欲望の代償   作:NAKYU

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2話 見習い戦艦清霜

演習場

 

「どうして対人演習じゃないのよ!?」

 

「いやだって、清霜は戦艦になったばかりだし、実力も未知数だから先に砲撃演習を……」

 

問い詰めるビスマルクに それに答える提督 そして側では考え込んでいる清霜の姿があった

 

「どうかしましたか?清霜さん?」

 

「あっ、ううん 何でもないよ。鹿島さん」

 

(司令官も知らないだなんて……けど今は演習をしっかりこなさなくちゃ)

 

数分後...

 

「あ、あれ……?こんなはずじゃ……」

 

戦艦として初めての砲撃演習は上手くいかないものだった

 

小さな体には合わない砲塔 その影響もあって的にも上手く当たらず 不十分な結果に終わった

 

「やっぱり小さい体にあの砲塔は無理があるかな……」

 

「ね、ねぇ!清霜?まだ本調子じゃないのよね……?そうでしょ?」

 

「どうしてビスマルクさんが心配しているんですか?」

 

「どうしてって!清霜は私のライバルだからよ!」

 

(……そういえばビスマルクさんって、武蔵さんとよく張りあっていたんだっけ……)

 

(……あれ?)

 

更に数分後...

 

「うわーん!やっぱり無理ですってー!」

 

対空演習では 不安を持ちながら練習相手役に立候補したものの

 

三式弾擬きの餌食にあった ガンビアベイの姿だった

 

もちろん砲撃演習同様 成功とは言えない出来だった

 

「うーん、対空演習もさっぱりかぁ」

 

「提督、これでは清霜さんの出撃は難しいと思います」

 

「出撃できるまで、ちょっと演習漬けになりそうだね」

 

「やっぱり簡単に上手くいかないかぁ……」

 

「まぁまぁ、清霜には教育係として榛名と長門に指導をお願いしておくから」

 

「その二人なら、きっとすぐに出撃できるようになるようにしてくれるよ」

 

「う、うん……」

 

「待ってるわよ清霜!次に会う時は私と競い合える立場でいることね!」

 

そう言いながらビスマルクは演習場から去り 提督達も去った

 

演習場には清霜一人だけになり 考え事を始めた

 

(ビスマルクさんは私の事をライバルと見てたんだよね?これって前までだと武蔵さんに対してだった……)

 

(つまり……私が武蔵さんの代わりに戦艦になったってこと?だとしたら――――)

 

「清霜さん、お待たせしました」

 

「待たせたな、清霜」

 

清霜を呼ぶ声の主は金剛型三番艦榛名、そして長門型一番艦の長門だった

 

呼ばれた清霜はすぐに振り返り笑顔を見せながら挨拶をした

 

「こんにちわ!長門さん、榛名さん!」

 

「提督から聞きました、出撃できるようになるまで榛名たちが協力します」

 

「この長門の訓練は厳しいぞ?いいな?」

 

「は、はい!」ビシッ

 

「そんなに固くならなくても良い、余計な緊張はミスを生みやすい」

 

「それでは、始めましょうか。まずは……」

 

 

翌日 駆逐艦寮 夕雲型の部屋

 

「た、ただいま……」

 

初演習から翌日、長時間二人の戦艦から砲撃、艦隊行動、座学、体力トレーニングなど丸一日指導を受けた

 

戦艦になったばかりの清霜は知識、体力等もまだ未熟なためかなりの精神と体力を使うことになり、疲労困憊だった

 

「おー今日もお疲れー。もうすぐ飯だぜー」

 

「今日はもう寝る……」

 

ふらふらとしながら自分の寝床にたどり着いた瞬間すぐ眠りについた

 

その時間 わずか数秒だった

 

「清ちん、もう寝ちゃった」

 

「流石に丸一日使う特訓が続けばねー」

 

「まだまだひよっこってことか!清霜~」

 

「こら、朝霜。邪魔をしない。そろそろ夕飯の時間よ」

 

夕雲型姉妹は清霜を置いて一斉に食堂へ向かった

 

一方の清霜は深い眠りについており 起きないであろうと確信し そっとして置くことにした

 

「……」

 

 

――――

 

――――霜

 

「う、うーん……誰?」

 

(でもこの声って……)

 

――――清霜

 

「……!」

 

 

 

「武蔵さん!!」ガバッ

 

「うぉわ!?びっくりしたぞ……」

 

「あ、あれ?」

 

清霜が起き上がると 目の前には長波の姿があった

 

周りを見渡してみると くつろいでいる夕雲型姉妹の姿があり 武蔵の姿はなかった

 

「……夢か」

 

「何だ?"武蔵"って言う人に会ったのか?」

 

「声だけだけど……」

 

「声だけかよ……。そんなことよりほら、飯持ってきてやったぜ」

 

「あ、ありがとう。やっぱり……武蔵さんの事知らない?」

 

「ああ、どんな人なのかも知らないぜ」

 

(武蔵さん……本当に消えちゃったのかな?)

 

(……ううん、きっとどこかにいるはず。それまでは私がしっかりと武蔵さんの代わりにならなくちゃ!)

 

 

数日後

 

 

「はっ!……おっとっと」

 

「最初の頃より、安定はしてきましたね」

 

「まだまだ不安がある。だが、成長が早い。そう遠くはないだろう」

 

あれからまた数日が経ち 動きが少し安定してくるようになった

 

出撃できるレベルに達していないが 前と見比べたら見違えるほどの差だった 

 

「長門さん!この調子なら出撃できるかな?!」

 

「ああ、もうじきできるだろうな」

 

「よーし!まだまだ頑張る!」

 

「その前に休憩に入りましょう、午後は座学です」

 

「うぅ……座学かぁ……」

 

「清霜さんは理解も良くなってきましたよ。また榛名と頑張りましょう」

 

天気も良いということで 広い広場へ移動し そこで昼食をとることにした

 

憧れの人ではないが 戦艦と昼食をとることは清霜にとっての一つの楽しみだった

 

 

広場

 

「清霜さんはどうして戦艦になりたいと願っていたんですか?」

 

「それはむさ……憧れの人がいたからなんだ」

 

「憧れ……か」

 

「その人はね、とっても強くて頼りになっていつも鍛錬をしている人なんだ!」

 

「ほう……私より強いのか?」

 

「え?えっと……どうだろう……?」

 

「あ!でも、長門さんや榛名さんも頼りになるよ!二人とも強いし、やさしいし!」

 

「そんな……榛名はお姉さまたちや霧島に比べてみればまだまだです」

 

「そうだな。この鎮守府には私達より優れている戦艦も多い、私もまだまだ鍛錬が必要だ」

 

「怖い所もあるけど……優しくしてくれるところもあるんだ」

 

「ふふっ、一度会ってみたいですね」

 

「どんな戦艦だろうな」

 

「……あのね、その人って大和型の二番艦だったんだ」

 

「何を言っている?大和型は大和と清霜だけだぞ?」

 

「大和さん、今も部屋で一人でいることが多いですね」

 

二人の会話を聞いて清霜は寂しげな顔をした

 

"戦艦武蔵"は本当に消えてしまったのか 二度と会えないのだろうか

 

そんな思いが 彼女の心の中で生まれた

 

「……清霜さん?」

 

「あ、うん!大丈夫だよ!大丈夫……」

 

「どうした?体調がすぐれないのなら今日はもう休んだらどうだ?」

 

「平気平気!さ、次は座学でしょ?がんばるぞー!」

 

しかし今は戦艦清霜として生きようとして 強くなり みんなを護る

 

武蔵に会うまでは立派な戦艦になる そう決意した清霜だった

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