ラウーロさんに憑依   作:須美寿

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明日は仕事が忙しいので、次回更新は土曜日になると思われます。


第4話

 シエナでの五共和国派襲撃任務から数日が過ぎた。

 朝の段階で課長から正式に暗殺の任務が下ったので、ヘンリエッタ・ジョゼ組と共同で当たることを提案し、許可をもらう。

 

 その後、エルザと一緒に細々とした任務や狙撃地点の下見と確保などの下準備を済ませて公社に戻ればもう夕方。

 原作の流れだと、そろそろ訓練帰りのヘンリエッタ・ジョゼと出会うタイミングなのだが――と思っていると、道の左端に2人の姿が見えた。

 やはり今日だったようだ。

 クラクションを軽く鳴らし、車を止める。

 

「よお、ジョゼ」

「ラウーロ。トスカーナで五共和国派を追っていたんじゃなかったのか?」

 

 原作通りの会話をしつつ、ヘンリエッタの様子をさりげなく観察する。

 初めはジョゼの影に隠れる形になっていたが、少し体を前に出して車内を、エルザの方を見ているようだ。

 気配で、エルザもヘンリエッタの方に顔を向けたのが分かった。

 おお、原作だとガン無視で正面を見ていたけど、俺の説得の効果があったようだ。

 しかし、何やらビクっとしてジョゼの影に引っ込むヘンリエッタ。

 エルザ、お前どんな顔で見たんだ……。

 

「お前達、今週は暇だったろ? 良かったら手を貸して欲しいんだ。課長の許可はもうとってある」

「分かった」

 

 内心、エルザとヘンリエッタの更なる関係悪化を恐れつつも会話を続けていく。

 しかしこんな急なお願いをあっさり聞いてくれるあたり、原作ラウーロも言ってたけどジョゼはいいヤツそうだ。

 

「そいつはありがたい。エルザにも、フラテッロ同士で仕事をする経験をさせたくてな」

 

 俺がそう言うと、ジョゼは実に意外そうな表情をした。

 原作ではこの夜の飲みで、ラウーロがエルザに対して冷淡すぎないかと指摘するくらいだから、それはそうだろう。

 

「このまま寮に戻るなら乗せていくぞ? 重いだろそれ」

 

 2人は銃の訓練帰りなので、大きなケースを持っている。

 後ろの席は空いているし、大変そうなので誘ってみた。原作で、同じ方向に行くのにそのまま行っちゃったのが引っかかってたんだよね。仕事の協力をお願いした立場だし。

 

「お、そう――、いや、そんなに長い距離じゃないから訓練がてら歩くよ」

 

 提案に乗りかけたジョゼが頬を引きつらせつつ断った。

 これは、俺の隣から放たれる負のオーラと無関係ではあるまい。

 

「そうか、それじゃ、後でな」

 

 担当官としては、他の担当官に殺気を向けるんじゃないとお説教しないといけないところなのだが、あまりのプレッシャーに気圧されてしまい、スルーするより他なかった。

 

 車を出しながらちらと視線を向けると、2人だけの空間を守れた事による満足からか満面の笑みを浮かべるエルザ。

 

 うん、可愛い。

 可愛いけどダメだよエルザちゃん! 

 

 エルザが他の義体と親睦を深めることは本当にできるのだろうか……。

 原作通りならば今夜エルザの部屋をヘンリエッタが訪ねてくるのだが、いろいろと心配である。

 あんまり仲良くしろ仲良くしろとしつこく言うのも逆効果な気がするので重ねては言わないが、うまくいくといいなぁ。

 

 

 

 

 夜、公社御用達のバーに俺とジョゼは来ていた。

 杯を交わしつつ、こちらのこれまでのトスカーナでの任務の説明と、シエナでの狙撃任務の詳細を話す。

 

「狙撃か……」

「ん? なんだよ。ヘンリエッタは狙撃は下手くそなのか?」

「いや、人並みには上手いよ。だけど、僕や他の義体の前だと、いいところをみせようとして力むかもしれない」

 

 原作通り、やや悩む様子のジョゼ。やがて、杯の酒を飲み干し、決断する。

 

「やるか。ヘンリエッタにも自信をつけさせたいしな」

「苦手な事にはチャレンジさせた方がいいぜ。俺も、今回の任務でエルザに少しでも仲間意識を持って欲しいと思ってるんだ」

 

 俺も杯を空けると、ジョゼと自分の杯に酒をついだ。

 

 ジョゼはまた意外そうな顔をして、それから微笑んだ。

 

「なあラウーロ、今までのあんたはエルザに冷淡だと思っていたけど、どうやらそうじゃなかったみたいだな」

「いや、その通りだ。今までの俺はエルザに対して冷淡――無関心といってもいいくらいだった。ついでに言うとジョゼ、お前のことも嫌いだったぜ? いっつも義体の事を気にかけて、いろいろやべぇ噂がある歪んだヤツって思ってたからな」

 

 ほぼほぼ原作通りの発言なのだが、並べてみると酷いなラウーロ。

 

「おいおい、だったら仕事や飲みになんか誘うなよ」

 これにはジョゼも流石に苦笑い。

 

「『だった』って言っただろ? 今は――、うん、尊敬してます。いろいろな意味で……。師匠と呼びたいくらいです」

「……なんだか、嫌われてた方がマシな気がしてきたよ」

 

 突然の敬語と師匠呼ばわりに嫌な予感を覚えたらしいジョゼ。正確には別な世界線のお前のことなんだが、こっちのお前も才能あると思う。

 

「まあ冗談はさておいてエルザのことだが、そうだなぁ……。あの子の気持ちから、もう目を逸らせなくなったってところだな」

 

 杯を空けつつ、しみじみと言う。

 

「……そうか」

 

 まさか憑依転生うんぬんな話ができるわけがないのでそれっぽい事を言ってみるが、こんな説明で理屈じゃなく魂で理解したぜ感を出せるあたりやっぱジョゼさんはホンモノだと思う。

 

「実際の話、あの子はこっちの都合で施した条件付けの影響で、俺に対して盲信に近い愛情を抱いている。それを無視して、ただの道具として使うなんてのはなかなか耐えられるもんじゃない。少なくとも、俺には無理だった」

「……そうだな」

 

 杯を空にすると、ジョゼがついでくれる。

 

「贖罪、いや同情か、義憤とも言えるか。とにかく、エルザを含めた義体の子達には、少しでも多く幸せを感じられるべきだと思ったんだよ。そうでなきゃ、あまりに釣り合いが取れないじゃねえか」

 

 勢いがついて、再び酒を飲み干す。

 あれ、結構飲んじゃったな。少し酔ったかもしれない。

 

「驚いた。ラウーロは、義体の子達の事を真剣に考えているんだな」

 

 感銘を受けたような表情のジョゼ山師匠。

 そうだろうともそうだろうとも。

 

 よし、ここで我々と義体の今後を考えた上での重要な議題について共に検討しようではないか。

 

「なあジョゼ……」

「なんだ?」

 

 更に真剣な表情になった俺に呼応し、表情を厳しくするジョゼ。

 

 

 

「義体とすけべしちゃったら、ビアンキ先生のメディカルチェックでバレるかな?」

「何言ってんのお前?」

 

 

 

 酔っててよくわかんないけどなんかめっちゃ説教されてる。

 解せぬ……。

 

 

 

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