あぁ、ちょうどいい。俺もやりたかったんだよ。
まだまだ戦い足りなかったからな。
山田先生の授業も終わり、肩が凝ったので軽く腕を回すと関節がポキポキとなる。
少ししてから、また本音と話そうと思ったが、本音を見るとクラスの女子と談笑していたため、本を読もうとするとこちらに向かってくる足音が聞こえた。また、篠ノ之かと思ったがどうやら違うかったらしい。
「ちょっとよろしくて?」
そう声をかけてきたのは金髪で白人系の人種の女だった。その口調とあからさまに見下している感じの態度だったので、おそらく女尊男卑に影響されてるのだろう。
めんどくさそうだが、とりあえず返事を返す。
「ああ、別に構わない」
そう返すと不機嫌な顔をしながら話しかけてくる。
「まぁ!なんですのそのお返事は?私に話しかけられるだけで光栄なのですから、それ相応な態度があるのではなくって?」
やはり面倒になった。この手の輩には下手にはならない方がいい。偶にそういうのは適当に受け流すほうが良いという奴がいるが、一度でも下手になるとつけあがって余計にめんどくさいのだ。
「あっそ、すまないが俺はお前の事など知らないんだ。聞いたこともないくらいにな。生憎だけど俺は知らない相手に敬意を持てるような人間じゃないんでね」
「私を知らない?このセシリア・オルコットを?選ばれたイギリスの国家代表候補生にして、入試主席のこの私を?」
そんなに自信があり、国家代表の候補生に過ぎないのに選ばれたと豪語するあたり、おそらく専用機を与えられているのだろう。巧いこと誘導できれば楽しいことになるだろう。だからそのプライドを煽る。
「なるほどな。入試主席ということは実技試験で教師相手に勝ったってことだな。もちろん訓練機で。まさか専用機でやったとは言わないよな、機体性能が断然違うのに。それで主席を自慢するならたかが知れるな」
そういうと顔を真っ赤にして怒鳴る。どうやら図星のようだ。
「黙りなさい!男風情が私を馬鹿にして。貴方なんてどうせすぐにやられたのでしょう?」
「図星だからと喚くな。それと俺は試験官に訓練機で勝ったぞ。信じられないなら、織斑先生と山田先生に聞きに行くと良い。あの二人は知っているからな」
そう返すと信じられないと言いながら自分の席に戻っていく。おそらくあのショックの後にプライドを傷つけられたことでISで戦いを挑んでくるなりしてくれるだろう。
「ああ、もうすぐ授業が始まるな。」
結局時間がなくて本は読めなかった。
授業が始まった。今回は姉が担当するらしい。
だが、授業の前になにかあるらしい。
「授業を始める前に再来週行われるクラス対抗戦に出る代表者を決めないとならないな」
そういって姉は代表者について説明し始めた。
「クラス代表者とはそのままの意味だ。対抗戦だけではなく、生徒会の開く会議や委員会への出席する役、まあ、クラス長だな。ちなみにクラス対抗戦は、入学時点での各クラスの実力推移を測るものだ。今の時点で大した差は無いが、競争は向上心を生む。一度決まると一年間変更は無いからそのつもりでな」
そういってから姉は一度俺の方を一瞥して続きを話す。
「さて、代表者は誰がなるか決める。自薦でも他薦でも構わない、誰かいるか?」
そこで俺は気づいた。俺は物珍しさで推薦されても可笑しくないということにだ。案の定、女子は俺に投票しようとしているのか。沢山の手が上がる。
「はい!織斑君がいいと思います」
「私も織斑君に」
「私も~」
そんな感じで俺に投票が集まる。そこで姉は俺にも話を投げる。
「このままだと織斑がクラス代表だが何かあるか?」
「俺は鍛錬の時間を潰さないようにしてくれるなら構いませんが、もし鍛錬の時間が減るなら何かしら対策を、それもないならお断りします」
「ダメだ。推薦されたものには拒否権はない」
理解した、姉は俺をクラス代表にさせる気だ。まぁ鍛錬の時間は事前に話を通してるので問題はないが、そろそろオルコットが暴走でもするかな。
「待ってください!納得がいきませんわ!」
やはり予想通りのようだ。そっとボタンを押す。
「そのような選出は認められません! 大体、男がクラス代表だなんていい恥晒しですわ! 私に、このセシリア・オルコットにそのような屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか」
「実力から行けばわたくしがクラス代表になるのは必然。それを、物珍しいからという理由で極東の猿にされては困ります! わたくしはこのような島国までIS技術の修練に来ているのであって、サーカスをする気は毛頭ございませんわ」
イラつく言葉ばかりを並べるオルコットにクラスメイトは青筋を立てており、山田先生や姉もイラついてるようだ。それにクラスの殆どは日本人であり、ここまで言ったんなら、この先彼女にクラスの居場所は無いだろう。それでもまだ言葉を続けるオルコット。
「いいですか!? クラス代表は実力トップがなるべきであり、そしてそれはわたくしですわ」
「大体、文化としても後進的な国で暮らさなくてはいけないこと自体、わたくしにとっては耐え難い苦痛であるのです」
そろそろ潮時か、そう思いボタンをもう一度押してからオルコットの言葉を遮るように喋る。
「そろそろ止めとけよ。手遅れだろうけどな」
「なんですって、下等な男風情が私に指図するのですか。馬鹿にされてるというのに怒らないとはプライドの欠片も無いようですね」
「いいや?そんなつもりはない。別に俺がお前に馬鹿にされても雑魚がほざいてるに過ぎないからな。だけど、言わせてもらうならお前はさっさと愛しのイギリスに帰るといい。俺たち日本人を見下していて、文化としても後進的なんだろ?それならこんな苦痛な所に留まる必要はないだろう?」
「何を言っているのですか?私は国の指示でここに来たのですわ」
「なら担当官に言って帰国させてもらえよ。そしたら
「私を馬鹿にするのですか?」
ここまで言うとオルコットは怒りを見せて噛み付いてくるが俺は彼女の言ったことから提案しているだけだ。本当の馬鹿は無闇矢鱈に人を馬鹿にするお前だよ、オルコット。
「何を怒るんだ。俺はお前の言ったことを返しているだけだ。そもそもクラス代表になりたかったんなら、自薦すればいいだけなのに人を馬鹿にした結果、ここにお前の居場所は無いぞオルコット」
そういうと俺は織斑先生に話を振る。
「どうやら彼女は自薦するようですが、快く思ってない人もいるでしょうからここは勝負で決めるのはどうでしょう?」
「…そうだな。これから一週間後にクラス代表を決める為の試合をする。日程は来週の月曜日の放課後に第三アリーナだ。その試合結果で代表を決定する。異論は認めん。少々時間がかかったが授業を始める。」
そういってこの話は終わった。さてオルコット、お前は俺の強さの糧になってくれるかどうか楽しみだ。
簡単に潰れないでくれよ…