東方摩耗録 連載 作:力尽きても復活した奴
変な感じになってて申し訳ない
その日は制服から着替える暇もなく病院へと向かっていた。
両親が働いている会社でトラブルがあり、急遽海外へ出張することになったことで、入院している妹へ必要なものを持っていけるのが自分しかいなかったからだ。
リニアモーターカーに乗るために駅へ向かっていると、普段世話になっている親戚のお爺さんから着信があった。
「時命か!?今何処に居る!」
「どうしたんだよ爺さん、そんなに慌てて」
「直ぐに家に来て欲しいんだ、来れるか!」
爺さんは酷く狼狽した様子で大声で叫んでいた。
「今から妹の見舞いに行くと」
「それよりも大事な話があるから来てくれ!」
「分かったよ」
一体何の用事だと言うのだろうか。
「落ち着いて聞いてくれ。親御さんが乗っていた飛行機が……、墜落した」
その言葉から先はあまりよく覚えていない。ただ、漠然と妹は自分が守らなければいけないと、中学生ながらもそう思っていたことだけは確かだった。
報告してくれた爺さんが妹共々引き取ってくれた二年後。高校に入学してからしばらく、始めたバイトにもようやく慣れてきたある日のこと。
バイトが終わって真っ直ぐ自宅に帰ると玄関のドアの鍵が開いていた。
不審に思って警察に連絡しながらドアを開けると、鉄のような酷い臭いが充満していて、急いで臭いの強くなる方へと向かっていった。
リビングで見た光景は、赤く彩られた床と、動かなくなった爺さんだった。
後に、犯人は空き巣狙いの強盗で、爺さんのその手には両親が遺してくれた妹への誕生日プレゼントのネックレスと遺産の入ったクレジットキーが強く握られていたことが分かった。
ある日妹の調子がよくて、外出が出来た。
捨てられていた猫を妹が助けたがっていた。
後日、検査をしてから綺麗になった猫を妹に見せに行った。
妹がトウと名付けた。橙と書くらしい。
一ヵ月後、衰弱していた内蔵のうち肺がとうとう動かなくなり、妹は安らかに息を引き取った。
翌日の卒業式は休んだ。
その後三年はトウ一緒に各地を転々としながらもなんとか暮らしていた。
しかし、どんな時も一緒にいたトウもいきをひきとった。
ろうすいだった。
みんないなくなった。
――しぬのってこわいなぁ
知らないところにいた。今までのは夢だったのだろうか。
何だか死ぬのは怖い。
もう助けられないのは嫌なんだ。
助けるつもりが助けられてしまったと思っていたら、逆に感謝されていた。
こんな俺でも、誰かの役に立てるのかもしれない。そう思えた。
――認めてくれるヒトがいたんだ。
――守ろう。絶対に。
(………………大丈夫、そうね)
不覚にも泣いてしまいそうで、間違っても藍達には見せられない顔をしてしまっていた。
昔から弱いのだ。何に、とは言わないけれど。
――認めましょう
――幻想郷の住人として
――そして、家族として
「ごめんなさいね、ちょっとだけ大事な話があるの」
こちらを向かせた時貞の顔には、不思議そうな表情が浮かんでいた。
「その前に言うことがあったわね」
「ようこそ幻想郷へ。我々は貴方を歓迎するわ」
もちろん、家族としても。
恥ずかしくて言えないけどね。
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