第2話
あぁ最悪だ。面倒が増えてしまったな。
まぁ、どちらにしろ俺は剣を振えればそれでいい。
俺はどうやらISを動かせるらしい。そのことが判明したのは高校受験の日だった。
あの時、正直馬鹿らしいと思うかもしれないが、俺は受験会場で迷子になってしまったのだ。
受験会場の建物は複雑でトイレに行ったあとに元の道に戻ろうとしたら全く別の廊下だった。しかも、ここは様々な公共施設が併設されてるせいで大きいのだ。いろいろと彷徨いやっと受験会場と書かれた扉を開けて奥に行くと何故かISが置かれており、間違えたと思うものの、後ろから足音が聞こえ咄嗟にISの後ろに隠れたのだ。
そう、
もうわかっただろうけど、俺はISを装着していたのだ。そこに先の足音の正体である、おそらくIS学園の受験監督官である人が来てしまい、俺はISを装着した状態で見つかったのだ。
やらかした、と思うも時すでに遅し。ISの装着を解除するのに手間取っている間に沢山の人に囲まれていたのだ。
多分事情聴取やら俺の処遇やら今後のことについてまで国のもとで決まるのだろうと考え、抵抗も無意味だと思い無抵抗で連れて行かれる。
道中には流石というべきか記者たちが待ち構えておりスムーズに事は進まない。
やがて混雑する道を抜けて目的の車が見えた。
だが何を思ったのか。護送車に乗る前に逃走の意思は無いと伝えたのに後ろから無理矢理拘束されそうになったので、押さえつけてきた人を投げ飛ばし手枷などを嵌めようとした人を頭突きで沈める。
その一瞬のことに驚いて放心してる奴らを置いて護送車に向かって歩く。後ろでは黒いスーツを着た男たちが下手人を取り押さえている。
「手荒なことをしないでくれよ。逃げるつもりなんて無いんだから。」
そう言い残すと同時に護送車の後ろに乗り込む。内装はお世辞にも居心地が良いとは言えず、頑丈ゆえの武骨さが目立っている。機能だけを求めているからだろう。
そういうのも案外悪くなく、変わっているとは思うが好ましいと思う。
そこに先ほど拘束しようとした集団とは別の武装した人たちが乗ってきた。それを確認した運転手は車を発進させる。
目的地に到着するまでには時間があるだろうと思い、他の乗ってる人たちに先ほどの集団の事を質問する。
質問に答えてくれたのは、リーダー格の人でどうやら先ほどの野蛮な集団は女性権利団体の手先らしい。俺が逃げずにそのまま国から派遣された彼らについて行くので無理矢理連れ去ろうとしたのだろうということらしい。
彼らは俺を無事に護送するために派遣された特殊部隊らしい。彼らは先ほどのような妨害が予想されたため護衛として守ろうということだったが、俺が自己防衛をしてしまったために意味が無かったなと笑われてしまった。
その後、俺は国の偉い人やらヒステリックな女と喋らされて疲れた。
特に女は色々としんどかった。通されたのは目に毒となるほどの派手な装飾を施された家具たちに、高級な素材をたっぷりと使ったソファや絨毯といった慎ましさのない悪趣味な部屋だった。
そこで何故ISを動かせるのかという事やその場にいた理由をウザいと思うほどしつこく聞かれた。だがそれ以上に質問の答えを否定された挙句に、人格否定ととれる暴言や女性の素晴らしさという意味不明な事を目の前で叫ばれるのを聞かないといけないのだ。
なんか終わりそうになかったから、とりあえず相手の意識を飛ばして静かにさせる。するとそれを見計らったように黒いスーツを来た人がぞろぞろと部屋に入りその女を回収して、俺はホテルのスイートルームに通された。
その次の日に昨日話した偉い人が来て
「君にはIS学園に入学してもらうことになった。気の毒だが拒否権はない」
と言われてISの分厚い参考書を渡された。それと担当の人に言えば欲しいものは用意してくれると言われたので、勉強道具とか参考書以外のISの資料を持ってきてもらった。その中に何故か各国の現在開発中のISの資料が混じってたのには驚いた。
なんかいろいろとやばそうなので俺の担当の人に全部覚えてからそっとお返ししといた。
とりあえず時間はあるので一年の部分を全部予習して、二、三年のもちょこっと勉強しといた。
ほとんど不満はなかったが、鍛錬を部屋の中で出来る物しかやれなかったのでそれが不満だった。だから、素振りの為の刀を要求すると何故か用意してくれた。
後日、先生に話すとどうやら先生が根回ししてくれたらしい。
そしてスーツを着た職業不明の姉に連れられIS学園に来た、その時に姉はIS学園で教師をしていると知った。
学園に来たのは、どうやらISを使った試験をやる為らしい。ダメ元で1時間だけ動かさしてくれと頼むと三十分だけならとOKが出た。
どうやら他の受験生も十数分だけ練習時間が与えられるようで、俺の場合はISに触れて間もないという事で三十分らしい。
練習の前に機体を選ぶらしく俺は刀の使える打鉄を選んだ。それから練習し始めてまずは何事も基本が大事と思い、ISで走り込みやら素振りをした。飛行の練習もしたが、違和感を感じたまま終えてしまった。
「それではよろしくお願いしますね。織斑くん」
「ええ。こちらこそ」
その後試験では山田真耶という先生と戦った。何やら最初は慌てていたが、少し待つと落ち着いたようだ。
それからは真剣に戦った。山田先生は最初の慌てぶりが嘘の様に獰猛な目をしていた。
山田先生は射撃が主体の戦い方らしく、開幕早々に
俺はそれを飛ぶというよりは地面を蹴る感覚で横に避ける。その後も追撃が来るがどうしても命中してしまう弾は切り、基本は避けを意識して戦う。これには、一流のIS操縦者の山田先生も面食らったようだ。
「まさか銃弾を叩き斬るなんて!」
「驚く暇はないですよ?」
「百も承知です!」
しかし、山田先生は驚きながらも冷静に間合いを取り続ける。試合開始から五分ほど。どちらも無傷だ。そしてようやく山田先生の動きにも慣れてきて、戦う時の癖も分かってきた。
山田先生は射撃で牽制して、相手を罠に追い込み殲滅することを狙っており、試しに近接攻撃すると今度は罠に誘い込むように立ち回る。
だから、そこを突くしかない。
俺はIS用の刀〈葵〉を二本両手に持ち、スラスターへの供給エネルギーを減らす。
そして、山田先生に近づく為に地を走り近づき、銃弾を跳んで回避し、スラスターを一瞬吹かすことでアリーナ中を縦横無尽に駆け回るり、普通では考えられない無茶苦茶な動きをする。
移動にスラスターを使わず、パワーアシストで戦う俺に山田先生は驚きながら対処するが予想外な動きに決定的な隙ができる。
「そんな、デタラメな!?」
「残念ながら、こっちのほうが馴染むんですよ!」
そのまま相手の懐に飛び込んで銃を切り裂き、スラスターを一刀両断。そして、わざと投げられたグレネードを破裂させて煙に紛れる。この煙幕で、山田先生から見た俺は、完璧に策にはまったと確信しているのだろう。
その場に留まる俺に、大きな杭のような武器〈パイルバンカー〉を装備した山田先生が真上から現れて俺に一撃必殺の攻撃を浴びせようとしてくる。だが俺は近づいてくる山田先生に左手の葵を投げつけて、怯ませる。
「なっ!?」
そして、投げつけると同時に近づき怯んだところに
試合は俺の勝利で終わった。そもそも何故俺が山田先生の動きに完璧に対処できたか。それはその動き自体を予測していたからだ。多分予想してなくても対処出来ただろうが、それだと相当にキツかっただろう。
元々、山田先生は近接攻撃の時にわざと隙をつくっていた。それは罠であると同時にチャンスでもある。だから、山田先生の罠に罠を敷いたわけだ。
「ISを使った戦いも面白いな」
その後は、ホテルに帰って入学式まで大人しくすることになった。