10章 本当の理由
艦隊は順調に作戦を完遂し 次の海域へと足を運んでいた
そして最も難関とされる"サーモン海域北方"に向けての作戦を立てることにした
鎮守府 執務室
「さて、次の海域なんだけど……」
「……やっぱ気が滅入るよなぁ」
「司令官!ここまで来たんだからやるしかないよ!」
提督を励ますかのように清霜は言葉をかけた
暗い雰囲気こそ明るく振る舞う……と思える言動でもあった
「編成も重量になりますしね」
「私がいるから大丈夫だよ!司令官!」
「はは……頼もしいね。無理は禁物だよ?じゃ、明日出撃する人は出撃に備えてゆっくり休んでね」
参加メンバーが執務室から退室し 提督と古鷹の二人になると話し合いを初めた
「しかし……清霜のあの気合の入れようはなんだろうね?」
「そうですね、いつもより気合い入れてましたね」
「頑張ってくれてる分に関してはいいんだけど……最近報告が多いのが……」
各監視役からの報告通り 出撃記録での清霜の行動が目立つようになってきた
中には一人で突撃をするという行動もあり 悩みの種の一つでもあった
「それに、次の海域があそこですしね」
「長門に監視をお願いしたから大丈夫だと思うけど……」
翌日
鎮守府 港
「おーい!張り切って頑張るぞー!」
(今までの南方海域では武蔵さんに関する手がかりは見つからなかった……)
(けど!ここなら絶対に何かあるはず!)
(それに、今の私……負ける気がしない!)
「清霜、少し良いか?」
「なーに?長門さん」
「引き継ぎの件で、お前が無茶をする場面を見たという報告があってな」
「提督からの命令で、今は清霜を旗艦としているが。作戦遂行が困難と考えた場合私が旗艦を務めることにする。いいな?」
「あ、うん」
長門の言葉で 清霜にも緊張が入った
「だが、そうやって緊張すればうまく体が動かなくなる。気を楽にしろ」
「長門、厳しいわね」
「まぁ監視役だし……それに良くない報告もあるから」
「ナガート!Meは何時でもオッケーよ!」
同じ艦隊のメンバーでもある雲龍 葛城 大鳳 そしてアイオワも準備万端で待機していた
「よし、清霜。出撃の号令をお願いする」
「わかった!……旗艦戦艦清霜、抜錨します!」
数時間後...
南方海域 サーモン海域北方
出撃海域に向かった艦隊一同は強敵と連戦となり 数々の砲撃戦をかいくぐった
標的である主力艦隊を目の前にして 艦隊も疲れが顔に出ていた
「Uh……敵の攻撃が激しすぎるわね……」
「けど、後少しで敵主力艦隊です。もう一度気を引き締めましょう」
「ところで長門、清霜の様子はどう?」
「あ、ああ……砲撃戦となると無闇に突っ込む事が多いのだが何とか抑えるようにはしている」
「ごめんなさい……長門さん。砲撃戦となるとどうも体が勝手に動いちゃって……」
清霜の体は傷だらけでだが まだ戦闘はできる状態だった
しかし 次の砲撃を喰らえば中破では済まない……とでも言えただろうか
「この様子だと……旗艦を代えたほうが良いな……」
「長門さん!私はまだ――」
「知っているか?お前の行動が知れ渡っていることを」
「え?」
「先程もそうだが、敵艦隊に突っ込むという光景が問題視となっている」
「この様子では作戦遂行は困難とみなし、ここからは長門が旗艦を務める。いいな?」
長門の真剣な表情に 黙ってうなずくしかない清霜だった
その後、清霜を守るような陣形を敷き なんとか主力艦隊を撃破して鎮守府へと帰還することとなった
鎮守府 執務室
「……よし、ありがとうね長門。急な変更で」
「ああ、しかし今は皆無事で帰還できたことが良かった」
「それが一番だね。……ちょっと清霜はこの後残ってもらえないかな?」
「う、うん」
(なんだろう……)
「それじゃあ、お疲れ様。今日はゆっくり休んでね」
清霜以外の艦娘は執務室から立ち去り 残った清霜と提督、古鷹はソファーに座った
「……いきなり単刀直入に言うけど」
「清霜が南方海域に行きたい理由って"人探し"ってことだよね?」
「えっ……!?」
突然のことに 驚く清霜 彼女の額からは大量の冷や汗が出てきた
「その驚きようだと……正解だったかな?」
「そ、そんなことないよ!ただ私はみんなのために……」
「本当にそうなんですか?」
「実はと言うとね、そのことを教えてくれた人がいるんだよ」
「し、司令官!それは……」
「僕だよ」
執務室のドアが開くと そこには時雨が立っていた
「君が出撃してる間にここに来て 話してもらったんだ。"本当の目的"を」
「嘘をついてまで出撃したいだなんて……どういうことか教えてほしい」
「……昔のことを思い出して、ある人と南方海域に出撃した記憶を思い出したんだ」
「そこから急に消えちゃったから……何か手がかりがあるんじゃないかって……」
本当のことを告げると 少し沈黙が続いた
「やっぱり……長波が言ったとおりだね」
(長波姉さんが……言ったんだ……)
「とりあえず、南方海域の出撃は続けるつもり……だけど君は連れていけない」
「ど、どうして?!私はまだいけるって!」
「今までの監視役の報告を聞くと、君はすぐに突っ込むことが多そうだね」
「もしかしたらその消えた人を探すためとなると……被害が大きくなりそうと判断したんだ」
「自分の為の目的という理由で出撃したいというのはどうかと思う」
「今度は大丈夫だから!!」
「その大丈夫は何度目だ?」
提督が語気を強めると 清霜は下に俯いて黙るようになった
「……とにかく、明日からはゆっくり休んで。南方海域の出撃メンバーから外しておくから」
「これで話は終わり。ごめんね、時間取っちゃって」
話が終わると同時に清霜は口を開かずに執務室から出た
すれ違った時雨はソファーに座り ゆっくりと息を整えた
「……清霜に悪いことしちゃったかな?」
「そんなことはないよ、本当のことを言ってくれただけでようやくスッキリしたよ」
「提督、今後の編成はどうしますか?」
「とりあえず清霜を抜いたメンバーで……」
翌日 掲示板には更新された南方海域メンバー一覧が貼り出されていた
そこには清霜の名前はなかった