北方海域
雪が降り注ぎ 冷たい風が吹いてくる
そんな中で 戦艦清霜を中心とした6人の艦娘が海上を走っていた
「よーし!頑張るぞー!」
一人気合を入れて大声を上げている清霜 それを見守っている戦艦榛名、軽巡阿武隈、空母葛城
その後ろで眠そうにしている加古 のほほんとしている雲龍の姿があった
「ふわぁ……どうしてあんなに元気なのかねぇ……」
「戦艦としてはじめての出撃だからじゃない?」
「そんなに嬉しいものかねぇ」
はしゃぐ清霜を遠目で見る二人に対し 残りの3人は清霜の近くにいた
「すごいはしゃぎっぷりね」
「駆逐艦で戦艦と一緒に出撃する時よりも嬉しさが爆発してる気がするんですけど」
「無理とかしなければいいんだけど……大丈夫なの?」
「そのために榛名がいます。お任せください」
心配そうにしている二人は榛名の言葉を聞いて少し安心した
その後も会話しながら海上を走り続け 深海棲艦と砲撃する場面も何度も出くわした
度重なる戦闘に清霜は疲弊している様子を見た榛名は一度休憩を取ることにした
「大丈夫ですか?清霜さん」
「うん……大丈夫……」
「最初の頃より元気が無いねぇ」
「頑張りすぎて体力を消耗したのかしら」
「葛城、私も疲れたわ」
「雲龍姉……嘘はいけないわ」
「どうします?陣形を変えて清霜ちゃんを護るようにします?」
「あ!大丈夫!まだまだ行けるよ!」
「ま、動けないってわけでもないしもうちょっと進んでみる?」
「清霜さん、行けますか?」
「うん!あともう少しだよね!がんばろ!」
鎮守府 執務室
「……」ソワソワ
「提督、大丈夫ですよ。榛名さんもいますし」
「けどなぁ、戦艦になったから無茶しすぎて危なくなったら……」
「提督、只今戻りました」
「あ、お疲れ様!どうだった?」
「まぁ、こんな感じかな」
提督が見てみると 小破した加古 葛城に続き 傷を負い中破している清霜の姿があった
「司令官……ごめん……やられちゃった……」
「うーん、戦艦としてははじめての出撃だから頑張っちゃったのかな?」
「精一杯皆さんでサポートしたのですが……すみません」
「でも、無事に帰ってこれてよかったよ、各自入渠が必要な人は修復に向かってね」
「ふわぁ、あたしは寝てから向かうとするね」
「清霜、先に入っておいでよ」
「うん!今日はありがとう!」
その後は提督に報告する艦娘 自室に戻る艦娘で別れ 清霜は一人入渠へと向かった
戦艦としての初出撃 作戦成功 清霜は笑みを浮かべながら歩いた
駆逐艦寮 夕雲型の部屋
「ただいまー!」
「おーおかえり、どうだった?初めての戦艦での出撃は」
「あらあら、中破しちゃったのね。早く入渠に行きなさい、提督に言われたんでしょ?」
「えへへ、一度みんなに挨拶しに行こうかなって来ちゃった」
無邪気な笑顔を浮かべる清霜を見て 夕雲型姉妹もみんな笑顔になった
「清ちんいつもより嬉しそうだね」
「ニヤニヤし過ぎで顔がとろけてんぞ!清霜!」
「あっ!ごめん!じゃあ行ってくるね!」
「ほんとに嬉しかったんだな」
「戦艦になるのが夢だったからね、あの娘も嬉しくて仕方ないのよ」
「そうと決まれば、お疲れ様の会でも夜に始めるしかないね!」
「その前にちゃんと服畳めよなー」
数日後 入渠施設
数日経ち 戦艦清霜は長門か榛名、どちらかと出撃する機会も多くなり戦果を上げていた
それと比例し 中破することも多くなり 入渠で修理をする回数も増えてくるようになった
入渠
「うぅ……また中破しちゃった……迷惑かけちゃったなぁ……」
「訓練もしたし、演習もバッチリ……あとはなんだろう?」
「まったく!そんな体たらくじゃ、私に挑むなんて100万年早いわね!」
入渠に響く 強気な口調 どこかと探してみると立っているビスマルクの姿があった
ここの鎮守府の入渠は隣が浴場ということもあるので入浴と入渠している艦娘が会うこともある
「ビスマルクさん!あなたも入渠?」
「いえ、私はお風呂に入ってるだけよ。それよりも清霜、また大破したみたいね」
「うん……そうなんだ……また足引っ張っちゃって迷惑かけちゃったなって……」
「そんなことじゃ、私みたいな戦艦にはまだ程遠いわよ!」
威張るビスマルクの前で 清霜はふと考え 聞いてみることにした
「……ねぇ、ビスマルクさんのライバルって誰?」
「それはもちろんあなたよ!その次は古鷹に勝って私が鎮守府で一番なことを示すのよ!」
「……あのね、ビスマルクさん。あなたが武蔵さんと競い合いをしていたのって覚えてる?」
「そんなこと知らないわよ。そもそも武蔵って誰なのよ?」
(……)
いつもならライバルの存在に奮起するビスマルクだったが やはり存在すら知らないようだ
その言葉を聞いた清霜は いつもの日々ではないことに気づき 寂しく感じた
「何よ?まだ落ち込んでるの?……仕方ないわね!このビスマルク直々に指導してあげるわ!」
「し、指導って?……私入渠中なんだけど」
「あれを見なさい」
突然のことでびっくりする清霜にビスマルクはとある個室に指を指した
「あれって……サウナ?」
「そうよ、戦艦の強さというのは砲撃とかの技術だけじゃなく、精神も必要なのよ!」
「その落ち込んだ精神を鍛え直して……さらなる成長をすることね!」
「ビスマルクさんがそういうのなら……やってみる!」
「その意気よ!さぁいらっしゃい!」
(ビスマルクさんの訓練も、きっと何か役立てるかも……)
入渠中にもかかわらず サウナで我慢比べをすることになった清霜は 最後の最後まで踏ん張ったが
様子を見に来た長波とプリンツの手によってサウナでのぼせている二人は引きずり出される結果となった
「何やってんだよ!入居中だろ!」
「ビスマルク姉さま!しっかり!」
数日後、食堂
「よしっ!じゃあ行ってくるね!」
「この光景ももう見慣れたね」
「相変わらず頑張るなぁ」
あのサウナの事件から清霜は戦艦のグループに入るようになり
訓練方法や立ち回りなどの戦闘方法について戦艦の艦娘と語り合いをするようになった
それに伴い 夕雲型の姉妹と一緒に過ごす時間も徐々に減ってきた
「朝霜、寂しくはないのか?」
「あぁ、大丈夫さ。またコロっと戻ってくるはずだよ」
「にしても清ちん、楽しそうだね」
「羨ましいんじゃないのか~?朝霜」
「ケッ!そんなことないやい!」
「こら、夕食の時間よ。早く食べなさい」
夜 鎮守府 港
「あーあ―!!どいつもこいつも!清霜がいないと寂しい?って聞いてきてさ!」
「アタイには主力オブ主力の夕雲型姉妹とか礼合組がいるってのにさぁ!!なぁ!」
癖で清霜に問いかけようとするが いつもなら後ろにいる清霜がいなかった
朝霜も いつもと違う日常と知り 俯いた
(そうか……清霜、まだ戦艦の人と……)
「朝ちゃん?」
「おわっ!……な、何だ岸波かよ……」
「帰ってこないから探しに来たんだよ。ほら、もう遅いし寝る準備しないと」
「わかったよ……」
(まぁアイツのことだからすぐ戻って来るはずだろ……きっと……)
モヤモヤを引きずったまま 朝霜は姉妹たちが待っている部屋に戻り 就寝した