欲望の代償   作:NAKYU

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17話 後悔

南方海域から帰還した艦隊は 意識不明の朝霜を医務室へと運んだ

 

その中には意気消沈した清霜もいたが いつの間にかいなくなっており

 

気づけば私室に戻るなり 出てくることはなかった

 

この事態に鎮守府は急遽古鷹を提督代理とし執務をするようになった

 

作戦が始まろうとする前にこの出来事が起きて 鎮守府全体がバタバタと忙しくなってきた

 

そして 数日後――

 

鎮守府 駆逐艦寮 ラウンジ

 

「そろそろ作戦開始前かねぇ」

 

「そうみたいだね、江風は準備できてる?」

 

「ンーぼちぼち。時雨の姉貴は?」

 

「こっちも大丈夫。磯風と話し合いながら進めてるよ」

 

「うへぇ……磯風とかよ……」

 

次に始まる作戦について 駆逐艦の中でも話し合いが始まっていた

 

駆逐艦代表の時雨と磯風を中心に今後についての議論が行われており

 

提督清霜についても 夕雲から情報を得ていた

 

「それで 提督の様子は?」

 

「部屋に籠もりっきりだって」

 

「こンな時期に大変だよなぁ……。古鷹さんも出撃する予定なンだろ?」

 

 

「それについては後ほど古鷹から説明があるらしい」

 

二人が話し込んでる時 磯風がラウンジにやってきた

 

彼女も今回の件について不満を持っている一人でもある

 

「磯風じゃん。どうした?」

 

「先ほど廊下ですれ違ってな、これから本営から来た憲兵と話をするらしい」

 

「提督は出てこないし……古鷹さんがするんだね」

 

「そうだ。今日の夕方にでも集合をかけるらしい」

 

「オッケー。……ところでさ磯風、まだ怒ってるのか?」

 

「……過ぎたことに怒っても仕方ないだろう。今の戦力でどう乗り切るのか考えるべきだ」

 

「我々駆逐艦も必要となってくる。いつでも出れるように準備をしておくのだな」

 

「へーい」

 

鎮守府 執務室

 

「……ということで、私古鷹が代理として提督を務めることになりました」

 

「そんなことが……」

 

「大変だな、たくっ」

 

古鷹は本営から作戦発令を伝えに来た憲兵二人と話をし、一人の細身の憲兵ともう一人の大柄の憲兵は事情を聞いていた

 

「提督が引きこもるとなったら艦娘であるあんたが提督業をするって言うけどさ……」

 

「実際にできるもんなのか?」

 

「ええと……僕の記憶上だと、艦娘が指揮をしている鎮守府も数は少ないけどあったよ」

 

「ただ……出撃も兼ねるとなると相当な忙しさにはなるだろうね」

 

「それについては大丈夫です。交代制で執務をこなすようにします」

 

「おお、そうか。よかったぜ」

 

大柄の憲兵が安堵したものの 古鷹の表情は暗いままだった

 

「……そうでもなさそうだな。何かあったのか?」

 

「いえ……あの時からほとんどの艦娘が提督に対して不信感を抱いてしまって……」

 

「大変だね……」

 

「そういうときは提督代理の一声でまとめりゃいいだろ!」

 

「それが大変なんだって!……あまり無理はしないでね」

 

「ありがとうございます」

 

「うん、じゃあ今回の作戦なんだけど――」

 

こうして憲兵との会議が始まった

 

輸送作戦 撃墜作戦 様々な作戦についての話し合いが長時間にも続いた

 

終わってみれば夕方の時刻だった

 

「ふぅ……とりあえず終わった……」

 

(ちょっと様子でも見に行こうかな……)

 

鎮守府 医務室

 

「霞さん、来てたんですね」

 

「……古鷹さん」

 

医務室に入ると、横で座って寝たきりの朝霜を見ていた霞の姿があった

 

あの出撃作戦が終了してから 医務室に運ばれた朝霜を毎日のように来ていた

 

「本当なら……あの娘も来るべきなのよ……」

 

「あの出来事以降から部屋からは出てきてませんね」

 

「古鷹さんはそれでいいの?」

 

霞の質問に古鷹は表情を曇らせた

 

「……私も提督の部屋に何度か訪ねましたけど……なかなか返事も返ってこなくて……」

 

「提督も出撃で朝霜さんをこんなことにさせた責任があるんでしょう……」

 

「だからといって……!一度くらいは来ても良いじゃない……!」

 

「高速修復材を使っても目覚めないって……どういうことなのよ……」

 

「……明石さんや夕張さんも協力して、朝霜さんの治療に専念しています」

 

「まだ治療法はわかりませんが……今はそれに期待するしかありません。それでは失礼します」

 

古鷹は医務室から退出し 部屋には霞と朝霜の二人だけとなった

 

「……本当に、馬鹿ばっかりなんだから……」

 

霞は一人寂しく涙を流した

 

翌日 鎮守府 執務室

 

提督代理の古鷹から作戦の内容を各艦種代表の艦娘たちに報告をした

 

もちろんその中には提督清霜の姿もなく

 

一部の艦娘は誰一人提督の姿がないことを気にはしなかった

 

報告を終えた後 戦艦代表の榛名だけが執務室に残り 古鷹と話すこととなった

 

「……榛名さんも提督の様子を見に行ったんですね」

 

「はい……ドアをノックしても返事も返ってきませんでした」

 

「ただ……一つ気になることがありまして」

 

「一つ……ですか?」

 

「かすかに聞こえるのですが、何もいらない……何もいらない……と言ってるように聞こえるんです」

 

「何もいらない……?」

 

古鷹は最近の出来事で欲しいものはあったのか思い出そうとしたが、思い当たることはなかった

 

「何でしょう……提督が欲しい物というものは……」

 

「わかりません……また夕雲型のみなさんにも聞いてみますね」

 

「よろしくお願いします。それでは、榛名はこれで失礼します」

 

その時榛名とすれ違いに、時津風が執務室に入ってきた

 

「やっほー。榛名さんと何話してたの―?」

 

「作戦の話ですよ、時津風さん。そうだ、一つ聞いてもいいでしょうか?」

 

「なになにー?」

 

返事をしながら時津風は提督の椅子に座った

 

「提督は今何か欲しい物とか知っていますか?」

 

「んー……お菓子とか?」

 

「それは時津風さんが欲しいものですよね……」

 

???

 

榛名が言っていた清霜の独り言の要因は 夢の中で謎の黒い人物と出会う空間での出来事だった

 

「……」

 

あの出来事から清霜は毎晩のようにあの場所へと来ていた

 

「やぁ、また会ったね」

 

「……」

 

「まただんまりかぁ、教えてよ。今どんな状況なの?」

 

「今までだったらすんなりと話してくれたじゃない、どうして黙ったままなの?」

 

覗き込むように清霜の顔を見るが 虚ろな目をしたまま俯いたままだった

 

「ふぅ……いつまで経ってもこの様子じゃ、話は聞けそうにないね」

 

「でもここに来たってことは、何かしら欲しい物があるってことだよね?」

 

「それを答えるまでは……またここに来ることになるんだよ」

 

「じゃあね」

 

すぅっと黒い人物は消えていき 空間には清霜一人だけになった

 

鎮守府 提督の私室

 

「……!」

 

勢いよく起き上がるといつもの提督の私室のベッドの上だった

 

あの日以来 うなされ続け 夜中に何度も起きてしまうこともあり

 

また寝てしまうとあの空間にいる その繰り返しが毎日のように続いていた

 

「今は何もしたくないのに……私のせいで……朝霜ちゃんが……」

 

「こんなことなら……あんな力なんて欲しがるんじゃなかった……」

 

すすり泣く声が 部屋に響き渡った

 

 

その数日後 提督抜きで作戦が開始された

 

数々の作戦が行く手を阻んだものの 今いる艦娘全員が協力し

 

作戦を成功へと導いた

 

しかし 最終作戦と突入というところで 深海棲艦の姫級クラスが大勢襲撃してきたと報告があり

 

鎮守府は更に過酷な状況に迫られようとしていた

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