孤高の一夏   作:アーチャー 双剣使い

5 / 13
第5話

最悪なこともいい結果になる。人生はよくわからんな。

 


 

放課後になった。教室は閑散としており今は俺一人だ。

何故、一人教室で黄昏ているか。それは山田先生に寮部屋の鍵を渡すから待っといてくれと言われたからだ。

 

本当なら本音と一緒に簪に会いに行こうと思ったのだが、下手に歩き回られると見つけるのに時間と労力がかかるかららしい。

 

 

 

だから教室で待つのだが暇だったから音楽をかけて、窓際の机に腰掛けている。手持ちの本は読み切ってしまったから外の景色を眺めている。夕日が眩しいな

 

もう一時間経つなぁ、と俺は腕時計を確認する。やっぱり暇な時は音楽を聴くのに限ると思いながら待つ。あと、五分経っても来なかったら、頑張って職員室を探そうと考えていると話しかけられる。

 

「ね、ねぇ!一夏君、久しぶり」

「ん?あぁ簪か、久しぶりだな。どうしたんだ?」

 

話しかけてきた彼女は更識簪といい、青い髪に赤い目と特徴的な容姿に眼鏡をかけており、何処か儚さを感じる少女だ。

 

如何して簪が此処に来たのか、そう問うと彼女は手に持っていた鍵を掲げて見せる。どうやら彼女が持ってきてくれたらしい。如何してかは分からないが礼を言っておく。

 

「ありがとうな、簪。一つ聞くが如何して簪が持ってきてくれたんだ?」

「職員室に書類を提出しに行った時に、山田先生に捕まって、急ぎの用事が入ったから代わりに渡してと」

 

そうだったのか。山田先生も手が離せなかったから時間が遅くなったんだな。

 

「三十分前に言われたの」

「え?」

「あっ……んーとね。一夏君の居る場所を聞くの忘れちゃって、そのまま山田先生は何処かに行っちゃったから。途中で本音に聞いてから分かったの。ごめんね」

「謝らなくていい。偶然の結果なんだから、俺は気にしていないよ」

 

結果がどうあれ、感謝をしなければ。しかし、山田先生も大変だな。やっぱり俺の入学も関係してるのだろう。

 

とりあえず、寮に行くか。

 

「簪、俺は部屋に行って荷解きするが、お前も一緒に行くか?」

「うん。そうする」

 

簪も同行することになり、駄弁りながら歩く。そこでふと気になった事を質問する。

 

「なぁ、俺の部屋って一人部屋だよな?」

「分からない。でも、調整できてなくて相部屋も有り得る」

「まじか、気をつけないとな。簪のペアは?」

「いないよ。候補生だけど家の事もあるからね。本音は人数の都合で別の部屋、言っても隣だけど。お姉ちゃんが融通を利かしてくれたみたい」

「でも、簪と違う部屋ってことは別にも一人部屋になる事情がある生徒だよな」

 

そう言って嫌な感じがした。まさかなと思いその考えを頭の隅に追いやる。

 

「ん、着いたよ。一夏君」

「そうだな。後で一緒に夕食を食べよう」

 

簪はその話を承諾し、自分の部屋に向かった。

 

 

 

俺も部屋に入ろうとするがその前に何度かノックをするが返事は無い。出かけているのだろう。そう思い部屋に入りベッドに置かれた荷物を確認する。部屋には浴室があり、台所もあり、ベッドは二つ、あとは様々な家具だ。

 

すると浴室の扉が開き、バスタオルを巻いた篠ノ之と目が合う。

 

瞬間篠ノ之は近くに立てかけていた木刀で飛びかかってきた。俺はその攻撃を躱しながら荷物に被害が無いように玄関の方に移動する。

 

十分に荷物から離れたのを確認すると次の篠ノ之の突きを躱しながら柄を掴み、こちらに引き寄せてから無防備な腹に膝蹴りを決める。突きを放った木刀は玄関の扉を貫通して刺さっている。

 

俺の容赦ない一撃を食らった篠ノ之は木刀を手放し、膝をついて痛みに呻いている。しばらくは動けないだろう。俺はこんな奴と居られるかと思い、まだ広げていなかった荷物を纏めて持って、ドアノブに手を掛ける。

 

後ろから呼び止める声が聞こえるが無視してドアノブを回して部屋を出る。そして悪いとは思うが簪の部屋に向かう。廊下ですれ違う生徒たちは俺が荷物を持っているのを不思議そうに見ている。

 

 

 

簪の部屋に着くとノックする。少しして制服姿の簪が出てくる。沢山の荷物を持って訪れた俺を見て驚いたようだが部屋に入ってと言って通してくれた。

 

荷物は使ってない廊下側のベッドに置いてと言われ有難く置かして貰うと、お茶淹れるから座ってといわれ椅子に座る。

 

少しすると簪は台所から湯気の立つ湯呑をお盆に乗せて持ってきて、向かいの席に座る。お茶を飲んで一息つくと簪が何があったのと?質問してきたので状況を説明する。

 

「部屋の相手が篠ノ之だったから、荷物持って出てきたんだ。俺と篠ノ之は知り合いなんだが、俺は彼奴のことが昔から嫌いなんだ」

「そう、それで何があったのか詳しく教えて?」

「まず、簪と別れた後にノックをして誰も居ないことを確認し部屋に入って荷物を確認してたんだ。そこで浴室から篠ノ之が出てきてな。木刀で切りかかってきたんだ。それを対処してから部屋を出たんだが、行く当てが此処しかなかったんだ」

 

状況を知って、なるほどと呟いてから少し考えてる簪を見て、お茶を飲むことにした。美味いな。やがて、頭の整理が終わった簪は話し始める。

 

「状況は分かった。でも、部屋割りを変えるには時間が掛かると思うのだけど、その間はどうするの?」

「荷物を此処に置かせて貰えたらと思ってる。寝るのは簪が嫌だろうから野宿か、適当な空き教室に行くよ。」

「別にいいよ」

 

ぼそっと何かを言う簪にもう一度尋ねる。

 

「何て言ったんだ?」

 

すると少し怒鳴るような口調で言う。

 

「別にこの部屋に住んでいいと言ってるの!」

「え、ああ。でも悪いよ、簪も女の子だし色々と気をつけないといけなくなるだろ?」

「私がいいといったの!恥ずかしいこと言わせないでよ。それに野宿とかじゃ体が休まらないからダメ」

 

そういってこの話は終わりだと顔を赤く染めてそっぽを向く簪。とりあえず話を変える。

 

「すまないな。それじゃあ、俺は寮監にでも話をしてくるよ。ところで此処の寮監は誰なんだ?」

「織斑先生だよ」

 

軽く不安になっているとノックの音が聞こえ、簪が返事をしながら玄関に向かい扉を開ける。そこには姉と山田先生がいた。姉と目が合い、姉は口を開く。

 

「悪いな更識。私たちは織斑に用があってな。すまないが入れてもらえるか?」

「ええ、いいですよ。一夏君も話があるそうなんで」

 

そういうと簪は二人を中に入れてお茶を淹れてきますねといって離れていくが、その時此方に振り向いて笑っているのが見えた。簪め、覚えてろよ

俺の目の前に来た姉は口を開く。

 

「どういうことだ一夏?政府と学園上層部からの指示の事でお前に話をしようと思い部屋に行くと扉から木刀が生えていて篠ノ之が部屋で泣いていたのだが」

「その事についてと部屋替えを頼もうと思っていたんです」

 

そういってことのあらましを話す。すると姉は額を抑えてため息をつき、山田先生はそうだったんですねと苦笑いを浮かべる。簪はいつの間にか戻っており、二人に湯呑を渡している。そして、姉は俺に質問する。

 

「もう篠ノ之と相部屋になる気は無いのか?」

「そんなの元からありませんね」

 

そういうと姉は苦虫を潰した顔をする。

 

 

 

この時もこれからも一夏は知らないが実は千冬が箒と相部屋になるように調整したのだ。なぜなら、箒はいままで政府の指示で転校を繰り返し、友達もおらず気性も荒い。それに重要性が高いので一人部屋だったのだが、一夏なら大丈夫だろうと思い組み入れて、一夏を介して周囲に馴染ませようとしたのだ。

 

 

 

その結果は無残なものだったが。千冬は話を変えて部屋替えのことについて話す。

 

「部屋替えのことだが部屋数の関係上一人部屋は無理なのだ。それに政府の方から更識と相部屋にしろと言われてな。更識は構わないか?」

「はい、構いませんよ。先ほど一夏君とも話し合って言いましたし」

 

その言葉で姉は此方を睨んできて、簪はまた口元が笑っている。さっきの仕返しに俺も言い返す。

 

「ですが、実はその話は簪から言ってきたんですよね」

 

そういうと山田先生がえっ!と顔を赤くして驚き、にやりと笑う姉と一緒に簪に話を振る。

 

「更識さん、大胆ですね!」

「まさか、大人しそうな更識がな。意外だったな」

「ち、違いますそんな意味じゃないです」

 

簪は羞恥心で顔を赤くしこちらを睨む。とりあえず話を終わらせるように話をする。

 

「てことで、俺はここで生活するんだな?織斑先生」

「そういうことになるな。だが、まだ学生だからな。避妊はしろよ」

「そんなことはしませんよ。まだ付き合ってもいないのに」

 

そういうと、姉はほぉと呟く。その後ろで山田先生と簪が騒いでいる。

 

「なるほど。付き合えば、か。更識と何処で知り合ったのか知らんが好意は持ってるんだな?よかったな更識、此奴はお前のことが好きらしいぞ。さて、私と山田先生は仕事が残っているからな。行きましょう、山田君」

 

そういって姉は山田先生を連れて逃げる。部屋を出る前に山田先生が振り向く。

 

「忘れていましたが、織斑君は大浴場を使えませんからね~」

「分かりました。」

 

 

 

さて、先生たちは部屋を出ていったから、さっきから静かな簪に話しかけようとすると、簪は頬を赤くしてブツブツと何かを呟いてる。

 

 

「付き合うって恋人だよね。それに避妊って行為の事でしょ。一夏は私のことが好きだし私もだしこれって相思相愛なんじゃ?でも、いつもはそんな素振り無いのに。いや、一夏は感情をあまり出さないだけで、もしかしたらもあり得るんじゃないかな。え、どうしよ、それに…」

「おーい、簪。大丈夫か?」

「え、あ、一夏!どうしたの?」

 

とりあえず話しかけたけど慌てぶりが半端じゃない。まぁ教師としてはいろいろとヤバい発言だったしな。

 

「ひとまず飯食いに行こうぜ」

「あ、うん。そうだね、お腹減ったもんね」

 

 

そういって飯を食べに行ったのだが、その間もずっと顔は赤いままだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。