資料室
朝 清霜が向かったのは名鑑がおいてある資料室だった
名鑑には武蔵の名前がなく 大和型には大和と清霜しか掲載されていなかった
(やっぱり武蔵さんの存在が消えちゃったってことかな……)
(そういえば、夢の中で初めてあの人と会ってその翌日に武蔵さんがいなくなったんだよね……)
(もしかして、私が戦艦になったから――)
(……そんなことない!きっと武蔵さんはどこかに行ってみんな知らないふりしてるだけだよきっと!)
「……っとそろそろ演習の時間、行かなくちゃ!」
演習場
「はっ!てぇー!」
「どうかな?清霜の様子は」
「はい、砲撃の命中率も安定はしてきました」
「後は実戦でどう対応できるかだ」
数日経った清霜は見違えるほどに成長を遂げた 砲撃の安定 艦隊行動 標的移動の予測 それぞれが上達していた
「やっぱり二人に頼んでよかったよ」
「そんな、榛名達はただ教えただけですよ」
「ああ、清霜の努力の賜物だな」
「司令官!どう?戦艦清霜の実力は?」
「……まぁ慢心は禁物って言うし、対人演習でもしてみる?」
「待ってたわよ清霜!ようやく私の出番――」
「とりあえず駆逐艦4人と演習してもらおうか」
「ちょっと!このビスマルクの出番はないの?!」
「まずは小手調べだよ、じゃあ呼んで来るね」
戦艦清霜にとっては初めての対人演習の事もあり
緊張と不安が同時に湧き上がって来た
「うう……大丈夫かな……?」
「大丈夫だ、お前ならきっとやれる」
長門が清霜の肩に手を置いた瞬間、清霜も自信をつけるように問いかけた
「……うん、大丈夫。いつも通りやれば……」
数分後....
「それじゃ、対人演習始めようか。メンバーはこうなるよ」
清霜 VS 江風
夕立
天霧
松風
「こっちは一人で相手は4人かぁ」
「まずは駆逐艦でお試しってことだね」
「清霜!こっちは容赦しねぇからな!」
「夕立!手を抜かないっぽい!」
「さーて、戦艦になったあんたの実力見せてもらおうか!」
「それで旗艦江風、作戦を聞こうか」
「決まってるだろ!"全員突撃"だ!」
「頭が痛くなってきたよ……」
駆逐艦の編成は旗艦江風と張り切る夕立と準備運動をしている天霧、そして頭を抱え悩む松風だった
この駆逐艦4人は 鎮守府の中でも高練度であり 数々の作戦をこなしてきた優秀な駆逐艦であった
最も他にもたくさんいるが 希望もあってこの4人が選ばれた
「ルールはいつも通りの対人演習、旗が上がれば離脱」
「制限時間以内に駆逐艦側は全滅、清霜は旗が4つ上がれば負け、時間切れなら旗の数で判定するよ」
(頑張らなきゃ……戦艦として……!)
「それじゃ準備ができ次第、配置について」
数分後……
(対人演習かぁ……やっぱり緊張する……)
「みんな配置についた?じゃあ……始めっ!」
「よっしゃ行くぜ!」
「あ!ちょっと待って江風!」
開始早々 旗艦江風は清霜に真っ向勝負を仕掛けた その後を夕立が追いかける形になった
「あっさりと勝負しにいったね、あの二人……」
「それで、あたしたちはどうする?」
「二手に分かれて挟撃しよう。戦艦清霜があの二人に気を取られてる今がチャンスだ」
「良いよ!じゃあ行くか!」
天霧と松風は二手に分かれて行動を開始した 清霜は真っ向勝負を仕掛けてきた江風たち相手に戸惑っていた
「わわっ!近づいてきた……!ってぇー!」
砲撃を開始したものの 標的が定まらず 別の位置に放った
「おいおい!そンな砲撃じゃ江風たちは倒せないぜ!」
「夕立!突撃するっぽい!」
「一気にこっちに来た!?ど、どうすれば……」
「清霜!まずは落ち着け!一人一人確実に当てていくのだ!」
「な、長門さん……」
(ま、まずは落ち着いて……状況を把握しなきゃ)
(目の前にいるのは夕立ちゃんと江風ちゃんの二人、あとの二人はどこかに移動してるのかな?)
(長門さんの言う通り……まず目の前の敵から!)
「……よし!ってぇー!」
「う、うお!危ねぇ!」
「よ、避けた?!駆逐艦だからかなぁ……なら副砲で!ってぇー!」
「次は至近弾かよ!っくっそぉ!」
「あと少しで近づけるのに……」
(止まったところがチャンス……!今だ!)
「そこ!ってー!」
清霜の砲撃は旗艦江風と夕立の二人に命中し、旗が上がった
「はぁ!?う、嘘だろ?!」
「ぽいー……」
「二人撃破!!残りは……」
「遅いよ!貰った!」
「避けきれるかい?」
「う、嘘?挟撃?!」
両サイドから松風と天霧の魚雷が放たれ そのまま清霜に命中した
「当たったっぽい!」
「ど、どうなんだ?」
次の瞬間 左右の砲塔が両サイドの二人の方に向き 主砲が放たれた
「うぇ?!ま、まじかよ!」
「体は小さいとはいえ戦艦か!退くしかないみたいだね!」
(魚雷を食らっちゃったけどまだ旗は1本しか上がってない……砲塔が守ってくれたのかな?)
(なにはともあれ同じようにまずは一人ずつ!)
「戦艦清霜の力、見せてあげるんだから!」
演習終了後……
「結果としては……清霜の勝利だね」
最後までもつれ合ったが 最終的には天霧は被弾し 旗が上がった本数は清霜は2本 駆逐艦組は3本
判定で清霜が勝利した
「よ、良かったぁ」
「おい!何で江風の言うとおりにしないンだよ!勝手に作戦変えンなよ!」
「君みたいな猪突猛進の作戦が簡単に通じると思うほうがおかしいよ。真っ先にやられる旗艦なんて酷いもんだよ」
「はぁ?!誰が猪だよ!」
対人演習を終えた後では、江風と松風による口喧嘩が始まっていた
もっともこれはよくあることであり 駆逐艦達からも"またか"と思われてるほどである
それをそばに夕立と天霧は座り込んでいた
「清霜ちゃん強いっぽいー……」
「小さくっても戦艦は戦艦か、あたし達の攻撃にもびくともしないね」
「ふふーん!これが"戦艦清霜"の実力だよ!」
「皆さん、お疲れさまです」
「まだ荒削りだけど、出撃は何とかできそうだね」
「ほ、ほんと?!」
「ただし、無茶は禁物。それと、榛名か長門、どちらかと一緒にね」
「よーし!戦艦と一緒に出撃だ!頑張るぞー!」
「はは……まだ未定なんだけどね、準備はしておいてね」
食堂
演習を終えた清霜と駆逐艦4人は反省会も兼ねて 食堂で食事をとることにした
「いやー!すげぇわ!戦艦清霜!」
「夕立も清霜ちゃんみたいに強くなりたいっぽい!」
「あたしはいいや」
「あぁ?戦艦だぜ!戦艦!駆逐艦が戦艦になったんだぜ!」
「ところで、戦艦になって何か変わった感じとかあるのかい?」
「んとね、体の中からこう力がみなぎってくる感じがするんだ!」
「ただ、それと比例してお腹が減りやすいんだけどね……」
「燃費は戦艦同様になるってことか」
「あたし達も機会があれば演習とかに付き合うよ、暇があったら声をかけなよ」
「ありがとう!じゃあ反省会の続きだね!」
執務室
「よし、このメンバーで行こうかな」
次の出撃する北方海域のメンバーのなかに"清霜"の名前が入っていた
(……無事に行くと良いけど、不安だなぁ……)
そしてついに戦艦清霜としての初出撃が行われようとしていた