新たな深海棲艦の襲来なり古姫の勉強なり新規事業の打ち合わせなんかをやっているうちにその日はあっという間にやって来た。
「ふふ~ん♪」
「こら古姫!楽しみなのはわかりますけどぼおっとしてないで朝ごはん食べなさい。」
「はぁ!ごめんなさい姉様」シュン
ナギサに注意され少し萎む古姫。
まるで本当に姉妹みたいだな。
「ふふふ。そんなに待ちきれない?」
「うん!」
古姫は満面の笑みで答える。
そう、今日から市立の中学に通学するのだ。
「そっか。ならなおのことボロを出したらいけないよね?私が言った事を必ず守るのよ?」
「わかったわ。」
「よーし。じゃあアナタの名前は?」
「西野古姫です。」
「うん。間違っても本名を名乗らないように。」
間違っても駆逐古姫なんて名乗った日にはどうなるのやら。
「クラスでの自己紹介は大事だからね。」
「どうして‥‥?」
「もしそこでそこまで好きじゃないのにアイドルが好きなんて言ったらずっとその設定でいかないといけないし、真面目過ぎても距離を作りかねないし、逆に尖り過ぎてもそれからずっと変人認定されるし‥‥うあああ!!」
「西野!?」
「に、西野さん!?」
西野は勝手に自滅した。
「と、とにかく出だしでしくじると大きな禍根になるよと。」
「な、なるほど‥‥」
な、なにそれ。西野が、あの西野がここまで恐れるなんて‥‥凄く怖い‥‥。
「それじゃあ他の言い付けは?」
「バッチシ覚えてる!艤装は出してはいけない。力は常にセーブしろ。後殺意はしまえ。」
「よーし!あとの常識については多分わかってるだろうし何よりそんなのを学ぶのも学校に行く理由だからね。思いっきり楽しんで。」
「うん!」
「はいはい、二人とも。話はそれぐらいにして早く食べちゃって下さいね。遅刻しますよ。」
「あ、いけない!今日会議の日だ!」
「初日遅刻は不味い!」
二人は慌てて朝食を食べた。
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古姫がこれから通う学校は戦争勃発後に再編されてできた新しい学校です。
過去に本土が攻撃を受けた事を背景に場所を移したり数を減らしたりした結果だそうです。
「アナタが今日から転入してきた子ね。担任の神取です。これからよろしくね。」
古姫を出迎えてくれたのは眼鏡の似合う綺麗な女性だった。何でも担任のようだ。
「ええっと…西野さんは遠くの島から疎開して来たって聞いたけどもうこっちの生活には慣れた?」
これは西野から事前に聞かされていた設定だ。
もちろん回答も準備している。
「はい。今はお母さんと姉様と一緒に暮らしてます。」
「そう、よかった。何か困ったことがあれば何でも相談に乗りますからね?」
「はい。ありがとうございます。」
よし!ここまでは順調!!
しかし、問題はこの後‥‥。
神取先生に連れられて教室に向かう古姫。
その後ろの角から二人を観察するものがいた。ナギサだ。もちろん例の装置を使っている為誰にも見られていない。
「古姫‥‥大丈夫かな?」
心配で勝手についてきたものの勝手な事をすれば西野に叱られるのでただ見守るナギサだった。
そしてとうとうその時がきた。
教室内ではホームルームが始まっており、古姫は外に待たされている。呼ばれるまで待てとの指示だ。
「えーー。それでは、今日は皆さんに嬉しいお知らせがあります。」
神取先生の言葉で教室が少しざわめく。
「なんと!今日からこのクラスに新しい仲間が増えます!」
このセリフでざわめきは騒音へと変化する。
この音の変化により古姫は一気に緊張した。
(お、おお落ち着いてよ私!これまで死線を越えてきた私よ!艦隊相手に一人で暴れたこともあるのよ。今さら30人程度の人間に何を怯える必要が!)
そう自分に言い聞かせていたところだった。
「西野さん、入って下さい。」
名前が呼ばれた。合図だ。
(い、いやだ!入りたくない!なんか怖い!)
しかし、古姫は誰かに背中を押される。
「えっ!?いや、ちょっと!」
古姫は教室に入ってしまった。
なぜこうなってしまったのかは分からなかった。しかし、
「ふう‥‥。文字通り、背中は押しましたよ。あとは頑張って下さいね。」
誰もいないはずの背後からそう言われたのはわずかに聞き取ることはできた。
(もしかして姉様?いやなぜ姉様がここに?)
しかし、古姫にその疑問を解く時間はなかった。
「わー!女の子だ!」
「やった!女子だぜ!しかも可愛い!」
クラスの注目が古姫に集まっていた。
先生に促され古姫は教卓の前に立った。
(うう、これがクラスの自己紹介というやつか。)
確かにこれはキツい。今まで人間に向けられたことのない種類の視線だ。なんだかむずかゆい!
「それでは、西野さん自己紹介を。」
「は、はい!」
しかし、先ほどよりは緊張がない。
姉様疑惑のせいで気がそれたお陰だろうか?
よし!!
「西野古姫です。これからよろしくお願いいたします。」
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「それで?どうだった?」
「最高!クラスの人間達と仲良くなったよ!」
「そうはなりより。」
西野が帰って来るなり古姫は嬉しそうに今日の出来事を報告した。西野もこんなに嬉しそうに話す古姫を見れて仕事の疲れが飛んでしまった。
「二人とも。ご飯の支度ができましたよ!」
「はーい!」
「行きますか。」
二人はテーブルへと向かう。
その時にナギサの横を通る古姫は小声で伝えた。
「ありがとう姉様‥‥」
「どういたしまして。」
古姫は席へとついた。
続いて西野がナギサの横を通る際に小声で伝えた。
「勝手になにしてるのかしら?後で部屋に来てね♪」
「‥‥‥はい。」
古姫の学生生活は良いスタートを切れた。今晩は楽しい話題で大いに賑わった。約一人を除き。
さて、ナギサはどうなるのやら。
次回は学校の話かリ級の話を書きます。