今回は三人称でギャグ回です。一部キャラ崩壊がありますがご容赦ください。
時は、エルザとヘンリエッタの狙撃任務の翌日に遡る。
「お邪魔するわ」
自分とヘンリエッタの部屋を訪れたエルザを目にしたリコは不思議そうな顔をして小首を傾げた。
エルザが自分達の部屋に来るなど、初めてのことだったからだ。
「エルザ。どうしたの?」
ヘンリエッタが特に戸惑いも無く受け答えをするのを見るに至り、リコはますます不思議に思う。昨日初めて一緒に任務を担当したとは聞いていたが、そこで何かあったのだろうか。
とりあえず、よく分からないときはトリエラに聞こう、とリコは考え、部屋を出た。
「昨日のシエナでのお互いの行動を共有しておこうと思ったの」
自分が来たのを受けて人が部屋から出る、割と傷つく行動ではあるが、エルザに関しては何ら痛痒を感じることではなかった。
「ああ、そうだね。わたしとジョゼさんは大聖堂に行ってきたよ。中にピッコロミニ家の図書室っていう部屋があって、フレスコ画がとっても綺麗だった。ポストカードを1枚買ってもらったから、きっと忘れないよ」
ヘンリエッタは机からポストカードを取り出し、エルザに見せる。
「そうね、これなら行った場所としっかり結びつくから強く記憶に残りそうね」
うんうんと頷くエルザ。
「あとはどうだったの?」
「あと、ピチっていう太めのパスタを食べたけど、もちもちして美味しかった。食堂のバイキングにも出ないかな。そしたらきっと忘れないのに……」
「ピチはわたしもラウーロさんと食べたわ。2人でリクエストをすれば、メニューに入れてもらえるかもしれないわね……。ああ、ピチと言えば」
エルザは意味ありげに言葉を止め、頬を緩ませる。
「えっ、どうしたの?」
「わたしとラウーロさんで、違う味付けのピチを頼んだの。それで、お互いどんな味か気になるじゃない? だから……」
「それでそれで」
真剣な表情のヘンリエッタと、ささやかな胸を反らすエルザ。
「あーんをしてお互い食べさせ合ったわ」
ラウーロが見たならば額に入れて飾りたいレベルと評したであろうドヤ顔を決めて、エルザは言った。
「いいなー! うう、わたしはジョゼさんと同じのを頼んじゃったから……」
「違うものを頼めばそういう事もできるということよ。今度やってみればいいじゃない」
「いいないいなー」
「わたしだって、ヘンリエッタがポストカードをもらったのは羨ましいわよ? ラウーロさんとピエンツァに行ってとっても綺麗な村と丘の風景が見られたのは嬉しいけど、形に残るものが手元にないもの……」
先程までの笑顔から、少し憂いを含んだ表情を見せるエルザ。
「……そっか、じゃあしっかり覚えておかないとね。わたしも、頑張って覚えてる! あと、エルザがシエナでやったの、わたしも出来たよって言えるようにする! そうすれば絶対忘れないよ!」
「期待しているわ!」
ファイティングポーズをとって決意を固めるヘンリエッタと、その手を包むエルザ。
「……あなた達、一体どうしたの?」
リコに連れられてやってきたトリエラが、その光景を見て不審そうな目を向けた。
「ねートリエラー」
トリエラが自室にて、日課であるくまのぬいぐるみの配置調整を行っているとリコがやってきた。
「どうしたのリコ?」
聞き返しつつも、視線はドービーに向けられており、頭の中はもう少し右を向かせるか否かの判断をつけるのにフル回転していた。
「……そうなると長いわよ」
ルームメイトのクラエスは全てを悟りきった表情で言う。
リコは大人しく頷くと、クラエスに本を読んでもらいつつトリエラがこっちに帰ってくるのを待つことにした。
「……これだ」
最終的に、それまでの調整を全て放棄。ドービーを逆さまにしてスリービーとハッピーで挟んで固定するという形態をベスポジと判断し、トリエラは帰還を果たすのだった。
「待たせてごめんねリコ。今朝はクマポジがなかなかしっくりこなくてさ」
「ヘンリエッタの所にエルザが来たの」
すっきり爽やかといった笑顔で言うトリエラに相槌の一つも入れず、リコは即用件を切り出す。
「エルザが? 何かの連絡?」
クマポジの話をスルーされるも特に気にせず、最もにして唯一ありそうな可能性を提示するトリエラ。しかしリコはふるふると頭を横に振る。
「私用で来たみたいだったから、緊急事態だと思って」
「仮に私用だとしたら相当な緊急事態ね」
さらりと言うリコと、ドシリアスな表情で深く頷くトリエラ。
「これは事件ね。行ってらっしゃい」
義体棟の治安維持は基本的に年長組のトリエラとクラエスに任されており、クラエスは基本動かないので実質トリエラが全部解決することになる。
その立ち位置になってから様々な事件を解決してきたトリエラだが、今回ばかりはどうなるかと思いつつリコを従えてヘンリエッタの部屋へと急行するのだった。
そうして目にする、謎の闘志に燃えるエルザとヘンリエッタ。
「……あなた達、一体どうしたの?」
「トリエラ。ええっとね……」
「ヘンリエッタと、担当官への愛を確認していたのよ」
思わずうわぁという表情をするトリエラ。
「今は、お互いのデートでの良かった点と反省点を確認して、次のプランの改善を検討しているわ」
「はい、ごゆるりと。行くわよリコ。なんかクマポジの調整をしたくてムズムズしてきたわ」
「待って」
逃げようとするトリエラを、エルザはすかさず捕まえる。
「あなたも、我ら『担当官大好き同盟』に入らない?」
「仮にヒルシャーさんを好きだとしてもその同盟に入るのは断固無理」
即決で断られ、真夜中にあの日と同じ歩道を無言で辿る時の様な瞳になるエルザ。
「エルザ、その名前初めて聞いたんだけど……」
唖然とした表情のヘンリエッタ。
エルザの鼓動が、凍てついた銀色の月に照らされたかのごとく早鐘を打つ。
「凄くいいと思う」
ヘンリエッタの全面肯定により、義体棟内でのパァン事件は未然に回避されることとなった。
「分かったわ……。『担当官大好き同盟』改め『担当官大好き連盟』にするから」
「そこに関してはどっちでもいいなぁ」
「……っ! 『担当官愛してる同盟』!? やるわねトリエラ」
「いや、あなた達の上を行ってるわけでもない」
「はー、まあそういうわけで、エルザはヘンリエッタと担当官の話をしに来ただけみたいだから問題なさそうよ、リコ。2人も、のろけ話はほどほどにしておくのよ」
用は済んだとばかりに戻ろうとするトリエラ。
「待って」
再度呼び止めるエルザ。
「トリエラ、あなたを仲間に入れて見せるわ。あなたも心の奥では、担当官に撫でたりいろいろして欲しいと思っているはずよ」
厳かなる宣戦布告。
この日以降、エルザはトリエラヒルシャーの前で特に、ラウーロとスキンシップをはかるようになるのだった。
キャラソンCDのポカフェリはどれも名曲でした