欲望の代償   作:NAKYU

14 / 21
14話 強さ

鎮守府 提督の私室

 

「……」

 

目覚めた清霜は自分の両手を見つめていた 今までの流れなら強くなってるはず

 

しかし 本当に強くなってるか まだ半信半疑だった

 

(どこかで試してみたいな……演習場でも行ってみようかな)

 

そう思って扉を開けた時 目の前に朝霜と時津風の姿があった

 

「おっす!清霜!」

 

「しれーおはよー」

 

「おはよう。今ちょっと忙しいからまた後でね」

 

「もー!いっつもそれ言ってるじゃん!」

 

「清霜、たまには構ってやりなよ。出撃ばっかりでお前も――」

 

「ごめんね!今ちょっと用事があるからまた今度ね!」

 

二人の前を通り過ぎ 足早に清霜は何処かへと向かった

 

鎮守府 演習場

 

「すみません、提督がこちらにいると聞いたのですが……」

 

「あ!古鷹さん!あちらです!」

 

「……これは」

 

古鷹が目を向けると そこには砕け散った的が散らばっていた

 

海上には清霜が立っており 自分は強くなったと確信し 握った拳を見つめていた

 

(これだ……!この力があれば……!)

 

(皆を守れるし……深層部の探索もこれでできるはず!)

 

「おいおい……何だこりゃ……」

 

「演習場が……めちゃくちゃだね……」

 

騒ぎに駆けつけた時雨と江風もただ眺めるしかなかった

 

「古鷹さん!これから出撃メンバーを集めて!準備ができ次第出撃するよ!」

 

「あ、はい!」

 

清霜は足早に演習場を後にした それ以外の艦娘は演習場の光景を近くで見ることにした

 

「……的がボロボロじゃね―か、どうしてこうなったンだ?」

 

「砲撃の威力も段違いでした……鹿島も思わず腰が砕けてしまって……」

 

「それに、移動速度も尋常ではなく、戦艦と思えない速度でした……」

 

「ねぇ鹿島さん、清霜の様子はどうだった?」

 

「えっと……体の状態はさっき言ったとおりですが、表情はとても真剣でした」

 

「あんなに激しく動いてる割に、休憩もなしで演習をしていました……」

 

「休憩もなしでって……すげぇな……なぁ姉貴」

 

「そうだけど……清霜のことだから心配だな」

 

南方海域 深層部

 

清霜率いる艦隊は深層部へと出撃をしていた

 

そこでも清霜は 演習と同じような力を発揮し 深海棲艦を撃破していった

 

「すごい……提督にあんな力があっただなんて……」

 

「うん……昨日までとは大違いだよ……」

 

「だが、私達もここで立ってるだけとはいかんぞ、提督を援護するんだ」

 

長門たちの援護のこともあり 大勢の深海棲艦を撃沈することに成功し、島の探索を行うことにした

 

「よーし!張り切って頑張ろー!」

 

(ようやく探索ができる……!ここで何としてでも手がかりを――)

 

 

「ねぇ、ちょっといい?」

 

清霜を引き止める声 主はリシュリューだった

 

「amilal,その腕の傷は大丈夫なの?」

 

「え?……あぁ大丈夫だよ、痛みも少ししかないし」

 

「少しって……!血が出てるよ!?しかも痛そうに見えるし……」

 

腕に複数の切り傷があり 血が流れていたが清霜は大丈夫だよと落ち着かせた

 

「でも血が流れ続けてたら大変なことになるわよ?」

 

「それなら……」

 

衣服の一部を切り裂き 清霜は出血を抑えるかのように傷口に布を巻き付けた

 

「これなら大丈夫!」

 

「そ、そうかなぁ……」

 

「提督が傷を負ったが、真っ先に深海棲艦を倒してくれたおかげで私達は無傷で済んだのだ」

 

「だが島の探索は私達だけで行うとしよう。提督は少し休んでもらいたい」

 

「同志、貴様はそこで待っていろ。無闇に動くと傷口が広がるからな」

 

長門を先頭に ガングート リシュリューが探索行い

 

残った二航戦の飛龍と蒼龍は清霜の護衛と艦載機での見張りを行うことにした

 

(これくらいの傷……痛みは大きくないのになぁ……)

 

 

島中

 

「ねぇ、長門。少し良いかしら?」

 

「どうした?リシュリュー」

 

「さっきのamiralの傷の件についてだけど……やっぱり気になるわ」

 

「……あの傷で平常心でいることか」

 

清霜の傷は腕から血を流していた

 

しかし平気な顔をして傷に気づかず 戦闘を行っていたということだ

 

「同志が痛くないというのなら、痛くはないだろうな」

 

「提督はそう言っていたが……明らかに傷の箇所が多すぎる。それを痛くないとは……」

 

「…………」

 

「今は提督の命令に従おう。探索を行うぞ」

 

しばらくたった後 長門達探索組は清霜達待機組と合流した

 

探索組の成果は錆びれた電探と古びた主砲だった

 

 

南方海域 深層部 島の砂浜

 

「提督よ、戻ったぞ」

 

「わぁあ!また主砲を見つけたんだね!」

 

「まったく……運ぶ身にもなって欲しいな」

 

「ガングートさんもありがとう!……けどどうやって鎮守府まで運ぶの?」

 

「運搬係の艦隊がそろそろ来るはずだ。ちょうど来たようだ」

 

遅れて来たのはネルソン率いる水上編成艦隊だった

 

中には明石と夕張 工廠組も含めたメンバーも入っている

 

「はーい!おまたせ!今度は電探と主砲かぁ!」

 

「これは……いま調査中の主砲と同じ主砲ですね……」

 

「いつもすまないな、ネルソン」

 

「これくらい容易いことだ、余の役目は戦果を全うすることだからな」

 

「それじゃあ後はよろしくね」

 

リシュリューが声をかけると 運搬組は準備に取り掛かった

 

大発動艇の上に 主砲と電探を載せ 護衛しながら海上を走り鎮守府へと向かった

 

鎮守府 執務室

 

「次は主砲と電探ですか……」

 

「共に戦艦が使うような代物だったな、しかし何故あの深層部に……」

 

「もしかすると、深海棲艦の物という可能性もあります」

 

「うむ、明石と夕張に頑張ってもらうしかないか」

 

 

「ねー、しれーは?」

 

「提督なら傷を負ったので入居施設で手当を受けている」

 

長門はこの発言をした後 深刻な顔をし もう一度口を開いた

 

「その提督なんだが――」

 

入渠 医務室

 

帰投した清霜は傷のこともあり 医務室へと向かった

 

本人は大丈夫と言っていたが、念には念を入れ治療を受けることを周りから勧められた

 

治療係の速吸に傷の手当をしてもらっていた

 

「すごい傷ですね……いつの間に出来たんですか?」

 

「うーん……全然気が付かなかった」

 

「気が付かなかったって……痛いとは思わなかったんですか?」

 

「おー!もしかして清霜、真の力に目覚めたのか?!」

 

「でも少しは痛みは感じるよ、それはないんじゃないかな……」

 

「提督さん、あまり無理はしないでくださいね!」

 

手当が終わると清霜は執務室へと戻った

 

そこにはまだ古鷹と長門が話を続けていた

 

「ただいま!古鷹さん!長門さん!」

 

「提督!腕の傷は大丈夫ですか?!」

 

「うん、なんとかね」

 

古鷹は安心してホッと一息ついた

 

「提督、今日は大変な一日でしたしゆっくり休んで下さい」

 

「執務はいいの?」

 

「はい、残りは古鷹が執務をしますので……」

 

「古鷹も言っているんだ、提督は自分の部屋でゆっくり休むといい」

 

長門に諭されて 清霜は私室に戻ることにした

 

清霜が執務室から出ていた後 古鷹と長門は顔を合わせた

 

「長門さん、もしその話が本当なら……」

 

「心配するな、いざとなれば私が盾となる。恐らく提督は明日も出撃するつもりだろう」

 

「よろしくお願いします」

 

鎮守府 食堂

 

「お!提督!活躍したンだってな!」

 

食堂で清霜を出迎えたのは江風だった

 

どうやら南方海域の出撃の報告が知れ渡ってるらしい

 

「時津風から聞いたよ、新たに主砲と電探を見つけたんだってね」

 

「うん!これでまた一歩前進したよ!」

 

 

「ふふっ さすが元主力of主力の末っ子ね」

 

「そういえば元は夕雲型の駆逐艦だったわね」

 

「そうね、立派になるなんて嬉しいわ」

 

「……秋雲、あんたもあんな風になりなさいよ」

 

「そんな殺生な!?」

 

陽炎と夕雲が話している中 その横をある人物が通り過ぎた

 

 

「司令、少しいいか?」

 

提督清霜のそばにやってきたのは陽炎型駆逐艦の磯風だった

 

彼女もまた 清霜の動向について不思議に思っていたのである

 

「司令が強くなった秘訣を知りたい」

 

「この短期間で急激に成長したのは一体何故かだ」

 

「え、えーっと……」

 

(夢の中の人にお願いを言ったらなったっていうのは流石に信じてもらえないだろうし……)

 

「え、演習で頑張ったから才能が開花した……とか?」

 

「なら!江風もなれるってことだな!」

 

「その前に遅刻をなくしたほうが良いっぽい」

 

「それは関係ねーだろ!」

 

 

「……そうか、わかった。磯風も深くは聞かないでおこう」

 

「強くなったからと言って、自分を見失うな」

 

磯風の発言に 清霜考える

 

(どういうことだろ……?私が強くなって……見失うな?)

 

鎮守府  提督の私室

 

(磯風ちゃんが言ってた言葉……どうも引っかかるなぁ)

 

(もしかして私の強さに嫉妬してる……?まさかね)

 

(明日も早いんだし、もう寝よーっと)

 

執務室

 

「……」

 

「まだ起きてたんだ、古鷹」

 

「あ……衣笠……ちょっと考え事をね……」

 

「もうこんな時間だし、早く寝なきゃだめだよ。加古はもう寝ちゃってるし」

 

「ふふっ、私もそろそろ寝ることにするよ」

 

「そっか、じゃあお休み」

 

 

「……」

 

---数時間前 執務室

 

清霜が手当から帰ってくる前 古鷹と長門は話し合っていた

 

「最近の提督は、あまりにも強すぎて私達が出る幕がない」

 

「いいじゃんいいじゃん!しれー最強じゃん!」

 

「……だが心配事があってな」

 

「それは?」

 

「提督……いや、清霜は戦艦になり、なおかつ航空戦艦、更には提督という地位に達し、急激に力も強くなった」

 

「この力が故、無謀なことをしてしまうのではないかと」

 

「またあの時みたいな事が起きてしまったら……」

 

前の事件を思い出した古鷹の表情が曇り始めた 更に長門は言う

 

「もう一つ気になることがあってな」

 

「提督は治療中だが、痛みを感じないと言うんだ」

 

「へ?どういうこと?」

 

首をかしげる時津風に 長門は答えた

 

「出撃中、深海棲艦と戦闘に入ったのだが、提督は砲弾を受け腕から出血をしたのだ」

 

「だが、一切怯むことがなく、痛みもない様子で戦闘を行っていた」

 

「えー!それって無敵じゃん!」

 

「無敵ではないな、負傷していることには変わらん」

 

「いつしか、傷に気づかず撃沈することもあり得るだろう」

 

撃沈という言葉に執務室は沈黙に包まれた

 

「……すまない、今日話したことは公にしないほうが良いな」

 

「そだね……暗い話は嫌いだよ」

 

「提督にも話さない方が良いかもしれませんね」

 

「そうだな」

---------

 

「……考えても仕方ないか、私も寝ようかな」

 

作戦計画書を元の位置に戻し 古鷹は就寝することにした

 

計画書の済には付せんで"支援艦隊の有無の確認"が貼られていた

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。