

 しかしここでレイに思わぬ洗礼が待ち受けていた。

 

 その洗礼とは

 

「うわっ、ちょちょちょっ……何この鳥たち⁉︎」

 

 会場内に入った直後、レイめがけて襲いかかったのは白黒の小鳥の群れ。この小鳥たちはアンチドリと呼ばれ、魔力の低い者に集まる習性を持っている。

 つまりこの鳥が集まるか否かで魔力の序列が決定するわけだ。ある意味もう一つの受付といっても過言ではない。

 

 そして魔力の希薄なレイはアンチドリたちにとっては恰好の止まり木。あっという間に取り囲まれたレイは、試験に集中するどころの騒ぎではなくなってしまう。

 

「おーおー随分懐かれちゃって。俺にもちょっとわけてくんない?」

「分けたいのは山々なんだけど……ってヤミ、からかってるだけでしょ。もう、こっちは結構大変なんだよ?」

 

 レイがアンチドリのほとんどを引き受けているおかげかはたまたヤミの魔力量からか、ヤミには一切アンチドリが寄りついていない。

 また、アンチドリの大群に囲まれたレイは自然と周囲の目を引き、レイとヤミの姿を見た受験者たちはひそひそと会話をする。

 

「見ろよあれ、異邦人と捨て子まで来てるぜ」

「マジか、あんな奴らが魔法騎士団になったらこの国も終わりだな」

「てかあっちのやつ、めっちゃアンチドリにつかれてんじゃん。んな極小魔力でよく試験を受けに来たな」

「もう一人はそれなりにあるみたいだが、どうせ大した魔法は使えねぇだろ。とりあえず二人はカモができたな」

 

 家柄や魔力がモノを言うこの王国では下民が魔法騎士団に入った例は少ない。ましてやレイやヤミのような異端な者の入団など過去に例はなく、他の受験者たちは格好の獲物を見つけたと言わんばかりに笑みを浮かべる。

 そんな周囲の反応にヤミもレイも今更感じるものなどなく

 

「しっかし随分と舐められてるな俺たち。それもこれもお前がんな鳥集めまくってるからだけどな!」

「痛い、痛いよヤミ! まったく……酷いなぁ、僕だって好きで集めてるわけじゃないのに」

 

 ゲシゲシ、とレイの足を蹴りつけるヤミ。正直ヤミの言う通りなので、レイはそこまで強く反論することができず蹴りを受け入れる。

 なんていつもと変わらぬやり取りをしていると、突如会場の上空に花火が打ち上げられる。試験の始まりを告げるように空に咲く花火に、受験者たちが目を向けていると

 

「あぁっ、あれは!」

 

 会場の二階に設けられた八つ椅子。それぞれの椅子の奥にある通路から現れたのは、それぞれの団のローブを身に纏った団長たちとその連れの団員の姿。

 生で見る魔法騎士団の団長たちの姿に会場は熱気に包まれ、ガヤガヤと騒がしさを増す。

 

 そんな中、レイが真っ先に見たのは『紅蓮の獅子王団』の席。獅子王団の団長が座る椅子のその後ろに佇む一人の女性へと、レイの視線はただまっすぐに向けられた。

 そこにいたのは過去2度に渡って出会った魔道士、メレオレオナ・ヴァーミリオン。自身の魔導書(グリモワール)の鎖を解き、魔法騎士団を目指す切欠となった女性。

 

(見ててください。あの日貴女が救った少年の成長を……)

 

 そんな決意を胸にメレオレオナを見つめていると、不意に彼女と視線が交差する。その直後、メレオレオナの口角が上がる。

 まるで「待っていた」と、そう言わんばかりの表情に、レイは自然と拳を握り締めていた。

 

「──さて」

 

 そんなメレオレオナに意識を向けていたレイの耳に届いたのは、現最強の団と言われる『灰色の幻鹿団』団長のユリウス・ノヴァクロノだった。

 次期魔法帝に最も近いと噂される魔道士の言葉に、受験者たちは先ほどまでの騒ぎは嘘のように口を閉ざし耳を傾ける。

 

「魔法騎士団を目指す諸君、今日はよく集まってくれたね。これまで鍛え上げた魔法を駆使し、各々が悔いのないよう全力を尽くしてほしい。今日この試験を取り仕切るのは私、ユリウス・ノヴァクロノだ。よろしくね」

 

 自己紹介を終えたユリウスは、次に後ろに控えた団員に視線を送る。その合図を受けた団員は己の魔導書(グリモワール)を開くと

 

「樹木創成魔法『不朽の大樹』」

 

 魔法を使用した直後、試験会場の真ん中から巨大な樹木が出現。そこから伸びた枝から受験者たちに木製の箒が手渡される。

 さすがは最強の魔法騎士団の団員。受験者たちはそのレベルの高さに唖然としつつ箒を受け取る。

 

「さて、これから君たちには幾つか試験を受けてもらい、我々魔法騎士団長がそれを審査させてもらう。その後欲しい人材をこちらで採択し、選ばれたら合格、入団だ。もしも複数の団に選ばれた場合、受験者は自身の希望で入りたい団を選んでね」

 

 この場で合否が決定する。合格し笑うものと不合格となり涙をのむものがはっきりとしてしまうわけだ。

 

「では、試験を開始させてもらうよ」

 

 そうしてユリウスの指揮の下、入団試験が開始された。

 

 

 

「ふむ、今回の試験にはなかなかな逸材がちらほらといるな」

 

 試験が開始し、すでに何工程か終了した後にそう口を開いたのは『紅蓮の獅子王団』団長だった。メレオレオナと同じ橙色の髪を持ち、額にダイヤの刺青をした精悍な男性は会場へ視線を向けながら、背後に立つメレオレオナへと語りかける。

 

「しかしオマエが入団試験を見に来るとはな。初め聞いたときは驚いたが、いったい何故だ?」

「何故も何も、ただ面白そうなヤツがいたのでな。どれくらい成長したのか気になっただけだ」

「ふむ、オマエにそう言わせるほどの者がいたのか……。これは一つ、入団試験の楽しみが増えたな」

 

 そう言い楽しげな笑みを浮かべる団長。

 だがすぐに表情を引き締めると

 

「それとメレオレオナ、家以外の場では敬語を使えと言ってるだろう。いくら父と娘の関係とはいえ、オマエがそれでは他の団員に示しがつかん」

「ああ、善処しておこう」

 

 メレオレオナを娘と呼ぶ彼の名はボルカレオ・ヴァーミリオン。現ヴァーミリオン家の当主にして、メレオレオナの父親である。

 当人の知らぬところで期待値がどんどんと上昇しているということを、試験に集中しているレイは知る由もなかった。

 

 

 

 

(うーん……試験自体は基礎的なものだけど、ちょっとイマイチかなぁ)

 

 それが幾つか試験を終えたレイの率直な意見だった。可もなく不可もなく、言ってしまえば普通。さすがにこれでは試験に受かるのは難しいだろう。

 

(とはいえ創造魔法とか進化魔法とかって、僕の魔法じゃやっても意味ないんだよなぁ)

 

 無色の魔力を持つレイにとってそれらの試験をやっても、団長たちの目には何も映らないのでほぼ意味をなさない。

 周りの目も「こいつ何もできてねーぞ」みたいなものばかりで、正直に言ってかなり辛い。

 

(そろそろ印象に残せる試験が来てくれたらいいんだけど……)

 

 このままでは試験合格は絶望的。ヤミに魔法騎士団を目指すと言った手前、何が何でも合格したい。

 それにメレオレオナに告げた自身の夢、それを叶えるためにもこの試験は落ちることは許されない。

 

「では最後の試験を行うよ」

 

「うわ、もう最後の試験かぁ……」

 

 まさかの次が最後。ここでなんとか挽回しなければ……レイがいい試験が来ますようにと願っていると

 

「最後の試験は魔導書(グリモワール)を使った一対一の戦闘試験だよ。どちらかが降参、もしくは戦闘不能になったら終了だからね」

 

 戦闘試験。ようやく自分でも目立つことのできる試験がやってきたと、レイは内心ガッツポーズをする。

 魔法騎士団は戦闘に特化した部隊。戦闘力というのは確実に大きな評価につながるはず。

 

「さすがにヤミと戦うわけにもいかないし……誰がいいかなぁ」

 

 レイは誰か対戦相手はいないかと辺りを見渡していると、ガシッ、と誰かに肩を掴まれる。振り返るとそこには、会場前でぶつかったガリガリの受験者が。

 受験者はヤミにも劣らない鋭い目でレイを睨みつけ、そんな彼に嫌な予感を感じつつレイはその口が開くのを待ち

 

「おいテメェ、俺と」

「──チェンジで」

「おい、まだ言い切ってねぇだろうが! 何勝手に相手変えようとしてんだ、あぁ?」

 

 よりにもよってなんで自分なのか。レイは内心悪態をつきながら、少し離れた場所にいるヤミを指差す。

 

「ほら、僕よりもあっちの筋肉ヤンキーの方が強いよ。あっちにしなよ」

「カカッ、あいつは今はいい。どーせ合格するだろうし、その後でたっぷり殺りあうからよぉ」

「だったらなんで僕なんでしょうか? 魔力も大して感じない雑魚ですよ?」

「カカッ、だからだよ。魔力を殆ど感じねーのにその強気の(ツラ)、何か隠してんじゃねーかと思ってよぉ」

 

 どうやらこの男のそうしたことに関する嗅覚は確かなものらしい。

 こりゃまた厄介な相手に捕まったなぁ、レイは内心ため息を吐く。

 

(……まぁ、強い相手の方が成長したことを見せるにはうってつけか)

 

 厄介ごと(ピンチ)はチャンスに。うだうだ言ってもどうせこの受験者は逃がしてはくれない。だったらいっそのこと、成長を見せつけるための踏み台にしてやろう。

 そう結論を出したレイは受験者を指差し

 

「その勝負受けて立つ!」

「ケケケッ、そう言ってくれると思ってたぜェェ!」

 

 レイの返答に受験者は待ちわびたとばかりの笑みを浮かべ

 

「俺はジャック・ザリッパー! カカッ、容赦はしねーから覚悟しときな!」

「僕はレイ・バスカビル。そっちこそ目にもの見せてやるから、覚悟しといてよね!」

「ケケッ、言ってくれんじゃねーかァ! 裂き甲斐があるってもんだぜ……!」

 

 そして二人の新米魔道士は決戦の舞台へと上るのだった。

 

 

 

 




というわけで「縦長変人」ことジャックさんの登場です。
ヤミとは同い年なので、オリ主と絡ませてみました。
次回はジャックさんとの戦闘とその後になると思います。

そしてオリキャラの『父ゴレオン』こと『ボルカレオ』。
フエゴレオンが団長になる前は彼の父がやっていたと想定し、オリキャラとして登場させました。

もし名前とか出てたら教えてください。


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