最終作戦開始と同時に 大勢の深海棲艦が鎮守府の近海へと突如襲撃してきた
主力メンバーと防衛メンバーと別れており 戦力も分断されていた
襲撃してきた深海棲艦の数も多く 防衛メンバーも必死に抵抗してきたがほぼ限界にも近づいてきた
そこで古鷹は 主力メンバーと防衛メンバーの代表者を集め 会議を開くことにした
鎮守府 執務室
「こちら防衛メンバーの長門、まだ鎮守府に被害は出ていないが……」
「敵の戦力が多すぎる、突破されるのも時間の問題だ」
鎮守府に押し寄せてきた深海棲艦もかなりの数かつ強敵なるものもいた
苦戦する日々も続き 防衛メンバーも疲労が蓄積、修復が必要な艦娘も増えていった
「一度主力メンバーも防衛に回すことはどうでしょうか?」
「しかし、そうなると作戦の方に支障がでるな……」
「できるだけ、戦力は維持して鎮守府にいる人達でなんとか防ぐしかありませんね」
「できれば……いえ、メンバーの呼び戻しはまた後日行いますね」
作戦に出撃している一部のメンバーを呼び戻すことにして解散となった
古鷹は一度ためらったが、提督がいれば……なんてことも考えていた
それはもちろん全艦娘も思っていたことだ
不思議な力を持った提督さえいれば……と考えていた
鎮守府 廊下
「……また来ちゃったか」
「提督、起きてますか?」
古鷹はもう一度提督の部屋の前に訪れ 呼びかけた
しかしいつものように返答はかえっこなかった
「……やっぱりだめか」
「ン?古鷹さんじゃんか」
「司令に何か用か?」
古鷹の前に駆逐艦の江風と磯風が現れた
この二人も 清霜の様子を見に来たらしい
「お二人も提督の様子を見に来たのですか?」
「ニシシ、そうっす。でも江風だけじゃなくて磯風にも協力してもらったんだ」
「この突撃しかない人を抑えるには必要だからな」
「な!?それってどういう意味だよ!?何かしら知恵を考えて欲しいからお願いしたンだよ!」
「ふふっありがとうございます。けど……やっぱりいつものように返事は返ってこなくて……」
悩んでいる古鷹を見て 江風は自信ありげにこう答えた
「その心配はねえっす!実はな、朝霜のやつが回復傾向に向かってるって明石さんから聞いたんだ」
「そうなんですね!良かった……」
「けど修復剤使ってもすぐに治らなかったんだよなぁ……まさかあいつ!?艦娘じゃないとか?!」
「そんな訳あるか阿呆」
その時だった
ガタン
提督の私室から物音が聞こえてきた
「……なンだ今の物音」
「司令の部屋から聞こえてきたな」
「おーい提督!起きててっかー!?」
江風がドンドンと扉を叩くと その数秒後 扉が静かに開いた
「あ……提督!」
姿を表した清霜だったが いつもの明るさもなく 目の下にはクマができていた
「おいどうした提督?!ちゃんと寝てっか?」
「司令、食事はちゃんととってるか?夕雲型がいつも持ってきてくれてるのだが」
「……大丈夫」
声にも元気がなく まるでうつ病にでもなった様子だった
「提督……体は大丈夫ですか?」
「大丈夫って言ってる……心配しないでよ」
「そうだ清霜!一つ良い知らせがあるぜ!朝霜が回復してそうなんだってよ!」
「……そう。良かったね」
清霜は嬉しさや安堵の表情もせず ただ虚ろな目で江風を見つめていた
「……お、おいどうしたよ清霜。朝霜がもしかしたら目覚めるかもしれないンだぜ?」
「どうでもいいよ……私のことなんて放っておいてよ」
「そんな言い方ねぇだろ!?」
「私のせいで朝霜ちゃんがあんな事になったんだよ、今更喜ぶなんてできないよ」
「そもそも私が出撃しなかったら良かったんだよ。そうすれば良かったんだよ」
「司令……なぜそんな事を言う?」
清霜の発言に不信感を表す磯風と 何がなんだかわからなく 慌てる江風だった
「私が戦艦になりたい、司令官になりたい。こんなわがままな願いなんてしなきゃよかったんだよ」
「そうすればあんな場所にも来るはずなかったし、誰も苦しまないこともなかった」
「その代償が今来たんだよ」
「ね、願い……?代償?なンだよそれ?どういうことだ?」
不思議がる江風をよそに 清霜は淡々と話し始めた
「もういいでしょ?こんな事になってしまったから夕雲型や鎮守府のみんなと顔も合わせれないよ」
「いっそのこと、私なんていなければよかったんだよ」
「……司令、その言葉は聞き捨てならんぞ」
磯風が詰め寄ろうとしたとき バシッという音が鳴り響いた
その音とは古鷹が清霜にビンタをした音で 頬は赤くなっていた
「……いい加減にしてください!朝霜さんが回復と知らせに江風さんがわざわざ来てくれたのに何てこと言うんですか!?」
「別にいいでしょ。司令官なんだし……」
「提督だからって……私はそんなこと許さないです!」
「古鷹さん……落ち着こうぜ」
「……いなければいいと、簡単に言わないでください。失礼しました」
古鷹は足早に去っていく姿を見た磯風は清霜に睨んだ
「たとえ司令、航空戦艦であっても、元は夕雲型の一員だ」
「仲間の安否などどうでもいいという発言は、流石にどうかと思うぞ」
「……何故戦艦になったのか、自分でももう一度考えて見つめ直せ」
「あ、おい磯風!……提督、あいつや古鷹さんの言うとおりだぜ」
「たまには朝霜の様子でも見に来いよな……」
「私にその資格なんてないよ……」
「……そうかよ。じゃあ江風も帰るぜ」
最後の一人 江風も清霜の前から去ると また部屋に戻った
最後に言った磯風の言葉が 心に引っかかるようになった
(どうして戦艦になったのか……)
(どうしてだろうね、こっちが教えてほしいよ)
また清霜はベッドに横たわり 眠りについた
数日後...
未だに鎮守府の防衛が続く中 一つの吉報が流れ込んだ
「え?敵主力艦隊が深海棲艦を生み出してる……?」
「はい、偵察隊が敵艦隊の様子をと艦載機を飛ばしたところ、主力艦隊旗艦から新たに現れると榛名は聞きました」
「となると……敵旗艦を潰せば鎮守府に侵略してくる艦隊も無くなるということか……」
この吉報を聞き 防衛メンバーである長門は提案をした
「もう一度、主力メンバーを編成し、榛名たちは敵旗艦を潰してくれ」
「ですが、今でも大変なのでは……」
「大丈夫だ。このビッグセブンに任せておけ。まだまだいけるさ」
長門の頼りになる発言に 古鷹と榛名も提案に賭けてみることにした
「……あの、提督は――」
「そのことならもういいです。今は……」
古鷹の問に 提督の様子が気になる榛名は入り込まないようにした
その時だった 勢いよく執務室の扉が開き そこには時雨の姿があった
「どうかしましたか?時雨さん」
「古鷹さん!朝霜が……朝霜が!」
鎮守府 医務室
「朝霜さん!大丈夫ですか?!」
古鷹が駆けつけると そこには目を覚ました朝霜の姿があった
ベッドの周りには 夕雲型の姉妹と江風の姿があった
「良かったわ……ほんとに……」
「おい朝霜!長波様心配したんだぜ!」
「このまま目を覚まさないと思いました……」
沖波の言葉に朝霜は瞬時に反応した
「んだと沖波!アタイがずっと寝続けることなんてありゃしないさ!」
「……いや、もう寝るしかないのか」
「朝霜……どういうことだい?」
「おいおい、お前まで提督の様に引きこもるってか!?江風許さねぇぞ!寝た分しっかりと働いてもらうぜ!」
「だからそれが無理なんだよ!」
朝霜が怒鳴ったので 何かを察した古鷹は恐る恐る聞くことにした
「朝霜さん、もしかして……」
「……何かさ、足の感覚がないんだよな」
この発言に夕雲型 時雨と江風は何も言い出せなかった
しばらくして 藤波がようやく口を開いた
「で、でもそれって修復剤で治しちゃえば――」
「それも無理なんだ、何度も明石さんにやってもらったよ」
「けど……だめだったよ。アタイはここでおしまいだ」
一つの吉報が入り込んだかと思えば また別の凶報が入り込んでしまった
このことを提督が知ったら……古鷹は更に悩むようになり
医務室にいるメンバーや明石にも 秘密にするようにとお願いした
(これで知ることはなさそうだけど……)
次なる不安要素が また生まれてしまった