メンタルモデルになってネギ魔の世界に転生するお話   作:照明弾P@ハーメルン

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エヴァとのやりとりがどんどん伸びていく……

書いてて楽しいのですが、全然原作に入れないのは問題だし……悩むところです。

あと、活動報告にてちょっとしたアンケートしたいと思います。


#08

 

「さて、話の続きだが……他には何を聞きたい?」

 

 そういいながら、テーブルに置かれたサンドイッチを掴んで口に運ぶキリシマに、私も奴と同じ様にサンドイッチに手を伸ばしながら答える。

 

「そうだな……。この艦の能力(スペック)はどのぐらいなんだ? 見た目とはやはり違うのだろう?」

「んぐ? ()の能力か? ふむ……。んー……口で説明するよりも見たほうが速い……か? エヴァ、モニターの方を見てくれ」

 

 私が聞きたい事としてあげたのは、キリシマ本来の姿であるこの(身体)の能力についてだ。キリシマは私の質問に対して、口に入れていたサンドイッチを飲み込んだ後、身体をモニターの方に向けると、モニターの電源が入り、其処にはこの艦の内部構造や船体情報が表示されていた。

 

「私の能力だが、このモニターに映されてるのがソレだ。武装に関してはさっき軽く話したから省くぞ。クラスはコンゴウ級高速戦艦。全長222m。全幅31m。喫水12.7m。排水量32060t。メンタルモデルや機関についてはこれも省くが、最高速力は水上で85Kt。海中潜行で40Kt。装甲は強制波動装甲……まぁ、クラインフィールド装備の特殊装甲と理解してくれればいい。」

 

 モニターに表示されている情報は、専門的な用語が多く、私が見てもさっぱりなので、モニターを指差しながら読み上げるキリシマの説明に耳を傾ける。流石戦艦に分類されるだけあって聞かされた大きさには軽く驚いたが、私が驚いたのは最高速力に関してだ。85Kt……1Ktを約1.852Kmで考えると……。

 

「はぁッ!? じ、時速157Kmだとぉっ!?」

「確かに速いかもしれないが、そんなに驚くことか?」

 

 あまりのトンでもない速さに、私は口へとサンドイッチを運んでいた腕を止め、大声を上げる。キリシマはそんな私を紅茶を飲みながら軽く頷いた後、言葉を続ける。

 

「私達霧の艦隊は、速力に関してはかなりぶっ飛んでるからな。それに私は高速戦艦だからこの速力だが、重巡やそれ以下のサイズのクラスはもっと速力がある奴もいるぞ」

「……出鱈目すぎる」

「まぁ……そういうもんだと理解してくれれば助かる。他に聞きたい事はあるか?」

「……他に目覚めているお前の仲間とかはいるのか?」

 

 キリシマの言葉から霧の艦隊たちの出鱈目さに頭が痛くなるし大声を上げたくなるが、我慢する。私は続けて奴に聞きたかった他の連中についてを尋ねた。

 

「いや。この時代では私だけだ。他の連中はもっと先の未来で目覚める予定だと思う。」

「思う? という事はお前もその辺りに関しては分からない事なのか?」

 

 これまで、私の質問に対しはっきりと回答してきたキリシマから、初めて曖昧な回答が帰ってくる。私はその理由を聞こうと更なる質問を続ける。キリシマは少々困り顔をしながら思案した後、私に答えた。

 

「大まかに説明するぞ。まず、私がこの時代に目覚めている事は、本来ならありえない事だった。でも、私は現にここにいる。その理由は、私に対しての命令が変更されたか、はたまた何らかの原因(バグ)かは不明だが、この時代に目覚める様になっていたからだ」

「……続けてくれ」

「経緯はどうあれ、私は目覚め、命令を確認した。命令は『人間を観察せよ』だ。だから私はここで人間を観察している。……だが、私一人では観察できる情報にも限りがある。そう上位存在が判断すれば、もしかしたら別の個体が目覚めさせられるかもしれない。それに……」

「それに?」

「上位存在が、私の集めた情報で、判断を決定した場合だ。もし、最悪の方向で判断が下された場合は、我々霧の艦隊全てが目覚め、人間に対して攻撃を加える可能性も無いわけじゃない。なんせ、変更される前の命令は『再起動した後は海洋を占有し、人類を海洋から駆逐、分断せよ』だったからな」

 

 そう言葉を付け加えて、キリシマは肩を軽くすくめながら言った。そこで私は、奴のいう最悪の方向というものを想定してみる。もし、奴のいう上位存在が人間に対して敵対的な決定を下した場合。恐らく、キリシマを除いた未覚醒の霧の艦隊たちが目覚め、それぞれが人間の軍艦を模した艦船を構築して、奴の言った様な命令の元にこの世界に人間達を海から駆逐するのだろう。

 では、その結果起こるであろう未来は? 恐らくどの国も大混乱となるだろう。突然何処からとも無く現れ、人間に攻撃をしてくる霧の艦隊(かれら)に、各国は国民達から対応を迫られる。その結果起こるであろう事は、各国の軍から彼等を倒す為に抽出される連合艦隊。そして、その連合艦隊は霧の艦隊と対決し……彼らの持つクラインフィールドによって、攻撃の殆どを防がれ、ミサイルや光学兵器、そして重力子兵器による猛攻撃に晒されて、なす術もなく壊滅するだろう。そうして人類は彼等によって海洋から駆逐され、僅かな陸地に押し込められる。海洋から駆逐された事で、海上輸送などで食料を輸入していた国は、瞬く間に食料難になるだろう。その先に待つ人間の未来は、酷く暗いものとなる。

 魔法使い達が、大々的にこの世界に来て霧の艦隊と敵対する場合も考えてみたが、それでも彼等には勝てないだろう。単体で活動している彼等相手ならば、もしかしたら勝機があるかもしれない。だが、艦隊編成された彼等と戦う事になれば、魔法使い達も連合艦隊のような結末になるだろう。

 

「エヴァなら分かると思うが、もし、我々が人類と戦う事になった場合。きっと人類の未来は悲惨な事になる」

「ああ。食料難な国では餓死者が続出し、大陸などでは生存競争をかけた戦いが起きても不思議ではない」

 

 キリシマの言葉に、私は頷いて起こるであろう未来の話をする。奴は私の言葉に少し暗い表情をしながら口を開いた。

 

「私としては、そんな未来は訪れて欲しくないな」

「それは私も同じだ。恐らく今以上に生き辛くなるだろうからな」

「そうだな。……さて! 他に聞きたい事はあるか?」

 

 私がそう言うと、キリシマはそうだなと言うと、気持ちを切り替えたのか。他に質問はあるかと聞いてきた。私は他に聞きたい事があるか暫く考えてみるが、特に思いつかなかった。

 

「そうだな。大体聞きたい事は聞いたと思う」

「そうか。なら、今度は私からエヴァに聞きたい事があるんだが、いいか?」

 

 そこから奴と私の立場が変わり、私がキリシマに色々と答えることになった。奴からは私の身体の事や魔法について色々と聞かれ、私はそれに受け答えていく。途中で、話が茶々丸の事で逸れたが、その後も魔法についての話が続いた。そんなやりとりと暫く続け、気がつけばかなりの時間がたっていた。

 

「かなり話し込んでしまったな。外は今どんな感じだ?」

「そういえばそうだな。待ってろ。今モニターに外の映像を映す」

 

 私がキリシマに外の様子を確認すると、奴は外の映像をモニターに映し出した。モニターから見た外は、夕焼け色に染まっており、島が映ると、其処には一生懸命整地をしている何体かのロボットとそれを指揮する茶々丸の姿が映る。

 

「……茶々丸には申し訳ないな」

「まだそんなこと言ってるのか。気にしすぎだ」

 

 キリシマがまだ茶々丸に対して負い目を感じているようで面倒だったので、私は呆れながら言葉を投げる。キリシマは私の言う態度を見て理解したのか、そうだなと言葉を零すと、席を立って私に言った。

 

「エヴァ、見せたいものが幾つかある。甲板に行こう」

「貴様が見せたい……ね。いいだろう」

 

 キリシマの言葉に私も頷き、席を立つ。奴は私が席を立ったのを見ると、ついてくるように言って、部屋を出たので、私もそれについていった。

 

 

         ◆

 

 

 キリシマの後に着いていくこと数分。私と奴は甲板に戻って来た。外はモニターで見たように日が沈み、茜色の夕焼け空が綺麗だった。

 

「少し待ってろ。島に被害が行かない様に回頭するから」

 

 そう言って、キリシマから先の戦闘で見たリングが展開される。すると、戦艦の機関に火が入り、戦艦はゆっくりと島とは反対方向に艦首を向けていった。

 

「……でだ。キリシマ、貴様は私に何を見せたいんだ?」

「何、重力子兵器を見せておこうと思ってな。威力ぐらいは知って置きたくはないか?」

 

 ちなみに、この情報は今の所お前しか知らない。とキリシマは言葉の最後にそうつけくわえた。

 

「ふむ……。そうだな。見せて貰おうか」

「ああ。なら、悪いが500m先に氷塊を作ってもらえないか?」

「分かった。……リク・ラク ラ・ラック ライラック――氷神の戦鎚(マレウス・アクイローニス)

 

 キリシマに氷塊を作って欲しいと言われたので、私は奴の言う通りの距離に氷神の戦鎚を発動し、海上に高さ25m、幅20m厚さ15m程の氷塊を作り出す。

 

「すまんな。じゃあ初めは侵食魚雷から。今から発射する」

 

 キリシマは私に感謝を述べると、氷塊に手を銃の様にして、撃つポーズをとった。すると、海面にうっすらとだが、魚雷の雷跡が見え、それが氷塊に向かって伸びていく。そして魚雷が氷塊に当たった瞬間、変化が起きた。

 

「これが……侵食魚雷か……!」

 

 氷塊の側で風船がはじけるような軽い音が聞こえた瞬間、氷塊の側にはピンク色に発光する球体が現れ、それに吸い込まれるように周りの空間が歪んでいるのが目に見える。そして、その球体が徐々に膨らみだし、破裂しそうな程に膨張したかと思った瞬間、球体は消滅した。其処に残ったのは球体に接していたであろう部分が根こそぎ消失したとわかるような断面が残された氷塊と、氷塊と同じように失われた海面があった。無論、海面はすぐさま周りから海水が流れ込み元に戻ったが、氷塊には綺麗なまでに球体の痕が残されている。

 

「あれが侵食魚雷の威力だ。爆発による殺傷じゃない、存在そのものを消し去る兵器」

「えげつない兵器だな」

 

 キリシマの言葉に、私は見て思った事をそのまま言葉にする。存在を消し去る重力子兵器。それは常人には対処する事など出来ず、魔法使いや悪魔でさえも対処困難な攻撃だ。

 

「確かにえげつないと言われても仕方ないな。次は超重力砲だが……被害が出ない様に少し近付くか」

「被害が出るほどなのか?」

 

 キリシマは私に言われた評価に苦笑しながら、戦艦を氷塊へと近づけていく。私は奴が心配する被害とやらが何なのか尋ねた。

 

「海がな……。じゃあいくぞ。――超重力砲、発射シークエンスに移行」

 

 氷塊から300m程の距離まで近付くと、キリシマは呼吸を整えてから超重力砲の準備を始めた。奴の言う、発射シークエンスと言った直後、奴の体表に緑色に光る紋様が浮かび上がり、それと同じくして戦艦の機関音が重い唸り声を上げた。

 

「船体及び重力子ビーム機展開。重力子圧縮縮退域へ」

 

 キリシマが次々と訳のわからない言葉を述べていくと共に、私の背後から何か大きな音が聞こえる。私はすぐに後ろの方に振り向くと、艦橋が左右に割れて変形し、そこから飛び発ち上空に浮かぶレンズのようなものが4つ存在した。

 

「対象を氷塊に固定。重力子ビーム照射。縮退率65%」

 

 私が艦橋の上で浮かんでいるレンズのような何かに注目していると、大きな揺れと共に水から飛び出すような音が響く。私は何が起きたのかと艦首の方に体を向けると、そこには宙に浮かんだ氷塊があり、そして驚く事に戦艦も同じ様に宙に浮いていた。いや、宙に浮いていたというよりは、戦艦と氷塊の周りの海水がなんらかの理由で退けられているといった表現が正しいのかもしれない。

 

「照準を氷塊中心に固定。エネルギーライフリング収束。縮退域――臨界」

 

 キリシマの言葉から、いよいよ例の超重力砲とやらが発射されるのだろう。私は次に起こるであろう現象をしっかりと見ようと、氷塊に目を向ける。

 

「――超重力砲、発射」

 

 キリシマのその言葉の次の瞬間、眩いまでの光が氷塊へと向かっていく。放たれた超重力砲は、海を割りながら凄まじい速度で氷塊に直撃し、光に包まれる。すぐに氷塊の後ろにも光が伸びていくが、その光は消えていき、超重力砲の発射が終わる。発射時間は7秒にも満たないほどの短い時間だったが、氷塊の中心に直径15m程の綺麗な丸い穴が貫通しており、その遥か先には割れた海面に海水が流れ込んでいくのが見える。

 余りの光景に、私は呆然としていたが、海面に着水する音と揺れで我に帰った。どうやら私が呆然としていた間に、発射後のシークエンスの全てが終わっていたようだった。全てのシークエンスを終えたキリシマは少し自慢気な表情で私に近付いて言った。

 

「どうだエヴァ。これが、超重力砲だ」

「……ああ。凄まじい威力だった」

「そうか。じゃあ、一旦島に戻ろう」

 

 私の感想を聞いたキリシマは嬉しそうに笑い、戦艦を島の方へと進める。その姿を見て、私は小さくも明確な恐怖を感じたのだった。

 

 

          ◆

 

 

 戦艦を島の側まで近付けたキリシマが、クラインフィールドを階段状に展開し、島へと降りていく。私も奴と同じ様にクラインフィールドの上を歩き、戦艦から降りると、茶々丸が私達を出迎えた。

 

「キリシマさん、そしてマスター。お帰りなさい」

「ああ。整地の方はどうだ?」

「はい。超に連絡を入れ、試作作業用ロボットを3体程借りて、先ほどまで整地作業を行ってました。この調子ですと、完全に元に戻すまでにかかる時間は2週間、現実世界で換算すると14時間程かかります」

「成程な……。茶々丸、整地に関しては多少時間が掛かってもいい。此処から出れる時間になったら一度出るぞ」

 

 茶々丸と2、3言葉を交わすと、彼女はかしこまりましたと頭を下げる。その様子を見ていたキリシマが感心しながらも何か気になったのか、私に軽く手を上げながら聞いてきた。

 

「なんと見事な主従のやりとり……魔法使いの主従というのはこんな関係が普通なのか?」

「私達のケースの方が稀だ。一般的に、魔法使いの主従は異性で組むし、そのまま夫婦になったりするものが多い」

「ほぅ……。そうなのか」

「マスター、特に何か無ければ、別荘で寛ぎになって下さい。キリシマさんもよろしければ」

 

 キリシマの質問に答えた所で、茶々丸が別荘の方を手で指しながら話す。私は特にする事がないので、構わないが、キリシマの方はどうなのか分からないので、聞く事にした。

 

「キリシマ。特にする事が無いなら別荘に行くぞ」

「ああ。じゃあちょっと待ってくれ。今船体の展開を止めるから」

 

 そういってキリシマからリングが展開されると、背後の戦艦がグズグズと崩れだす光景に私と茶々丸は言葉を失う。あっという間に、戦艦があった場所には大量の銀色の砂の様なものだけが残されていた。

 

「さ、エヴァ。別荘とやらに行こうじゃないか」

「あ、ああ。茶々丸」

「あっ、はい。此方です」

 

 キリシマの言葉に我に帰って茶々丸を促すと、茶々丸もそれを了解し、私とキリシマは別荘へと足を運ぶのだった。

 

 

 


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