鎮守府 食堂
突然のメンバー変更に艦娘たちの中では話題になっていた
「びっくりしたぜ。急に変更だなンて……」
「しかも清霜ちゃん外れてたっぽい」
「噂では無茶し過ぎだから駄目って言われたらしいよ」
江風、夕立、白露の3人がメンバー変更について語り合う中 時雨は考え事をしながら食事をとっていた
(これでよかったのかな……この先無事に終わればいいと思うけど……)
「時雨、どうしたの?」
「ううん、何でもないよ。早く食事を済ませよう、提督からなにか連絡があるかもしれないし」
村雨の問いかけに時雨は応え、食事を再び取り始めた
「時雨、少しいいか?」
やってきたのは陽炎型駆逐艦の磯風だった
彼女もまた 編成変更について疑問を持っていた
「どうしたの?磯風」
「ああ、清霜が外れたことでな。疑問に思っていた」
「何故南方海域に出撃したいと希望した戦艦清霜がこの時期になって外れたのか」
「ただの疲れじゃねーの?」
「中破はよくしてたけど、疲れとかはなかったっぽい」
「そうではないとすれば、別の理由があるはずだ。なにか知っているか?」
「……実は、ある人を探すために南方海域に出撃したいって言ったんだって」
「何か手がかりがあるんじゃないかって……それで張り切ってたらしく、無茶をするようになったから提督が……」
「引き止めて出撃させないようにしたってわけか……」
「なるほど……そうだったのか」
「でもこのことはあまり広めないほうがいいと思う。清霜も提督もみんなも困ることになるだろうし……」
「わかった、機密にしておこう。しかし、また同じようなことが起きてしまった時は全員に言うしかないがな」
険しい顔をしながら磯風は立ち去った
「磯風のやつ……随分と怖い顔してたな」
「いつもより怖かったっぽい」
「清霜……大丈夫かしら?」
「清霜も今は出撃できないはずだし、今は部屋にいるんじゃないかな?朝霜が様子見に行くっていってたし」
戦艦寮 清霜の部屋
そして話にも出た 編成から外れた清霜は自分の部屋に戻ると落ち込んだ様子で窓から外を眺めていた
(司令官に怒られちゃった……やっぱりそうなるよね……)
(このまま……出撃できなくなるのかな?せっかく戦艦になれたのに……)
(武蔵さん……なにか見つかると思ったのに……)
「おーい清霜!一緒に飯食おうぜー!」
トントンと扉を叩く朝霜の声が響いた
しかし、清霜からの返事はしばらく待っても声は返ってこなかった
「清霜のやつ、まだへこんでるのか……?」
「あんた、また来てるの?」
「おう霞、当たり前さ!困ったことがあったらアタイが力になってあげるって決めたからさ!」
「それで、成果は?」
「……見てのとおりだよ、呼びかけても返事の一声もしてこない」
がっくりと項垂れる朝霜を見て 霞は溜息をついた
「にしても、外されたって一体何したんだろうな?」
「監視役の忠告も聞かず、敵前線に突撃してよく中破とかしてたからじゃない?噂にもなってるわよ」
「でもそれだけで籠もるってどうかと思うぜ。おーい!清霜!」
「ちょっと、今は一人に――」
「あ……」
部屋の前で騒いでるのに気づい 清霜はドアを開けた
特に変わった様子もなく 至って普通な清霜の姿だった
「おー!清霜!大丈夫だったかー!?」
「わわっ……どうしたの?朝霜ちゃん……」
「アンタが部屋に籠もったから心配しに来たのよ」
「もしかして霞ちゃんも……?」
「わ、私はただ通りすがっただけったら!」
「ところでよ清霜、へこんでるならうまい飯でも一緒に食おうぜ!」
「あ、ごめん……今はそんな気分じゃないんだ」
「じゃあ部屋でアタイと霞で話をしよう!そうしたら腹も減るだろ!」
唐突な朝霜の提案に霞も反論することはできず、仕方なく清霜の部屋に入ることにした
鎮守府 戦艦寮 清霜の部屋
「あら、意外と広い部屋ね」
「筋トレ用具もあるな……持てんのか?」
「もちろんだよ!……アイオワさんからもらったダンベルは重くて持てないけど……」
部屋は筋トレ用具があちらこちらに転がっているが それほど汚いというわけでもなかった
「ほら、話聞きに来たんでしょ。早く始めるわよ」
「おっとそうだ。よし!じゃあ始めるか!」
数分後...
「やっぱり一人で突撃したことが原因なんだな」
「そのことで司令官に怒られて出撃を禁ずるって言われて……」
「まぁ妥当よね。しばらくは出撃なしってことだわ」
「でもよぉ、何で一人でそんなことしたんだ?」
そう問われると清霜はタンスへと向かい 引き出しから何かを取り出し持ち込んできた
「これって……手袋か?」
「グローブとでも言ったほうがいいわね。ところでこれは?」
「……これはね、憧れの人が私にくれた物なんだ」
「南方海域に出撃した後で、部屋で探してたら見つけて持ってきたんだ」
「あこがれの人って……」
「"武蔵"っていう人か?まだ探してるんだな」
「最後に一緒に出撃したのが南方海域でね、その翌日に居なくなっちゃったんだ」
「そこで何かあったのかもしれないって思って……南方海域に出撃したいってお願いしたんだ」
「だからといって、嘘までついたり、自分勝手に動くのは駄目に決まってるでしょ」
霞の一言でまた清霜は俯き、黙り込んでしまった
「しばらくは出撃無しみたいだし、アタイとトレーニングして待っとくか?」
「それに南方海域の作戦も順調みたいだし、そろそろ打ち切りになるかもしれないわよ」
「そ、そんなぁ……」
「それまではしばらくじっとしてることがいいかもね」
「……なぁ考えてみたんだけどさ」
「清霜が司令になったら出撃できるかもな!」
「は、はぁ?!何いってんのアンタ?!清霜が司令官になれるわけ無いでしょ!?」
「なったらの話だろー!司令になったら好きに編成とか組めそうだしな!全員戦艦とか!」
「ただの力任せじゃない……」
(私が司令官……かぁ……確かに朝霜ちゃんの言う通りだけど……)
(……もしかして、あそこなら……叶えてくれるかも……)
「ん?どーした清霜?深く考え込んで?」
「あ、ううん。何でもないよ。それよりもお腹空いちゃったからご飯食べたいな」
「んだよ!腹減ってるじゃねーかやっぱり!行こうぜ」
霞と朝霜に連れられ 清霜は食堂へと向かった
食事をとりながら談笑していたが 清霜はふと考えていた
"司令官になれたら"すぐに出撃再開ができるのではないかと
夜 ????
「またここだ、ということは……」
「やぁ、これで三度目だね」
清霜が振り返ると いつものように謎の人物が座って待っていた
もちろん例の扉も存在していた
清霜はその人物を見るや否や 即座に近寄り聞くことにした
「ねぇ、もしかして。"司令官"になれたりもできる?」
「いきなりだね……まぁなれるんじゃないかな?そこの扉を開けたらだけど」
「でも……後悔とかはしない?」
「……どういうこと?」
「君は戦艦になりたい、航空戦艦になりたい……そして次は司令官、もとい提督になりたいと願った」
「本当にそれでいいんだね?」
この言葉を聞いて清霜は戸惑ったが 少し間をおいてもう一度答えた
「……私、"司令官"になりたい。そうしたら出撃もまたできるようになるし、武蔵さんに関する手がかりも見つかるはず」
「だから……お願い!」
「迷いはなさそうだね……じゃあいいよ、その扉を出たら君は提督だ。頑張ってね」
「うん、またね」
別れの挨拶を告げ 清霜は扉をゆっくり開き ゆっくりと歩き始めた
「またね……か。次に会える時はどんな感じで来るんだろうなぁ」
その人物はふふふっ と笑いながら 歩く清霜を見送った