中庭
「急がないと長門さんとの訓練に遅れちゃう……」
「だからやめなさいって言ってるでしょ!」
「? この声って……」
怒号が飛んだ方向に向かうとそこには瑞雲を試運転している日向と怒っているビスマルクの姿があった
「日向さん!こんにちわ!」
「ん?清霜か、どうした?」
「ちょっと怒った声が聞こえたから来てみたんだ!何してるの?」
「どうもなにも!試運転と言って私にめがけて瑞雲を飛ばしてきたのよ!」
「ごめんね、こんな騒がしくて」
「伊勢さん!その姿って……」
「うん!更に強くなっちゃったの!どう?艦載機も発艦できるのよ」
「すごーい!瑞雲以外もできるんだね!」
「ただ、瑞雲の力も侮れないからな」
瑞雲の調整をしている伊勢と日向を見て 清霜はふと思った
自分も伊勢や日向さんみたいになれたらいいな と
「? どうした?」
「あ、ううん。なんでもないよ」
「この機会だ、いいものを見せてやろう」
「だからアクロバットな飛行はやめなさいって言ってるでしょ!」
(……私も航空戦艦に慣れたらみんなの役に立てるのかな?)
西方海域 海上
「発艦初め」
「……」
「どうしましたか?清霜さん」
「榛名さん。最近ね、私も艦載機飛ばせたらな―って思うことがあるんだ」
「艦載機……ですか?」
「はぁ?清霜、戦艦が艦載機飛ばせるわけねーだろ?せいぜい航空戦艦で瑞雲飛ばす事はできるけどよ?」
「えー?知らないのー?艦載機飛ばすこともできるよー」
「江風、伊勢さんが前に改二改装して性能の説明提督さんから聞いてないっぽい?」
「え?まじで?」
「だめだなー、時津風だってちゃんと聞いてたのに」
「あ、あのときは考え事をしてたンだよ!」
「うそだー、寝てたんでしょ?」
江風と時津風の軽い口喧嘩をよそに 清霜は雲龍の姿を見ていた
自分も伊勢さん達みたいに艦載機を飛ばせれば・・・そんな思いがふと芽生えた
「どうしたの?見つめられても何も出ないけど」
「あ!ううん!なんでもないよ!はやくいこ!」
鎮守府 駆逐寮 夕雲型の部屋
「たっだいまー!」
「おかえり、今日は中破しなかったんだね」
「小破ならしたけどね」
「威張ることか?それ」
「…………」
「どうしたの?朝霜ちゃん?元気ないね?」
「ん?あぁ……ちょっとお腹が痛くてさ……」
「そっか……あ!そうそう!私ね!雲龍さんが艦載機発艦してるの見てね!"伊勢"さんみたいな航空戦艦になれたらなって思ったんだ!」
「はぁ?戦艦の次は航空戦艦かよ」
「たしか伊勢さん、改二改装して艦載機飛ばせるようになったんだね」
「そうそう!それでね――」
楽しく話してる清霜の横で 淋しげに見つめる朝霜の姿があった
いつもは自分と話してる時の顔と違う一面を見てると 辛くなることもあった
???
「……ここ、どこかで見たような」
「……思い出した!確か大きいな扉があって……」
「やぁ、また会ったね」
「あ!あなたは!」
清霜が声を聞き振り返ると 最初に出会ったときと同じような全身が黒い人物がいた
「元気にしてた?それに見違えたように見えるね」
「うん!実はね!最初に来た時から目覚めたら戦艦になってたんだ!それで、一段と強くなれた気がしたんだ!」
「けどね……私の憧れの人が急にいなくなったんだ、みんなも知らないって言うし……どうしたんだろ?」
「どうしたんだろうね?でも、すぐに戻ってくるんじゃない?みんなも知らないふりしてるだけだよ」
「きっとそうだよね!それよりも、もっとお話したいんだ!」
清霜が問いかけると謎の人物も承諾した
戦艦になれたこと 強くなれたこと みんなから尊敬されたこと
いろんなことを話している間に 時間が過ぎていった
「次はその"航空戦艦"になりたいの?」
「航空戦艦はね、艦載機も飛ばせてね、索敵もできるんだって!」
「それってどれくらいすごいの?」
「え、えっと……とにかくすごいんだ!」
「あはは!君がすごいというのならすごいんだろうね!」
「……おっと、そろそろお別れの時間だ。その後ろの扉を開けたら目が覚めるよ」
「うん!わかった!またね!」
――――きろ
――――起きろ!
起きろって清霜!
鎮守府 駆逐寮 夕雲型の部屋
「う、うーん……おはよ……」
「早くしろ!提督が待ってるぞ!」
「えっ?何かあったっけ……」
「"航空戦艦"になったお前をテストしたいって演習場で待ってるんだぞ!」
長波から航空戦艦になったお前と聞かされた清霜はキョトンとした後 我に返って聞き返した
「な、何言ってるの?私は戦艦だって……」
「だーかーら!昨日"航空戦艦"になっただろ!」
(私が航空戦艦……?どうして?!)
執務室
航空戦艦になった経緯などを提督から一連を聞かされた
しかし清霜は記憶にもなく むしろそのことすら知らないと言うべきだった
「じゃあ早速だけどお昼が終わったら演習場でね」
「う、うん……」
「どうかされましたか?昨日はあんなにはしゃいでいたのに……」
「え?古鷹さん、昨日何かあったの?」
「清霜さんが航空戦艦になったからみんなとお祝い会してましたよ」
(そんなこと知らない……全く覚えてない)
黙って考え込んでいると提督からまた一つ連絡が告げられた
「どうしてそんなに悩んでるのかわからないけど……次の指導からは山城と扶桑にも手伝ってもらうからね」
「あれ?"日向"さんと"伊勢"さんじゃないんだね」
「……」
「どうしたの?二人とも?」
提督と古鷹はその二人の人物の名前を聞き 不思議そうに顔を合わせ 提督は清霜に問いかけた
「いや……その人達って……」
「誰?」
二人の名前を挙げたと同時に誰?と言われた清霜はとっさに答えた
「だ、誰って……伊勢型で航空戦艦の!」
「伊勢型なんていないし、航空戦艦は扶桑と山城と君だけだよ?」
「……まさか!?」
「あっ!ちょっと!」
提督の制止も聞かず 清霜が向かったのは資料室だった
資料室
(やっぱり……私が"航空戦艦"の一覧にいる……!)
そこで名鑑を開いてみたものの 清霜の予想通り伊勢型の名前自体消えていたのであった
そして伊勢型であるところが 清霜の写真にすり替わっていた
(武蔵さんに続いて……伊勢さんたちまで……!)
こうして 航空戦艦清霜のさらなる生活が始まろうとしていた