赤い弓の断章   作:ぽー

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第七話

 月夜。死に体は懐かしい寒さで呼吸する。

 心臓を破られた人間は、間をおかずに死ぬ。死ねば肉は土となり、ソウルもゴーストもまた起源の海へと立ち戻る。男はまさに終焉を迎えようとしている。

 ポケットの宝石に手を伸ばした。この夜の違和感に、一体どれほど想像をめぐらせただろうか。

 想像はやがて一つの道へ収縮し、しかしついぞ確信することはなく、忘れ去り思い出すこともなくなった。それは、衛宮士郎の犯した最初の罪なのかもしれなかった。

 月明かりがさしこんできた。

 衛宮士郎は愚かな男の代名詞だった。夢だったと、疲れていたのだと、死んで生き返ったという自身の肉体に起こった事実を信じることが出来ないほどに。

 命を救われたという、決して目を背けてはならない事柄ですら、認識できなかった。

 赤い宝石を取り出して、握りしめた。わずかに熱いその鉱石の内部には、埃が積もっている程度の魔力が残っている。鼻に近づけた。確かに、彼女の魔力だ。レイラインで繋がっている今、これ以上に断言できる状況はかつてなかった。

 混乱があった。もどかしさ、むず痒さ、至らなさ、まだまだ沢山ある様々な感情が混ざり合い、気持ちが悪い。殺意も黒く揺れ動き、どうにもならないほどに混沌してしまいそうになる。

 静寂の校舎に不釣合いに高い足音を立てて彼女が走ってきた。脚を止めると、隠そうとしてはいるものの、顔面は蒼白だった。それでも何とか荒い呼吸を押し殺して、静かに言った。

「……追って、アーチャー。ランサーはマスターの所に戻るはず。せめて相手の顔ぐらい把握しないと、割が合わない」

 凛の声は、冷静を装いきれてはいなかった。

 総身の肌が震えていた。鳥肌を抱いたまま、私は駆け出した。月光がサッシに遮られるたびに視界が明滅する。

 衛宮士郎は死ぬ。いくら体内に、アーサー王が聖剣の鞘、果てども尽きぬ永久の妖精郷の力があれど、一突きにされた心臓を甦らせる力はない。

 では、私は一体何なのか。この手の平の中で煌く赤い宝石は、一体なんだというのか。

 砕けた窓から夜の闇へと飛び出した。遠くに見えるランサーの影は、弾丸のような跳躍を繰り返し、すでに新都へ至る橋に達そうとしている。私は屋上へ昇り、ランサーの逃走を再度確認した。やがて闇に溶けてしまうまで、私はその軌跡を記憶にとどめた。ここまで離されてしまっては、追いつくことはできない。今は道筋を覚えるだけでいい。

 先ほどの廊下が見える辺りに移動した。何としても、見届けなくてはならない。あの日から不思議に手放すことの出来なかった赤い石は、持っているだけでどうしてこんなに切ない気持ちになれるのかと、いつも不思議でならなかった。もしやという思いはあった。だが仮説は仮説のまま、十六夜が没し続けるたびに風化をとげ、ついに明かされることはなかった。

 物陰から、血の池のような廊下をうかがう。ゼヒという、死に際の息遣いまでもが聞こえてきそうだった。

 彼女は半死にの男をただ茫と立ったまま見ていたが、何か二、三言呟いていてその場にしゃがみ込んだ。光の加減で表情までは見えなかった。何のことはない、その間は数える間もない目瞬くほど。胸からぐいっと取り出した赤いペンダントを力任せに引きちぎり、手をかざす。詠唱はただの一小節だった。膨大な魔力をまとった赤い光が、死に際の男の体に吸い込まれていった。

 事は済んだ。なんとも呆気ないものだった。

 たかが一秒。されど、私の胸につかえていた全ての何がしは、去った。思わず呟いた。

「ああ、そうだ。私は君に迷惑をかけたのだとばかり」

 苦笑いしている。見下ろしながら、満足気に――しょうがないなとばかりに、苦笑いをしているのだ。

 それ以上、私には何もいらなかった。仮説は真実を謳った。屋上べりに力なく腰を下ろしたまま、何をする気も起きなかった。ひたすら手の平の上で脈打つ、赤い石に魅入っていた。

 遠坂凛は、衛宮士郎の命を助けてくれた。だというのに、その素振りさえ見せることはなく、彼女は幾度となく衛宮士郎に手を貸す。

 それは、どうすれば返済できるか想像することもできない、とんでもない負債だった。

 衛宮士郎を屠らむ。真逆、あの月光さしこむ廊下の時間だけは、私は汚したくなかった。逃すべきではなかったのだろう。だがこればかりは見届けなくてはならなかった。原点だったからだ。この先、どんなことが起ころうとも私はこの瞬間を逃したことを後悔はすまい。長い殺戮劇の果てに、大陸に挟まれるような軋轢の果てに、一も全もなくしてしまった私の枯れた心持ちでさえ、踏み潰さずによかったと思った。

 衛宮士郎は殺すが、彼女の安堵の表情を見て時を逸してよかったと知る。

 凛。君が詮無い罪悪感などに囚われず、健やかに生きていけるのなら。

 衛宮士郎を救うことで悲しまずに進めるのなら。

 今でなくてもよいと思えた。

 とうに枯れたはずの涙腺が、震えたような気がした。背中に闇。頭上に月。いつも、お前はそうして、高い所から私の弱さばかりを見る。この時代の月はまだ白く、血濡れのように赤く染まるのはまだずっと先。

 

 

 

 どれほどそうしていたのか、彼女も男も立ち去ったのだろう、面を上げたときには校舎は在りし姿へと立ち直っていた。

 外に出たときの窓から内へと入りなおす。廊下には一滴の血痕すら残っていなかった。

 床に手をつける。辺りにはまだ膨大な魔力を放出した熱が残っている。これだけの量、数年やそこらでためることは出来ない。二代、三代、さらに多くの祖からの継承なのかもしれない。いわば遠坂家の歴史の結露のようなものだ。

 ずっと、返す日を夢に見ていた。生前やり残したことなど、自分で思っている以上にあるものだ。己の未熟さ加減は、予想以上だった。

 立ち上がり、学校の塀を越え、街灯きらめく街へと飛び出した。コントラストも鮮明に、街明かりと月光に挟まれた群青を駆ける。屋根から屋根へと跳躍する。屋根伝いに深山を駆け回った。今頃、衛宮士郎もよたつく足取りで帰路を歩いているだろう。今宵のことは全て夢と勝手に決め込んで。

 青い槍手が消えた方向を、しらみつぶしに駆け回るほかはなく、それで発見することが出来るのなら何も苦労はいらない。あいにく、ランサーのマスターを、私は覚えてはいなかった。その程度のことなのだ。記憶をとどめているということが正しくないといっても、間違いではない。

 逃走経路を辿れるだけ辿りながら、私は感傷的になりそうだった精神を静めることに努めた。こうして、まるで人間のようにうろたえるなど実にいつ以来になるのか、思い出そうとしても無理な話だった。

 結局得た物はなにもなく、冷たい外気に鬱憤に似たものを吐き出しきったのち、私は遠坂邸へと戻った。

「お帰りなさい。成果はどう?」

 ソファーに深く腰を下ろしたままの凛に、私は首を振りながら見つけられなかったことを告げた。

「そう」

 ま、そう簡単にはいかない、と呟きながらため息を吐く。視線にもどこか力はなかった。

 私は聞いた。

「覇気がないなマスター。いつもの威勢はどうした。まさか先の一戦で怖気づいた、というのはなしだぞ。君が命じるのなら、今すぐにでもランサーとの再戦に赴いてもいい」

「そんな訳ないでしょう。わたしが打って出ないのはね、単に無駄手間をしたくないだけなんだから」

「む? 無駄手間をしたくない……?」

「だってまだマスターの数が揃ってないでしょ。今夜のは止むなしだったけど、開戦の合図があるまでは戦わないわ。それが聖杯戦争のルールだって父さんは言ってたし」

「……そうか。君の父親もマスターだったのか」

 何気なくでた父という単語が、私は腹の中で溜め込んでいた質問をぶつける動機となった。

「一つ訊き忘れていた。凛、君は幼い頃からマスターになるべく育てられ、それに従ってきたのだろう? つまり、初めからマスターになることを予想していた訳だ」

「当たり前じゃない。そりゃあいきなりマスターに任命される魔術師もいるそうだけど、私は別よ。遠坂の人間にとって、聖杯戦争は何代も前からの悲願なんだから」

「そうだろう。つまり初めからマスターになるべく育ってきた君ならば、目的がとうにある筈だ。私はそれを聞き忘れていた。主の望みを知らなければ私も剣を預けられない。凛。それで、君の願いは何だ」

 昔から訳もなく、私は彼女の望むものに対して疑問を挟まなかった。信じていた、というわけではない。彼女の望みを聞く、という行為がどこかおこがましく、無意味なものに思えて仕方なかったからだ。

 凛はきょとんと言い返す。

「願い? そんなの、別にないけど」

 彼女がさも当然に言い返したので、思わず聞き返す語気が荒くなった。返答に、理屈抜きの喜び覚えてしまったからでもあるだろう。

「そ、そんな筈はあるまい! 聖杯とは願いを叶える万能の杯だ。マスターになるという事は聖杯を手に入れるという事。だというのに、叶える願いがないとはどういう事だ……!」

 的外れだ。全くの的外れな問いを、私はしているし、続けようとしている。

「よし、よしんば明確な望みがないのであらば、漠然とした願いはどうだ。例えば、世界を手にするといった風な」

「なんで? 世界なんてとっくにわたしの物じゃない。あのね、アーチャー。世界ってのはつまり、自分を中心とした価値観でしょ? そんなものは生まれたときからわたしの物よ。そんな世界を支配しろっていうんなら、わたしはとっくに世界を支配しているわ」

 的外れすぎて、いっそ清々しいほどだった。

「馬鹿な。聖杯とは望みを叶える力、現実の世界を手に出来る力だぞ。それを求めるというのに何も望まないというのか、君は」

「だって世界征服も面倒くさいし、そんな無駄なことを願っても仕方がないでしょう。貴方、わりと想像力が貧困ね」

「……。理解に苦しむな。それでは何の為に戦う」

「そこに戦いがあるからよ、アーチャー。ついでに貰える物は貰っておく。聖杯がなんだかは知らないけど、いずれ欲しい物が出来たら使えばいいだけでしょう? 人間、生きていれば欲しい物なんて限りないんだし」

「つまり、君は」

「ええ。ただ勝つ為に戦うの、アーチャー」

 無謀さがあり、未熟さもある。達観しているわけでもなく、傍観しているわけでもない。

 それは、唯我のみが為に在るということ。

 自己の正当性に対する視野の狭さは、もはや狂信の域だ。それは強い。強さとは、振り返らない意志の力と、後ずさりしない胆力である。

 このような逸材が他にいようか。

「まいった。確かに君は、私のマスターに相応しい」

「ふん。サーヴァントにマスターを選ぶ権利はないけど、一応訊いとく。なんでわたしが貴方のマスターに相応しいのよ」

「言うまでもない。君は間違いなく最強のマスターだ。仕える相手としてこれ以上の者はない」

 微妙にうつむきながら彼女はぼそぼそと言葉を返す。照れたのか――いや照れるばかりでなく、疲れもあるのだろう。生き延びたねぎらいも兼ねて、紅茶を入れようという気にでもなった。 

「さて、ならば一息入れようか。七人目のマスターが現れるにせよ、それは今すぐという訳でも……と、ちょっと待て凛。君、あの飾りはどうした」

 赤い宝石。胸元に吊るしてあった輝きがなくなってしまっている。廊下にそのまま放り投げたのだろうか。

「飾りって、ペンダントの事? ああ、アレなら忘れてきちゃった。もう何の力もない物だし、別に必要ないでしょう?」

「それはそうだが」

「ええ。父さんの形見だけど、別に思い出はアレだけって訳じゃない――」

「――よくはない。そこまで強くある事はないだろう、凛」

 私は、それが父の形見であることも知らなかった。

 罪滅ぼしのような気持ちに後押しされて、赤いそれをポケットから取り出し、渡した。

 あるいは危険な行為なのかもしれない。私と彼奴が相同だと、暗示しているような代物だ。

「あ……拾いにいってくれたんだ、アーチャー」

 歴史は残酷だが、時にこうして気まぐれを起こしてくれる。それに騙されながら一喜一憂し、気づいたときにはこうまで壊れてしまった。

 被害者を気取るつもりはないが、加害することなど出来ないのだから、被る側であることはやっぱり間違いではない。

 全てを切り捨てた先に、切り捨てることが出来なかったものと再会するなど、やはり残酷にすぎると私は内心自嘲しつつも、少し照れくさかった。また、嬉しさがあることも否定はしない。ようやく、返すことが出来た。こうして私は、歴史に騙されていることを許容し続けてきた。

「もう忘れるな。それは凛にしか似合わない」

「――そう。じゃ、ありがとう」

 いつもこうして飴を得る。鞭は、間を置かずに振り下ろされるはずだ。どこまでも、甘い飴。

「って、待った」

 表情をゆがめて、凛は立ち上がった。

 衛宮士郎の危険を、私は言わずにおいたが自身でその答えに至ることは想像していた。

「そんなヤツ、生かしておかない……」

 呟きながら、駆け出すまではほぼ同時だった。彼女はまた衛宮士郎の命を背負い込もうとしている。再び夜の街へ飛び出した彼女に付き従いながら、何かを思い出せないもどかしさに襲われた。

「どこに行くんだね」

「さっきの、死んでたやつの家よ! ああもう、なんで気づかなかったのかしら、ランサーが見逃すわけないじゃない!」

「なぜそんな無駄なことをする。さっきの蘇生もそうだ。膨大な魔力を、あんなことに使うなんて合理的ではない。魔術師の口封じは常識だろう」

「なによ、見捨てればいいって? いいのよ、わかってる。あれは私の責任でなったこと。だったら、私の責任においてなら、生かすも殺すも自由ということよ」

「いい、百歩譲ろう。君は一度助けた。責任を果たしたという事だ。その後に彼がどうなろうと、彼自身の運じゃないのか?」

「いいえ、生かしたのは私。じゃあある程度生ききれるまで、面倒みなきゃ夢見も悪いわ――ああもう、間に合え!」

 交差点を最短距離で横断し、衛宮邸を目指す。屋敷に近づくにつれ、妙なもどかしさが頭をよぎった。曖昧な予兆は、一向に消えずにわだかまり続ける。それはどこか、水面下の魚に目を凝らすに似た。

 坂を上る途中、ランサーの気配を察知した。殺気を隠そうともしていないので、もう少し近づけば彼女も気づけるだろう。

「……まったく。余計な苦労を背負おうとしているぞ、君は」

 私の問いに、彼女は無言で走ることを答えとした。

 屋敷正面。塀を貫くようにランサーの気配を感じる。まだ殺気立ってるということは、衛宮士郎はまだしぶとく生き残っているという事だ。

「……いる。さっきのサーヴァント……! 飛び越えて倒すしかない。その後のことはその時に考える――!」

 不意に、閃光が塀の向こうより飛来した。辺りに満ちた光は、魔力の波だった。しかも現代の魔術師が行使できる程度の代物ではない。世界の真理より、過去の英霊を現界させる産声とも呼べる、降臨の星光だった。

「うそ――」

 ランサーの気配が遠のいていく。流石に、目の前で現界されては一たまりもなかったのだろう。そしてそれはランサーだけの話ではない。戸惑った。この気配を、私はいまだに覚えていた。そう、わだかまりはこれだったのか。この日この地、この夜。運命の結露は一塊となってやってくるのが常。

 輪廻は一周する。

 確かにそろそろ鞭が振り下ろされてもいい頃だ。運命論者ではないが、運命を否定できるほど愚かでもないつもりだ。

「……ねえアーチャー。これも、もしもの話?」

「さあな。だがこれで七人。ついに数が揃ったぞ、凛」

 かくして七人揃い踏む。聖杯戦争は最後の札がオープンされることによって開幕のベルを鳴らした。

 塀を掠めるように飛び越してきたものがあった。戦争は始まったのだから、その行為に何ら落ち度はない。

 セイバー。

 戸惑いは満潮に達した。

 憧憬が形を持つ。あらゆる内面を磨り減らした私の中でさえ、いまだ君のその姿は褪せることなく焼き写されている。

 懐古に痺れたのは瞼の震えほどの隙だった。そしてそれが死線を極限まで膨らますということをお互いよく理解している。動きが遅れた。凛も動けない。呑まれたのか。痺れを解き、ようやく脚が動き出したときには猶予はすでになく、マスターの前に立ち塞がることしか出来はしなかった。

 青緑の軌跡が流れた。野菜を断つかのような間抜けな音がした。脇腹より胴が裂かれる。血が零れ落ちた。さらに食い込んだ刃、風が体内をかき回す。内臓を風の刃がえぐる感覚は今までにないものだった。破損箇所が急速に壊死していく。

 それで終わった。勝負は、暇という暇を否定した。

 呻き声さえ上がらぬ速度の渦を纏って、絶命の一太刀がさらに追ってきた。

 その濃緑の瞳に是非はない。そう、君のその圧倒的な強さと意志を、確かに私は覚えている。たとえ握った得物が竹刀であっても君はいつもその顔をしていたっけ。

 首を切断せんと風王結界が流れる。束の間、諦める己がいた。この死の際ですら、彼女に斬られることを許容できるという、全てを麻痺させるほどの懐古がいまだに私を支配していた。

「――アーチャー、消えて……!」 

 唐突に世界が真っ赤になった。

 世界が暗転し収束する。令呪が一つ減ったことを感じた。つまりそれは、凛が私を救ったということ。

 ああ、と心中呟いた。私はまたもや彼女に救われた。二度目だ。この死なずの身であってさらに、私は彼女に貸しを一つ作ったという、しかも一日に通算二度という、笑い話。

 私を形作る強力なものに一つのひびが走ったのを自覚した。楔は深く深く、根本に亀裂を走らせる。サーヴァントを降せるのはサーヴァントのみだ。無防備となった凛に勝ち目はない。それを承知の上で、我がマスターは私の救助を令呪を使用してまで行った。

 亀裂。亀裂。崩落。

 鞭はしなり、私の根本に深い崖を掘る。

 心中、苦笑した。

 ここまでされて、いわんや彼女を裏切れるのだろうか。到底できそうもない。今度こそ、これは真正の忠誠だった。

「君を、聖杯戦争の勝利者に」

 衛宮士郎を殺すのならば、その後だ。聖杯戦争を勝ち抜いたのち、消え去るその直前にでも射殺せばいい。

 薄れ行く意識。三つの考え。彼女を守るという意志。彼女に会えたという感慨。奴に対する変わらぬ憎悪。

 命拾いしたな、衛宮士郎。お前を殺すのは、しばらくあとになりそうだ。

 ダメージは甚だしく、私は姿を消した上でも意識が朦朧としていった。凛は、無事なのか。それだけを祈って、痛みの先の空白に頭が襲われた。


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