欲望の代償   作:NAKYU

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1話 憧れの戦艦に

「……」キョロキョロ

 

目が覚めると 不思議なところにいた

 

周りは真っ白な世界 そして目の前にあるのは大きな扉だった

 

「この扉……何だろう?うんしょっと……」

 

扉を開けようと引いたり押したりしたが びくともしなかった

 

「どうして開かないんだろう……?」

 

 

「気が付いたみたいだね」

 

「! だ、誰?!」

 

振り返ってみると座っている人がいた

 

人と言っても目も鼻も口もない 全身が黒い人物だった

 

「大丈夫だよ、君には危害を加えないから」

 

「ほ、ほんと……?」

 

「ホントホント」

 

その言葉を聞き おそるおそる座った

 

どうやら本当に危害を加える気配はないと分かると 安堵した

 

 

「えっと……ここは私の夢の中てことで良いのかな?」

 

「そういうことでいいんじゃないかな?」

 

「分からないの?!」

 

「それは置いておいてさ、君とお話ししたいんだ。いいよね?」

 

「別にいいけど……」

 

清霜は最初は戸惑いながら自己紹介をした

 

次第に雰囲気に慣れ 姉妹や鎮守府、そして憧れている戦艦武蔵の事についてにも話した

 

話していくたびに 緊張と不安もほぐれ いつしか姉妹と話してるみたいな会話ができるようになっていた

 

「ふーん、君はその"武蔵"って言う人みたいな戦艦になりたいんだ」

 

「うん!とっても強くてね!みんなから頼りにされているんだ!私はそんな人になりたいんだ!」

 

「じゃあさ、もしその願いがかなったら何がしたいの?」

 

「え?!う、うーん……みんなを護る!」

 

「あはは!とても頼もしいね!・・・おっとそろそろ時間だ。その扉をもう一度開けてみてよ、そこでお別れだよ」

 

「え?でも開かなかったよ?」

 

「まぁまぁ、騙されたと思って開けてごらん」

 

(ほんとかなぁ……)

 

恐る恐る扉に手をかけてみると さっきとは違い簡単に開けることができた

 

その直後 扉から光が溢れだし 清霜を包んだ

 

「うっ、ま、まぶしい……」

 

 

駆逐艦寮 夕雲型の部屋

 

――――起きろ 起きろって

 

――――おい

 

――――起きろって清霜!

 

「んぅ……ここって……鎮守府?」

 

「ようやく起きたかよ、寝坊助」

 

「あ……おはよ……ふぁあ~……」

 

朝霜に起こされ 目を覚ますとそこは夕雲型の部屋だった

 

身支度の準備や髪の毛を結ぶ姉妹の姿があった

 

「ったくよぉ、アタイ達がいないとまだ一人で起きれないのかよ」

 

「"戦艦"になったとはいえ、先のことが不安ね」

 

「……え?早霜ちゃん、どういうこと?」

 

「何言ってんだよ!昨日戦艦になれて大はしゃぎしてたの忘れたのかよ!」

 

「朝ちゃんも同じようにはしゃいでたんだけどね」

 

「う、うっせぇな!岸波!」

 

「ホントに……本当に私が戦艦?!」

 

「本当だって。信じられないのなら提督に聞いてみろよ」

 

「そ、そんなわけないよ!」

 

「じゃあ今から聞いて来なよ、執務室にいるはずだぜ」

 

「うん、わかった」

 

(みんなどうしたんだろう……私が戦艦になった記憶なんてないんだけどなぁ……)

 

半信半疑で勢いよく部屋から出た瞬間 出迎えようとしていた提督とぶつかってしまい 両者とも転んでしまった

 

「あ……大丈夫?清霜?」

 

「いてて……あ!司令官!ごめん!大丈夫?!」

 

「うん、大丈夫大丈夫……」

 

「あははー しれーきよしーに倒されてるー!」

 

「急に出てきたら避けれるわけないよ……」

 

 

提督が手を差し伸べると清霜は掴み 立ち上がった

 

 

 

「それよりも清霜、朝食を食べ終えたら執務室に来てくれないかな?ちょっと話があるんだ」

 

「話って?」

 

「戦艦になったから、ちょっとその実力を見ようと思って」

 

「……本当に私が戦艦?夢じゃない?」

 

「そうですよ、昨日はものすごく喜んでいましたね」

 

「みんなからもお祝いされてたね」

 

「本当に……本当に?!」

 

 

 

「ねーしれー!お腹空いたから早く朝食食べに行こうよ!」

 

「そうだね、じゃあ清霜。また後でね」

 

「あ、うん」

 

朝食の談義をしながら提督は秘書艦の古鷹と時津風と共に食堂へ向かった

 

清霜は本当に戦艦になったことを知り 呆然と立ち尽くしていた

 

「……」

 

「な?言ったとおりだろ?戦艦清霜?」

 

「……いやったあああああああああ!夢じゃないよね!?夢じゃないよね!?」

 

「あだだだだ!!つねるなら自分の頬でもつねろよ!」

 

朝霜の頬が赤く腫れあがり その後に清霜も同じように自分の頬をつねってみる

 

痛い 目が覚めない 夢じゃない そうわかると喜びを再び爆発させた

 

「やった!やったぁ!本当に……戦艦なんだね!」

 

「何度も言ってるじゃねぇか。ほら、早く朝食に行こうぜ、提督に呼ばれたんだろ?」

 

「うん!みんなで食堂に向かおっ!」

 

 

中央棟 食堂

 

「これでよしっと!」ドッサリ

 

「……」

 

清霜の目の前に置かれたのは 大盛り。いや、特盛であろう白飯とたくさんの主菜

 

この光景を目にした姉妹たちは沈黙に包まれながらも 恐る恐る聞いてみた

 

「ねぇ清ちん、それ全部食べるつもり?」

 

「もっちろん!戦艦はたくさん食べて力をつけなきゃね」

 

「まだ朝食よ?お腹壊したらどうするの?」

 

 

「よぉ!清霜!……ってなンだ?そのご飯の量」

 

「見てるだけで辛そうだね」

 

「あ!時雨ちゃん!江風ちゃん!どう?戦艦になった清霜は?」フンス

 

「いや、体は小さいままでそんなに大きくは見えねーぞ」

 

「でも心は戦艦だよ!」

 

「いや、意味わかんねーよ」

 

「じゃあ僕たちはこれで」

 

「じゃあなー」

 

 

「さてと……いただきますか!」

 

「言っておくけどさぁ、残すなよ?怒られても知らねーからな」

 

「大丈夫!」モグモグ

 

急いで食べる清霜と対称に 姉妹たちも食事をゆっくりと摂りはじめた

 

しかし 数分経ってみると清霜のペースは徐々に落ちていき 最終的には姉妹全員に手助けをしてもらい 完食した

 

「ふぅ……何とか食べきれた……」

 

「だから言ったじゃねーか……無理すんなって」

 

「も、もう……だ、ダメ……」

 

「ああ!浜ちん!しっかり!」

 

「とりあえず……皆さん一度部屋に――」

 

「あ!そうだ! 私、寄るところあるんだった!」

 

早霜が提案した途端 清霜が唐突に叫んだ

 

「寄るところ?提督に会いに行くんでしょ?」

 

「違うよ風雲姉さん!武蔵さんにだよ!」

 

「……武蔵さん?」

 

「うん!だから司令官に会う前に武蔵さんに会いに行ってくるね!」

 

「……」

 

"武蔵" その言葉を聞いたとたん 姉妹たち全員は不思議そうな顔をして見合わせたりしている

 

「……どうしたの?みんな」

 

「なぁ清霜……一つ聞いていいか?」

 

 

――"武蔵"ってだれだ?

 

 

 

「……え?な、何言ってるの?長波姉さん!?大和型二番艦の"武蔵"さんだよ!」

 

「知ってるか?」

 

「いえ、知りませんけど……」

 

「そもそも大和型は"大和"さんと"清霜"の二人しかいないんだよ?」

 

「そ、そんなことないって!他のみんなにも聞いてくる!」

 

突然の事に戸惑う清霜 他にも白露型、陽炎型などにも聞いたが"知らない"の言葉しか返ってこなかった

 

むしろ 存在自体知らないということも聞き 疑問を持ったまま そのまま執務室に向かった

 

 

執務室

 

「いや……聞いたことないなぁ、そんな艦娘。知ってる?」

 

「いえ……古鷹も初めて聞きました……」

 

「時津風は知ってるよー、あの二刀流の人だよね?」

 

「それは宮本武蔵だよ」

 

「おかしいよ……!みんなどうしちゃったの?!」

 

何度も聞いてみたが提督と古鷹、その隣にいた時津風も知らない様子だった

 

清霜が考え込んだ瞬間 勢いよく執務室のドアが開く音がした

 

「清霜!!この時を待ってたわよ!!」

 

「ビスマルク……元気なのは良いけど扉は優しく開けてね……」

 

「それよりも提督、演習のメンバーはもう出来上がってるのよね?!早速行きましょう!」

 

「ま、まぁそうだけど……ちょっと清霜が聞いてきたことでね」

 

「ビスマルクさん! 武蔵さんって知ってるよね?!」

 

突然大声で問い詰められたビスマルクは、少し間を置いて首を横に振った

 

(おかしい……どういうことなの?)

 

 

こうして "戦艦清霜"の人生が始まった




2019.10.12
すいません 物語の書き直しをしていた他、リアルでも多忙なことも有り、投稿が変則的になってしまいました。

今度はなるべく投稿するよう、努力します。
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