孤高の一夏   作:アーチャー 双剣使い

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第7話

その仕草一つ一つがどれも愛らしいよ。

その思いを抱いたのは■にだけ

やはり俺は君に惹かれるよ、どうしようもないほどに

俺が惹かれたのは■だけ

だけど、俺は君を求めることが出来ないんだよ。

俺が求めた人は■だ

だって俺は…

俺の思いを踏み躙るな


 

目が覚めた。

まだ外は薄暗く日の出まで時間があるようだがすぐでも明るくなるだろう。

 

家では普段からこれぐらいの時間に起床して、学校の用意をしてから日課の鍛錬をしていた。なので、IS学園に来てからも毎日できるようにトレーニングルームの使用や部活動の入部についても話を通しておいたのだ。

 

鍛錬に行くためにベッドから出て、服を動きやすい軽装に着替え、新しい刀〈彼岸桜〉を握る。

これは先生に一人前になったからと、送られた刀だ。刀身は光を反射し、薄い紅色を思わせる色をしている。

 

部屋を出る前に隣のベッドを覗くと可愛らしい寝顔をした簪が眠っていた。

とりあえず起こさないように部屋を出て、しっかりと鍵を閉める。昨日のこともあったので、より心がけないといけなくなった。

 

 

 

寮を出てから少し歩き、自然保護区とかいう人工的に木々が植えられている場所に着いた。此処は一見すると大きな森のように見えるが中は桜などの木や花壇で色鮮やかになっており、落ち着いた雰囲気の場所になっている。ここなら寮から離れているし、静かに集中して鍛錬に取り組めるだろう。

 

 

まずは長距離走から始める。コースは森の中を円状に造られた、花壇の間や木々の間に設けられた道を走る。一周はだいたい一キロぐらいあり、それを十周走る。

 

二十分ほどで長距離を終わらせた俺は今度は素振りなどの刀を使った鍛錬や、ほかにも様々な武術の型稽古を行う。

 

 

 

それらを七時前になるまで行い、来た道を戻る。帰り道にはジョギングを行う姉と出会った。そのため挨拶をしてから、扉を頑丈な物に取り換えてくれと頼み込み別れた。

 

鍛錬から部屋の前に戻った。汗を掻いて気持ちが悪いのでシャワーをすることに決めた。部屋に入ると何やら簪が狼狽えているのが後姿で分かり、何か言っているのが気になったのでそっと近づいて聞いてみることにした。

 

「一夏くんどこぉ。なんでいないの?ようやく私に振り向いてくれたのに」

 

いつもの簪らしくない。多分、朝早くから鍛錬に出ていたし、寝癖のついたままなので寝起きだろう、だから混乱しているのか。

 

 

ここで悪戯してやろうと思い、暗部に勤めていた為に身に着いた気配を殺す技術を無駄に使い、後ろからそっと近づく。簪の背後を取ると肩に手を置いて、後ろから覗き込むようにして顔を合わせる。

 

「おはよう、簪。そんなに俺が居なくて不安だったのか?」

 

すると簪は俺の名前を呼びながら腰に抱きついてきた。本当に心配していたんだろう。いくら鍛錬をしていたとはいえ、突然居なくなって脅かしてしまったので申し訳ない気持ちになる。

 

ズキッと鋭い痛みが奔る

 

 

少しして、落ち着いた簪に何処で何をしていたかを説明したが、案の定怒られてしまった。

 

「それならそうと事前に言ってよ!心配したんだよ、目が覚めたら一夏君が居ないくて。もう心配して損しちゃった」

 

そういって頬を膨らませる簪はまるでリスのようだ。

 

「悪かったよ。これからはもうちょっと早く帰ってくることにする。それに心配してくれてありがとな」

「一夏君、ずるい。そんなこと言われたら怒れないよ。じゃあ、罰としてこれから朝は私の世話をして。本音は起きないし、部屋も違うからね」

 

そういう簪に苦笑いを浮かべながら了承する。

 

「分かったよ。でも、朝ご飯は時間がないから食堂でな」

 

そういうと簪は頷いてから髪を梳いてと言って櫛を渡してきたのでシャワーを浴びてからと言い、その後に言われた通り髪を梳いてあげた。流石に服とかは脱衣所で自分でしてもらったが一通り朝の用意を終わらせてから食堂に向かう。

 

 

昨日と違い、食堂にはちらほらと人がいた。まあ当然だろう、朝は食堂の開く時間が七時半前からで、八時十五分には食べ終わらないとショート()ホーム()ルーム()に間に合わなくなる。

 

 

俺たちは食堂が開いて少ししてから着いたから、ちょうど混み始める前だったのだろう。そこまで混雑はしていなかった。

とりあえず簪に席を取ってもらい俺がご飯を受け取る。二人とも和食セットにしたため出来上がりも同じで助かった。一つ困ったのは、おばちゃんが簪の分まで量を増やそうとしたので慌てて止めた事だ。

 

 

朝ご飯を食べ終わったのは、食堂に一年生が沢山押しかけた八時前だった。それからゆっくりと教室に向かい、簪は四組なので別れて、いつも通りの読書を始めた。

 

 

 

朝のSHRと一時間目も終わり、二時間目は山田先生のISの座学だった。

途中で山田先生が授業の説明の例えに女性の下着を出したりと、少々気まずい雰囲気になったが普通に授業を受けていた。その中で興味深い話を聞いた。

 

「ISには意識に似たようなものがあり、お互いの対話――つまり一緒に過ごした時間、操縦時間に比例して、IS側も操縦者の特性を理解しようとします」

「それによって相互的に理解し、より性能を引き出せることになるわけです。ISは道具ではなく、あくまでパートナーとして認識してください」

 

言ってしまえば、ISは心を持つことが出来るということであり、理解し合うということは同調率を表している。つまりISが俺の心に同調すればするほど、俺の体はISに適応するということだろうか。

 

 

 

そんなこんなで授業の終わりを告げる終鈴が鳴った。

山田先生が教室から出て行くと俺の周りに女子が集まる。昨日の様子見は終わりを告げたようだ。

 

「ねえねえ織斑くんさあー」

「はいはーい、質問しつもーん!」

「今日のお昼ヒマ?放課後ヒマ?夜ヒマ?」

 

そんな感じの質問攻めを受けたが適当に受け答えをしてクラスの女子たちは捌き切ることが出来たが今度は他のクラスや上級生も来たので質問を打ち切ったと伝えて難を逃れることが出来た。

 

 

しかし、根気強く粘って、姉の情報を手に入れようとしたものもいたが、いつの間にか居た姉が追い払う。ちょうど本鈴が鳴る。

 

「休み時間は終わりだ。散れ」

 

そういうと蜘蛛の子を散らすようにそれぞれの生徒は帰っていった。まさに鶴の一声だな。

 

「ところで織斑、お前のISだが準備まで時間がかかる」

「ん?」

「予備機がない。だから、少し待て。学園というか実際にはIS委員会が専用機を用意

するそうだ」

「えーと、織斑先生?」

 

俺が途惑っていると教室中がざわめく。姉は俺の様子に何を勘違いしたのかため息混じりにつぶやいた。

 

「教科書六ページ。音読しろ」

「そうじゃなくて、専用機は政府の方で事前に打ち合わせで此方の要望とかを話していて更識重工の方で開発してもらっているんですが」

 

その言葉を聞いて姉は眉を顰めている。

 

「何だと?そうか、面倒な事になったな。政府の方で用意する機体はどれぐらいで届くんだ?」

「たしか、二週間ほど後です」

「わかった。とりあえずクラス代表を決める試合には委員会で用意した機体が間に合うそうだからそちらを使え。その後で政府か委員会かどちらか好きな方を受領すればいい」

 

やれやれと額に手を当てる姉の姿を尻目に思考する。

 

 

 

おそらく、IS委員会がこんな無茶な手を打ったのは俺が日本政府に所属し、手が届かなくなるのを危惧してるんだろうな。どちらにしろ俺は更識の一員だから日本政府寄りなんだがな。

 

 

そのあとちょっとしたことはあったが姉の一声で授業が始まった。

 

 

 

授業が終わるとすぐにオルコットが此方に来た。

 

「安心しましたわ。まさか訓練機で対戦しようとは思っていなかったでしょうけど」

「まあ?一応勝負は見えていますけど?さすがにフェアじゃありませんものね」

「いや、普通にそのつもりだったよ、オルコット」

 

相変わらず澄ました顔でウザいことばかり言うので、わざと言葉を選んで言うとその顔は不快な気持ちでいっぱいになり、澄ました表情が崩れた。

 

「馬鹿にしていますの?ご存じないようだから教えて差し上げましょう。この私、セシリア・オルコットはイギリスの選ばれた代表候補生…つまり専用機を持っていますの」

「そう、それで?勝てると思ってるからそう言ったんだよ」

 

それだけいって席を離れる。簪と昼飯を食べる為に四組にまで行く。

 

 

四組の教室に着いて、近くの女子に簪の席を聞いて呼びに行く。

 

「迎えに来たぞ、簪。食堂に行こうか」

「わかった。けど、目立って恥ずかしいよ、一夏君」

 

気にするなといって、食堂に向かう。

 

 

 

食堂に着くと二人とも日替わり定食の鯖の塩焼き定食を頼む。

 

「簪、お前の分も運ぶから席を探してくれないか?」

「大丈夫。あそこで本音が席を取ってくれてるみたい。ほら、手を振ってる」

 

そう言って進む簪の後をついていく。

 

「ここあいてるよぉ、かんちゃん、おりむー」

「ありがとう、本音」

 

席に座らせてもらう。そこで他の女子たちとも他愛のない話をしながら食べていると、赤色のリボンをした生徒が話しかけてくる。

 

―ちなみにリボンの色は青は一年、黄色は二年、赤は三年だ―

 

 

「ねぇ。君が噂の子でしょ?」

 

そう言って話しかけてくる上級生に当たり障りなく返す。

 

「貴方の言う噂が俺の事ならば、そうでしょう」

「代表候補生の子と勝負するって聞いたけど、ほんとなの?」

「ええ、そうですが」

 

その言葉に気を良くしたのかある提案をされた。

 

「でも、君素人でしょ?ならさ、私が教えてあげよっか?ISについて」

「結構です。しっかりと自信も能力もありますし」

「でもさ…」

 

断るがなかなか引き下がらない先輩に簪が助け船を出してくれた。

 

「なにかあっても、私がいるので大丈夫です。こう見えても私、日本の代表候補生なので。」

「そ、そう。それなら仕方ないわね…」

 

ようやく帰ってくれた。助けてくれた簪に礼を言う。

 

「別にいいよ。それに何かあったら遠慮なく頼ってね?」

 

 

 

 

その言葉にはどんな思いが込められていたのだろうか?

 

俺にはそれが一つだけじゃない気がした。

 

 

もっとも純粋で、

 

どこまでも穢れのない、

 

眩しい思いが込められていたのだと思う。




寝起きは精神年齢が幼くなる簪…

今日の晩御飯は鯖の塩焼きという偶然(どうでもいい)
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