メンタルモデルになってネギ魔の世界に転生するお話   作:照明弾P@ハーメルン

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大変お待たせいたしました。

#10話です


#10

「……」

「あ、あーっと……何故に此処にいるんだ?」

「あ……その、魔法球(ここ)から出られる時間になりましたので、マスターから呼んでくるようにと」

「! わざわざすまない。助かった」

 

 茶々丸と気まずい空気が流れ出していたので、彼女が何故この場にいるのかを聞くと、素晴らしい情報をもたらしてくれた。神様との概念伝達をする前は魔法球をでるまでかなり時間があったが、神様の計らいというべきなのか。もう魔法球から出れるまで時間が経っていたようだ。わたしはすぐさま寝ていたベッドから飛び起きて、茶々丸に声をかけながら部屋を飛び出した。

 

「む、どうした。随分と急いできたな」

「エヴァ。茶々丸から聞いたが、もう魔法球(ここ)からは出れるんだよな?」

「ああ。そうだが?」

「悪いが今すぐ此処から出たい。緊急事態なんだ」

 

 部屋を飛び出し、別荘のリビングへと向かう。そこには朝からワインを口にしていたエヴァがいた。その容姿や態度から実に優雅な様子なのだが、今はそんな様子にいちいち感想なんていってられない。私が慌てた様子でいることに驚いているエヴァに私はすぐさま魔法球から出たい事を告げると、エヴァが神妙な表情になる。

 

「緊急事態とは?」

「あー……アドミラリティ・コードから通達がきた。他のメンタルモデルが起動した」

「なんだとッ!?……こっちだ」

 

 神様の都合で転生者が追加されたなんていっても面倒だから、私はエヴァに緊急事態を分かりやすく説明する。すると、その効果は絶大で、エヴァは驚愕してからすぐに席を立ち上がって別荘から出て行く。私はそんなエヴァについていくのだった。

 エヴァについていって2分ほどで、私はここが魔導具の中にいることを実感させるような空間にいた。さっきまで砂浜を歩いていたと思っていたのに、とある境界を越えた瞬間に、そこは周りを滝に囲まれ、その中心に石柱が立ち、そこへと橋がかかっている幻想的な空間にかわったのだ。

 私はそんな空間に驚きながらもエヴァについていき石柱まで来ると、エヴァはその場で指を鳴らし、その瞬間、私の視界は眩い光によって白に染まった。

 

「戻ったぞ」

「……! 助かった。エヴァ」

 

 視界が白に染まってから直ぐにエヴァの声が聞こえてから視界が元に戻りだすと、そこは茶々丸につれてこられた部屋だった。私は腕を組むエヴァに感謝の言葉を述べてから、すぐさま他の転生者と連絡を取るために、概念伝達の機能を起動した。

 

 

          ◆

 

 

概念伝達の機能を起動すると、私は神様とあった時と同じ、空白空間にポツリとあるような庭園のような場所に立っていた。

 

「っと…。改めて見渡すと、見た目はアニメの世界準拠みたいだな。…さて。他の転生者は…」

 

辺りを見渡しながら、他の転生者がいないのを確認すると、視界の端に小さなウィンドウが現れる。そのウィンドウには「ハルナ・ズイカク・マヤが概念伝達を受諾」と表示されており、ウィンドウが消えると同時に、私の前にハルナ・ズイカク・マヤが現れた。

 

 

「! 来たか。ここではおはよう、というのがいいのかもしれないな。ハルナ・マヤ。そして…ズイカクだったな?」

「っ! あ、ああ。」

「成程。あの者が言っていた者はキリシマだったのか」

「おー! キリシマだー!」

 

私が現れた3人に声をかけると、ハルナは少し驚いた表情をしてから、ぎこちなく返事を返した。ズイカクは納得といった様子で、マヤはどうやら原作側の存在らしく、その場で両手を上げて喜びを表現していた。

 

「色々積もる話はあるが、今は最優先で確認したいことがある。まず、目覚めた場所と、3人共同じ場所に目覚めたかだ。どうだ?」

「そうだな…まず、私達は同じ場所で目覚めた。場所は詳しくはわからないな。気がつけばその場にいた感じだ」

「そうか。次に、目覚めた場所に他の一般人はいるか?もしくは駆け寄ってきたものはどうだ?」

「ふむ…目覚めたときは周りには誰もいなかったが…む」

「どうした?」

「我等を遠巻きながら囲んでおる連中がいるな。中々の速さだ」

「そうか。もしかしたら、接触してくる人物が、『私』が知っている人物かもしれない。とりあえず何者か聞かれたら『ハルナ』か『ズイカク』は私と同じ存在だと言ってくれ。私も今そっちに向かおう」

「!…ああ。わかった」

「ふむ…了解したぞ。相手との交渉は私に任せろ」

「そう……じゃあ頼んだ。ズイカク」

「う~…はいはーい! キリシマ。私には何か無いのー?」

 

三人の反応は今は置いておいて、私はハルナ達の現状を確認する。ハルナとズイカクを聞いて分かった事は、私とは多少違うが、突然その場にいたというもの。つまり、かつての私の様に、学園側が反応し、警戒態勢でハルナ達に向かっていることが判明した。学園側は私のような前例があるから突然しかけてはこないと思いたいが、不安は残る。せめて、わたしの時の様にタカミチが接触してくれるなら穏便に済むかも知れないが、淡い希望は持たないほうがいい。

そんな考えをしながら、ハルナ達に対処法を伝えると、ハルナとズイカクは私が言いたい事を理解したのか。頷いてくれた。マヤは、話についていけないのか、首を何度か傾げて暫く唸るが、私に対して、自分にもないかないかと聞いてきた。

 

「相手との話し合いは他の二人に比べてマヤには不向きな事だろうからな。すまないがおとなしくしてて欲しい」

「えー」

「そういうな。さて、ハルナとズイカクは確認してると思うから省くが…マヤ。アドミラリティ・コードからの命令は確認したか?」

「えっと…うん。確認できてるよー」

「そうか。一応私とお前達とで命令の違いがないか確認しておこう。私達がアドミラリティ・コードから与えられた命令は?」

「はーい。『人間を観察せよ』でーす!」

「そうだ。かつてのアドミラリティ・コードの内容とは異なっていたが、私達がすべき事として通達されているのは今の命令だ。3人共が起動したのは、人間の観察を行なうのにこの場にいる4人で人間を観察する事が効率的と判断してなんだろう。既にこの地の最高責任者には私達の活動の許可を取ってある。しかし、末端までその内容が伝わってないらしく、警戒されるだろうが、さっきいった事を伝えれば悪いようにはされないはずだ」

「了解した。む、どうやら早速接触してくるようだな」

「そうか。ハルナにズイカク。驚くようなことがあっても表情に出さずに、くれぐれも相手に不信感を与えないように頼むぞ。私もすぐに向かう」

「うむ。任せてくれ。ではまた後でな」

「キリシマー。また後でねー!」

 

マヤの質問を利用して、私はハルナとズイカクにアドミラリティ・コードの内容をそれとなく伝えると共に、転生者であることのボロを出さないようにして欲しい事を、お願いする。ハルナは頷いてはくれたが表情からは私の意図は伝わってなさそうだ。幸いな事に、ズイカクの方は私のこれまでの話の意図を理解してくれたのか、しっかりと頷く。

マヤは私がハルナとズイカクに任せておけといった事で自分を納得させたのか。特に言いたいことはない様子だ。少しして、3人共が目の前から消えた事を確認して、私も概念伝達を終了するのだった。

 概念伝達を終了させ、玄関に向かうとそこにはエヴァと茶々丸が立っていた。

 

「他のメンタルモデルと連絡はついたのか」

「ああ。3体が起動し、全員が同じ箇所にて待機中だ。だが、魔法先生達に囲まれ警戒されている」

「そうか。私としても他の連中を見てみたいが…少し遅れてから向かうとしよう。さっさといけ」

 

話す事はもうないといった様子で、エヴァは玄関の先を指差し、茶々丸はドアを開けてくれた。

私はそれに軽く頭を下げてからハルナ達の下へ向かった。

エヴァの家からでた私は、すぐさまセンサー系の全てをアクティブにする。小さなウィンドウが目の前にいくつか現れ、そこにセンサーで索敵した結果が表示される。私は表示されるセンサーの結果から、敵味方識別装置(通称:IFF)の表示を確認する。そこには、今居る所から暫く離れた所に、3人のIFF反応が確認できた。私はセンサーで表示された方向に急ぎ向かうのだった。

 

 

          ◆

 

 

 前世ではちょっと周りの女子同士とは趣味の傾向が異なっていた私は、神様のミスによって殺されてしまい、二次創作なんかで良くある神様転生によって、魔法先生ネギまの世界で二度目の生を得る事になった。前世ではそういったお話が好きだった私だが、いざ自分がその立場になると実に複雑なものだった。

神様から転生について色々と確認すると、転生ものにつきものである特典についてはテンプレのように好きなものをあげていいらしい。神様からその話を聞いたとき、私は前世で呼んでいた転生もののパターンを思い出していた。

 転生ものといっても、私の主観ではおおきくわけて3つのパターンがあると思っている。1つは所謂転生した自分が「その世界の主人公は私だ!だから好き勝手やってやるぜ!」といったもの。これは自身のその思い込みがそのまま正しければ、正に主人公として活躍できるが、そうでない場合は原作キャラたちにとっての踏み台になってしまう危険性がある。

2つ目は複数の転生者がいる場合のものだ。これは、よくあるのが、転生者同士で、殺し合いをさせたりする恐ろしい神々の娯楽(遊び)だったりするが、そうでない場合は比較的ましな転生ものといえる。まぁ踏み台的な思考を持った転生者が居た場合は大抵面倒な事になるという問題はあるが。

そして最後が、原作キャラとして2度目の生を得る、転生派生憑依?ものだ。この場合、転生したキャラがどんな立ち位置にいるかや、転生先の世界の内容によって危険度のぶれ幅がとんでもない。そんな事を思い出しながら、私は神様のお話を少し整理する。

 まず、転生先がネギまの世界であるという情報は実に重要なものだ。なんせ、あの世界は魔法を使いドンパチしまくるのだ。当然、転生すれば、そういった世界で生きていくのは大変だ。パターンでいう憑依もの?で、もし原作の3-Aのだれかにでもなったら恐ろしい目に遭うことは確実である。なので、もしそうなっても最低でも自衛は出来る程度、もしくは面倒に巻き込まれないような特典を得なくてはいけない。二度目の人生を謳歌する為にも、ここはしっかりと情報を集めて、転生しなくてはいけない。

 そんな訳で、私は神様に一つ確認を取った。その内容は「転生先には、他の転生者の方はいるのか」だ。

神様からの答えは、基本は他の転生者はいないが、特典が過去の転生者の特典と似通ったものをあげた場合は、任意で同じ世界にするといったものだった。

私はその答えに対し、転生者同士で殺し合いをして下さいとかはないかを聞くと、神様はそんな酷い事はしない。同じ境遇同士2度目の生を謳歌するならそれを応援したいといったものだった。

これを聞いた私は、安堵した。つまり、2つめのパターンを選んだ場合は比較的ましなものになる可能性がある事が分かった。

私は駄目元で神様にネギまの世界に転生していった他の転生者が、どんな特典を選んだのか聞いてみた。以外にも神様はそれに快く答えてくれた。そして、他の転生者の特典を聞いて、私の特典は決まった。神様に特典の内容を告げると、それを許可した神様の言葉の後、私の意識は急速に遠のいていった。

 

そして、気がつくと私は、並木道にいた。

「ここが…麻帆良?」

「おおっ! ハルナにマヤがいる!」

 

私は視界に映る景色を見ながら一人呟くと、すぐ隣から驚きの声が上がったので顔を向ける。そこにいたのは、童話の赤頭巾のような容姿をした黒髪の少女……マヤが地面に座り込んでいて、そんなマヤの肩に両手を置いて立っていたのは、赤のレインコートを来たツインテール少女、ズイカクだった。

 

「嘘っ。ズイカク!? それにマヤも!?」

「そういうお前はハルナか! その反応からするに、『私』と同じ存在だな?」

「『私』と同じって…もしかして、貴女も…」

「ああ。マヤはどうか知らないがな…。しかし、此処が麻帆良か…」

 

ズイカクはあっさりと自身が転生者であることを私に告げると、周りをきょろきょろと見渡している。なんというか目の前の転生者(同類)の反応に対応できないでいたら、ゆらりと目の前に座り込んでいたマヤの頭が持ち上がり、瞑っていた瞼が開き、ぼんやりとした表情で私の事を見つめてきた。

 

「ん……ふぁあぁ……。」

「……マヤ?」

「お、起きたのか?」

 

まるで寝起きのような様子のマヤに私は声をかける。ズイカクもマヤが起きた事を確認しようと、背中側から身体の乗り出してマヤの様子を見ていると、ぼんやりとしたマヤの表情が当然と活力が溢れる笑顔に変わり、突如その場から立ち上がった。当然、座り込んでいたマヤの背中に乗っかるような姿勢でいたズイカクは、突如立ち上がるマヤによって、バランスを崩し、その直後に後ろに倒れた。

 

「ハールナちゃん! おっはよー!」

「うわたっ!?」

「っ!? あ、あぁ。おはよう、マヤ」

「およ? あっ! ズーイカークちゃん! おっはよー! ……なんで倒れてるの?」

「あいたた…。おはよう、マヤ。」

 

両手を挙げ、元気を前面に押し出すマヤの挨拶に、私は少しうろたえながらも、挨拶を返した。マヤは私と挨拶を交わしたあと、振り返って自身の後ろで倒れたズイカクにも私と同じ様に元気に挨拶をした。

 

とりあえず、この場にいた全員が目を覚ましたので、いざお話でもしようと思った直後、それぞれの視界にウィンドウが表示され、そこに「キリシマから概念伝達を受信。通信を受諾しますか? yes/no」といった内容が表示された。

 

「おおっ? キリシマからの概念伝達だー!」

「……ズイカク、どうする?」

「どうやらキリシマの方も私達の存在に気づいているようだな。とりあえず話をしようじゃないか」

 

身体をいっぱい使って感情を表現するマヤを横目に、私はズイカクに概念伝達の件について相談すると、ズイカクはさらりと、それを受けると宣言し、ウィンドウに表示されたyesのボタンに指を持っていっていた。マヤもズイカクに続くので、私も彼女達に続いて、目の前に表示されるウィンドウのyesへ指を持っていった。

 

そうして、アニメで描写されたのと同じ庭園のような場所で、私達はキリシマに出会った。そこでキリシマと言葉を交わした事で、私はマヤを除く3人が転生者であることと、現在私達が魔法先生たちに遠巻きながらも包囲されていることを知るのだった。

 

あの庭園の空間から戻ってきてから、私は霧のメンタルモデルとして使用できる機能を急いで確認する。脳内に浮かぶ私が行使できる能力に目を通していると、ある人物が私達の元へ近付いてきた。

 

「あれ? 誰かこっちくるよ。ハルナ、ズイカク」

「そのようだな。ふむ……成程の。さっき言った通り、ここは私に任せろ」

「……ええ。任せるわね。ズイカク」

 

マヤの言葉を聞いて、こちらにゆっくりと近付いてくる人物に顔を向ける。まだ距離があって相手の顔が見えなかったのが、直ぐに視界の端に浮かびあがったウィンドウがその人物をはっきりと映し出してくれる。手にはナイフと拳銃を持ち、此方を警戒しながら近付いてくる黒人男性。私は原作の記憶から、彼がガンドルフィーニ先生だと判断し、ズイカクに方を見た。ズイカクも彼がガンドルフィーニ先生であることを分かっているようで、此方に軽く頷いたあと私達は彼がそばにくるまで、その場に留まっていた。

 

数分もしない内に、ガンドルフィーニ先生が私達の前に来る。それに相対するようにズイカクが先生の前に立ち、私とマヤがズイカクの後ろに並ぶ。マヤが隣でそわそわしているが、私はズイカクにこの場を任せているので、沈黙を保つ。ガンドルフィーニ先生は私達の存在もそうだが、なによりも自分に相対するズイカクに困惑した表情を見せながらも、話を切り出した。

 

「……君達に聞こう。君達は一体何者だ?」

「私達か? 私達はキリシマの仲間だ」

 

少し間をおいてから発した先生の質問に、ズイカクはすぐさま答える。すると、先生の表情が直ぐに困惑から緊張したものに変わり、その場で身構えた。

 

「……彼女の話では、君達は目覚めないと聞いていたが?」

「我々はアドミラリティ・コードの命にて活動を再開しただけだ。我々は兵器。命令があれば、それに従うのは当然だ」

「っ……」

「……ズイカク。余り……」

「おーい! お互い落ち着けー!」

 

先生の言葉にズイカクはふてぶてしくバッサリと言葉を返す。たった二度の会話だけで、お互いの雰囲気が危ない方向に傾きつつある事に、焦る私は、ズイカクに一声かけようとして、背後からかけられた声に振り向く。振り向いた先には、私達の元へ掛けてくる、キリシマの姿があった。

 

 

 


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