孤高の一夏   作:アーチャー 双剣使い

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第3話

はぁ、どうして面倒なことはこうもやってくるのだろうか。

 


 

あのホテル生活も終わりを迎えた。なぜなら今日はIS学園の入学式だからだ。しかし、全校生徒の中で唯一の男子生徒というのは、なかなかキツイものだ。

だが、混乱を避ける為か俺は別室で待機だった。

 

そんな気苦労はさておき、入学式も終わり、俺は一年一組の生徒になったらしく、自分のクラスに向かう。教室に着いたときに自分の席を確認したところで名簿に篠ノ之箒という文字を見つけてしまった。最悪だなと思うもののどうしようもないので確実にこの一年間は苦痛を我慢をしなければならなくなった。

 

そして、自分の席に着くと先ほどから感じる数多の視線にうんざりしていた為、スマホにイヤホンを刺して音楽を聴きながら、読書をする。こうすると周囲の雑音も聞こえなくなり、本に集中する事で自分だけの世界を感じれる。

 

この本を読む習慣は先生の所に通い始めてからついた。それは先生に勉強だけじゃなく本を読むことも勧められたからだ。

 

本を読むことで様々な知識を取り入れることも出来るし、昔の日本の書物なら昔の強い心の在り方や武士道についても深く知れるだろうと言われたからだ。

 

一応、剣を使う身であるため武士道のことを知っておいて損は無いだろうし、強い力には強い心が伴わなければならないと先生もおっしゃっていた。

 

そういう日常生活で自分を高めることが強さへの研鑽になるのだろう。俺は強くなるための努力を惜しむことは決して無い。

 

 

ふと、気がつくと教室の扉が開き試験の時に会った山田先生が入ってくる。彼女が担任なのだろうか?その疑問も彼女の自己紹介で明かしてくれるだろう。そう思っていると山田先生は教壇に立って口を開く。

 

「これから一年間このクラスの副担任を務める山田真耶です。皆さんよろしくお願いしますね」

「よろしくお願いします」

 

おかしいな、山田先生の自己紹介で返事をしたのが俺だけとか。ずっと視線を感じるから多分みんな俺に注目してるからだろうけど、こういう挨拶をされたら挨拶を返すというような礼儀を欠かすのはいただけない。そんな事と思うかもしれないが、俺はそういうのを人として大事にするべきだと思う。

 

そんな事はさておき返事が俺だけだったからか、山田先生は不機嫌なようだ。

 

「はぁ、まぁいいです。出席番号一番の人から前で自己紹介を」

 

そうしてみんな自己紹介をしていく。俺は苗字順の為結構前だ。なのですぐに順番がまわってきた。

 

「次、織斑一夏君です」

「はい」

 

山田先生は俺には態度が柔らかい気がする。やっぱり礼儀は大事だな。

 

「織斑一夏と言います。趣味は鍛錬と読書。特技は武術や家事などです。朝や夕方に鍛錬してる姿を見ても話しかけないでもらえるとありがたいです。」

 

そう言って軽く礼をした後に自分の席に戻ろうとすると、背後から攻撃された為振り向きながら裏拳の要領で振り下ろされた出席簿を受け流す。

 

これには姉も驚いたようで面食らうがすぐに表情を取り作り要件を言う。後ろでは女子が姉の登場に騒いでいる。

 

「馬鹿者。自己紹介で印象に悪いことを言うな」

「別に個人の勝手でしょう?織斑先生。俺は事前に重要な要件を伝えたまでです」

「ふん。まぁいいだろう」

 

そんなやり取りを見て勘のいいクラスメイトたちはコソコソと話しているようだ。

 

「織斑君と織斑先生って兄弟なのかな?」

「そうなんじゃない。苗字一緒だし、面識もあるっぽいし」

「じゃあ、ISを動かせるのも関係あるのかな?」

 

色々と話し声が聞こえるがそのまま姉の前から自分の席まで移動する。席に座ってもまだ煩いままなので咳払いをしたあとに姉は演説のように話し始める。

 

「これから一年間お前たちの担任を務めることになった織斑千冬だ。まだまだISについて理解していないひよっこ以下の君たちをとりあえず一人前程度にすることが私の務めだ。私の言うことにはきっちりと返事をしろ、いいな?」

 

最後の方には威圧をかけており、騒がしかった女子もはいと返事をしている。

 

 

その後、自己紹介も終わり授業前の休み時間になった。そして、面倒なことに篠ノ之箒がこちらに来ようとしているがそれに気づかないふりをして、本を読もうとすると別のクラスメイトに話しかけられた。

 

「ねぇねぇおりむー、久しぶりだねぇ」

 

そう言って隣の席からこちらの席の横に来た、独特な渾名で俺に話しかけて来たのは布仏本音だ。彼女は先生の所で鍛錬をしていた時に尋ねて来た女の子の付き人だった。だから面識があるのだ。

 

「あぁ、久しぶりだなのほほんさん。IS学園に来てたんだな。てことは簪もか。簪は元気にしてるか?」

「うん、かんちゃんも元気だよぉ。かんちゃんは四組なんだぁ。放課後にでも会ってあげてねぇ」

「一夏!そいつは誰だ!」

 

本音と話していると箒が割り込んできた。昔と変わっていない。一塁の希望も消え失せたようだ。とりあえず無視はさらに面倒を呼ぶ事になるので返事を返す。

 

「彼女とは友達だよ、篠ノ之。いきなり話に割り込まないでくれるか」

「そんなことはどうでもいい、話がある。付いて来い」

 

そう言って無理矢理連れていこうと俺の腕を引っ張るが勿論俺は抵抗して、篠ノ之は手を離す。

 

「篠ノ之。言っとくが俺はお前のことは嫌いだ。関わらないでくれるか」

「なんだと!」

 

そう言うと怒りだすが無視を決め込んで本音に言う。

 

「そろそろ予鈴が鳴る。席に着いた方がいいぞ、のほほんさん」

「そうだね。ありがとねぇおりむー」

 

そう言って彼女は席に着く。すると予鈴はなるが篠ノ之は気づいてないようだ。つまり姉に叱られるということだ。

 

「さっさと席につけ!篠ノ之」

 

 

そうして始まったのは山田先生の座学だ。俺は一年の範囲の予習は終わっているので、余裕をもっているため山田先生が所々言う教科書に載っていない知識をメモしたりする。すると一旦山田先生は授業を止めて、みんなに質問する。

 

「ここまでで、分からない人はいませんか?織斑君は大丈夫ですか?」

「はい、大丈夫です。お気遣い感謝します。山田先生」

「よかったです。皆さんも、もし分からない所があったら放課後にでも聞きに来てください。分からないままが一番ダメですからね」

 

多分、山田先生はISを勉強し始めて間もないから気を使ってくれたのだろう。彼女の行動は一つ一つ生徒を気遣ってるのが分かる。いい先生だ。

 

そうして、この授業は終わった。


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