メンタルモデルになってネギ魔の世界に転生するお話 作:照明弾P@ハーメルン
卒論も漸く完全終了を迎えたので、更新頑張ルゾー。
「……ス……ター……マス……」
「う……」
「! マスターッ!」
「……茶々丸か」
目を開けたら目の前に茶々丸の顔があった。その表情は私の事を心配しているようだ。一体なんでそんな表情をしてるのかと思った所で、私はさっきまでキリシマと戦っていた事を思い出す。そして、茶々丸が私の前に居る事で、私は大体を察した。
私は、キリシマと戦い、敗れたのだと。
私は奴との戦いを思い出す。奴の圧倒的な火力に苦戦した私は、奴の攻撃を掻い潜り接近し、それを待っていたかの様に、奴からの砲撃――何故か私が回避し始める前に爆発するもの――をまともに喰らい、海に墜ちた。だが私とて意地があった。奴の船体を氷柱で持ち上げ、船底から攻撃しようとして――船底から一斉に発射されたミサイルが見えた所までしか思い出せない。……恐らく、あのミサイルをまともに喰らい、私は意識を失ったのだろう。
「茶々丸。あの後、どうなった?」
「はい。……マスターとキリシマとの最後の攻防後、マスターはキリシマの船底からのミサイルを受け、海へ墜ちました。また、キリシマの船体も、ミサイルの爆風を近距離で受けた為か、海面に垂直状態だった船体はその状態を維持できず、艦橋から海面へと転覆しました。暫くして、船体は海面に沈んだのですが……」
「沈んだ……が?」
「……すぐに転覆状態から復帰した状態で、海面に現れました。海に墜ちたマスターも、彼女に救助されてました」
「……そうか。つまり私がいままで寝ていた場所は……」
「はい。此処はキリシマの甲板です」
キリシマの奴に聞きたい事が山ほどあるが、それは奴と顔をあわせてからでいい。とりあえずいつまでも横になっているのもどうかと思ったので、私は身体を起こそうとして、身体の感覚が殆ど感じない事に気づく。……どうやら、奴の攻撃を受け続けた為に、流石の吸血鬼の身体も、かなりのダメージが残っているようだった。
「茶々丸。悪いが起こしてくれ。まだダメージが抜けないみたいだ」
「はい。マスター」
茶々丸に頼むと、直ぐに茶々丸が私の背中に手を回し、私の上体を起こす。その時、視界に自分の身体が映ったから分かったのだが、今の私は何故か裸で、上体を起こした事で、胸元まで掛けられていた見知らぬコートが私の腰から先を隠していた。そんな私の考えを察したのか、茶々丸が訳を話し出す。
「彼女の攻撃を受けた為に、マスターの着用していた衣服は、もはや衣服に分類されないまでになってしまったので、失礼ながら私が処分致しました。此方のコートなのですが、キリシマから渡されたものです」
「そうか……まぁ、仕方が無いか」
茶々丸から訳を聞いた私は、掛けられていたコートに目を向けていると、後ろから甲板に着地した音が聞こえた。私は茶々丸に身体の向きを音のした方に向けてもらうと、其処にはタオルで頭を拭きながらもう一枚のタオルを持って此方に来るキリシマの姿があった。
「目が覚めたようだな。エヴァ。ホラ、茶々丸。これでエヴァの身体を拭いてやってくれ」
「あ、はい。わかりました。マスター失礼します」
「頼んだ。…あぁ。ついさっき目が覚めたさ。キリシマ。まだ頭に爆発音が響いてはいるがな」
「それはまぁ……諦めてくれ。……で、手合わせは私の勝ちという事でいいのかな?」
「……ああ。貴様の勝ちでいい。私は気を失い、あまつさえ貴様に助けられた」
「そうか。なら、エヴァ。改めてお互い自己紹介でもしないか? 勿論、身体が回復した後でだが」
「……そうだな。とりあえず、身体が動く様になったらな」
キリシマの言葉になんとなく頷いてしまったが、その時に聞きたい事を聞けばいいかと考え、私は茶々丸に身体を預ける。
「マスター。お身体を拭き終えました。キリシマさん。タオルありがとうございました。後で洗ってお返しします」
「いや、構わないよ。というか、茶々丸にお願いしたい事があるんだが」
「……? キリシマさんから私へお願いですか?」
「ああ。かなり、というか非常に切実な願いなのだが聞いてくれるか?」
キリシマが真剣な表情で、茶々丸を見ながら願い事を言おうとする姿に、私は奴が茶々丸に対して一体どんな内容を言うつもりなのか気になってしまう。茶々丸もただならぬキリシマの表情を見て、真剣な表情で言葉を返した。
「はい。どうぞ言ってみてください」
「ああ。……アレを、見て欲しい」
「アレですか……」
茶々丸の返事を受けたキリシマは、静かに腕を上げ、ある方向に指を指し示す。それを追う様に私と茶々丸が首を向けると、其処には爆撃の痕だらけになった島が存在した。
「……アレの整地を頼みたい」
「あー……。そうだな。茶々丸。頼んだ」
「マ、マスター……」
キリシマの指差した島の惨状は、私が奴のミサイル攻撃を迎撃した場所だった。トンデモない数のミサイルがあの場所に落ちた為に、あの場所だけ世紀末のような大地に感じになってしまっている。確かに別荘の景観としては必ず直さなくてはいけない。物凄く労力がいるとは思うのだが。
私も含め、あんな惨状を作ってしまった張本人が本来なら整地するべきなのだろうが、私とキリシマはこの後話し合いをする予定がある。というか、私は絶対にあの整地はしたくない。よって、この整地は私の従者である茶々丸に任せる。悪く思うなよ。茶々丸。
「……わかりました。キリシマさん。マスターの事をお任せしてしまう事になるのですが、宜しいですか?」
「ああ。むしろ任せてくれ。私とエヴァの後始末を任せてしまってて心苦しいぐらいだったからな」
「ではお願いします。マスターの着替えなのですが……」
「……まさか、ないのか?」
「……はい。キリシマさんのミサイルで吹き飛んだ木々の幾つかが別荘に……」
「あー……。茶々丸。着替えの方は私の方で用意するから。すまないが、島の整地に集中してくれ」
「……わかりました。ではお願い致します」
茶々丸が一礼して甲板から島へと飛んでいく様子を、私とキリシマは申し訳ない気持ちで見送るのだった。
◆
小さくなっていく茶々丸を見続けていた私とキリシマだが、いくら濡れていた身体を拭いたといっても、裸のままでは身体が冷えていってしまう。私は、キリシマの方をむい向いて茶々丸にいっていた奴の言葉について聞く事にした。
「で、私の着替えはお前が用意するといっていたが、どうなんだ?」
「用意はできるが、少しの間、コートを退かしてくれないか? 体のサイズを目測できない」
服を用意するといっておきながら、私の裸を見せろという
「これでいいか」
「悪いな。……サイズの目測完了。服は……適当でいいな」
裸で座り込んでいる私を上から下まで軽く見たキリシマは、そんな事を呟きながら私の側にしゃがみこんで、私の肩に手を置く。
「……おい。一体お前は何がしたい」
「何。今からお前を着替えさせるだけだ。じっとしててくれ。すぐに終わる」
「だから何を……ッ!? 服が……!」
私の肩に手を置いてさっきから話をはぐらかすキリシマにいらつき始め、声を荒げようとした瞬間、変化は起こった。私の身体に光る粒子が集まりだし、一定の量まで集まった光る粒子が、Tシャツに変化した。そしてそのまま、光る粒子は短パン、サイハイソックス、スニーカーへと変化する。
「色々言いたい事はあるだろうが……まずは場所を変えようか」
「わっ」
キリシマが何かをして私に服を着せたが、それについて奴自身も答えるつもりのようなのですぐには聞かない。奴は此処で話すのは嫌なのか、私を抱えて――所謂お姫様抱きである。――戦艦の中へと入っていく。
キリシマに抱えられたまま船内を見るが、戦艦の中は見た目とは逆ベクトルに突っ走っていた。余りにも先進的で、まるで宇宙船の中にいるような感覚に陥ってしまう。そんな感覚に陥って数分して、私はある一室へとキリシマに連れていかれた。ドアの前に立つと、勝手にドアがスライドし、部屋の中へ入れるようになる。キリシマに抱えられたまま部屋に入るが、部屋の中は広いが何もなく、およそ部屋と呼ぶよりも区画やスペースといった方がしっくりするようなものだった。
「んー……こんな感じでいいか」
キリシマはそんな部屋を見て呟くと、足で床を叩く。すると、さっきの光の粒子が部屋の至る所に現れ、部屋の姿が変化していく。冷たい感じを思わせる区画のような部屋は、温かみを感じさせる淡いオレンジ色の壁紙に変わり、床はウッドタイルに変化する。部屋の入り口から見て左側にダイニングキッチンが生成されていき、部屋の中央に丸いテーブルが作られ、それを四方から囲む様にリクライニングチェアが置かれている。ダイニングキッチンの向かい側には、大きなモニターが設置され、モニター前には4人ほどが一度に座れる緑色のソファ、その前にソファに座った際の膝の高さほどのテーブルが赤のカーペットが敷かれた上に置かれている。
部屋のあまりの変化に、私は開いた口が塞がらないでいるが、キリシマはそんな私も気にせず、部屋の中央に置かれているリクライニングチェアに私を座らせる。私を座らせた後、キリシマはダイニングキッチンへと向かった。少ししてキッチンから戻ってきた奴の手には、紅茶セットがあり、テーブルの上に紅茶セットを置くと、私と向かい合うように奴もチェアに座る。
「さて、急拵えの部屋だが……どうかな?」
「驚きの連続だ。一体お前は何者なのかとさっきから考えてるよ」
「だろうな。まぁそれもすぐに分かるさ」
「……というと?」
部屋を見渡しながら感想を尋ねてきたキリシマに私は素直に思った事を述べる。それを聞いた奴は、苦笑しながら私の前に紅茶を淹れながら会話を続ける。
「私がエヴァを此処に連れてきたのは……言ってしまえば、学園長よりも我々について詳しい事を話そうと思ったからさ」
「ほう……。爺よりも、ね。理由は?」
「学園側の連中は考えや思想がな……。己の正義が絶対……といった感じからして話をする方が面倒な事になりそうだからさ」
「ああ。確かにそういう所があるな。なんせ奴等は『
キリシマの言葉に私は学園の連中の事を鼻で笑いながら言うと、奴もそう思うのか軽く頷きながら私の前に紅茶を淹れたカップを置く。
「その面、エヴァはそういった思想ではないし、私の目的を理解してくれそうだからといった所だ」
「随分と私をかっているのだな」
「お互い実力を探り合った仲だろう。それに船体をひっくり返されたのは中々驚愕させられた」
「そうか。……じゃあ、聞きたい事には答えてくれると考えていいのかな?」
「ああ。エヴァが聞きたい事に答えよう」
キリシマに確認を取ると、奴はそれに頷き、自分で淹れた紅茶を飲む。私の身体も、どうやら漸く身体の回復が終わったようで、まだダルさを感じはするが、感覚も戻り、さっきまでの酷い重さは感じられなくなっていた。私は腕を伸ばし、キリシマの淹れた紅茶を一口飲んでから、奴への質問を始めた。
「まず、お前は何者なんだ」
「私は霧の艦隊に所属する大戦艦キリシマ。霧の艦隊とは、私のような存在達の事を指す」
「……次だ。さっきの服といい、この部屋といい、あの現象は何だ」
「あれは、ナノ・マテリアルを使った物体生成、が一番分かりやすいかな」
「ナノ・マテリアルとはなんだ」
「私達霧の艦艇を構成している基本因子だ。ナノ・マテリアルはあらゆる物質を作り出す事が可能で、この船体や部屋の家具、紅茶から私の身体に至るまで、全てナノ・マテリアルで作られている。ちなみに人体に影響はないから気にしなくていい」
キリシマの言葉を聞き、私は驚愕せざるを得ない。なんせ、キリシマのいうナノ・マテリアルは此方の世界でいう賢者の石のようなものだ。現に今着ている服の感触も普通のものとなんら違いを感じられない。
「とんでもない因子だな。……お前が展開していた障壁みたいなものはなんだ」
「あれはクラインフィールドといって、私達霧の艦隊が持つ最強の盾だ。特殊なエネルギー経路を形成し、外部から加わるエネルギーを任意の方向へ転換する事で敵の攻撃を無力化する事が出来る。エネルギーならどんなものでも転換可能だから、実弾兵器や光学兵器すら防御可能だ。エヴァの氷塊も、衝突力を別方向に反らしたから受け止められた」
「なんともふざけた障壁だ。……クラインフィールドは突破できるのか?」
「あー……。出来なくはない。幾らエネルギーを別方向へ転換できるといっても、許容量というものがあるからな。余程の超威力の攻撃を飽和攻撃で喰らえば……といった所か。ちなみに、艦砲射撃を2~3発防ぐ程度で、クラインフィールドの稼動率はいって3%程だ。あとは……タカミチの攻撃数十発で4%か。口に出してみて思うが、此処の人間は規格外ばかりだな」
「どの口がいうんだか……。さっきのミサイルもそうだが、見た目と装備が違うようだが」
「ああ。あくまで我々はかつての艦艇の姿を模してはいるが、中身は全くの別物さ。手合わせでは使ってはいないが、私達は標準装備で光学兵器を使用できるし、侵食魚雷や超重力砲といった重力子兵器もあるからな」
「……いまの話で聞きたい事が更に増えたが……まず、重力子兵器とはなんだ」
「重力子兵器か? 重力子兵器を説明するには、まずタナトニウムの説明が必要だが」
「タナトニウム?」
「ああ。タナトニウムというのは、我々霧の艦隊のエネルギー源だ。その物質自体が、常に自壊をしていて、重力子を放出しているものなんだ。我々の使う重力子兵器は、このタナトニウムを利用している」
「……続けてくれ」
「重力子兵器はこのタナトニウムを利用し、対象付近で重力波を……まぁ、細かい事を省けば、起爆すれば、起爆範囲を根こそぎ消失させる兵器だ。侵食魚雷は、魚雷として相手に撃つ事ができるし、超重力砲は射線に入った相手をといった所か」
「……」
「む。どうした頭を抱えて」
「いや、少し頭を整理させてくれ」
「ああ」
私はキリシマから告げられる情報に頭が痛くなってきた。たまらず奴に少し時間を貰いたいというと、あっさりと頷いて席を立ってキッチンの方へ向かう。私はキリシマがキッチンに入っていくのを見送った後、紅茶を口にしながら奴からの情報についてを纏める。
まず、キリシマが私に嘘の情報を述べているかどうかに関しては、恐らく嘘の発言はしていないだろうと私は判断した。理由は奴が余りにも私に対して信用を向けているからだ。先の手合わせ以降、私に対しての警戒度というべきものが全く持って感じられない。この件に関してあれこれ考えても、余計に頭を悩ますだけだと判断し、私は次を考える。
次に彼女の戦闘力についてだが、戦艦が展開されてしまえば、恐らく魔法使いの殆どはキリシマに勝てないだろうというのが、私の出した結論だった。その理由は奴の持つクラインフィールドと圧倒的火力にある。奴を守るクラインフィールドを突破するには、恐らく大魔法、しかも最低でも15人同時詠唱で発動できる規模の破壊系魔法を使わなくては無理だろう。しかし、そんな規模の魔法が個人で使えるのは、私やナギといった規格外の連中のみだ。他の魔法使いは、大人数で、詠唱行為を行って発動するのが大体だ。だが、奴を相手にした場合、その詠唱時間を確保する事はまず無理だ。なんせ、あれほどのミサイルをポンポン放ってくるのだ。幾ら術者を守る従者がいようが、あの火力の前では無力だ。それに、奴のいう重力子兵器など使われてしまえば……恐らく何も出来ずに壊滅するのが関の山だろう。
では、戦艦を展開できない陸ならばどうか。などと考えたが、奴の事だ。恐らく陸であっても、戦艦を展開する可能性は無いわけではない。奴にとって、戦艦の展開=勝利の確定なのだから。陸にあげられた戦艦は固定砲台にしかならないが、奴の場合は固定砲台であっても恐ろしいのだ。
こうやって考えてみると、とんでもない相手と手合わせしたものだと思っていると、キッチンから帰ってきたキリシマが向かい側に座り、手に持っていた皿をテーブルに置く。皿の上には、サンドイッチが並べられていた。
「頭の整理は終わったか?」
「ある程度はな」
「なら、話の続きといこうか。軽食でも食べながら」
「そうだな」
そうして、私とキリシマの話し合いは再開した。
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2月14日…文章の修正。