あれから数日が経ち、提督の指示により南方海域深層部の出撃を繰り返していた
繰り返し出撃する日々が続き 疲労も溜まるようになってきた
しかし 清霜だけは疲労を見せる素振りもなく 傷を受けても大丈夫と一点張りするようになった
更に前みたいな明るい性格も徐々に無くなり 艦娘たちも気味悪がるようになった
鎮守府 食堂
「江風、おつかれ」
「おー時雨の姉貴じゃん、おっつおつー」
「とは言っても出撃じゃなくて遠征だけどな」
「それも仕事だよ、座りなよ」
時雨に勧められ 江風は隣の席に座った
「……なぁ、提督が最近おかしいってほンとかよ?」
「噂は流れてるみたいだね、何でも疲れも痛みも感じないとか……」
「江風も提督と出撃すること少なくなってきたから分からねぇな。近くで見ればわかる気がするンだけど……」
「そのことだが、報告がある」
時雨と江風が話している中 磯風が二人の元へとやってきた
「磯風じゃん、どうした?」
「古鷹からの指示で、支援艦隊を出撃することが決定した」
「もちろん司令には内緒だ」
「お!じゃあ江風も連れてってくれよ!提督のどこが怪しいか見てやるよ!」
「いや、江風は入ってない。駆逐艦の枠では時雨と磯風の二人だ」
「だってさ、江風」
その報告を聞き 江風は納得しない顔で磯風を睨んだ
「そう睨まれても困る、決まったことだからな」
「でも何で磯風なんだよ……時雨の姉貴はわかるけど」
「直に古鷹にお願いしたのだ、私も怪しいと思っていたからな」
「ンじゃ頼んだぜ二人とも。江風さんはゆっくりと見させてもらうからよ」
鎮守府 間宮亭
「今日は珍しいね、霞ちゃんから誘ってくるだなんて」
「別に……珍しくもないわよ……」
この日は 出撃から帰ってきた清霜を 霞と朝霜の二人で出迎えた
霞の表情は複雑で 朝霜も少し気にかけてるようにも見えた
「二人ともどうしたの?そんなに難しい顔なんかして」
「い、いやー!な!いつも清霜が頑張ってるからアタイと霞で労ろうとしてな!霞!」
「……そうね」
「お、おい霞、もうちょっと嬉しそうな顔しろって……」
「でもありがとう。いただきまーす」
アイスを食べる清霜に 霞は質問をした
「……ねぇ、気づいているんでしょ?」
「自分の体のことで他の艦娘から引かれてるの、知ってるんでしょ?」
「か、霞!いきなり言うとこじゃないだろ!?」
いままで長く付き合いがあったこともあり 霞は清霜のことで不安で仕方なかった
「あんたも今まで気にしてたんでしょ?」
「そ、そりゃあ……そうだけどさ」
「なーんだ、そんなことか」
「そんなことって……何よ?!」
「別にそんな事気にしてないよ、私はただ作戦を遂行するだけ」
「誰になんて思われようが別に気にしてないし」
「……何バカなこと言ってんのよ!」
霞の質問に対し淡々と答える清霜 その態度に霞も我慢ができなかった
「うぉい……霞、落ち着けって……」
「出撃から帰ってきて皆が疲れてても疲れを感じないならまだしも、傷だらけで帰ってきて平気平気って言ってる光景何度も見てるのよ!」
「自分の体のこと……不気味とは思わないの?!」
「……なぁ清霜、霞の言うとおりだぜ」
「アタイもそうだし、夕雲型のみんなも不気味がってんだ。自分の体の事心配して少し休んだほうが――」
「そうやって、二人も私の邪魔をするの?」
霞 朝霜の提案に対して 清霜は冷たい視線で二人を見つめた
「あのね、これは司令官である私の指令でもあるし、鎮守府のためでもあるんだよ」
「後少しなんだから、我慢してくれないかな」
「そ、そんなこと言っても……あんたの体を心配して――」
「私は誰にも負けない力を手に入れた、だから作戦もうまく行ってるんだよ」
「それでも邪魔をするっていうのなら……こっちだって容赦はしないよ」
「……なぁ、清霜。やっぱりあの憧れの人のことか?」
「二人には関係ないことだよ」
「この作戦が終わったら全部話すよ。それじゃ、次の準備があるから私は戻るね」
清霜はそう言いながら立ち去った 二人はただその後姿を見つめるしかなかった
「あ、待てって清霜!霞!早く――」
「いいわよもう!好きにさせなさい!……あの娘は司令官なのよ」
「……わかったよ」
鎮守府 駆逐艦寮 夕雲型の部屋
「提督と出撃……ねぇ」
部屋に戻ってきた朝霜と部屋にいた長波が今後について話し合っていた
「清霜をなんとかして助けたいんだ、あのままじゃいつか大変なことになっちまう」
「なんとかしてアタイも出撃したいんだ」
「それは無理なんじゃないか?提督が決めたことは何かない限り編成は変わらない」
「それに、今は戦艦と空母をメインとした編成だから駆逐艦が入る隙はないと思うぞ」
「くっそー……どうすりゃいいんだ?」
「え、えと、えっと……そ、そのこと……なんだけど……」
ガシガシと頭をかきながら悩む朝霜に 同じ夕雲型の浜波は提案をした
それは 提督に内緒で支援艦隊を送り、作戦が完了するまで見つからずに監視を行い 危機になれば支援するという作戦だった
「それをどっから聞いたんだ!浜波!」
「えと、えっと……その……」
「多分時雨だろうな、あたしも噂で聞いたし」
「そうとなったら決まりだ!じゃあな!」
「あっおい!もう編成のメンバーは……行っちまったな」
「あの娘も、提督のことずっと心配してたから助けたいと思ってしまったのね」
「通るかどうかはわからないけど……今は待ちましょう」
夕雲の言葉で長波も納得した様子だった
朝霜はなんとかして支援艦隊のメンバーに入り清霜を少しでも助けたい その思いが強く出ていた
数日後……
「……」
「提督、そろそろ出撃の時間だ」
長門の呼びかけに清霜は立ち上がり 準備へと向かった
「よし、じゃあ皆行こっか」
数分後...
鎮守府 工廠
「……そろそろ時間ですね。皆さんおまたせしました」
支援艦隊の待ち合わせとして 工廠へと向かった古鷹を出迎えたのは他の編成メンバーの5人だった
「それでは行きましょうか」
「支援艦隊 抜錨です」