欲望の代償   作:NAKYU

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6話 姉妹として

演習場

 

「いい?まず、発艦の仕方なんだけど……」

 

執務室に戻った清霜はそのまま演習場に向かい、同じ航空戦艦の扶桑と山城に指導を受けていた

 

しかしその表情は暗く いつもの明るい清霜ではなかった

 

「ちょっと?大丈夫?」

 

「え?」

 

「姉さまの説明、ちゃんと聞いてたの?」

 

「ご、ごめんなさい……」

 

「山城、怒っちゃ駄目よ?航空戦艦になったばかりだし、私達がしっかりと教えてあげないと」

 

演習場では発艦方法の指導を受けることになり 提督は心配そうに見つめていた

 

「あの清霜の様子……何かあったのかな?」

 

「そういえば、この前も少し考え事をしている顔をしていましたが……」

 

「古鷹もそう見えた?なんでだろうね……」

 

指導を受けた後で実践を行ったが上手く扱えることができず満足できる結果には終わらなかった

 

清霜の状態も考えて 演習を予定より早めに終了し 各自解散となった

 

駆逐艦寮 夕雲型の部屋

 

「…………」

 

部屋に戻った清霜は外をずっと見ながら考え事をしていた

 

武蔵に続いて伊勢と日向まで消えた……こんなことが急に起こることなんでおかしい

 

ただただずっと窓から外を眺め続け考え込んでいた

 

「なぁ……どうしたんだよ清霜のやつ」

 

「帰ってきてからずっと外眺めてますね……」

 

「朝ちゃん知らないの?」

 

「アタイに聞かれても……」

 

遠目に姉妹たちがヒソヒソと話し合っている

 

長女である夕雲は清霜の横に座り 聞いてみることにした

 

「清霜、ちょっといいかしら?」

 

「あ……夕雲姉さん……」

 

「なにか辛いことでも会ったの?最近考え事している姿をよく見返るけど……」

 

「……夕雲姉さんは、大切な人が急に居なくなったらびっくりする?」

 

「どうしたの?急に」

 

「憧れていていた人がこつ然と消えてね、更には他の人も居なくなったんだ」

 

「そんなこと急になって……みんな知らないって言うし、私がどうかしてるのかなって……」

 

「………そんなことないわよ」

 

「私もその人がどんな人か知らないけれど、あなたが知っているのであればきっとどこかで会えるはずよ」

 

「戦艦清霜として、立派に強くならなくちゃその人もがっかりするでしょ?」

 

「でも……」

 

「……私も最初は一人だったのよ」

 

「けど周りを見てご覧なさい、あなたには何が見える?」

 

清霜が顔を上げて周りを見渡すと 個性ある艦娘 夕雲型の姉妹たちが微笑んでいた

 

「少なかった夕雲型も日が経つことで、これだけの可愛い妹たちに出会えたのよ」

 

「そのあこがれの人もいつかは会えるわよ、きっと」

 

「そうだぜー!清霜!この長波様もいるんだぜ~」

 

「しかし急に消えてしまうってそんな事あるんでしょうか?」

 

「神隠し……フフッ……」

 

「こ、怖い……」

 

「浜ちん怖がらないで、そ、そんなのないはずだから……」

 

清霜の周りにはたくさんの姉妹が笑顔で談笑したりと雰囲気が和らいでいた

 

それにつられて清霜も自然と笑顔が戻ってきた

 

「……そうだね、今どこにいるのかわからないけど、いつかきっと会える!」

 

「それまでには立派な戦艦になってあっ!っと驚かせるぞー!」

 

元気になった清霜 明るく振る舞う姉妹たちをよそに

 

朝霜は淋しげにその輪を見つめていた

 

海岸

 

「戦艦になって……清霜もいつか……」

 

朝霜はあの日以来 一人で過ごすことも多くなるようになった

 

逆に清霜の方はというと めっきり夕雲型の姉妹とあまり会うことはなくなった

 

(……清霜もいつかアタイ達と離れ離れになるのかな……)

 

「……やっぱりアタイ達より戦艦の人達といるほうが―」

 

 

「何一人で落ち込んでるのよ」

 

落ち込んでる朝霜の横に 朝潮型の"霞"が座った

 

「何でもないさ!ただ海が綺麗だなーって!」

 

「そう言ってる割にはそう見えないけど」

 

しばらく沈黙が続き 朝霜は口を開いた

 

「最近さ、清霜のやつが戦艦の人と付き合うようになってあんまり話せる機会が少なくなってきたんだ」

 

「いつの日かさ、アタイたちのことなんか見もすることもなくなるんじゃないかって……」

 

「やっぱりアタイたちより戦艦の人たちと過ごすほうが大事なのかなって……」

 

「……」

 

「清霜も一緒に過ごした日々とかもどうでもよかったのかなって――」

 

「あんたらしくないわね」

 

「え?」

 

「そんなくだらないことで悩んでるあなたが情けないって言いたいのよ」

 

「くだらないことって・・・!アタイの気持ちなんにもわかってないだろ?!」

 

「あんたこそ!あの娘のこと全然わかってないじゃない!」

 

「今では戦艦とはいえ、今まで夕雲型の駆逐艦の末っ子として一緒に過ごしてきたのよ?」

 

「あの娘があんたたちのことどうでもいいとかないったら!」

 

「で、でもよぉ……」

 

「ああもう!しょげてるあんた見るとこっちまでイライラしてくるんだから!ほら!行ってきなさい!」

 

「行くって……どこへだよ?」

 

「清霜のところよ!ほら!」

 

グイグイと霞に立たされる朝霜は渋々と立ち上がった

 

「けどさぁ……本当に分かるのかよ……」

 

「そんなこと聞いてみないとわからないでしょ!ほら!行く!」

 

「うぅ……わかったよ」

 

鎮守府 港

 

「あ!いたいた!朝霜ちゃん!」

 

「あ、あぁ……清霜……」

 

朝霜に呼ばれた清霜はいつものように振る舞い 隣りに座った

 

「どうしたの?話って?」

 

「えっとな……き、今日はいい天気だな!」

 

「うん!いい天気だね!」

 

「あ、あのさ……この後ってなんか予定あるのか?」

 

「この後ね、長門さんと特訓があるんだ!だから気合!入れていかないとね!」

 

「……」

 

楽しく戦艦の話をする清霜を見た朝霜は下を向き 何も喋らなくなった

 

「朝霜ちゃん?どうしたの?」

 

「……あのさ、正直に答えてほしいんだ」

 

「ん?」

 

「戦艦の人たちと過ごしてる時間ってどうなんだ?」

 

「んっと……とっても楽しいよ!訓練は厳しいときもあるけど、お話したりご飯一緒に食べたり!」

 

「……もう一つ良いか?」

 

朝霜は声を詰まらせ 少し間を開けて口を開けてこう言った

 

「アタイたちと過ごした時間とか夕雲型の姉妹たちと過ごした時間もどうでも良かったりするのか……?」

 

突然の質問に清霜は明るい表情を曇らせ それからまた沈黙が続いた

 

そして清霜は立ち上がり 口から大声が発せられた

 

「そんなことないよ!」

 

突然の大声に朝霜はびっくりしキョトンとした 清霜は表情を緩めもう一度座った

 

「戦艦の人と過ごす日々も大切だけど、夕雲型と過ごした日々も大切な思い出だよ」

 

「朝霜ちゃんって霞ちゃんと同じこと聞いてくるんだね」

 

(霞……あいつ……)

 

「もっちろん霞ちゃんにも同じこと言ったよ、"忘れるもんか!"って」

 

「そう言ったら霞ちゃんほっとしたんだよね、どうしてだろう……?」

 

「……なぁ清霜、本当に忘れたりとかしないのか?」

 

「当たり前だよ、夕雲型の姉妹も礼号組のみんなも鎮守府のみんなと過ごした日々はとても大切な思い出だよ」

 

「そんな大切なこと……忘れるわけないよ」

 

その言葉を聞いた朝霜は自分を悔やんだ

 

自分が勝手な決めつけで忘れられる そんな思いを引きずってることに

 

しかし 清霜の言葉を聞いた途端 自らの頬を思いっきり叩いた

 

「あ、朝霜ちゃん!?どうしたの?!」

 

「……アタイはやっぱ馬鹿だったわ!そうだよな!忘れるわけないよな!戦艦清霜は清霜だもんな!」

 

「何になろうが清霜は清霜だったな!」

 

「な……私は戦艦だけど清霜に変わりはないんだよ!でも!戦艦清霜として名を挙げてやるんだから!」

 

 

「はぁ……ようやく元気になったわね」

 

「あ!霞ちゃん!」

 

「そろそろ訓練でしょ?ほらこれ」

 

霞が手渡したものはおにぎりだった まだぬくもりがあり できたてだった

 

「おー!霞、これくれるのか?」

 

「くれるって……人数分あるんだからちゃんと理解しなさいったら!」

 

「ありがとう霞ちゃん!一個もらうね!」

 

「慌てて食べないでよ!喉に詰まると大変だから」

 

「ンー!ンー!」

 

「ほら見なさい!!お茶飲みなさいったら!」

 

二人のやりとりを見て 朝霜も

 

戦艦になっても清霜は清霜 元は一緒に過ごしてきた仲間なんだ

 

困ったときは助けてやる そう誓った朝霜だった

 

夜 鎮守府 ???

 

―――起きろ

 

―――起きるんだ清霜

 

(……誰?ってこの声って……)

 

「……あっ!」

 

清霜が前を向くと そこには褐色肌 ツインテールにメガネを掛けた戦艦武蔵の姿があった

 

「武蔵さーん!」

 

武蔵の姿を見ると清霜は間もなく武蔵に強く抱きついた

 

「おいおい、そんなこと甘えたことしてるんじゃ戦艦にはなれないぞ」

 

「あっ!そうだ!聞いて武蔵さん!私戦艦になったんだよ!」

 

「そうか?私にはまだまだ小さな駆逐艦にしか見えないぞ」

 

「違うよ!本当に戦艦になったんだよ!それなのに……武蔵さん急に居なくなって……」

 

「それは悪かった。……だがまた私は行かないといけないんだ」

 

「え?!ど、どこに?!せっかく会えたのにどうして?!」

 

「また会うときには立派な戦艦になるようにな」

 

次第に武蔵は去っていき やがて霧の中へと消えていった

 

追いかける清霜だったが途中で見失った瞬間 目が覚めた

 

「……夢か」

 

(……武蔵さん、きっと会えるよね?)

 

いつか会える その思いを抱えて再び眠りについた

 

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