音が止んでから恐る恐る部屋に入るナギサ。
すると息が切れ切れの西野さんに思った通りの人物が無力化されていた。
「ば、馬鹿な…素手とは言え人間ごときにこの私が!?」
「ハァハァ…き、キツい…明日は会議なのに……ハァハァ。」
「大丈夫みたいですね。」
「あ、ナギサ!どこ行ってたの?後この子誰?!」
「まずは落ち着いて下さい。今お茶をお持ちします。」
台所から麦茶の入ったコップを3つ持ってきた。
それをとりあえず西野、自分、そして縛られた深海棲艦の前に置いた。まぁコイツに関しては多分飲めないけど。
「ふぅ…」
一気に飲み干した西野はさっそくナギサに説明を求めた。
「で、もしかしなくてもこの子も?」
「はい。彼女は深海棲艦の姫、重巡棲姫です。」
「重巡……何か強そう。」
「はい。条件次第では私でも勝てません。なのにどうしてこんな事に。」
生身の人間が深海棲艦に、しかも姫クラスに二度も勝利するなんて。普通じゃないですよ。
「西野さん、本当に何者なんですか?」
「ん?私はただの会社員だよ。」
「いやいや、絶対ちげえだろ?」
これまで黙っていた重巡棲姫が喋った。
「でもまぁ、流石は私のライバルを手駒にした奴だ。人間にしては強いじゃないの。」
「ナギサのライバル?」
「違います。コイツの自称です。前に同じ作戦で絡んで以来ずっと付きまとわれてます。」
「ふん、勝ち逃げなんてさせないよ。」
「はぁ…人間に縛られておいてよく言えますね。」
「う、うるさい!」
「あはは♪仲いいね。」
「「はぁ!?どこがです(だよ)!?」」
ほら息ピッタシ。
「それでこんなところまで来てストーカーですか?」
「ストーカーじゃないし!」
「じゃあ何ですか?」
「だ、だって……お前が行方不明って聞いて慌てて帰って来たら実は生きてるって聞いてそれで……」
「重巡棲姫…」
なんだ、がらにもなく心配してくれたのか。
ナギサは少し不憫になり彼女の拘束を解こうとした。
「もしかしたら人間に捕まって生き恥晒してるって思ったらいても立ってもいられなくてな!」
「ムーー」
ナギサは拘束をさらにきつくした。
「ぎゃあああ!!絞まる!首が!!」
「生き恥晒してるのはアナタですよ!さっさとくたばれ!」
「ナギサ!ナギサ!いくら深海棲艦でもここを殺人現場にしないでよ!?」
西野が止めに入ったことでナギサはようやく止めた。
「はぁはぁは……。死ぬかと思ったぞ。それにしても。」
ここに来てようやく彼女は西野の方を向いた。
「ナギサってコイツのことか?かわいい名前を付けちゃって……。しかもお前の指示に従ってるしよ、どうやってコイツを従わせてるんだ?」
「まぁーーなりゆきかしら?」
「はぁ!?私みたく力ずくでなく!?」
「どちらかと言うとナギサからかな。」
私はこれまでの経緯を説明した。
「へぇーー。お前にそんなかわいい一面があるとは。」
「絞め殺すぞこら。」
「わかってくれた?」
「そういうことにしてやる。もう襲わないからこれ、解いてくれよ。」
「ああ、うん。わか」
「御断りです。」
「ナギサ!?」
「いくら主人が許しても、メイドたる者として西野さんに害を成した奴を生かしておく道理はありません。」
おいこら、それなら古姫はどうなる?
「それにです。私はコイツの処分を本隊から一任されています。」
「はあ!?それはどういうことだ!?」
これには重巡棲姫が激しく動揺した。
「アナタ、勝手にこっちに来たそうですね。しかも作戦途中で配下の艦隊を放っていって。南方司令様はお冠ですよ?」
「そそそそそ、それは……」
「なので私にはアナタをここで処分する権利があります。帰って処刑されたり、生き恥を晒すより、ここで私に始末された方がアナタも辛くないでしょ?」
「ふん。そうだな。」
何故かあきらめた重巡棲姫と艤装を展開してとどめをさそうとするナギサ。
「はい!ストップ!」
これに間髪を容れず西野は止めに入る。
「西野さん!これは深海棲艦としての問題です。」
「そうだぞ!手出しするなよ!」
何なのこの子達はもう!
深海棲艦って皆こうなの?
「ナギサ、私言ったよね。ここではメイドらしくしてなさいと。」
仕方ないので西野も少し本気を出す事にした。
その圧力に押されたからなのかナギサは背筋を伸ばした。
「は、はい!」
「それで?メイドは何時いかなる時もどうしろと?」
「はい!主人の命に従えと!」
「なら、私がさっき言った指示は?」
「ここを殺人現場にしないことです!!」
「よろしい。あ!ここじゃなければいいとかでもないよ。」
「分かりました!しかし、それだと……」
ナギサはこの深海棲艦をどうすればと聞いてきた。
「この子に罰を与えればいいのよね?」
「まぁ、そうです。しかし重罪ですので重刑でなければ上もコイツも納得しないかと。」
「そうだそうだ!重刑だ!」
さっきから何なのこの子。
「はぁ…。なら、この子の身柄。私がもらってもいい?襲われた私の為に、そしてこの子に死ぬより辛い罰を与えるからさ。」
「は、はい。西野さんがそこまで言うなら。しかし、どうするのです?」
「ふふふふ……♪」
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襲撃から数日後
「殺してくれ……」
「え、やだ。」カシャカシャ
「いやー。流石は我が親友。こんな贈り物をくれるなんて♪」カシャカシャ
「ナギサ~。次の服を持ってきて。」
「かしこまりました。」
「け、軽…ナギサ!た、助けて…」
「諦めて下さい。この二人相手では無理です。」
重巡棲姫はアニメのコスプレ衣装を着せられてカメラに撮られていた。だが、これが彼女の刑罰ではない。
「まさか私にも同居人ができるなんて!西野様様だよ!」
「いや~。私も古姫の件で色々やって貰ったからそのお礼だよ。」
彼女は東田の所に身を置くことになったのだ。
初めは何度も脱走を図っていたが昨日とうとう諦めたようだ。
「彼女の刑罰は、東田さんの遊び…同居人になって着せ替え人形になることよ。」
「確かに……。生き恥通り越して拷問ですよ。」
「人外っ子が着てると思うと……ぎゃあああ♪興奮する!ほら、次はこれよ!これ!」
「こ、この人間ヤバイぞ!もうやだ!もう帰りたい!それがダメならいっそのこと…いやあああああ」
「全く。生き恥晒した私見たさに来ておいて、結局生き恥を晒すのはアナタの方じゃないですか。」
ちなみに彼女はこちらで処理したと司令には伝えたので彼女は轟沈扱いだろう。軽はずみな行動でこうなった彼女にほんの少しだけ同情するナギサなのであった。
「あっ!ナギサちゃんもツーで撮ろ!」
「えっ!??」