メンタルモデルになってネギ魔の世界に転生するお話   作:照明弾P@ハーメルン

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普段よりも短いし投稿遅れた(白目)

今後は一定期間毎に更新できる様に頑張りますんで!だから許してください!なんでもしますから!


#06

 キリシマが海の上を駆けて行く様子を見た時、私は奴のいう全力を発揮できるという言葉をなんとなく理解した。自身が作った足場で海の上に立ち、恐らく水系統の魔法を、辺り一面にある海水を利用して威力を底上げする。そういった戦い方をするものだと判断した。そして、その判断と同時に私は自分の勝利を確信した。私の魔法の系統は氷。奴の系統は水ならば、奴に負ける要素は一つもない。

 そう、判断した。そして、次の瞬間、その判断は全く間違っていた。

 

「な、何だとッ!?」

 

 奴が走っていった方向から突如現れた船体。その大きさや形状、積まれている砲の大きさから、戦艦だと判る。そして、奴が現れた戦艦の艦橋に飛び乗ると、奴と同じリングのようなモノが戦艦から出現する。

 

「あれは……。」

「判るのか、茶々丸」

「はい。いえ、あの船体の形状を調べてみた所、ほぼ一致する(ふね)が存在しました」

 

 奴の乗った戦艦を見て、茶々丸が奴の乗るモノと同じであろう艦があるという。私は声を荒げそうになるのを抑えながら、茶々丸に続きを促す。

 

「どんな(ふね)だ」

「検索の結果……あれは旧帝国海軍に所属していた金剛型戦艦の姿に非常に酷似しています。また、金剛型戦艦は全部で4隻存在し、その一隻の名前が霧島……彼女の名前と同じ(ふね)が存在します。以上の点から、あれは金剛型戦艦4番艦・霧島である可能性が高いです」

「だからキリシマ……か。……確かに、奴の本気は海で無くては発揮できないな」

 

 茶々丸の推測を聞き、私はその推測がほぼ当たっているであろうと判断する。奴自身も言っていた。海辺ならばと。つまり、私のさっきまでの考えは完全な誤り。奴の本気とは、あの戦艦の火力を用いた戦いという訳だ。

 

「これがッ! 私の本当の姿だッ! いくぞエヴァンジェリン・A・K・マクダウェル! 霧の本気、受けてみろッ!」

 

 奴の声が私の元まで響くと同時に、戦艦の機関が稼動し、唸り声が響く。

 その音を聞いて、私は思考を切り替える。対人戦から対艦戦に。奴との距離、奴の装甲。そういった点を考えると、魔法の射手など全くもって効きはしないだろう。氷の槍も奴に届くかどうかだろう。私の使う魔法で効きそうなものを考え――行使する。

 

「リク・ラク ラ・ラック ライラック――氷神の戦鎚(マレウス・アクイローニス)!!」

 

 奴の乗る戦艦を叩き潰す様に奴の上空に氷塊を作りあげ、それを落下させる。戦艦の姿は驚いたが、驚いただけだ。それ以上の事はない。回避不可能な距離から、障壁で防ぎきれない程の質量の攻撃で沈める。それで、私の勝利は確定する。しかし、そんな考えはまたしても奴に覆された。

 

「ッ!? さっきのアレ(足場)が、あの質量さえも防げる障壁だとッ!?」

 

 奴に落下させていた氷塊が、奴がさっきまで海の上を走るのに使用していた緑色に発光していた物体を大きくしたものによって受け止められていた。そして、受け止められている氷塊に向けて、戦艦の前主砲2基4門が照準を定め、砲撃音が響く。その次の瞬間に氷塊は爆発四散する。砕かれた氷塊の先に見えたのは無傷の戦艦の姿だった。

 

「ちぃっ!」

「敵戦艦の主砲が此方に照準を向けています!」

「茶々丸! 貴様は向こうに退避しろ! 奴のいった様にこの島から離れていろ!」

「了か――ッ! 敵主砲から発光! 砲撃来ます!!」

「(速射が可能だとッ!?)糞ッ! 来れ氷精 爆ぜよ風精 弾けよ凍れる息吹――氷爆!! ――氷盾(レフレクシオー)!! グウッ!」

 

 茶々丸の言葉に、私は咄嗟に茶々丸の前に立ち前方に氷爆を放ち、すぐさま氷盾を展開する。氷爆の爆発音に少し遅れて爆発音が響き、展開した氷盾に幾つかの飛来した砲弾の破片がぶつかり、身体を推し込まれる。

 

「マスター!」

「ぐ……大丈夫だ茶々丸。お前は直ぐに退避しろ」

「ッ……了解しました」

 

 茶々丸の無事を確認した後、私は茶々丸にこの場を退避するようにいう。それと同時に私は後悔していた。別荘の設定を孤島ではなく、群島にしておけば茶々丸の心配はしなくて済んだはずだからだ。とにかく、私は茶々丸が安全な所へ退避するまでの時間を稼ごうと駆け出した所で、戦艦から無数にあがる飛行物を見てしまった。

 

「ミッ……ミサイルだとぉッ!?」

 

 戦艦から放たれた200を優に超えるミサイル達が私目掛けて飛翔する。あと数十秒もしない内に、空にあるミサイルは私の居るこの場に降り注ぐ。そして、その数十秒後には、再びあの戦艦から打ち上げられたミサイルが、二度目として私の居る場所に降り注ぐだろう。

 そして、一度目のミサイル群が、私の元へと降り注いだ。個人相手に凄まじい飽和攻撃だと思う。しかし、私もそれを黙って喰らってやるほど甘くないし、私もそこまで弱い存在ではない。

 戦いの歌(カントゥス・ベラークス)を発動させ、強化した身体能力で、ミサイルの爆撃を回避できるものを回避し、避けられない場合のみ魔法の射手を用いて、迎撃する。自分の周りが轟音と爆発、そして爆発の際に巻き上げられる石や土、木々の破片やミサイルの破片が、私の身体と精神を削っていく。

 一度目の爆撃は、時間にして数秒の出来事だったが、それを迎撃していた私には数十倍にも長く感じられた。身体の傷は吸血鬼の特性のおかげで、もう治りかけているが、爆撃によって足場の悪くなったこの場で、次の爆撃を避けるのは難しい。

 ……そして、何よりも今の戦いは相手の間合いでの戦いになっている。私の間合いにする為にも、私がすべき事は一つだった。

 

 

         ◆

 

 

 本来の姿を展開する事が出来た私は、エヴァに本気を受けてみろなんて事を言ってしまったが、まだ戦艦(この姿)での動きがしっくりこない。艦橋に乗って直ぐにメンタルモデルと船体の同期が完了し、動いたり主砲を放つ事もできるが、この姿に慣れる為に、積まれている主砲の砲塔を軽く旋回させていると、エヴァの攻撃が放たれた。

 突然目の前の上空に巨大な氷塊が現れ、私に向けて落下してくる。

 落下してくる氷塊を視界に入れた私はすぐさま行動を開始する。すぐさま後退、クラインフィールドを氷塊の落下推測位置に展開して一時的に氷塊を受け止める。そして前主砲2基4門で氷塊の中心を狙い、放つ。放たれた徹甲弾が氷塊を粉砕し、砕かれた氷塊の先に見える孤島には悔しそうな表情をしたエヴァがいる。

 

「今度はこっちの攻撃だな。茶々丸は……退避はまだか。まぁ、エヴァならこの攻撃くらい防げるだろうし」

 

 すぐさま装填を終え、主砲2基4門をエヴァに向けて放つ。数秒後、エヴァの居た付近で爆発音が短い間隔で数回聞こえ、爆煙が晴れた先にはエヴァと茶々丸が無傷で立っていた。

 

「流石エヴァって所か。あ、漸く茶々丸が退避しだしたか。エヴァは茶々丸から離れるように動いてると……。なら、次はミサイルでも撃ってみるかな」

 

 攻撃手段にあるミサイル攻撃を選択すると、甲板の所々がずれ、ミサイルの発射口が一斉に現れる。その数は298。弾頭を侵食弾頭から通常弾頭に替えてから、私はエヴァがいる一帯を狙う。

 

「この攻撃、受けてみろ。エヴァンジェリンッ!」

 

 霧の艦隊の初見殺し技の一つである,艦の形状からは放たれる事はないと思ってしまう高速ミサイルの飽和爆撃。エヴァの居る所に目掛けて、一射目のミサイル298本を放ち終えた後、続けてもう一回、合計596本ものミサイルを放つ。先に放ったミサイル群がエヴァの居る周辺に降り注ぎ、爆音が響きまくる。しかし、時折ミサイルが地面に着弾する前に爆発しているものあったので、彼女はあの爆心地の中、当たりそうなミサイルを迎撃しているのかもしれない。

 一射目の全てのミサイルが着弾した後、暫くして二射目のミサイルがエヴァのいる元に降り注ぐ。二射目のミサイルのいくつかが爆発し、爆煙をあげた時、その爆煙を切り裂いて、此方に向かってくる存在を確認した。

 確認した存在は、もちろんエヴァだった。ミサイルがエヴァ本人を狙ったものではなく、あの一帯を狙ったものであることを見抜いたのかは分からないが、エヴァが誰も居なくなった場所に降り注ぐミサイルを背に、私の元に向かってくる。

 

「へぇ! 流石だな。ミサイル中止。対空兵器展開。敵を確認。……迎撃開始!」

 

 接近してくるエヴァを盛大に迎える為にミサイル攻撃を中止すると、甲板が元に戻る。そして、艤装全てをアクティブにし、エヴァが来る方向に向けられる全ての艤装を向ける。そして、彼女が此方の有効射程に入った瞬間、彼女に向けた艤装が一斉に火を噴いた。

 

 エヴァと闘う事で気をつけなくてはいけない事はただ一つ、とある魔法の詠唱をさせる間を与えない事だと私は考える。如何にとんでもないチート能力を持っていようが、エヴァにはそんなものを簡単に覆せる魔法を一つ持っているのだ。それが『えいえんのひょうが(ハイオーニエ・クリュスタレ)』だ。

 この魔法は簡単に言えば超広範囲の温度を一瞬で絶対零度にして相手を凍結させる魔法だ。魔法の効果はそれだけなのだが、エヴァの場合はこの魔法から凍結させた相手を完全に粉砕する『おわるせかい(コズミケー・カタストロフェー)』とセットで使ってくる。つまり、『えいえんのひょうが』で凍らされたらアウトなのだ。

 

 そんな切り札を持っているエヴァへの私の対抗策は、彼女の周りでひたすら爆発や爆音をぶちかます事だ。

 この対抗策の目的はズバリ、爆音で詠唱でを掻き消す、もしくは爆発による爆風で詠唱を中断させる事だ。近距離での爆発というのは、それだけで相手の心身に甚大なダメージを与える。それを絶え間なく行う事で、詠唱する為の集中をかき乱し、消耗させようと思ったのだ。

 

 そんな目的を持って攻撃を開始したが、エヴァは艦のような大きく鈍重な標的ではない。当然、エヴァは此方の機銃や砲撃を回避する。しかし、彼女を狙って放たれた砲弾を回避しようとした瞬間、その砲弾は彼女の前方で爆発した。

 何故砲弾がエヴァの目の前で爆発したのか。それは砲弾の信管が近接信管だったからだ。霧の艦隊でよくある見た目とは裏腹な超高性能性が、砲弾も含まれていたのだ。

 爆発をモロに受けたエヴァがその場でふらつく。私はそこに畳みかける様に一斉射撃を行い、主砲と副砲から放たれた砲弾が、彼女の周りで一斉に爆発する。流石のエヴァも堪らなかったのか、海へと墜落していき、水柱があがる。

 

「フラグ立てるみたいで言いたくないのだが……やったか?」

 

 流石に手合せなので、ここで追い討ちにビームを主砲でぶち込みはしないが、私はエヴァの動きがないかウィンドウを手元に表示し、様子を確認した瞬間だった。

 もの凄い勢いで、島の方を向いていた艦首が空へと向けられた。

 

「う、うおおおおっ!?」

 

 突然の出来事に驚愕し、事態を理解して私は更に驚く。なんせ船底から氷柱でひっくり返されているのだから。そして、それを行った張本人(エヴァ)はその姿はボロボロだが、鬼気迫る表情で手に馬鹿でかい剣を持って此方に向けて振りかぶっていた。

 

「や、らせるかああああっ!!」

 

 エヴァにとって、この攻撃が私に対しての切り札の一つなのだろう。主砲といった攻撃手段が一切存在しない船底部分からの奇襲攻撃。しかし、私とて霧の艦隊、ましてや大戦艦級なのだ。簡単に負ける訳にはいかないのだ。

 故に、私は船底から彼女に向けてミサイルを一斉に発射した。

 エヴァのありえないといった驚愕の表情が見えて直ぐに、私の発射したミサイルが彼女の目の前で一斉に爆発し、彼女に襲い掛かる。そして――

 

「あっ。」

 

 至近距離で爆発したミサイルの爆風を受け、海面に対して垂直になっていた船体は傾き、ひっくり返るのだった。

 

 




誤字の指摘・感想・批評・書き方のアドバイス等々、頂けたら幸いです。
2月14日…文章の修正

6月29日…文章の修正。発砲音→発光

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