欲望の代償   作:NAKYU

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21章 待ってたよ

「先ほど情報が入ってきました。主力艦隊は間もなく戦闘開始みたいです」

 

「ン。そっか」

 

「退屈そうですね」

 

 

「当たり前だろ。出撃予定がなくなったンだし」

 

しぶしぶと座っている江風の隣に初霜が座り込んだ

 

朝霜は医務室へと送られた後 霞から説教を受けることになった

 

これは長くかかるなと思った二人はそそくさと部屋から出ることにし、港で待つことにした

 

「霞もそんなに怒らなくてもいいのにな。ただ部屋から出ただけだし」

 

「歩けないほどの重症ですし、怒りますよ...」

 

「にしても暇だなー。こっそり出撃してもばれないかな?」

 

「駄目ですよ。今は待機しておきましょう」

 

言い返された江風はムスッとした表情をしながら寝ころび空を見上げた

 

曇り空がどんどんと近づいており 外は少しずつ暗くなってきそうだ

 

「ンー…。雨降ってきそうだな。鎮守府の中に戻るか」

 

そう言って立ち上がって戻ろうとした瞬間 ゴツンと誰かの頭とぶつかった音がした

 

頭を押さえて痛がる江風が見たのは 同じくぶつけて痛がってる時津風だった

 

「いって…。ンだよ時津風!ちゃんと前向けよ!」

 

「そっちが前見てなかったんでしょー!」

 

服についた汚れを払い 頭を押さえながら時津風は立ち上がった

 

「時津風さん、いったいどうしたんですか?」

 

「えっとね、しれぇが出撃しに行くんだって!」

 

「はいはいそうですかー。出撃ねー。ン?」

 

「おい!今提督が出撃しに行くってどういうことだよ!」

 

必死に揺らしながら問い詰める江風だったが あまりにも強い力なため答えれなかった

 

時津風は必死に手を振りほどき 息を整え ようやく答えれる状況まで戻った

 

彼女が言うには 提督の部屋に忍び込ももうとしようと来た時にちょうど廊下で出会ったという 

 

嬉しさを爆発し 話しかけようと近づいた瞬間 今から出撃すると言い 時間がないから足早に向かったという

 

そしてすれ違う瞬間に時津風が聞いた言葉は

 

 

"ごめんね 今までありがとう"

 

何のことかわからず考え込んでしまい 気が付くとすでに提督の姿はなかったという

 

「今までありがとうって…どういうことだ?」

 

「時津風にもわかんないよ」

 

「もしかして…今までのことを引きずって無茶をするんじゃ…」

 

「ンな馬鹿な事させられっか!」

 

「あ!どこいくのさー!」

 

鎮守府 医務室

 

「あ!江風!清霜が…清霜がぁ!」

 

「落ち着け朝霜。霞、提督はここにきてたのか?」

 

「あんたたちが出て行ってから、その後に来たわね」

 

「ただ…私たちに謝って、今までありがとうと言って出ていったわ」

 

「クッソ!もういねぇのかよ!」

 

「な、なぁ!どういうことだよ!アタイにわかるように説明してくれよ!」

 

江風はここにくるまでのことを順に話した

 

提督が出撃すること 謝罪の意味

 

話を終えると医務室の二人は動揺を表した

 

「出撃って…。もしかして一人でか?!」

 

「恐らくそうでしょう……。何か策でもあるんでしょうか?」

 

「ンなこと直接行ってみて聞けばいいだろ!」

 

「江風!あんたもしかして…」

 

この言葉に江風は静かに頷き 覚悟を決めた

 

「おう!提督のところへ行く!海域の場所も把握済みだ!」

 

「江風さんも一人でですか?!無茶があります!」

 

「大丈夫だって、ガングートさんとかも誘ってみるし、来てくれるだろ」

 

「それにこいつも連れていくしな」

 

「えー!?なんでさ!」

 

襟を掴まれた時津風はじたばたと暴れ始め ギャーギャーとわめき始めた

 

「うるせぇ!駆逐艦の中でも連度高い方だろお前!」

 

「それに、提督に話したいンだろ?ならちょうどいいじゃねーか」

 

時津風は顔をぷくーっと膨らせ 渋々と承諾した

 

「それと……霞、初霜。お前らは朝霜を見張っておいてくれ」

 

「一人にしたら出撃とかしそうだしな」

 

「あ、あたいだって留守番ぐらいはできるさ!」

 

ニシシと江風は笑い つられて朝霜も笑った後 

 

「……清霜の事、頼んだよ。それでさ……必ず帰って来いよな!」

 

「おう、もちろん提督も一緒にな!じゃあ行ってくるぜ」

 

勢いよく走り出た江風とバイバーイと手を振りながら時津風は出撃へと向かった

 

「…あんたにしては意外だったわね」

 

「何がだよ」

 

「いや…あんたなら無理やりにでもついていきそうだし…」

 

「この体で出撃して、清霜に見せたら悲しみそうだし足引っ張りそうだしな」

 

「だから江風たちに任せたんだよ。きっと一緒に帰ってきてくれるさ」

 

―――海域

 

「…あと少しかな」

 

深海海域では一人清霜が静かに進んでいた

 

「合流したときってどうやって言えばいいんだろ…」

 

「素直に謝れば許してくれるかな…そういうわけにはいかないか…」

 

悩んでる間に 深海棲艦がぞろぞろとやってきて 清霜の周りを囲んだ

 

数は多く とても一人では手に負えないぐらいの数だった

 

だがそれは普通の艦娘としてという話であり 今の清霜はなぜか自身に満ち溢れていた

 

「ごめんね。私、負ける気がしないんだ」

 

そういうと

 

 

――その後

 

「うわっ!ンだよ死体だらけじゃンか!」

 

江風率いる提督援護艦隊が到着したころには無残な姿になった深海棲艦が多数浮かんでいた

 

それぞれ周りを探索を始めたが 残骸だけが残っており 清霜の姿は見当たらなかった

 

「提督いなかったね」

 

「だが、ここに来たのはわかったな」

 

「じゃあ、しれーはもっと先にいるってこと?」

 

時津風が指を刺した先にはさらに暗くなっており 不気味なようにも見えた

 

「だろうな。早く古鷹さんと提督と合流して鎮守府を守ってる長門さん達を助けねーとな」

 

「というわけで雲龍さん。もう一度艦載機飛ばして提督探してくれません?」

 

「いいけど…。無事に帰ってこれるかしら」

 

 

―――深海 ???

 

霧に覆われている海上に一人清霜は立っていた

 

そこは不気味で肌でも感じ取れるひんやりとした冷気が漂っており 目の前には黒い影の人の形をしている"何か"がいた

 

「あれが…そうなのかな?」

 

 

―――数時間前 夢の中

 

「"……元に戻してほしい?"」

 

「うん、私を元の夕雲型駆逐艦に戻してほしいんだ」

 

「今までのことなかったことにしてほしいんだ」

 

「"次は何を望むのかと思ったら、無かったことにしてほしい…か"」

 

「"君も変わってるね、でも今までの望みのことを考えたらそれなりの代償は覚悟しないといけないよ?"」

 

「もちろんだよ。だからね、今回の代償は…」

 

代償の内容を聞いた黒い影はポカーンとしたが すぐに受け入れてくれた

 

「"……わかったよ。でもその前に君に会いたくなってきたよ"」

 

「会いたいって…あなたはここの人じゃないの?」

 

「"ううん。君も薄々感じ始めてるかもしれないけど、前に何処かの島で会ったことがあると思うんだ"」

 

「何処かの島…?あ!もしかして…」

 

「私と武蔵さんが一緒に出撃したときにあった…」

 

「"そう、そこで待ってるよ。じゃあね、いつでも待ってるから"」

 

 

 

―――深海 ???

 

「"やぁ、ずっと待ってたよ"」

 

霧から出てきたのは黒い人影のようなものであり 姿が徐々に鮮明になってきた

 

その姿は今の清霜と同じ姿をした艦娘だった

 

「現実で会うのは初めてだね。まさか深海棲艦を操ってただなんて…」

 

「"びっくりした?これで君とおそろいだね"」

 

「それに…ここ、見覚えがある気がする…」

 

「"そりゃあそうでしょ、私の後ろにある島、見たことない?"」

 

「島…?あ!あれって!」

 

黒い人影の後ろにある島は かつて武蔵と一緒に出撃したときに訪れたことのある島だった

 

 

記憶をさかのぼってみるとそこで清霜はほこらを見つけ 戦艦になりたい という願いを込めて祈って帰還していた

 

「じゃあ…私の願いをかなえるために…?だとすると君はほこらの神さま?」

 

 

無言で清霜の周りをスイスイと海上を走る 表情は不気味な笑みを浮かべいた

 

「"そんなこと聞いてる場合じゃないよね、他のみんなが危ないんじゃないかな?"」

 

「…それもそうだね。君を倒して、私の最後の願いをかなえて貰うよ」

 

「"ふふっ。やっぱそうでなくっちゃね"」

 

「そして…みんなを助ける!」

 

意を決してぶつかり合う二人 清霜は叶えた力を頼りに全力で挑んだ

 

 

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